ノルウェーのハードロック・グループ「AUNT MARY」。 70 年結成。73 年解散。 英国風のハードロックを基調にハモンド・オルガンやムーグ、アコースティック・ギターも用いた多彩な音作りを見せる。 作品は再編ライヴ含め四枚。
Bjorn Christiansen | guitars, vocals |
Svein Gundersen | bass, vocals |
Bengt Jenssen | keyboards |
Kjetil Stensvik | drums, percussions |
72 年発表の第二作「Loaded」。
内容は、北欧らしいフォーキーなメロディ・ラインが見え隠れする、英国 70 年代初頭風のブルージーなハードロック。
リフやメロディのセンスには、普通の係り結びに落ちつきたくないという気持ちが出ているせいか、独特のものがある。
全体にパワフルで小気味のいい演奏で、大胆なブレイクやリズム・チェンジも取り入れていて、トリッキーな印象を受けることもある。
各楽器のプレイの総体というよりも、全体で一個の変わった楽器が無機的な音で鳴っているようなイメージの演奏だ。
楽曲は、ギター・オリエンティッドなハードロックを軸に、アコースティック・ギターを用いた弾き語りフォークからヘヴィなオルガンをフィーチュアしたナンバーまで、多彩という表
現では物足りないほどに幅広く混沌とした変化を見せる。
オルガンは、THE NICE 直系の強烈なるレスリー・サウンド。
最終曲は、ヘヴィにしてファンキーな大傑作。
ヴォーカルは英語。プロデュースはジョニー・サルーソン。
「Playthings Of The Wind」(3:03)
ギター、オルガンがリードし、トリッキーに曲調が変化するハードロック・インストゥルメンタル。
一気呵成な中で巧妙なプレイが続いて挑戦的なイメージが強い。
TRETTIOARIGA KRIGET に通じるところもある。
なかなか衝撃的なオープニングだ。
「Joinin' The Crowd」(3:42)
ラリったように危ういミドル・テンポのブルージーなハードロック。
引き摺るようなリフで迫るところやソロ・ギターはごく普通のハードロックだが、ヴォーカルに噛みつくようなオブリガートのセンスが尋常ではない。
「Delight」(2:44)
一転して、スライド・ギターをフィーチュアしたリリカルなフォーク・ソング。
薄暗くはあるが、ほのかな開放感もある。どちらかといえばアメリカンなタッチだ。
終盤リズムが加わるとラフなハードロックへ。
トーキング・モジュレータのような音がする。
「Upside Down」(4:15)
FREE のように腰のすわったクランチなリフで迫るミドル・テンポのハードロック。2 曲目よりもぐっとオーソドックス。
貫禄あります。
「Farewell My Friend Pt.1」(3:21)
アコースティック・ギター、オルガンによるドリーミーな作品。
今度は英国トラッド・フォーク調のたおやかな幻想美が。
「Farewell My Friend Pt.2」(0:59)
一転して凶暴なオルガンが牙を剥いて迫る、邪悪なイメージのヘヴィ・チューン。
「Blowin' Tiffany」(7:32)
前曲を序奏とするような、オルガンをフィーチュアしたクラシカルなハードロック。
前半は、男性的なヴォーカル、ハーモニーとオルガンによるバラード。
RARE BIRD を思い出します。
後半、アコースティック・ギターとトーン・ジェネレータをきっかけにツイン・ギター、オルガンがスリリングに走り出す。
「Fire Of My Lifetime」(5:11)
PROCOL HARUM を思わせるけだるくも重厚なスワンプ調バラード。
バッキングのピアノのトリルとギターのトレモロが印象的。
ギター・ソロもなかなか個性的。
名曲。
「G flat road」(5:43)
BLACK SABBATH 系のタメの効いたヘヴィ・チューン。
ハードロックの一級品。
(Phillips / 842 970-2)
Bjorn Christiansen | guitars, vocals |
Svein Gundersen | bass, vocals |
Bengt Jenssen | piano, organ, mini-moog |
Kjetil Stensvik | drums, percussions |
73 年発表の第三作「Janus」。
内容は、ハードロックにフォーク・ソングを取り入れた、いわば YES のように個性的でポップなハードロック。
前作ではハードロックのヴァリエーションの間にフォークソングが散りばめられていたが、本作の A 面では、楽曲のアレンジに両方の要素が現れて、楽曲はより込み入った変化の幅の大きなものになっている。
ブルーズロックから THE BEATLES までも視野に入れた、英国ロック主流風の多彩な内容といっていいだろう。
ギターがリードするリズミカルで多彩な演奏を主に、オルガンやムーグ・シンセサイザーが音の厚みとゆったりとした広がりを与えている。
大仰でドラマティックな演出も効いており、プログレ度合いは倍増したといえるだろう。
特に、西海岸風のハーモニーは、YES の影響が大と見るべきだろう。
元々バンドの一体感で曲を鳴らしていたので、リズミカルでトリッキーなアンサンブルとの相性はいい。
ギターはハードロックにとどまらず、ジャジーなプレイやメロディアスなプレイも見せる。
また、キーボードは、ソロのスペースを大分広げたようだ。A 面だけではなく B 面の後半でも、エマーソン直系のテクニカルにして迫力あるプレイを放っている。
特に 7 曲目のオルガンのプレイは、「Tarkus」を髣髴させるスリリングなものである。
ムーグ・シンセサイザーもやはりエマーソン風だ。
B 面では、前作のようなサイケ、ハードロック野郎らしいジャンクで硬派な表現も復活する。
そうなると、ギターは完全にそっち方面のプレイを全開にしてブルージーに迫ってくる。
5 曲目は A 面とは別人のような、前作の世界である。
ひるがえって 6 曲目は弾き語りフォーク、やはり前作で紹介された作風だ。
この 6 曲目、切ない響きがイタリアン・ロック に通じる佳品である。
ヴォーカルは英語。
4 曲目の終わり(旧 A 面の終わり?)に、ユーモラスな小曲のブリッジあり。
ジャケットは、ギリシャの阿修羅、ヤヌス神がもつ二つの顔と、錯視の二面性を重ね合わせた示唆に富むもの。
「Path Of Your Dream」(12:15)
「Mr.Kaye」
「Nocturnal Voice」
「For All Eternity」(6:54)
「Stumblin' Stone」(6:10)
「All We've Got To Do Is Dream」(2:53)
「Candles Of Heaven」(10:42)
「What A Lovely day」
(Phillips / 842 971-2)