ポーランドのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「COLLAGE」。 85 年ミレク・ギルとヴォイテク・ザドコフスキを中心に結成。2022 年新譜「Over And Out」発表。 作品は六枚。 99 年活動休止後、 2013 年に活動再開。 シンセサイザーとギターの華やかなサウンドと躍動するリズムが特徴の新時代の美麗シンフォニック・ロック。
Tomek Rozycki | vocals |
Przemek Zawadzki | bass |
Marek Gil | guitars |
Wojtek Szadkowski | drums, percussion |
Jacek Korzeniowski | keyboards |
90 年発表の第一作「Basine」。
内容は、ロマンティックで華やかなネオ・プログレッシヴ・ロック。
ヴォーカル・メロディや演奏スタイルなど、初期 MARILLION や IQ といった、英国ポンプ・ロックの影響が強く感じられる。
しかし、きらびやかなシンセサイザーと歌うようなギターが織り成すメロディック・サウンドは、フォロワーの域を越えたすばらしいものだ。
鋭角的ながらも透明感のある音色のおかげで、アンサンブルが眩しいくらいに輝いている。
どちらかといえば、MARILLION よりも IQ に近いシンフォニックな音といえるだろう。
テクニックという点では、多彩な音色とフレーズを繰り出すギターのプレイが一際目立つ。
そしてリズム・セクション。
特にドラムスは、ネオ・プログレッシヴ・ロック系のグループには珍しく、リズム・キープにとどまらない多彩なプレイを力強く聴かせる。
こまめにシンバルを鳴らす打撃技が CAMEL のアンディ・ウォードを思い出させる。
ヴォーカルは情感の迸る「泣き」のメロディを強調しているが、あわいトラッド風の響きが、いわゆるポンプ調のべたべたしたセンチメンタリズムを払拭している。
そして、きらびやかでめくるめく展開を支えるのは、音色の積み上げに対する基本的な配慮だろう。
ゴージャスな音色は、このグループの個性といってもいいくらい特徴的である。
そして、もう一つの特徴は、熱情たっぷりのメロディ/切なさの塊のような表情を駆使した英国風のシンフォニック・サウンドのように見えて、そのベースに民俗色の強い歌があることである。
素朴な歌に豪華絢爛な衣装を巧みに纏わせているところが、ユニークな味わいを生んでいると思う。
それは GENESIS がもっていた英国の哀愁と通じる、ポーランドの翳りといってもいい。
このエキゾチックな要素を維持するのかしないのか、興味あるところだ。
作曲はギル/ザドコフスキのコンビによる。
ヴォーカルはポーランド語。
巻き舌の重々しい語感がカッコいい。
プロデュースはザドコフスキ。
ドラムスがよいとポンプでも断然よくなってくる。
「Jeszcze Jeden Dzien(あと一日あれば)」(4:10)IQ のカヴァーではないかと思うほどのソックリさんチューン。
キャッチーなテーマはスティーヴ・ハケットのソロ作にもありそうだ。
パワフルにして緻密なパーカッションが冴える。
「Jaity(あなたと僕)」(3:20)シアトリカルなヴォーカルと変拍子のなめらかなギター・リフがいかにもポンプ。
しかし、スピーディにして安定したドラムスが曲を引き締める。
ヴォーカルは、エキゾチックな節回しがおもしろい。
キーボードは、短いスペースをファンタジックな音でしっかり埋めている。
メランコリックなメイン・ヴァースから視界が開けるように転調し、ギターが歌いだす瞬間に陶酔。
「Kolysanka(ララバイ)」(4:30)同郷の ABRAXAS とよく似たロマンティックなナンバー。
アイドル歌謡風に訴えかける表情は、大のおとながやると気味が悪いが、声に若い甘さがある分オーケー。
フィードバックも用いたロング・サスティンのギター・プレイのお里は、やはり「Firth Of Fifth」と HM だろうか。
ライル・メイズ風の"ホイッスル"シンセサイザーが美しい。
「Basine(妖精伝説)」(10:00)ギター、キーボードが華やかに舞いドラムスが走るオープニングがカッコいい。
80 年代型エレポップ/ハードポップ風に快調に飛ばす演奏で目立つのは、朗々と泣くギターと軽やかなタッチで流れるシンセサイザー。
大作だけあって、中盤にファンタジックで緩やかな演奏をはさんで変化をつけている。
「Danej, Danej(遠く、遠く)」(7:00)ゆったりしたヴォーカル、ギターを弾けるリズムが支える典型的なポンプ・ロック。
特にシンセサイザーのリフはいかにも。
ここでもドラムスのよさが際立つ。
「Stare Sciezki」(6:45)白玉シンセサイザーと泣きのギター、そしてシアトリカルなヴォーカルをフィーチュア。
メロディアスなメイン・パートと中盤の走りの落差はかなりカッコいい。
ギターががんばる。
「Fragmenty(断章)」(4:28)スティーヴ・ハケットのソロ作を思わせる快速シンフォニック・ロック。
ギターもキーボードも楽しそうに弾きまくる。
ライヴが目に浮かびます。
ただしこれ以上軽くなると困る。
「Rozmowa(対話)」(4:45)リズム・チェンジを駆使するバラード風のナンバー。
ギター・リフがめまぐるしくリズムを変化させる。
かなり凝っているが、表面上はあくまでもメロディアス。
ややフォーク風のメロディ・ラインも見られる。
卓越したドラムスとエモーショナルなギターによるメロディアス・ロックの傑作。
確かにカヴァー的な面もあるが、原語の生むエキゾチズムとナチュラルな流れ、そして躍動感ある演奏はロック・ファンの心を素直につかむ。
シンプルなメロディ、美麗なハーモニーにもかかわらず、借り物ではない頑固な音への思い入れが感じられてうれしい。
わたしは決してポンプ好きではないですが、それでも痺れる瞬間がたくさんありました。
年寄りに分かりやすい派手さなのかもしれない。
今聴くとやや音が古めかしい。
(IS-CD-002)
Robert Amirian | vocals, acoustic guitar |
Krzystof Palczewski | keyboards |
Piotr Mintay Witkowski | bass |
Mirek Gil | guitars |
Wojtek Szadkowski | drums, percussion |
94 年発表の第三作「Moonshine」。
ジョン・レノンのカヴァー作品集を経て、英語圏への進出を果たした作品。
前作から、ギターのギルとドラムスのザドコフスキ以外は全メンバーが交代。
内容は、ゴージャスなサウンドで迫る耽美華麗なメロディアス・ロック。
もともとポンプ・ロック特有の切なく華麗に訴えかけるスタイルだったものが、プロダクションのおかげかさらにスケールアップし、豪華絢爛な音のロックとなっている。
キーボードを軸とした華美なサウンドがナチュラルな泣きのギターをかき消さんばかりに響き渡るが、最初のド派手なイメージは意外なほど続かない。
音量・音質の変化やストーリーの起伏、曲の性格付けは果断で明快であり、エレクトリックなワーグナー調管弦楽の音にかき消されないほどギターとヴォーカルの「歌」がしっかりと聴こえてくる。
本質的な楽曲のよさはサウンド面でのデフォルメにも微塵も揺るがないという自信が現れているように思う。
往年の大御所グループを思わせる大作でもその堂々たる語り口には自信がみなぎっている。
ポーランドの MARILLION というイメージは確かにあるが、スタイルというよりはブリティッシュ・ロックの王道を走るということが共通するというべきだろう。
音やメロディそのものに衒奇な歪みはなく、気持ちのいいメロディとロマンティックなサウンドに素直にひたることができる。
最大の特徴は、耽美で粘性の高い音なのになぜか思い切りオプティミスティックでポジティヴなところである。
原語から英語へと切り換わったヴォーカルも英国本流的と思わせる大きな要因の一つである。
もろに 80 年代ポップスのスタイル、すなわちサイモン・ル・ボンやローランド・オーザヴァルに聴こえてしまうところもある。
(余談だがかつて、オーザヴァルもピーター・ゲイブリエルに似過ぎと酷評されていたことを思い出した)
ともあれ、英国ロックの伝統をみごとに継承したドラマティックな内容には違いない。
演奏そのものはすでに本家のポンプ系のグループを追い抜いていると思う。
いや、もはやそういうフィールドのグループと比較するまでもない。
個人的には、こういう音が流行るかどうかとは全く別の観点で、いいたいこと、やりたいことをチャンスを使って思い切りやっているという潔さに感動です。
「Heroes Cry」(6:41)
80 年代的な演奏の向こうに、プログレッシヴ・ロックへとダイレクトに通じる叙情性や心意気が見える力作。
メロディアスなヴォーカルが力強く美しい。
後半のシンセサイザー、ギター、ドラムスのせめぎあうような演奏は、オープニングに相応しい迫力だ。
ドラマが凝縮されている。
「In Your Eyes」(14:04)
圧倒的なストリングスの響きからピアノ伴奏のリリカルなヴォーカル・パートへと落ち込む瞬間の、えもいわれぬスリルと心地よさ。
改めて CAMEL に近しいセンスを感じる。
エモーショナルにしてヒネリのあるメロディ・ライン。
そして再び駆け上り、ギターのメロディが重なってくる迫力。
正統ポンプ節の炸裂に息を呑む。
その後もアンサンブルは凄まじいまでの音圧で迫り、凝ったメロディを歌い上げるヴォーカルと対比しつつ、ドラマチックに展開する。
もっとも、ストーリーを味わうよりは、瞬間瞬間の音の迸りに身をゆだねる方が、気持ちいいかもしれない。
切ないギター、クラシカルなキーボードを中心に次々に繰り出される豪華な音に眼も眩む 14 分あまりの大作。
ただし中盤以降ちょっとだれる。
ヴォーカルは DURAN DURAN 入ってます。
「Lovely Day」(5:11)
美しいピアノのイントロから軽やかにうねるアコースティック・ギターの調べで進む AOR 調のバラード。
中間部からは再びゴージャスなシンセサイザーが高鳴りギターも派手に泣きまくるが、それでも前二曲に比べるとぐっと曲調は軽く爽やかである。
エンディングの華麗なストリングスは、すでに次曲のイントロへとつながっている。
TEARS FOR FEARS にもありそうなナンバーだ。
「Living In The Moonlight」(4:43)。
ヴォーカルとギターがリードするセンチメンタルなバラード。
いかにも英国 80 年代風のメロディ・ラインであり、演奏トータルでは IQ に最も近いイメージである。
ギターはゆったりとうねるようなプレイで「泣き」のメロディを響かせる。
シンセサイザーは、ストリングス系の伴奏とホイッスル風のオブリガートが印象的。
密やかな表情で悩ましげに歌うヴォーカルが主役だろう。
凝った展開やアンサンブルではなく、ごくストレートに思いを解き放つ歌である。
「The Blues」(7:17)
劇的な変化がまぶしいネオ・プログレ王道の佳曲。
冒頭、仰々しいギター、シンセサイザーの変拍子リフで若さ爆発、大上段に振りかぶるも、次第にメロディアスな泣きが加わり、ヴォーカルが登場すればすっかりバラード調である。
切実に苦悩を訴えるヴォーカルと静かに寄り添う器楽。パーカッションのロールだけが強烈だ。
ここまで、コテコテな落差でわりと「読める」展開だが、ブレイクを経てストリングスが突入してきてからの展開がカッコいい。
シンセサイザーとギターが丁々発止のやりとりをスピーディに繰り広げ、勇ましいソロで疾走する。
IQ の「Sleepless Incidentale」を思わせる展開だ。
「Wings In The Night」(11:12)
夢想的なシーンが次々と続いてゆく華美メロディアス・チューン。
アコースティック・ギターとリコーダー風のシンセサイザーによる密やかな序章、ささやくようなヴォーカルを風のようなストリングスが取り巻き、柔らかなシンセサイザーがさえずる。
ギターに導かれて、ヴォーカルは切々と語る。
オブリガートのギターも切ない。
テンポ・アップとともに、スリルは高まり、民族楽器風のシンセサイザーとギターのやり取りから、切羽詰ったような表情のヴォーカルへ。
すっかり演奏も歌も加熱するが、ピアノとともに一瞬沈み、再びメロディアスな歌いこみが始まる。
ヴォーカルを支えるのは、なめらかなギターと深いストリングスの調べ。
曲調は再び軽やかに、アグレッシヴに変化するも、また沈みこみ、次の高まりは朗々たるギターがとらえる。
ギターは、ヴォーカルとともに切なくも甘く歌い上げる。
細かくヴィヴラートするギターは、シンセサイザーと交歓しつつ、しなやかに歌う。
ドラムスも細かく打撃を切り換えてアンサンブルを盛り上げる。
トムトムのようなパーカッションとシンセサイザー、ギターによるポリリズミックで幻惑的な演奏をブリッジに、再びギターが高鳴り、シンセサイザーが追かける。
エンディングは、なかなかユーモラスだ。
最初から最後まで、とにかく思いのたけを放出し捲くっている感じです。
「Moonshine」(12:50)
ニューウェーヴ・ポップス風のスリリングな大作。
変拍子をたっぷり取り入れた複雑なアンサンブルを駆使しながらも、美しく劇的に迫る。
ドラムスの派手な打撃によるピックアップ、重厚なストリングスの高まりは、スリリングな 7 拍子のリフへと発展する。
きらめくギター。
タイトな 8 ビートのメイン・パートは、抑え目のヴォーカルがアグレッシヴな表情で挑みかかる。
シンセサイザー・ストリングスによるオブリガートがとにかく大仰である。
サビを経て、リズムを外すようなパーカッション系キーボードとギターによるユーモラスなオブリガートがはさまれる。
この演奏はおもしろい。
間奏部でも、ギターとキーボードがオーケストラ・ヒットや深いディレイも交えながら、スリリングに発展してゆく。
ユーモラスなアンサンブルやブレイクを大胆に挿入しながらも、再び重厚な演奏へと帰ってゆく。
演奏は巧みに表情を変えながら進む。
泡立つようにモアレを成すアコースティック・ギター・デュオ、そして変拍子アンサンブルとヴォーカルが攻めと守りを切り換えながら、突き進んでゆく。
ヘヴィなパワーコードが轟き、ヴォーカルがアジる。かと思えば、頼りなげな表情で切々と売ったかけてくる。
ふと気づけば、ストリングスが厳かにざわめき、ヴォーカルは何かを思い出したかのように静々と語り、そして高らかに想いを投げかける。
ギターがリードするシュアーなアンサンブルは、あたかも迷いを捨てて真っ直ぐな想いを取り戻したかのようだ。
きらびやかなシンセサイザーの調べは、祝福か喜悦か。
幸福感あふれるエンディングである。
「War Is Over」(5:28)
フェード・インするアコースティック・ギターの調べは、前曲の再現か。
ほのかなエキゾチズム漂う、アメリカン・フォークまたはオルタナティヴ・ロック風の作品である。
マンドリン、アコースティック・ギター、ピアノは歌唱と一体となって生の営みを力強く訴え、エレキギターとシンセサイザーが天の祝福のように降り注ぐ。
素朴なアコーディオンの調べが深い味わいを生む小品である。
華麗にして目まぐるしい展開に圧倒され、きらめくシンセサイザーの洪水と迸るメロディにおぼれそうになる耽美派ロック。
豪華絢爛さは第一作でも感じられたが、本作品ではさらにスケール・アップしている。
ヴォーカルがあまりに切々と思いの丈を訴えかけるために続けて聴くと少し疲れるが、針を落とした途端に別世界を感じさせるパワーという点では、稀有の作品である。
当初は、めくるめくシンセサイザー・サウンドの奔流に目が回るが、それに慣れると、今度はギターのメロディの説得力に感じ入るようになる。
このアルバムの「派手さ」は、まずびっくりさせて世界に惹き込むという効果と派手さの向うにある何かに気づかせるという二つの効果を備えているようだ。
2、6、7 曲目の大作は、あふれ出る音に身を委ねることはできるが、やや冗漫で分かりにくいところがあるのも確か。
その一方で、1 曲目のようなコンパクトな楽曲の完成度は相当なものである。
とりあえず本作品では、大作を練り込むために楽譜を抱えて呻吟するよりも、ギターと歌とドラムスでドーンと一発勝負といったスタンスの方が結果としてカッコいい音になっていると思う。
音質的には、もう少しアコースティックな音があった方が、より深みと味わいが出たよう気がする。
また、個人的には、原語のエキゾチックな響きを失ったところも残念だ。(したがって、最終曲は逆にうれしい)
いろいろ言ったが、この時代にこれだけのヴォリュームの内容をこれだけのクオリティで届けてくれるグループがいまだにあるとは驚きである。
やはり目は世界に広げておくべきだと再認識した。
ロマンあふれるゴージャス・メロディアス・ロックの最右翼。
ポンプ・ロックなる言辞のニュアンスをくつがえすサウンドだ。
(APCY-8249)
Jarek Wajk, Jarek Majka | vocals | Tomek Rozycki | vocals |
Zbyszek Bieniak | vocals | Mirek Gil | guitars |
Jurek Barczuk | guitars | Ania Milewska | keyboards |
Pawet Zajaczkowski | keyboards | Jacek Korzeniowski | keyboards |
Krzysztof Palczewski | keyboards | Przemek Zawadzki | bass |
Piotr Mintay Witkowski | acoustic guitar | Wojtek Szadkowski | drums, percussion |
guest: | |||
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Wiesia Pottorak | viola |
95 年発表の第四作「Changes」。
結成以来の未発表曲やアルバム未収録曲、アウト・テイクを集めた作品。
93 年に発表されたポーランド語版「Zmiany」の英訳版である。
主に第一作に収録された作品の元曲含め 80 年代のテイクは、やはり MARILLION そのもののようなアレンジだが、豪華でエコーを目一杯効かせたサウンドと強力なドラムスは変っていない。
第二作のイメージでゆくと、やはりヴォーカルはポーランド語の方がいいようだ。
英語になることによって完全に個性は消えている。
またセカンド・アルバム収録曲は、ヴォーカル(80 年代のオリジナルメンバーで 92 年に一旦復帰した Jarek Wajk)が違うせいか、かなり地味である。
しかしアレンジ自体は華美になり過ぎていない分、音の分離がよく聴きやすいと思う。
さらに未発表曲。
全般にヴォーカルが弱いが演奏自体はかなり面白い。
特に「Just Like Heaven」は完全に IQ である。
タイトル・ナンバーでもある「Zmiany」はほぼファーストのラインナップでの録音だが、何故アルバムから漏れたのか不思議なくらいタイトでスリリングな佳曲。
さらに各曲も見てゆきたい。
(AMS 001 R)
Robert Amirian | vocals, acoustic guitar |
Mirek Gil | guitars |
Krzysztof Palczewski | keyboards |
Wojtek Szadkowski | drums, percussion |
Piotr Mintay Witkowski | bass |
guest: | |
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Krzystof Garbalinski | 12 strings guitars |
Kamila kaminska | backing vocals |
95 年発表の第五作「Safe」。
前作ほどの大作はなくなったが、トータル 71 分という収録時間はまさに物量作戦。
オープニングの華麗なるストリングスで圧倒され、エレガントなピアノ・ソロへの落差で失神しそうになる。
COLLAGE ワールドは健在だ。
メロディアスでロマンティックな少女漫画路線は堅持されているが、いくつか新しい面もある。
一つは、「Moonshine」と比べるとキーボードの音使いはぐっと引き締められ、全体に明確さと暖かみを兼ね備えたサウンドになっていること。
ヴォーカルと器楽のバランスがいいのだ。
ギターもハケット、ロザリー調の歌い上げは基本としつつも JADIS のゲイリー・チャンドラーを思わせる歯切れのよさと光沢が魅力に加わっている。
ファンタジックの究極ともいえるすべてを呑み込むゴージャス・サウンドから、より明確でドライヴ感を重視した音づくりへと移っているといえるだろう。
イントロダクションを経た 2 曲目の印象はずばり「ブリティッシュ・ロック」である。
近年の IQ を華やかにしたようなイメージといってもいい。
ピアノやシンセサイザーの美しさがぐっと凝縮されて密度が高まっており、強調されたビートと共存することで、サウンドに研ぎ澄まされたタッチが加わった。
やや放埓な感もあった前作をしっかり反省しているところがすごい。
そしてこれだけ美麗にしてメロディアスながらも、HR/HM 的なところが皆無であり、むしろコンテンポラリーな英国ロック調なのもおみごとである。
サウンド・プロダクションだけではないセンスのよさを感じる。
結果的には最後のアルバムになってしまったが、最高傑作を残したことになる。
ヴォーカルは英語。
英国風であるとともに、なぜかかつての R.E.M など、アメリカのカレッジ・チャートをにぎわせるグループとも共通点を感じる。
6 曲目「Eight Kisses」ではギターが激情を迸らせる。
各曲も鑑賞の予定。
若さの迸りが今となってはまぶしいばかりだ。
「The Winter Song」(2:28)
「This Time」(8:15)冒頭一分半でリスナーを蕩けさせる熟達の技。稼げます。いや、もうちょっと引っ張った方が稼げるかな。
「Cages Of The Mind I」(0:44)
「Cages Of The Mind II」(6:09)
「Stranded」(6:29)
「Eight Kisses」(10:07)
「One Of Their Kind」(5:52)
「Safe」(7:28)ピアノが支えるロマンティックなバラード。
「The Chanting」(8:07)
「Made Again」(6:30)
「Cages Of The Mind III」(6:14)
「I Will Be There」(2:33)
(AMS 003 R)
Mirek Gil | electric & acoustic guitar, lead vocals on 12, backing vocals on 9 |
Olaf Lapczynski | lead & backing vocals, acoustic guitar on 7 |
Krzysztof Palczewski | keyboards |
Wlodek Tafel | drums |
Piotr Mintay Witkowski | bass, backing vocals on 9, whistlig on 5 |
guest: | |
---|---|
Agim Dzelijiliji | oriental keyboards solo on 2, keyboards arrangement ideas on 1,2,3,4,6 |
Piotr Iwicki | percussion on 4 |
Gosia Koscielniak | angel sounds in 7,10 |
98 年発表のアルバム「Alone」。
COLLAGE 解散後、ギタリストのミレク・ギル氏が 旧 COLLAGE の一部のメンバーと結成した新ユニット、MR.GIL による作品である。(2010 年現在、すでに別グループ BELIEVE を結成し、活動中)
内容は、とろけそうに甘美なメロディ・ラインとゆったりと優美なサウンドに包まれたシンフォニックな歌ものである。
キーボードを活かした管弦楽風のサウンドと繊細ながらも一人芝居系入れ込みヴォーカルが、馴染みやすいメロディを中心に自然にとけあい、感傷的かつ自閉気味ではあるが、穏やかな世界を描き出している。
80 年代英国のアイドルのようなカマトト風のヴォーカルに慣れれば、誰もが耳を傾ける気持ちになれる音である。
うつむき加減の内向的なたたずまいには、PINK FLOYD の影もちらつく。
そして、デリケートでメロディアスな作風を主にしつつ、バンドとしてのグルーヴもキープしているところが他の MARILLION クローンに大きな水をあけている所以であり、それは CAMEL のセンスをしっかりと引き継いでいることと同意である。
滴るようなピアノの調べがあるかと思えば、バンド・アンサンブルが、やや安っぽくなることはあるが、シンバルのさざめきとともに軽やかに疾走する。
キーボードは、アコースティック・ピアノはもちろん、シンセサイザーでも、木管楽器に近いニュアンスをうまく引き出したり、深みと広がりのある弦楽奏風のサウンドでアンサンブルをゆったりすくい上げるなど、演奏の映像的、色彩的な印象を決定付けている。
楽曲では、華やかに舞うギターとともにオリエンタルなメロディ・ラインを用いるなどさまざなま変化を織り込んで綴る 9 曲目「Enough」がいい。
8 曲目「Mother Dream」は、木管楽器風の音を活かしたクラシカルなインストゥルメンタル。気品とロマンチシズムの絶妙の均衡。
ポップな AOR 調になっても、控えめの歌唱を美しいサウンド・カラーが取り巻き、いつの間にかシンフォニックなファンタジーの世界が広がっている。
個人的に、この辺の音がなぜ 80 年代初頭のキッチュな英国系サウンドには近づいても 70 年代後半のジャジーで洒落たポップ・サウンドに迫らないのかを不思議に思うことが多い。
おそらく、その傾向は R&B の洗礼をどのくらい受けているかというところで決まってくるのだろう。
ヒップホップ以外で R&B をグルーヴの基底として受け止めているグループが現れるとうれしい。
ヴォーカルは英語。PENDRAGON のファンにはお薦め。
「Strange」(6:17)
「I Don't Believe」(3:44)
「Alone」(6:38)
「Wake Up」(6:41)
「Beggar」(3:14)
「Set Me Free」(3:20)
「War」(3:52)
「Mother Dream」(4:09)
「Enough」(8:43)
「Stay」(3:49)
「New Day」(5:19)
「Free」(1:19)
(AMS 015 R)