後期 SOFT MACHINE の中枢を担ったカール・ジェンキンズによるプロジェクト「ADIEMUS」。 オーケストラによるエキゾチックなニューエイジ作品を発表するための、プロジェクトである。 NHK の BGM、CM などでよく使われていた。
Miriam Stockley | voice |
Londo Philharmonic Orchestra | |
Karl Jenkins | conducter |
Mary Carewe | additional voice |
Frank Ricotti | percussion |
Jody Barratt Jenkins | additonal percussion |
95 年発表の「Songs Of Sactuary」。
後期 SOFT MACHINE の作品の大半を作曲しているカール・ジェンキンスは、元々作曲家志望だったらしい。
その宿願がかなったようで、ジェンキンスは本アルバムで作曲とフル・オーケストラ「London Philharmonic Orchestra」の指揮者を担当ている。
(盟友マイク・ラトリッジもパーカッションのプログラミングで参加している。
)
内容は、ミリアム・ストックレイのヴォイスとバック・コーラスをフィーチュアし、リズムを重視した一種の「架空民俗音楽」である。
ライナー・ノーツにある通り、西洋教会音楽のコラールの方法を「エスニック」で「ワールド」な音楽にあてはめたものだ。
このヴォーカリストは、発声こそアフリカの民族の子どものようだが、れっきとしたイギリス人歌手(南アフリカ出身)である。
エキゾチズムの演出という意味では、ヴォーカルのほかにリコーダーの音色がいい働きをしている。
歌詞は、特定の言語ではなく人工的に作られた架空の言語だそうだ。
ジェンキンズが目指しているのは、ジャズやロックとは離れた新しい音楽のようだ。
本作では、巷間の安易なニュー・エイジ・ミュージックと一言でかたづけられないほど手が込んだアプローチをしている。
したがって、この音楽はもはや一つの現代音楽というべきものだろう。
問題は、どれだけ面白みがあるか。
個人的には、現代音楽風のハーモニーとメロディ、エキゾティックな響きがかなり新鮮に感じられた。
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Miriam Stockley | voice |
Londo Philharmonic Orchestra | |
Karl Jenkins | conducter |
Pamela Thorby | recorder |
Christopher Warren-Green | violin |
Jody Barratt-Jenkins | electro - acoustic percussion |
Mary Carewe | additional vocals in CHORUSES |
96 年発表の「Cantata Mundi」。
一作目のコンセプトの延長上にある作品。
今回も、エキゾチックな女性ヴォーカルが「確立された西洋音楽」の象徴たるフル・オーケストラをバックに架空の世界の歌を歌いあげる。
ラテン語のタイトル(世界の歌)が示すように、前作のコンセプトを自信を持って推し進めているようだ。
また一作目同様、オーケストラと対比する楽器として、ヴォーカルのほかにもソロ・ヴァイオリン、ソロ・リコーダー、エレクトリック・パーカッションなどがフィーチュアされている。
特に、パーカッションは独特のエキゾチズムを出すのに重要な役割を担っている。
独唱曲である「Cantus」と短い重唱曲「Chorale」が交互に収められ、それぞれ世界各地のエキゾチックなメロディにのせた不可思議な響きの言葉が歌われる。
ケルティックな哀愁に満ちた曲からパーカッションとストリングスのピチカートによるアフロかつリズミカル(リズミカルな曲というのはいわゆる西洋クラシックが不得手にしてきたものだ)な曲までさまざまなさ作品があるが、どちらかといえば、無機的な響きをもつメイン・ヴォーカルの座りはメロディアスな曲よりもリズム重視のような曲の方がいいようだ。
したがって、ヨーロッパから離れれば離れるほどメイン・ヴォーカルが活きてくると思う。
一方、「Chorale」のサブ・ヴォーカルは、いわゆる西洋的なニュアンスのメロディ・ラインを美しく歌っており、この対比も面白い。
ヴォーカル・パートは基本的に反復であり、これも独特のエキゾチズムを醸し出している理由の一つだろう。
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