フランスのシンフォニック・ロック・ユニット「CHANCE」。 ローラン・シモネのソロ・プロジェクト。 サウンドは雄大かつファンタジックなシンフォニック・ロック。 深みのある音色に加えて、卓越した作曲力もあり、さらにはデジタル技術による現代的な演奏が生の優れたバンド・アンサンブルに肉迫していることに驚く。
Laurent Simonnet | keyboards, bass, drum, programming |
guest: | |
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Vincent Fjs | guitar on 1,2,6 |
Patrick Amar | guitar on 4,5 |
Christian Lagarde | guitar on 3 |
Jean-Luc Fabre | bass, fretless bass |
Jgor Molchanov | drums |
94 年発表の第一作「Dunes」。
内容は、エレクトリック・キーボードをフィーチュアした透明感あふれるシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。
80 年代以降のキーボード・オリエンティドな音というとニューエイジやヒーリング系といった眠気を誘うものが多いイメージを抱きがちだが、本作は、アンビエントでファンタジックななかにもしっかりとしたリズムやギターが存在感をアピールしており、バンドとしての迫力が十分にある。
ゲスト参加のギタリストが、HR/HM からジャズ・フュージョン、プログレまでなんでもこいの腕利きばかりなのが功を奏したようだ。
各プレイヤーとも、楽曲にとけ込みながらもハケットとホールズワースが合体したようなプレイを見せている。
もっとも、ギターがヘヴィに唸る場面とアンビエントかつバンクスなキーボードがふわーっと流れる場面ばかりが際立つため、楽曲がワンパターンに聴こえなくもない。
クラシカルに枯れた場面がないために、豪華なばかりの安手のファンタジーじみてしまうところもある。
しかし、エレクトリックなサウンドによるインストゥルメンタル志向の CAMEL、GENESIS 系のネオ・プログレッシヴ・ロックとしては演奏/雰囲気ともに破格の内容といえるだろう。
すべて人力ドラムスであればさらによかったと思う。
「Darkest Light」(12:54)
「Countdown」(7:35)
「Over The Sea」(10:00)
「Dunes」(7:35)
「Dream's Ghost」(6:50)
「All About Us」(10:00)
(UGU 00293)
Laurent Simonnet | keyboards, bass, drum, programming |
guest: | |
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Roine Stolt | guitar on 1,3 |
Patrice Barret | guitar on 5.1,5.2,5.3 |
Georges Pinilla | acosutic guitar on 2 |
Jean-Luc Payssan | acoustic guitar on 5.1,5.3 |
2000 年発表の第二作「Escape To Horizon」。
ゲストに四人のギタリストを迎え、前作からのグレードアップを成し遂げたシンフォニック・インストゥルメンタル大作。
オーロラのように空間を幻想色で染め上げるシンセサイザー・サウンド、エモーショナルなメロディ、ぜいたくなまでにカラフルな音色、劇的な展開など、すべてが揃った快作である。
シンフォニック・ロックも多岐にわたるが、この作品は、ニューエイジ、アンビエント系のサウンドを基調に、朗々たるメロディを歌わせる路線である。
演奏は、がっしりと演奏を支えるリズム、清涼感と豊かな厚みをもつ音で無限の広がりを意識させるシンセサイザー、詩情豊かに歌い上げるギターの三位一体が生み出すものであり、シンプルにして美しく、なおかつ胸がすくほど雄大なのだ。
そして、音の奥行きや広がりといった表現を支えるサウンド作りの完成度も高い。
ロック的なダイナミックさ、フュージョン的な心地よさ、アンビエントな抱擁感、アコースティックな繊細さなど、現代のポップ・ミュージックのよいとこ取りをしているともいえるだろう。
いわば、シンフォニック・ロックの一つの理想形である。
したがって、幅広いファンに受け入れられると思う。
ゲストの力量含め、演奏そのもののすばらしさはもちろんだが、やはりヴォーカル無しのインストゥルメンタルでこれだけ聴かせてしまう高度な構成力、作曲力をまず賞賛すべきだろう。
聴きどころは多く、遥か水平線を見渡しながら大空を飛翔するようなイメージの広がるシンフォニックなパートや、雄渾かつファンタジックなドラムレスのパート、そしてピアノが厳かに歌うアコースティックなパートまで、それぞれに想像力を刺激するものだ。
おのおのの場面展開の流れもみごとである。
非常に高級な B.G.M であるといいたいところだが、いつのまにか耳を奪い去られ無限の幻想世界へと誘われている自分に気づく。
シンフォニック・ロック・インストゥルメンタルの傑作といえるでしょう。
美しく深みのある音響世界は、ゲストのギタリストにとって最高のステージといってもいいでしょう。
個人的には、スティーヴ・ハケットと GANDALF の共演盤を思い出しました。
ロイネ・ストルトは 1、3 曲目のギター担当。
この二曲のオプティミスティックなトーンはストルト氏にぴったりです。
また、MINIMUM VITAL のペイサン氏も得意のアコースティック・ギターで最終曲に参加している。
各曲も鑑賞予定。
「Aquatic Fiction」(14:08)伸びやかなギターを大きくフィーチュアしたオプティミスティックなシンフォニック・チューン。
終われないのだけが残念。
「Ilona」(7:53)神秘的な音がオーロラのようにはりめぐらされ、ゆったりと波打つような幻想曲。リズムレス。
冒頭からしばらく繰り返される心拍のような低音は何?
「From Here To Infinity」(11:23)序盤は快調に進み、メロディアスかつ流れるようになめらかなシンセサイザーの調べとともに走るうちに、エモーションが高まり泣きのギターが迸り出る。
力作。
「The Dreaming Zone」(4:57)
「The Time Human Machine」三部構成の大作。お里は GENESIS。この作品担当のギタリストも、正統的/古典的なストラト・キャスタープレイヤーである。
「This Mystic Time」(5:18)
「Past To Present」(9:26)ムーグ・シンセサイザーらしき音が印象的。
「Bridge Of Souls」(10:39)
(MUSEA FGBG 4327.AR)