元祖ワールド・ミュージック・ロック・グループ「JADE WARRIOR」。 68 年結成。 サウンドはデビューの VERTIGO 時代から一貫するエキゾチックな音を取り入れたサイケデリック・ロック。 80 年代後半、中心人物のトニー・デューイを亡くすも唯一のオリジナル・メンバー、ジョン・フィールドが新メンバーとともに現役を続ける。 グループ名は「サムライ」の意。 2008 年グリン・ハヴァードが復帰した新譜「Now」を発表。 なぜか分かりませんが、個人的にこのグループはとても相性がいいです。
Tony Duhig | guitars |
Jon Field | percussion, flutes |
Glyn Havard | bass, vocals |
71 年発表の第一作「Jade Warrior」。
サイケデリック・ロックにオリエンタル、アフロなどのワールド・ミュージック的要素をいち早くとり入れたデビュー作。
ファズ・ギターがけたたましく轟くアンダー・グラウンドなヘヴィ・ロックにさまざまなパーカッションとフルートを散りばめてエキゾチックなメロディを綴る、きわめてユニークな作風である。
何より、冷ややかで幻惑的なその雰囲気がすばらしい。
残響音が深くこだまするアコースティック・ナンバーは、荒野を吹き抜ける風のような寒々しさからもの静かな達観の憂いまでさまざまな情感を秘め、想像力を刺激する。
そして、非日常の最たるエキゾチズムを極めつつも、ブリティッシュ・ロックらしいユーモアや脱力感をもつところもおもしろい。
多国籍性は次第に無国籍性へと変容し、遂には、完全に架空の世界の BGM のような呪術的かつ摩訶不思議なものへと到達する。
アイデンティティを求めてさ迷う旅人の哀れが注ぎ込まれたサウンドにはいい知れぬ無常感と静かな諦念が見える。
このなんとも言葉すら失うような瞬間に自己を成り立たせるために「東洋の騎士道」へと則ろうと考えたに違いない。
後のニューエイジ・ミュージックと異なるのは、ムード優先のエピキュリアン的ヒーリング・サウンドではないところ。
あくまでロックらしい反骨心と運動能力を持っている。
時おり見せるストレートなジャズ、ブルーズ・ロックのプレイでは、各メンバーとも見事な腕前を見せている。
パーカッションの空ろな響きとフルートの透き通るような音色、かき鳴らされるギターがおりなす隙間だらけのサウンドがスピリチュアルな世界へと誘う。
これだけ音が薄いのにちゃんとうねりのあるロックになっているところがすごい。
プロデュースはグループ。
LINE の CD はリマスター時のミスで左右のチャネルが反対になっているところがあるそうです。
BACKGROUND 版では修正されているとのこと。
「The Traveller」(2:40)MARK-ALMOND かと思わせるメランコリックなシティ・ジャズをファズ・ギターの雄たけびとコンガの響きが一変させる。
ふとまどろんだ時に見たアフリカの夢である。
眠りを誘うようなフルートをフィーチュア。
「A Prenormal Day At Brighton」(2:45)JETHRO TULL ばりのブルージーなヘヴィ・ロック。もちろんフルートが活躍。
「Masai Morning」(6:44)序盤はフルートと各種パーカッションによるフリー・フォームの演奏。タイトル通り、アフリカの平野の夜明けを思わせる音だ。
ファズ・ギターの投入とともにシニカルなヴォーカルも参加して、アフロなヘヴィ・ロックへ。ドラムス不在でパーカッション主導なのでロックなビート感はなく、あくまでアフリカンなノリ。tだし、細かなビートとともに音が集中して高揚する感じが凄い。
TOKENS 風のスキャットのハーモニーもあり。
パーカッションを大きく取り上げたサイケデリックな作品である。三部構成。
「Wind Weaver」(3:43)アコースティック・ギターのストロークが入ると気だるく幻想的なフォーク・ソングになる。ファズ・ギターのアクセントはここでも強烈。
ISLAND 時代の作風を予言している。ジャジーなギターやスライドも現れて、ギタリストのなかなかの力量を示す。
もちろんメロディアスなフルートも。
「Dragonfly Day」(7:45)ギターがざわめく、初期 KING CRIMSON 的な幻想空間、いやこの味わいはこの時代の英国ロックに共通するのかもしれない。
かき鳴らされるギターの和音とともに歌うヴォーカルには無常感があふれ出る。
安定したビートが現れると、フルートによる朗々と歌うようなソロ。
ヴォーカルは気だるさを解いて少し力を入れるとかなりの美声であることが分かる。
ゆったりとしたワウ・ギターとフルートによるおだやかなアンサンブル。
ギターが気まぐれにする自己主張、フルートの支えによって次第に流れができてくると、終章に入り、序盤の幻想空間が再現される。
プログレッシヴなスタイルを前面に出した作品だ。
三部構成。
「Petuna」(4:46)音程のあるパーカッションを使ったブルーズ・ロック。ギターもブルーズ・スケールでワイルドに迫る。パーカッション以外はオーソドックス。
「Telephone Girl」(4:54)独特のパーカッションを活かしたハードロック。ギターこそなかなか饒舌で水準以上だが、これまたパーカッション以外はわりとオーソドックスなスタイル。
「Psychiatric Sergeant」(3:08)
「Slow Ride」(2:36)
「Sundial Song」(5:08)
(LICD 9.00548 O)
Tony Duhig | guitars |
Glyn Havard | bass, vocals |
Jon Field | percussion, congas, flute |
guest: | |
---|---|
Dave Conners | tenor & alto sax, flute |
Allan Price | drums |
72 年発表の第二作「Released」。
ドラムスとサックスをゲストに迎え、さらに豊穣にパワー・アップしたエスニック・ロックを繰り広げる好作品。
ドラムス参加によってダイナミックなリズムを得、さらにサックスとギター、フルートのユニゾンによるメロディ・パートも厚くなり、演奏にパワーがみなぎっている。
リフでドライヴする力強い演奏に第一作で見せた独特のエスニック・ビートとサイケデリックな音色がからみあった音楽は「エスニック・ハードロック」とでも称すべきものである。
そして、この演奏スタイルの中心となるのは、縦横無尽に駆け巡るデューイのサイケデリック・ギターだ。
1 曲目は、パーカッションやサックスが SANTANA を思わせるラテン風味たっぷりのハードロック。
パーカッションの生み出す荒々しくもきめ細かいビートがすばらしく気持ちいい。
フルートが激しく舞う作品ではラテン版 JETHRO TULL のようなイメージも出てくる。
またハードなサウンドの出現とともバラード・ナンバーの味わいもくっきりと浮かび上がり、リリカルなギター、フルートが深い味わいの音を出している。
4 曲目のようなジャズ・テイストは、いかにもこの時代のブリティッシュ・ロックらしいプログレッシヴなアプローチだ。
そして 7 曲目の大作は、ヒプノティックなパーカッションのビートでギターとサックス、フルートが奔放に跳ね回る永遠のエスノ・サイケ・ロック。
前作の薄墨のようなエスニック・トーンをやや変化させ、タイトで強烈なビート感を強調したサイケデリック・ハードロックの傑作。
もやもやっと晦渋な独特の雰囲気に、酸味の利いた「サイケデリック・ロック」と普通の「ハードロック」という明快な属性が放り込まれることで、ポップな取り付きやすさを生むことに成功している。
フルートの存在感も大きい。
個人的にはベストです。
アメリカでもかなりヒットしたようです。
プロデュースはグループ。
LP、CD ともにジャケットはオリジナル LP に付属していたポスターの一部拡大のようです。「放たれた矢」。放ったのは鵺退治の源頼政。
「Three-Horned Dragon King」(6:09)
パーカッション、ヘヴィなギター・リフ、サックスをフィーチュアしたラテン・テイスト濃厚なハードロック。
「Eyes On You」(3:05)フルートをフィーチュアした JETHRO TULL 風のハードロック。
シンプルなリフが特徴的。
イタリアン・ロック風のヘヴィ・チューンである。
「Bride of Summer」(3:19)リコーダーのようにさえずるフルート、アコースティック・ギターが穏やかに伴奏する、夢見るような弾き語りバラード。
後半のチクチクしたファズを効かせたエレキギターも現れるが、アタックのない管楽器のようなロングトーンで非現実味を醸し出す。
「Water Curtain Cave」(6:28)フルート、サックスをフィーチュアしたクールな 8 分の 6 拍子のジャズロック。
ジャズとロックのラウンジ・ミュージック的属性を束ねたあの 70 年代初頭の英国ロックの一潮流に則った作風である。
中間部は静謐で幻想的、かつエキゾチックなイメージの即興演奏。
インストゥルメンタル。
「Minnamoto's Dream」(5:30)リフ一発の勢いでドライヴするグラマラスなハードロック。
ワイルドなギターが粘っこいアドリヴで暴れ回る。
終盤に向けてグングンとテンションが上がる。
それにしてもものすごいタイトルです。
「We Have Reason To Believe」(3:50)WHO か KINKS のようなヘヴィかつシンプルなロックンロール。
管楽器セクションとエレクトリック・ギターのユニゾンの相性の良さを再確認できる。
「Barazinbar」(15:00)パーカッションを多用した催眠術のような作品。
終盤のクライマックスに向けて長い坂道を登ってゆく。
本来のこのグループらしさの出た作品であり、後にも続いてゆく作風である。
インストゥルメンタル。
「Yellow Eyes」(2:51)フルート、アコースティック・ギター伴奏による、けだるいバラード。
ぼんやりと霞んだ世界ではあるが、ヴォーカルだけはしっかり目が覚めているような気がする。
(LICD 9.00550 O)
Tony Duhig | guitars, bass |
Glyn Havard | bass, acoustic guitar, vocals |
Jon Field | concert & alto flute, acoustic guitar, percussion, congas, tabula, talking drums, piano |
guest: | |
---|---|
David Duhig | guitars |
Allan Price | drums |
72 年発表の第三作「Last Autumn's Dream」。
グループ名通り「サムライ」の姿が描かれた、和洋折衷の奇妙なジャケットが印象的な作品。
トニー・デューイの弟デヴィッドがギタリストとしてゲスト参加している。
デューイ兄弟による切れのいいファズ・ギターは本作の売りの一つだ。
サウンドは、前二作が折衷されるもやや第一作寄りに戻ったようなエキゾチックなもの。
第一作と同じ謎めいた空気にほんのりセンチメンタルな情感を漂わせる作風に、第二作のエスニック・ヘヴィロック色がアクセントとして加えられている。
コンガやタブラの音が漂いフルートが舞うアコースティックな音世界には、現世からの隔絶された独特の清潔感がありスピリチュアルなムードにあふれている。
尺八のような音で空気を静かに切り裂くフルートの響きには、西欧世界とはかけ離れてわれわれ日本人に縁深いものがある。
ワイルドに吠え立てるような調子もあるが、際立つのはやはり「音の隙間」であり、独特の「静けさ」である。
音楽的な多彩さは目を見張るものがあり、7 曲目のようなエスニックでゆったりとした調子がシャープなジャズ/ロックに切り換わってゆくような「しかけ」も怠りない。
5 曲目も KING CRIMSON の「Sailor's Tale」に迫るラウドにして叙情的なギター・ロックである。
また、エンディング・ナンバーは 3 分弱の小品だが、ジョージ・マーティン風のストリングスをフィーチュアしたスケールの大きなインストゥルメンタルである。
フルートをフィーチュアしたアコースティックな作品に数年早いニューエイジ的なフィーリングがあるのも興味深いところだ。
最初期のアンビエント・ミュージックともいえるだろう。
全体に、アヴァンギャルドな編曲にもかかわらずポップ・フィーリングのある雰囲気のよくできた好アルバムです。
本作に続いて「Eclipse」、「Fifth Element」(元々両者を合わせて二枚組となる予定であった) が録音されるもテストプレスに留まり(一部の作品は 79 年のアンソロジー「Reflections」で発表される)、アメリカでの活動にも失敗したグループは一旦解散する。
したがって本作が VERTIGO レーベルからの最後の作品となった。
プロデュースはグループ。
ジャケット・アートは、ハギオ・クニオという日本の方のようだ。(ちなみにこの方はアメリカのマイナー・バンド、PENTWATER の唯一作のジャケットも手懸けている)
「A Winter's Tale」(5:06)SSW 風の密やかな弾き語り。
悠然とした存在感のあるリード・ヴォーカル。
フルートやギターがエコーとともに虚空に音を穿つ。
サビの明朗なノリはイタリアン SSW つまりカンタゥトーレ風。
「Snake」(2:55)牙を噛み合わせるように轟音を放つファズ・ベースと R&B 的なヴォーカルとクールなフルートが隙間だらけの三位一体をなすハードロック。
ギターのアクセントも強烈。
サイケデリック・ロックにジャジーなタッチという、このグループ以外にあり得ない作風だ。
「Dark River」(6:26)尺八を思わせるアルト・フルートの(おそらく)即興演奏。
鼓動のようなビートとさざなみのようなディレイにおぼれる。
カリンバらしき謎めいたリフレインにハーモニクスとタブラがオーヴァーラップし、フルートが飄然と漂う。
音階打楽器特有のプリミティヴにして奥深い人影の見えない世界である。
終盤はシュアーなドラム・ビートにパーカッションが交差する、トライバルな逞しさとサイケデリックな酩酊感が交錯する展開となる。
インストゥルメンタル。
こういう作品を A 面の中心にどんと据える辺りがチャレンジング。時代はプログレッシヴ・ロックのものだった。ジェイミー・ミューアと同質の感性か。
「Joanne」(2:50)ファンキーでグルーヴィなパプ・ロック。
一気に人里に帰ってきてまずはバーに飛び込み、一杯ひっかけている感じとなる。
ソウルフルなヴォーカルと派手なエフェクトで音を歪ませたけたたましいギターがカッコいい。
このこなれた感じ、普通にロックしても十分いけることを示している。
「Obedience」(3:12)
二本のけたたましく歪んだギターがトーキングドラムのビートとともに共鳴しあって波打つようなアンサンブルとなる。
音は荒々しくヘヴィだがしなやかで調和感がある。
数年早かったニューエイジ・ミュージックといった趣だ。
ヘヴィ・ディストーション・サウンドでのコード・ストロークやループを使ったプレイ・スタイルなどギタリストのセンスはロバート・フリップに通じる。
インストゥルメンタル。
「Morning Hymn」(3:36)牧歌調のアコースティックなフォーク作品。
つつましく控えめな朗唱、そしてタイトル通りに恭しい感じもあり。
伴奏は竪琴のようなアコースティック・ギターと暖かみのあるおだやかなフルート。
フルートはオブリガートがいい。
典雅にしてほのぼの。
「May Queen」(5:22)
タブラをフィーチュアした気まぐれアシッド・フォークとグルーヴィなラテン・ジャズロックの二部構成。
ギターをフィーチュアしている。
この曲もメイン・ヴォーカルのクールなセンスが冴えわたり、けばけばしいギターがカッコいい。
デヴィッド・デューイの参加は当たったようだ。
ギターは、ディストーションを強くかけたリード・ギターとナチュラルに歪ませてアルペジオを奏でるサイド・ギターの二つ。
ブレイク後 2 分あたりで一気にラテン・ジャズ色が強まって雰囲気は一変する。
フルートも MARK ALMOND のような AOR、シティ・ポップス路線でジャジーに決める。
ファズ・ギターも懸命にジャズ寄りで迫り、キレのいいグルーヴィなアンサンブルとなる。
「The Demon Trucker」(2:34)
THREE DOG NIGHT のような陽性の歌もの R&B。
黒っぽさ全開のソウル・ミュージック。
パーカッションの効き、フルート、バッキングのけたたましいギターは変わらず。
「Lady Of The Lake」(3:17)メロディアスだが幻想的な弾き語り。
漂うような調子と諦観。東洋趣味あり。
アタックを殺したトーンによるギターのオブリガートがいい。
「Borne On The Solar Wind」(3:02)前曲のムードをそのまま持ち込んだインストゥルメンタル。
ストリングスを主役にギターが荒々しくも感傷的な響きの和音でツッコミを入れてくる。
ロマンティック。名残を惜しむような終曲らしい余韻を残す。
(LICD 9.00563 O)
Tony Duhig | guitars |
Glyn Havard | bass, vocals |
Jon Field | flute, percussion |
David Duhig | guitars |
Allan Price | drums |
98 年発表の作品「Eclipse」。
「Last Autumn's Dream」に続いて録音され、73 年に VERTIGO レーベルより LP 二枚組として発表される予定であった作品は、諸般の事情で二枚の LP に分割されることになった上に結局お蔵入りとなってしまった。
本作品は分割された一枚目であり、1998 年にようやく発掘、発表された。
前三作よりも、多彩な作風のそれぞれの方向に味が深まったというか、リリカルな作品はより底知れぬ深みに澱み、ポップなところでは二重人格的な弾け方を見せ、ブルージーでへヴィな作品ではギターが思い切り咆哮してハードロック調も板についている。
さまざまな方向に大きく振れる曲想の中で一番印象的なのは、冷ややかなまでにクールなバラード調である。
そしてフルートが全編でさまざまな形でフィーチュアされている。
これらは最初期から保ち続けられている特徴だ。
パーカッションが大いに幅を利かせるところもあるが、痛快な迫力よりもけたたましさが鼻につく。
効果という点では難しいところだ。
アコースティック・ギターやフルートが最も魅力を放つのは、サイケデリックなシーンとアフロ/ラテン・ミュージックの「フュージョン」の文脈である。
打ち沈んだリリシズムは、思い切ってアンビエントな GENTLE GIANT 風といってもさほど違和感はない。
ひょっとするとスパイラル VERTIGO のレーベル・カラーというのはこの辺りにあるのだろうか。
本作品の一部は 79 年発表の編集盤「Reflections」に収録されていた。
「English Morning」(4:21)サイケで重めの MARK ALMOND といった感じのブリティッシュ・ロック。
「Sanga」(4:01)スペイシーでアシッドなフルートとパーカッションのクールなアンサンブルにギトギトなギターが乱入する武骨なジャズロック。インストゥルメンタル。
サイケデリック・ムーブメントとニューエイジがつながっていることを再認識させられる。
「Too Many Heroes」(4:41)ギターが唸りを上げるアグレッシヴなハードロック。
サビがバルカローレ、民謡風。フルートが入るので JETHRO TULL になってしまう。
無暗な攻撃性は KING CRIMSON にも通じる。
「Song For A Soldier」(6:05)アナーキーなアジテーションを繰り広げる前衛的なサイケ R&B チューン。
パーカッションをフィーチュアしたフリーパートに自信を感じる。
70 年代初期に多い「アブナイ」作風だ。初期の EAST OF EDEN とか。
「Maenga Sketch」(8:35)ギターが活躍するブルースロック時代の FLEETWOOD MAC を思わせる前半から二つのフルートがさえずるジャジーでこのグループらしいアンビエントな空気感に満ちた中盤へ、そしてパーカッションの鳴り響くアフロなヘヴィ・ロックから SANTANA 風のシャープで粘っこいエンディングへと突っ込む。
ハードなロックを捻りに捻ったプログレッシヴ大作。
「Holy Roller」(3:24)シャフル・ビートでアシッドなギターが吼えるラウドなロックンロール。オルガン、ストリングス不在をカバーするように奥行きをつけるトレモロ風のフルートが独特だ。
「House Of Dreams」(8:08)ブルージーなスローバラードと呪術的な不気味さ、宗教的な厳かさを合体させたマジカルな作品。
思えば、無常なる世界と人生を憂う心地が人を神へといざなうのだから、これはごく自然なブレンドなのかもしれない。
このグループの特徴がよく出た作風である。
(AUCD 1021)
Tony Duhig | guitars |
Glyn Havard | bass, vocals |
Jon Field | flute, woodwind, percussion |
David Duhig | guitars |
Allan Price | drums |
98 年発表の作品「Fifth Element」。
73 年録音。
「Eclipse」と対を成す作品であり、同じく 98 年に発掘された。
内容は、「Last Autumn's Dream」よりも「Released」に近く、アフロ、ラテンなどエキゾティックな音を巧みに散りばめながらも、ポップで多彩な作風を披露している。
思い切りアメリカを意識したパンチのあるファンキー・チューンや英国滋味あふれるデリケートなフォーク・ロックもあり。
しかし本領は、エスニックなサイケデリック・タッチであり、ギターとフルート、ドラムスが空ろに響いたり変拍子でたたみかける場面に、クールなヴォーカルが交わるところに魅力が凝縮されている。
後に所属する ISLAND レーベルでの孤高のアンビエント・テイストとは若干方向性が異なるところが興味深い。
やや発散気味ではあるが、薄墨を流したような空ろな動きとその反響のような作品には変わらぬ魅力あり。
管楽器をギターで巧みにキーボード的なサウンドを作って、独特の雰囲気の構築に役立てている。
アルバム・タイトルは錬金術にいう水・火・土・風に続く宇宙を統べる第五の要素のこと。20 年くらい前にリュック・ベンソンの同タイトルのすげえ変な SF 映画がありましたね。
「On The Mountain Of Fruit」(5:12)フルートやキーボードのような音のギターが奏でるエキゾティックなインストゥルメンタル。
「Discotechnique」(2:43)サイケなギターが暴れるヘヴィ・チューン。間奏部の変拍子がスリリング。
「Hey Rainy Day」(4:12)二つのギターが綾なすハーモニーの上でエフェクトされたベースらしき調べが静に歌うエキゾティックな作品。
空ろなヴォーカルが加わってメランコリックな調子になると完全に英国ロック王道にいることが分かる。ファズ・ギターのオブリガートの説得力もすばらしい。
ヘヴィ・サイケのままフュージョンに近づいてしまった感じ。
「We Are The One」(4:27)映画音楽調のゆったりとした歌もの。
ノスタルジックな響きあり。
サイケなファズ・ギターのアクセントが強烈。
「24 Hour Movie」(5:02)ヘヴィでグラマラスなロックンロール。エキゾティックなパーカッションで彩る。
「Annie」(4:04)ハワイかカリブ海か、アーサー・ライマン的な涼風が心地よいフォークソング風のラヴ・バラード。
「Yam Jam」(3:50)パーカッションとファズ・ギターとフルートらによる沸き立つようなラテン・ミュージック。
「Have You Ever」(6:00)大きい振り幅を見せるドラマティックなハードロック作品。ギター・プレイ満載。
(HBG 123/10)
Jon Field | gaelic harp, gong, glockelspiel, vibes, alto & concerto & japanese fulte |
conga, bell tree, african talking drum, cello, piano, organ, acoustic guitar | |
Tony Duhig | electric & acoustic guitar, bass, piano, glockelspiel, organ, vibes |
guest: | |
---|---|
Coldridge Goode | string bass on 2 |
Chris Carran | drums on 1,2 |
Graham Deacon | drums on 4 |
David Duhig | guitar on 8 |
Skaila Kanga | harp on 9 |
Martha Mdenge | spoken words on 10 |
74 年発表の第四作「Floating World」。
74 年にフィールドとデューイによってグループは再編、ISLAND レーベルへと移る。
その第一作の内容は、ほぼ前作の路線の踏襲であるエスニック・ロック。
空ろなフルートを中心とした薄墨を流したようなアンビエントなサウンドに、突如けたたましいサイケ・ギターが突き刺さる、美しくも謎めいた世界である。
ぼんやりとした音の霞の向こうから、胸に迫る美しい旋律が湧き上がる不思議さは、このグループならでは。
その旋律がなんとも形容し難いものであり、強いていうならばハワイアンやアフロだが、どこでもない場所で鳴り響くメロディなのかもしれないと思った方がこのグループらしい。
BGM 化しないのは、ビートやリズムに対するセンスのおかげであり、実際ヴァイブやコンガなどパーカッション系の音を非常に巧みに用いている。
そして、ジャジーでグルーヴィな演奏やヘヴィ・ロックも難なくこなす。
(7 曲目のセンスのいいジャズ・ボッサなど)
かき鳴らされるアコースティック・ギターとともにストラヴィンスキーを思わせるフルートのテーマが流れ始める頃には、すっかりこの音の世界の虜となっているはず。
個性という意味では、完全に孤高の境地。
サイケデリック・エラの生き残りであり、70 年代終盤から湧き起こるニューエイジ・ミュージック・ブームの完全な先取りである。
FRIPP & ENO とではどちらが先だったのか。
ジョン・フィールドという人がどのような音楽的なバックグラウンドをもつのか、全く想像がつきません。
エンディングはリヒャルト・シュトラウスの名曲をアレンジ。
印象的なジャケットは、富士山に腰かけた侍が近代化した日本を眺めている様子のようです。
プロデュースは、フィールドとデューイ。
「Clouds」(2:52)
「Mountain Of Fruits And Flowers」(3:16)
「Waterfall」(5:38)
「Red Lotus」(4:31)
「Clouds」(1:25)
「Rainflower」(2:44)
「Easty」(5:23)
「Monkey Chant」(2:24)
「Memories Of A Distant Sea」(5:07)傑作。
「Quba」(2:44)
(ILPS 9290 / CRNCD8/524 139-2)
Jon Field | percussion, flute |
Tony Duhig | guitars, percussion |
guest: | |
---|---|
Steve Winwood | Moog, piano |
David Duhig | guitar |
Graham Morgan | drums |
Maggie Thomas | alto recorder |
Suzi | vocals(Whale theme) |
75 年発表の第五作「Waves」。
ISLAND レーベルからの第二作目。
タイトル作 1 曲のみという大胆な構成だが、演奏はオムニバス形式に小さい楽章のようなものに分かれているので、今までの作品と何ら違いなく聴くことができる。
アンビエントなサウンド・スケープにヘヴィ・サイケ・ギターやジャズなど大胆な演奏をからめる作風にも大きな変化はない。
ただし、ジャケットからイメージされるようなオリエンタルなエキゾチズムはさほど現れず、静かで穏やかな、いわゆる「ニューエイジ」風味が基調である。
フィールドによるデリケートなフルート(メロトロンに近い味わいあり)と竪琴のようなギターは、微風にまかせて揺れ動くような絶妙のニュアンスを見せている。
その柔らかくさざめく流れの表面をかき乱すように、あたかもブラスのように(オクターヴァだろうか)深くこだまするファズ・ギターのアクセントもいい感じだ。
スティーヴ・ウィンウッドのピアノやウッドベースによるジャジーな演奏が、奇妙な揺らぎをもって感じられるのは、誰もいないはずの場所へいきなり人間が現れたせいだろう。
ここでも、フルートの鮮やかな舞を初め、演奏はキレのあるみごとなものだ。
2 曲目中盤では、ウィンウッドのムーグ・ソロをフィーチュアしたファンクっぽい展開もあるが、これが実は、その後の透明感あふれるフルートを際立たせるアテ馬だったりする。
そのフルートに導かれて悠然と広がってゆく終盤は、なかなか感動的だ。
さて、オープニングとエンディングには不思議な電子処理を施された音が、深海から立ち上る巨大な気泡のように、轟々と湧き上がってくる。
クレジットから想像するに、おそらくこれが鯨の歌なのだろう。
プロデュースは、フィールドとデューイ。
エンジニアは、盟友トム・ニューマン。
ジャケットは前作同系のジャポネスク路線だが、北斎の波の向こうには摩天楼が霞んでいる。
ISLAND レーベルのアンソロジー「Elements」では、Part 1 が約 30 秒、Part 2 が約 1 分短く編集されている。
「Waves Part 1」(19:14)
「Waves Part 2」(23:32)
(ILPS 9318 / CRNCD8/524 139-2)
Jon Field | All instruments |
Tony Duhig | All instruments |
guest: | |
---|---|
Brass section | |
String section |
76 年発表の第六作「Kites」。
ISLAND レーベルからの第三作目。
管絃を大きくフィーチュアした前半 5 曲は、ジョン・フィールド・サイドと称し、「空の王国」にまつわる組曲を構成する。
フィールドのフルートを弦楽やエレクトリック・キーボードが支え、アンビエントかつシンフォニックな独特の神秘の世界への旅になっている。
クラシックの管弦楽ではあまり聴くことのできない大胆な管弦、打楽器の音の使い方がおもしろい。
内省的というよりも謎めいたというべきフルートの静謐なる調べに加えて、エスニックな音もどんどん放り込み、現代音楽風の過激な展開を繰り広げつつ、人智を越えた異世界の物語を描いている。
スペイシーなワールド・ミュージックといってしまうには、わななくようなギターによるサイケデリック・テイスト、エレクトリック・ピアノのアドリヴによるジャジーな展開など音楽はあまりに奔放に広がりを見せる。
モダン・ジャズを超えた、ソウル・ジャズ、ラテン・ジャズのようなノリもあり、ハービー・マン風のイージー・リスニング調もある。
幽玄な広がりと深みのある音を使いながらも、音楽的にはわりと汗臭さも強い。
この辺りがおもしろいところだ。何にせよ、この前半の内容は、このグループの VERTIGO 以来のスタイルを発展させたかなり個性的なものだと思う。
一方後半は、SAMURAI サイドと称し、トニー・デューイの嗜好である武士道や禅を織り込んだ、得意の「薄暗い霞みのような」アンビエント・ミュージック。
こちらは比較的従来の路線の堅持であり、思い切って「洋風雅楽」といってしまっていい内容だ。
音の薄さに思わずステレオのヴォリュームをあげるかもしれない。
自然の中の動きや流れといったものは時に衝撃的であり時に密やかである、というテーゼだろうか、音もその通りに、自発性を持ち、衝撃的かつ神秘である。
人間的な脈絡は、一切無視されているような気がする。
和音中心のエレクトリック・ギターの使い方は、かなり独創的である。
この後半でも弦楽が活かされており、ヴァイオリン奏者としてフレッド・フリス、ジョー・オドネルといった著名ミュージシャンらのサポートも仰いでいる。
プロデュースは、フィールドとデューイ。
エンジニアは、盟友トム・ニューマン。
雰囲気のよくできた傑作といえるでしょう。76 年でこの内容は、かなりの前衛ロックといえる。
「Songs Of The Forest」(3:33)
「Wind Song」(3:22)
「The Emperor Kite」(2:16)
「Wind Borne」(7:36)エスノ・ジャズロック。
「Kite Song」(2:19)
「Land Of The Warrior」(3:26)
「Quietly By The Riverbank」(4:36)
「Arrival Of The Emperor "What Does The Venerable Sir Do?" 」(2:28)
「Teh Ch'eng "Do You Understand This?"」(1:06)
「Arrival Of Chia Shan: Discourse And Liberation 」(0:53)
「Towards The Mountains」(2:03)
「The Last Question」(2:36)
(ILPS 9393 / CRNCD8/524 139-2)
Jon Field | All instruments | Tony Duhig | All instruments |
guest: | |||
---|---|---|---|
John Dentith | drums on 1,7 | Graham Morgan | drums on 8 |
Bill Smith | bass on 7 | Skalia Kanga | harp on 2 |
Godfrey Alan | bass on 5, conga on 5 | Gowan Turnbull | sax on 7 |
Dick Cuthell | flugenhorn on 1 |
78 年発表の第七作「Way Of The Sun」。
作風に若干の変化が現われる。
アンビエントな音遣いは生かしているが、前作までの緊張感ある描写的な表現よりも、開放的でビート感のあるリラックスした表現が増えている。
東洋的な美と神秘を超えた、より普遍的な世界へと進み始めたようだ。
放埓さのない抑制の行き届いた姿勢(武士道!)を改め、音楽的な必然性にしたがってより自然に音を積み上げたオーケストラルでシンフォニックな作風も顕著である。(マイク・オールドフィールドとの交流による影響か)
大胆なアシッド・ジャズはこれまでの流れでありとして、タイトル曲のようなラテン、ファンク・ロック調のグルーヴもふんだんにある。(というか、マジで SUN RA へのオマージュか?)
また、波打つようなアフロ・パーカッションやドラムスの力強い響きを聴いていると、ピーター・ガブリエルはじつはこの音を参考にしてソロ作を生み出したのではないだろうか、という思いが強くなる。
「演奏」が音楽の中心にある、メロディアスな聴きやすさという意味で重要な作品だ。
プロデュースは、フィールドとデューイ。
ISLAND レーベルでの最終作。
SUN RA というのは少し頭のおかしいミュージシャン(怒るなかれ、ほとんどのミュージシャンはおかしな奴である故)の名前として人口に膾炙しているが、Sun が英語の「太陽」で Ra が古代エジプトの「太陽神」のことらしいので、そもそも重言じみたおかしな表現である。
ここで語られる Sun Ra は、本作の物語の主人公であるエジプト人の名前と思っておいたほうがよさそうだ。
ジャケットもジャパネスク路線からアフリカ、アメリカ古代文明へと移り変わっている。
「Sun Ra」(3:29)ダイナミックなオーケストラ風の作品。
「Sun Child 」(2:43)その続編。
「Moontears」(4:05)フルート、アコースティック・ギター、オクターヴァのようなエフェクトのギターらによるジャジーで清潔感のあるこのグループらしいテイストの作品。
「Heaven Stone」(5:23)
「Way Of The Sun」(5:53)
「River Song」(5:02)
「Carnival」(2:17)ジャズロック。
「Dance Of The Sun」(4:53)
「Death Of Ra」(7:14)「アランフェス」の第二楽章を思わせる美しくも悲劇的なエンディング。ブルージーなギターが思いの丈をぶちまける。
(ILPS 9552 / CRNCD8/524 139-2)
Jon Field | flutes, electric wind instrument, percussion, keyboards |
Colin Henson | electric & acoustic & MIDI guitar, keyboards |
Dave Sturt | Fretless bass, percussion, keyboards |
92 年発表のアルバム「Breathing The Storm」。
内容は、透明感漂う優美なフルートとキーボードを中心に繰り広げられる、包容力あるニューエイジ・サウンド。
神秘的なヴォカリーズと竪琴のような MIDI ギター、そして、すべてを包み込むようなシンセサイザーが織り成す幻想世界に、管楽器のふくよかなメロディが響き渡る。
オーケストラのようなスケール感をもちながら、オーケストラにはない描き方で、浮かび漂うような、深くかそけく緩やかな世界が描かれている。
むしろ、きわめて自然に抑制された音空間という点で、バッハや現代音楽の無伴奏器楽作品から運動性と緊張感を取り除いたような感じである。
フレットレス・ベースの心地よい律動には、ジャズ・フュージョン・テイストもあリ、雄大なシンセサイザーと美しいロングトーン・ギターのコンビネーションは、シンフォニック・ロック的な高まりも生み出している。
まどろみを誘うギターのロングトーンには、ロバート・フリップ氏のソロ作品を重ねることもできる。
そして、特筆すべきは、管楽器担当のジョン・フィールドのみごとな表現力だろう。
なめらかに歌うような調子と空ろにしてまろみを帯びた音色には、いわくいい難い魅力がある。
全体に、エレクトリックな音でさえ楽器の生音の響きから出発したものというイメージを醸し出しており、その点に、トム・ニューマンやマイク・オールドフィールドらとともに立つ、元祖ニューエイジ組らしさが現れている。
サイケデリックなワールド・ミュージック路線の追求から、現代的なヒーリング・サウンドの境地へと到達した作品。
凡百のヒーリング・ミュージックにないこの独特の味わいを、ロックというバックボーンをしっかりと携えてきたキャリアに帰するのは、うがち過ぎだろうか。
なお、本作品は、急逝したトニー・デューイに捧げられている。
各曲も鑑賞予定。
「Gaia」(3:41)
「Breathing The Storm」(7:03)ロバート・フリップ的なギター表現をストレートなニューエイジ・サウンドで支える。
「Over Ice and Water」(6:30)
「Gift Of Wings」(2:33)
「Songs Of the Air」(2:23)
「Memory Of the Deep」(10:09)
「Reflecting Stars」(3:01)
「Asa No Kiri」(4:39)
「Circle of Wisdom」(8:40)
(CDR 105)
Jon Field | flutes, EWI, congas | Colin Henson | guitars |
Dave Sturt | Fretless bass | ||
guest: | |||
---|---|---|---|
David Cross | electric violin | Andy Aitchison | electric violin |
Gowan Turnbell | bass clarinet | Theo Travis | soprano & tenor sax |
John Evans | Flugel horn | Carol Bellingham | choir |
Tracy Bauckham | choir | Glenda Fish | choir |
Christie Williams | choir | Tom Newman | choir |
Russel Roberts | drums | Carol Bellingham | solo voice, snake choir |
Chris Ingham | keyboards | Rikki & Eduardo | percussion (WACKOPACKO) |
93 年発表のアルバム「Distant Echoes」。
内容は、エキゾティック(ややラテン寄り)かつサイケデリックかつジャジーなニューエイジ・ミュージック。
もっとも、「ニューエイジ」というキーワードは、このグループの音楽性に世間が追いついてできた言葉なので、失礼を覚悟で使わねばならない。
つまり、20 年以上経っても、基本路線に変更はないのである。
前作よりも、抑制を解き放つようなリラックスした感じのダイナミズムがあり、メロディアスなフルートを主役にした清潔感のあるサウンドによる、神秘的ながらも多彩な曲調を楽しめる。
つまり、前作で見せた NHK 好みの「自然のアルバム」路線も維持しつつ、よりリズムとエレキギターを強調し、今風の音には欠かせないフュージョン・タッチも現れている。
したがって、おだやかな「癒し系」ながらも溌剌としたエネルギーが感じられる。
演奏は、主としてフルート、ギターがリード、管弦楽器がアクセントをつける。
グルーヴィなビートの源泉は、フレットレス・ベースと細やかな打撃を見せるドラムス。
初期から変わらない、キーボードを使いすぎないところが、このグループの音楽の独自性を支えていると思う。
スキャットを除いて全曲インストゥルメンタル。
レーベル・メイトである元 KING CRIMSON のデヴィッド・クロスがゲスト参加、要所で特徴的なエレクトリック・ヴァイオリンを奏でている。
ADIEMUS と比べると、こちらは格段にプログレッシヴ・ロック。
傑作。
1 曲目「Evocation」(1:46)70 年代初期から変わらない個性的な作風を大胆に提示する鮮やかなオープニング。
KING CRIMSON そのもののようなデヴィッド・クロスがカッコいい。
2 曲目「Into The Sunlight」(8:01)ラテン・ポップス調の華やかなジャズロック。
何気なく 7 拍子。
グルーヴィでバランスの取れた演奏に、フルートによるブリッジなどこのグループらしさを存分に出したひねりを効かせている。
クールなフルートはもちろんのこと、アラン・ホールズワースを意識したようななめらかなギターもみごとです。
3 曲目「Calling The Wind」(4:39)
4 曲目「Snake Goddes」(4:11)
5 曲目「Timeless Journey」(3:26)
6 曲目「Night Of The Shamen」(7:35)NHK で使ってました。
7 曲目「Standing Stone」(6:11)
8 曲目「Village Dance」(6:47)
9 曲目「Spirits Of The Water」(7:15)堂々とドラマを閉じる風格ある終曲。CAMEL や B.J.H にも同名の作品がありました。
(CDR 106)