イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「BELLA BAND」。 ARTIS レーベルに一作のみ作品を残す。 一部メンバーは、現在もフリー・ジャズ・シーンで活動する。
Riccardo Cioni | clavinet, fender piano, omni arp, arp2600 |
Roberto Buoni | flute, sax, electric clarinet, |
Luigi Fiorentino | guitar |
Mauro Sarti | drums |
Tonino Camiscioni | bass |
78 年発表のアルバム「Bella Band」。
内容は、典型的なジャズロック。
つまり、刻みまくる変拍子リズム・セクションに支えられて管楽器、キーボード、ギターがソロとインタープレイを繰り広げるスタイル、RETURN TO FOREVER が産み落としイギリスをはじめヨーロッパへと拡散したあのスタイルである。
跳ねるようなリズム、リフやテクニカルなユニゾンなど典型的なジャズロックのプレイを披露しつつも、本領は美しくレガートなフレージングで発揮している。
特に、ギターやサックスがテクニカルにアグレッシヴに攻めたてるプレイのみならず、歌心を感じさせるファンタジックなプレイを見せるところがユニーク。
キーボードは、エレクトリック・ピアノ、クラヴィネット、シンセサイザー。
リズミカルなクラヴィネットのプレイと効果音風の多彩なシンセサイザーの音が印象的だ。
ギターは、ソロではゴリゴリの速弾きだが、アルペジオでバッキングを始めると途端にリリカルな表情を見せ始める。
ピックではなくクラシック・ギターのように指で演奏しているところもあるようだ。
そして、キーボードとギターがかなりの音数で刻み込むようなプレイで迫るのに対して、管楽器はメロディアスなフレーズを悠々たるレガートで決めてゆく。
管楽器にフリー・ジャズっぽさ(コルトレーン風というべきか)があると、SOFT MACHINE 風に聴こえることが多いが、本作の管楽器奏者はウェイン・ショーター風の軽快でメローな表現を得意とするようだ。
音質も明るく豊かである。
そして、ラテン風のメロディでいきなり俗っぽくなるのではなく、常にクラシカルな味わいをキープしているのもいい。
ロングトーンのユニゾンに現れるみずみずしく豊かな表情は、ARTI E MESTIERI に通じている。
エフェクトを多用するキーボードとギターのおかげで若干ギトギトした音になっているところもあるが、そこは管楽器のアコースティックな響きでうまくバランスを取っている。
この豊麗明朗にして涼しげな表情は、地中海ジャズロックならではの味わいなのだろう。
各演者は、かなりのテクニシャンながらも技巧を軽やかなグルーヴと歌心に昇華してアピールしている。
しかつめらしさはなく、さりげなく決めるところが粋だしカッコいい。
カンタベリーほどには権謀術数的サウンドではなく、もっとすなおに RETURN TO FOREVER 的世界への憧れを表明する内容である、ともいえる。
収録時間が短いのが残念。
「Fairadiesis(復讐)」(6:45)
「Promenade(プロムナード)」(10:45)
「Porotopostrippa Sul Pero(宇宙の展開)」(8:50)
「Cipresso Violento(糸杉の猛攻)」(5:20)
(522 565-2 / KICP 7045)