スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRETTIOARIGA KRIGET」。70 年結成。74 年アルバム・デビュー。81 年解散。作品は五枚。2004 年に復活、現役です。
強力なベースとカラフルなギターによる技巧的ハードロック。後進に多大な影響を及ぼした北欧ロックの草分けの一つ。グループ名は「三十年戦争」の意。
Stefan Fredin | bass |
Christer Akerberg | electric & acoustic guitars |
Robert Zima | vocals, electric guitar |
Dag Lundqvist | drums, mellotron |
74 年発表の第一作「Trettioariga Kriget」。
内容は、ベースとギターを中心にしたテクニカルな超変拍子ハードロック。
ギターは、ナチュラル・トーンを基本にワウを少々効かせたけたたましいプレイを得意とし、ベースはリッケンバッカー特有の硬質な音色でトレモロを含めギターと同様にバリバリ弾きまくる。
このギターとベースによる強固でスピーディなリフ、ユニゾン、そして変拍子を交えためまぐるしいリズムの変化が演奏の特徴である。
鋭いピッキングが生み出す緊迫したフレーズが、幾重にも絡みあい反応しあいながら突き進み、augument と diminish の響きが、不安、苦悩、闘争、狂気といったダークなイメージを広げてゆく。
ワイルドなリフだったものがいつしか無機的な反復へと変化して、抽象的な文様を不気味に描き出す。
そして、あたかも音の隙間を縫うように、メロトロンの調べが流れてゆく。
ヴォーカルはスウェーデン語特有なのか、熱っぽく角ばった響きに独特の切羽つまったような調子が加わっている。
メロディアスというよりは語りに近い表現方法であり、それも独特の効果を生んでいる。
全体に、ぎりぎりとした緊張を緩めず、疲れ知らずで攻め立てまくる演奏スタイルであり、不器用な性急さが強調されている。
一口でいうと、ハードロックに YES と CRIMSON の技巧を突っ込んで思い切り歪ませたような演奏であり、JONESY 辺りよりは技も力も上である。
どこまでも無機的で、下手をすると現代音楽じみたプレイが続くところは、DEEP PURPLE すら凌ぐかもしれない。
最も近いのは、イタリアの無神論者 IL BALLETTO DI BRONZO だろう。
そしてその伝統は ANGLAGARD に引き継がれている。
もっとも、メロトロンやジャジーなギター・プレイとともに「引く」場面では、意外なまでにフォーキーで素朴な響きや、70 年代らしい R&B テイストが露になってくるのも事実。
攻め立てる調子が噛み付くような激しさをもつだけに、そういうところではホッとする。
「Kaledoniska Orogenesen」
「Roster fran minus till plus」
「Fjarilsattityder 」LED ZEPPELIN を大きく歪曲させたような野心作。
恐ろしいことに、今聴くとポスト・ロックに聴こえるところがある。MOTORPSYCHO なんてここから一歩も進化していないのではないか。
「Mina Logen」
「Ur Djupen」
「Handlingens Skugga」
(9587)
Stefan Fredin | bass, vocals |
Dag Lundqvist | drums, mellotoron |
Robert Zima | vocals, electric guitar |
Christer Akerberg | electric & acoustic guitars |
Olle Thornvall | lyrics(Swedish & English) |
76 年発表の第二作「Krigssang (War Song)」。
第一作と同じ路線ながらも、性急さを抑えることも取り入れて、表現の幅を広げた。
得意の挑みかかるような演奏に加えて、アコースティックなミドル・テンポの場面でも、タメを効かせて堂々とした演奏を繰り広げる。
音で埋め尽くすだけではなく、空隙を活かしているともいえるだろう。
あからさまな YES、CRIMSON 風のプレイは控えている感じだ。
(初期 CRIMSON に激似な瞬間はあるが)
最も象徴的なのは、ギター・プレイのバリエーションである。
ワイルドな弾き捲くりだけではなく、アコースティックでロマンティックなプレイも見せている。
空ろな響きのアルペジオは新境地だろうし、大胆なコード進行もカッコいい。
ヴォーカリストも独特の声質を生かした存在感あるパフォーマンスを見せている。
緩やかな表現を巧みに織り交ぜることで、変拍子で強引にたたみかける演奏は、いっそう荒々しいイメージで迫ってくるようになった。
特に、18 分にわたるタイトル・ナンバーの第二部は圧巻。
ヴォーカルはスウェーデン語。
ボーナス・トラックではヴォーカルが英語だが、癖のある唱法は母国語の場合と同じ。
「Krigssang(War Song)」(4:33)
KING CRIMSON と共通する重厚な無機質さ、叙情性と性急さ、突拍子なさ、DEEP PURPLE と共通するチープで切実なロマンチシズム。
そして、たなびくメロトロン・ストリングス。
「Metamorfoser(Metamorphoses)」(4:34)けだるさが魅力のバラード。
アコースティック・ギターも使うコード・カッティングが美しい。
フォーク調になるとイタリアン・ロックに共通する表現法が浮かび上がると思う。
へヴィでエキセントリックな雰囲気とパストラルでロマンティックな空気が交差するところは、OSANNA 的。
「Jag Och Jag Och "Jag"(I And I And "I")」(3:20)アコースティック・ギターによるクラシカルなプレイが美しい弾き語り。トラッド調のハーモニーもいい。今度は OSANNA を越えて英国フォークに迫る。
「Mitt Mirakel(My Miracle)」(3:30)泣きのギターとメロトロンで迫る北欧らしいシンフォニック・ハードロック。奔放な変拍子とジャジーな和声を突っ込んで強烈なアクセントにしている。
なかなかテクニカルだ。
「Murar(Walls)」(4:19)ギター、ベースが挑発しあうブルージーなインスト・チューン。
ジンジンいうエフェクトがなんともハマっている。
アコースティック・ギターの入れ方も巧みである。
ジミ・ヘンドリクスのトリオに透明感をもたせたようなイメージだ。
「Krigssang II(War Song II)」(17:32)
「サードアルバム」あたりの YES を思わせる技巧的なシンフォニック・チューン。
モノクロームなイメージのサウンドなので、シンセサイザーが新鮮だ。
「On Going To England」(7:15)ボーナス・トラック。第一作の「Mina Logen」の英語詞版。
「Ur djupen(Out Of The Depth)」(6:33)ボーナス・トラック。第一作より。
ヴォーカルのファルセットのせいか、DEEP PURPLE に似る。
「So Long」(6:52)ボーナス・トラック。
珍しくブリティッシュ・ブルーズの影響をはっきり見せるナンバーである。
(Mellotronen CD 002)