イギリスのジャズロック・グループ「BOB DOWNES OPEN MUSIC」。 68 年結成。リーダーは孤高の管楽器奏者ボブ・ダウンズ。 フリー・ジャズやロックを巻き込んだ実験的かつグルーヴィな演奏を得意とする。 現役。
Bob Downes | alto sax, alto & bamboo flute, sax mouthpieces, tam-tam | ||||
Harry Miller | double bass, bass on 2-7 | Dennis Smith | tam-tam on 1, drums | ||
John Stevens | drums | Chris Spedding | guitars | ||
John Warren | baritone sax on 1 | Jim Gregory | flute on 1 | ||
Clive Stevens | tenor sax on 1 | Derek Hogg | timpani, vibraphone, tam-tam, finger cymbals on 1 | ||
Chris Pine | trombone on 1 | Butch Hudsone | trumpet on 1 | ||
Henry Lowther | trumpet on 1 | Nigel Carter | trumpet on 1 |
69 年発表のアルバム「Open Music」。
ボブ・ダウンズのソロ第一作であり、事実上の BOB DOWNES OPEN MUSIC の第一作である。
内容は、フルートをフィーチュアしたフリー・ミュージック、いや、自由な開放端の発想の音という意味で「オープン・ミュージック」というべきか。
クラシックの調和感とそれを否定する現代音楽らしい厳しさや険しさがある一方で、フリージャズ特有のごり押し感は少なく、即興主体のぶっ飛んだ内容にもかかわらずわりと心地よく聴き流していける。
このアクセスのし易さは、繊細な音色と表現を得意とするフルートという楽器の特性によるのだろう。
突発的かつ脈動的な表現に向いた打楽器とのコンビネーションもいい。
トリオ編成でのフルート・ソロには印象派を越えて、東洋的、雅楽的なデリカシーや神秘性、無常感のニュアンスもある。
アンビエントなセンスは早くもニューエイジ・ミュージックを予見しているかのようだ。
なんでもありの 60 年代にふさわしい内容だ。
LP 片面を占める一曲目の大作は、叙景的でイマジネーションをいくらでも膨らますことのできる名演。
「ペールギュント」や「ピーターと狼」のような物語を音に置き換えたクラシック作品と同じ感覚がある。
全編インストゥルメンタル。
プロデュースは、ウェンディ・ベンカ。
「Dream Journey:A Score For The Blind Sight By The Ballet Rambert」(21:59)
「Birth Of A Forest」(5:25)抽象的な印象の高い音が出せるフルートならではの作品。バッハもフリージャズも JADE WARRIOR もこの地平では同等。
「Integration」(0:23)
「Contract」(0:45)
「Ghosts In Space 」(8:14)集団即興。ドカドカドカブーピー。
「Desert Haze」(4:55)
「Electric City」 (6:28)次作の方向性を示す泥臭いジャズロック。スペディングも全開。
(SBL 7922 / ECLEC 2189)
Bob Downes | flute, alto & tenor sax, woodwind, vocals | ||
Don Faye | baritone sax | Daryl Runswick | bass |
Harry Miller | bass | Herbie Flowers | bass |
Robin Jones | congas | Alan Rushton | drums |
Clem Cattini | drums | Dennis Smith | drums |
Bud Parks | flugelhorn, trumpet | Harry Beckett | flugelhorn, trumpet |
Ian Carr | flugelhorn, trumpet | Kenny Wheeler | trumpet |
Nigel Carter | trumpet | Chris Spedding | guitars |
Ray Russell | guitars |
70 年発表のアルバム「Electric City」。
内容は、ビッグバンド・ジャズと R&B、JEFF BECK GROUP、FACES 風のハードなブルーズ・ロックを無造作かつオシャレにつなげた痛快なジャズロック。
フリーキーなフルートを筆頭とするリリカルかつパンチも効いた管楽器群、ノイジーなギター・リフ、大胆なベース・ライン、堅実なドラミングが一体化し、ブルージーなダルさとソウルな黒っぽさではち切れそうな愛すべき超 B 級作品である。
腰の入ったリズム・セクションの上でゴージャスなブラス・セクションをフル回転させる派手でグラマラスな作風は、百花繚乱の 70 年代初頭にあってもその尖り具合で目を惹いたと思う。
あたかも黒人アクション映画のサントラのようであり、スリリングにしてグルーヴィで、どことなくいかがわしい感じもある。
カリプソもあり。
サックス、フルートを操るダウンズ以外のプレイヤーで目立っているのは、なんといってもギターのクリス・スペディング。
ワイルドなコード・カッティングのほかはさほど自己主張しないが、そのバッキングで演奏の四隅を押さえて引き締めている。
エレクトリック・ベースも音量負けしないように積極的に出てくる。
また、ダウンズのヴォーカルは素人の手遊びとは思えない本格的なもの。
鼻にかかった甘くてしゃがれたテナー・ヴォイスは、英国ロック・ヴォーカリストの王道である。(我が敬愛するギャリー・ピックフォード・ホプキンズを思わせるところも!)
前作に続き英国ジャズメンが多数参加して、頓狂なアプローチの作品にオーセンティックな厚みを与えている。
7 分あまりの最終曲は集団即興からイケイケのゴーゴー・ジャズへと進む怪作。
プロデュースは、ボブ・ダウンズ。
「No Time Like The Present」(3:00)
「Keep Off The Glass」(2:42)インストゥルメンタル。
「Don't Let Tomorrow Get You Down」 (2:54)
12 小節のブルーズ進行ながらドライで垢抜けた小品。ニューウェーヴっぽさもあるからすごい。
「Dawn Until Dawn」(4:25)インストゥルメンタル。
「Go Find Me」(2:37)熱気ムンムン。
「Walking On」(4:56)シャフル・ビートのジャジーなブギー。フラジオも交えた熱いサックスのアドリヴ。
「Crush Hour」(3:18)サスペンスフルなテーマが印象的なジャズロック。インストゥルメンタル。
「West II」(3:23)カリプソ。スチールドラムがないのが惜しい。インストゥルメンタル。
「In Your Eyes」(2:15)
「Picadilly Circles」(2:48)
「Gonna Take A Journey」(7:04)
(VERTIGO 6360 005 / KTCM-1161)
Bob Downes | concert & alto flute, Chinese bamboo flute, tenor sax, piano |
Barry Guy | double bass |
Jeff Clyne | double bass |
Denis Smith | drums, percussion |
Laurie Baker | EMS VCS3 synthesizer |
72 年発表のアルバム「Diversions」。
内容は、東洋風のエキゾティックな響きとエネルギッシュな即興が特徴的な超越系ジャズロック。
ダブル・ベース(特にアルコ)に新鮮な存在感あり。
第一作と比べるとジャズ、ロック指向が明確にある。
巨大な伽藍が崩れ落ちるような即興の応酬でも、フリージャズや現代音楽とは違う、なめらかなベクトルを感じさせるところがある。
雅楽を思わせるストイックでニヒリスティックな作品や薄暗くスペイシーなジャーマン・ロック的世界(最初期 TANGERINE DREAM か)すなわち音響空間を意識させる作品もあるが、躍動するビートとエネルギッシュなリード・プレイによるアンサンブルのカッコよさには敵わない。
こればかりはわたしがロック育ちなのでどうしようもない。
そういうところでは、完全にブリティッシュ・ロックといっていい作風になっている。
また、JADE WARRIOR と同じくニューエイジ・ミュージックの先取りのような表現も散見される。
いろいろな意味でダウンズ氏は先見の明のある尖鋭的なセンスの持ち主なのでしょう。
ところでフルートとアルコ・ベースとくれば個人的には完全に CRIMSON の「Islands」なわけですが、まさにその通りです。
最終曲では、アグレッシヴなヴォイス・パフォーマンスや早野凡平ばりの「吹き歌い」も披露する。
プロデュースは、ダウンズとウェンディ・ベンカ。
「Spanish Plain」(8:59)
「Naked Forest」(4:38)
「The Dream」(4:10)
「Sea Shore」(6:08)
「Seventh Wave」(11:11)
「Samurai」(3:32)
「Requiem」(3:46)
「Maya」(5:27)
(BDOM 001 / CDSML 8434)