アメリカのドラマー「Billy Cobham」。44 年生まれ。 マイルス・ディヴィスのセッション、MAHAVISHNU ORCHESTRA で頭角を現す。 元祖超絶手数王にして稀代のメロディ・メイカー。 ソロでも秀作を発表。
Billy Cobham | percussion | ||
Tommy Bolin | guitars | Jan Hammer | acoustic & electric piano, Moog synth |
Lee Sklar | bass | Joe Farrell | flute, soprano & alto sax |
Jimmy Owens | flugelhorn, trumpet | John Tropea | guitar |
Ron Carter | acoustic bass | Ray Barretto | congas |
73 年発表のアルバム「Spectrum」。
内容は、超越的爆撃系ドラムスとギラギラとエキセントリックなエレクトリック・キーボードを中心としたアグレッシヴなジャズロック。
ただでさえ酸味で息詰まる過激な演奏に、トミー・ボーリンのヘヴィなギターが炎を放って暴走を燃え上がらせる。
この「キワモノ」寸前の弩迫力とすべてが地鳴りのせいで崩れ落ちてゆく寸前にあるようなスリルは他にちょっと思い当たらない。
強いていえば匹敵するのは MAHAVISHNU ORCHESTRA であり、ボーリンのリードによるロック、ブギー調が本家よりも本格的である分だけ、ロックの凶暴な不良っぽさとルーズなやんちゃさが強調されている。
いわばストリートをチェインとナイフをちらつかせながら肩をいからせてのし歩くようなジャズロックである。
ただしその歩みはラリってふらついたものでは決してなく、不気味なまでに腰が据わって沈着な、それでいていかようにも俊敏に踏み出せる達人の歩みである。
収録曲のうち 3 曲がコブハムのソロ・ドラムスによるインプロヴィゼーション掌編をイントロダクションにした組曲風の構成になっている。(4 曲目「Straus」は一曲扱い、しかしドラムスのイントロダクションはある)
5 曲目はやはり組曲構成で、イントロダクションはコブハムによるらしきソロ・ピアノ。6 曲目はエレクトリックなギミックがイントロになっている。
プロデュースはコブハム。
「Quadrant 4」(4:30)
「Searching For the Right Door / Spectrum」(6:33)
「Anxiety / Taurian Matador」(4:45)
「Straus」(9:50)
「To The Women In My Life / Le Lis」(4:00)
「Snoopy's Search / Red Baron」(7:39)
(AMCY-2856)
Billy Cobham | percussion | ||
John Abercrombie | guitars | Michael Brecker | woodwind |
Randy Brecker | trumpet, flugelhorn | Garnett Brown | trombone |
George Duke | keyboards | John Williams | bass |
Lee Pastora | percussion |
74 年発表のアルバム「Crosswinds」。
内容は、シャープな管楽器をフィーチュアしたテクニカルかつ神秘的なドラマのあるジャズロック。
物語性が強く、視覚的なイメージの広がるパフォーマンスであり、作曲、演奏ともに大変優れている。
エキゾチズムやアナーキズムといったサイケデリックな感覚が随所に感じられるところは、 MAHAVISHNU ORCHESTRA と同じ。
ソウル、ファンクの取り込みもバランス感覚がいい。
ハイパーな器楽技巧を曲に活かし切ることのできた珍しい例であり、傑作だと思う。
だからといって演奏がストーリーのなかで窮屈にしているかというとそういうこともなく、ドラムスをはじめ、ジョージ・デュークのエレクトリック・ピアノ、ブレッカー・ブラザースの管楽器などソウルフルで卓越したプレイが、じつに伸び伸びと放たれている。
アバクロがワウで暴れ始めると、思わず「CHICAGO か?」と突っ込みたくなるほど自由である。
この自由さと切ないロマンチシズムが共存できるのは、おそらく音楽のメリハリのつけ方が巧みなせいだろう。
特に、ジョージ・デュークのプレイは作曲者の意図を完璧に読み取ったものといえる。
全編インストゥルメンタル。
プロデュースはコブハムとケン・スコット。
「Spanish Moss - "A Sound Portrait"」(17:08)傑作組曲。
「Spanish Moss」(4:08)ブラス・ジャズロック。パーカッションよし。
「Savannah The Serene」(5:09)タイトルとおりの名演。トロンボーンがサバンナの夜明けを告げる。
「Storm」(2:46)電気処理された打楽器ソロ。
「Flash Flood」(5:05)ワウワウ・トランペットが冴える剛力ジャズロック。ドラムスもリミッタを解放。痛快です。
「The Pleasant Pheasant」(5:11)超重量級ドラムスが支えるファンキーなブラス・ロック。軽妙なのに音が重い。
米俵を担ぎながら軽やかにステップを踏むような演奏です。ずっとオカズ。ソロ廻し。
「Heather」(8:25)初期 WEATHER REPORT、RETURN TO FOREVER と同質のファンタジー。切ない恋の始まりというか、ひと時の別れの憂鬱というか、音楽でしか現せない心模様を現した音楽。
「Crosswind」(3:39)小粒でピリリのソウル・ジャズロック。管はもちろん、ジェフ・ベックのように不良っぽいアバクロがカッコいい。
(SD 7300 / 8122 73528-2 )
Billy Cobham | drums, timpani, piano on 6,8 | ||
John Abercrombie | guitars | Mike Brecker | flute, soprano sax, tenor sax |
Randy Brecker | trumpet, flugelhorn | Glenn Ferris | trombone |
Mike Leviev | keyboards | Alex Blake | bass |
guest: | |||
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David Earle Johnson | congas on 1,5 | Sue Evans | marimba on 1 |
Cornell Dupree | guitar on 5 |
74 年発表のアルバム「Total Eclipse」。
内容は、よりハードなタッチを強めつつ、ライトなポップス風のロマンティックさもキープするテクニカル・ジャズロック。
この硬軟というか、押し引きの呼吸が今回も絶妙である。
テクニカル・フュージョンにキャッチーなソウル、ファンク感覚を盛り込む手腕もみごと。
A 面の大作では、現代音楽風(ストラヴィンスキーあり?)のアコースティック・ピアノが大きくフィーチュアされて、クラシカルな重量感を演出する。
RETURN TO FOREVER にブレッカー兄弟が参加したような「Voyage」は、異色の作風、痛快そのもの。
アバクロは全編「マハヴィシュヌ」化が顕著。
「月」がテーマのようだが、前作ほどはトータル性は感じられず、ヴァラエティ豊かに曲が盛り込まれたカラフルなアルバムというイメージだ。
STUFF のリズム・ギターの名手コーネル・デュプリーが客演。
プロデュースはコブハムとケン・スコット。
「Solarization」(11:10)
「Solarization」
「Second Phase」
「Crescent Sun」
「Voyage」
「Solarization-Recapitulation」
「Lunarputians」(2:33)
「Total Eclipse」(5:59)フュージョンの名品。
「Bandits」(2:32)
「Moon Germs」(4:57)ファンク・チューン。デュプリーのワウ・ギター・ソロをフィーチュア。ブラスも派手。
「The Moon Ain't Made Of Green Cheese」(0:58)
「Sea Of Tranquility」(10:44)地鳴りのような豪力ドラミングとフルート、シンセサイザーのコントラスト。
「静かの海」は 69 年にアポロ 11 号が着陸したところです。ピアノはコブハム。
「Last Frontier」(5:22)ドラム・ソロ。エピローグのピアノはコブハム。
(SD 18121 / WOU 8121)