ポーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「BELIEVE」。 2006 年結成。 元 COLLAGE のギタリスト、ミレク・ギルによる新グループ。 耽美オルタナティヴ・ロック系。作品は五枚。
Mirek Gil | guitars |
Tomek Rozycki | vocals, backing vocals, guitars |
Adam Milosz | keyboards, hidden harmonies |
Przemas Zawadzki | bass |
Vlodi Tafel | drums, percussion |
Satomi | violin |
Robert Sieradzki | voice, lyrics |
2006 年発表の第一作「Hope To See Another Day」。
内容は、ヴァイオリンをフィーチュアしたメロディアスでへヴィなオルタナティヴ・ロック。
ギタリスト、ベーシスト、ヴォーカリストは元 COLLAGE のメンバーである。
頼りなげなヴォーカリストの存在感を生かしたデリケートで憂鬱な「文学少年の微熱」的世界を展開する。
晴れ間はほとんどなく、驟雨の合間の短い時間に暗灰色の雲の切れ目から見えた微かな青空のような希望が時おり訪れるだけである。
後は、たんたんと、鬱々と、哀しい歌を綴るのみ。
お手本は英国ロックであり、PORCUPINE TREE への敬意は間違いないだろう。
(ただし本家がサイケやプログレから出発したのに対して、こちらは HR/HM が出発点だと思う)
へヴィ・メタリックなパワーコードとはあまりに裏腹な、ソロ・パートでの 90 年代ネオプログレの路線にしっかりのった、レガートで丹念なギター・プレイが印象的。
もっとも、全体としてはネオプログレよりはずっとメイン・ストリームに位置し、ちゃんと「ポップ」である。
(「プログレッシヴ・ロック」ではなく「オルタナティヴ・ロック」と紹介したのはそのためだ。ただ変拍子にはしっかりこだわっているから、ネオ・プログレ気質から抜け切っているわけではない)
要するに、一週回って U2 似という感じだ。
個人的には、MARILLION よりも重苦しくないので「いい」と思ってます。
ヴォーカルは英語。
一曲目の途中、Satomi さんがピチカートで「桜」をひとくさり奏でます。
「What Is Love」(7:39)
「Needles In My Brain」(5:18)
「Liar」(6:57)
「Pain」(5:14)
「Seven Days」(6:09)
「Coming Down」(6:04)
「Don't Tell Me」(5:29)
「Hope To See Another Day」(12:11)
(OSKAR 1028CD)
Mirek Gil | guitars |
Tomek Rozycki | vocals, acoustic guitar |
Przemas Zawadzki | bass |
Vlodi Tafel | drums |
Satomi | violin |
guest: | |
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Adam Milosz | keyboards |
Winicjusz Chrost | guitar (solo on 3) |
Karol Wroblewski | flute |
2008 年発表の第二作「Yesterday Is A Friend」。
内容は、内省的でやや耽美、サイケデリックなオルタナティヴ・ロック。
低血圧気味で表情に乏しい美青年が醸し出すような、艶やかながらも薄暗く冷え切った空気感が特徴である。
特色は、薄暗く冷えたサウンドスケープ、ヴァイオリンを大きくフィーチュアすること、リズム・パターンに凝ること、民族音楽風のエキゾティックな演出(ショパンと同じである)があること、そして、アコースティック・ギターをうまく使うこと。
したがって、全体的な「歌」のスタンスは、弾き語りフォークに近い。(実際アコースティック・ギターをかき鳴らして歌う場面は多い)
ヴァイオリンやピアノの伴奏も密やかで繊細である。
ギター、ヴォーカル(初期 COLLAGE のリード・ヴォーカリスト)の表現は抑制が効いており、エキセントリックにならない、泣き過ぎないおかげで繊細な歌の世界が守られている。
特にヴォーカルは、独り言をつぶやくようなスタイルが思いのほかサウンドとマッチしている。
そして、モノローグ風ながらも、しっかりとした主張はあり、ときにへヴィな音とともに決然たる姿勢で訴えかけてくる。
怪奇なタッチもわりとうまくはまっている。
PORCUPINE TREE に倣った面はかなり多いと思うが、基本的な音楽センスはいいと思う。
ヴォーカルは英語。
(MMP CD 0593)
Karol Wroblewski | vocals |
Mirek Gil | guitars |
Przemas Zawadzki | bass |
Satomi | violin |
Vlodi Tafel | drums |
Konrad Wantrych | keyboards |
2011 年発表の第四作「World Is Round」。
内容は、前々作までの弾き語りフォーク風の内省的なデリカシーとは一味異なる、切迫した表情ものぞく憂鬱さを背負ったメロディアス・ロックである。
若干ではあるが、音的に同国のプログレ・メタル系や MARILLION に接近したように感じる。
ベタついた感傷、といってしまうと元も子もないが、そういう面が現れている。
ヴォーカリストの歌唱スタイルというのは、音楽の性格付けにはやはり重要だ。
一方、繊細さは、頼りなげな風情のヴァイオリンが一手に引き受けている。
また、本作品から加入したらしき専任キーボーディストによるプレイは、全体にまんべんなく配されている。(9 曲目のメロトロン・フルートとオルガンは印象的)
ただ、そのせいか、キーボードはポイントを絞って使っていた前々作と比べると、他のバンドとの違いがうすれてきたようだ。
ただし、耽美の澱みに沈みきらず、アメリカ産オルタナティヴ・ロック風の乾いたシニシズムやユーモアがほのかに漂うところは独特だ。
エキゾチズムは、最終曲のシタールが強烈にアピール、アコースティックな質感も一気にここで取り戻している。
そして、真の最終曲は隠しトラックとなっているタイトル曲のリプライズ。
ヴォーカルは英語。
(MMP CD 0683 DG)