オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「CRYPTO」。 73 年結成。75 年解散。 唯一作は SCOPE と並ぶダッチ・フュージョンの逸品。
Peter Schön | grand piano, Fender Rhodes, Elka mellotron, Arp Odysey synthesizer |
Bert Devies | guitars |
Wim Dijkgraaf | bass |
Jan Nanning Van Der Hoop | drums, percussion |
75 年発表のアルバム「Crypto」。
内容は、ファンキーでテクニカルなジャズロック、ユーロ・フュージョン。
この時代のジャズロックらしく、エレクトリック・キーボードがサウンドのステージを用意し、ギターとともにテーマのリードからバッキング、ソロでも大活躍する。
ジャズロック・サウンドを代表するフェンダー・ローズからスペイシーな ARP シンセサイザーまで典型的な音を使いながらも堂々と勝負している。
またギタリストはしなやかでワイルドなロック・スピリットあふれるプレイに徹する好漢である。
ナチュラル・ディストーションが魅力的な骨太のプレイは全体がメロウな甘さに流れぬようにハードな苦味をしっかりと効かしている。
リズム・セクション含め全員無類の芸達者だと思うが、アレンジを緻密にしすぎなかったことでキャッチーなテーマとのバランスが取れて鼻につく嫌味のない、いい感じの聴き応えが生まれている。
わりとラフな製作ながらもタフな演奏力を活かしてロック・インストの肝をつかまえ、バンド全体で腰の据わったグルーヴをきっちり押し出してくる。
少しファンキーさを抑えてドリーミーなタッチを加味すれば、CAMEL に近くなるだろう(7 曲目の歌のせいかもしれないが)。
作曲は鍵盤奏者のペーター・シェーン。
プロデュースは、ヨス・ライナルズ。
「Ribatejo」(3:49)レゾナンスびんびんのシンセサイザーをフィーチュアした小品。
「Masogistic Bonus Point」(4:48)ファンキー・ビートとヒップなキメが冴える R&B 系ジャズロック。
切れのいいリズム上でころころと転がるエレクトリック・ピアノとサスティンを効かせたギターのコンビネーションが自由に遊ぶ。
初期の STEELY DAN に近い。
「Funk For Farmers」(5:24)クールでアブストラクトなファンキー・チューン。リズム主導であり、リフとオブリガートの切れは抜群。位相系エフェクトで渦を巻くシンセサイザー(メロトロンか?)がすごい。
クラブ御用達。
「My Bonnie」(6:33)カントリー・テイストの長閑なフォーク系ジャズロック。女性ヴォーカルがのりそうな作風である。キレのいいプレイなのにどこまでも演奏はまろやか。その余裕がいい。名曲。
「Gallfly/Melon Cactus」(2:17+3:03)再びファンキー・ビートとスペイシーなサウンドでエッジを効かせて迫る R&B 系ジャズロック。短いがキーボード(クラヴィネットのバッキングもいい)とギターがいい食い合いを見せる。第二部は、スピーディなスーパー・テクニカル・チューン。飛翔のイメージ。MAHAVISHNU ORCHESTRA にも聴こえる。
「Awakening」(5:56)アルペジオの緩やかな残響にたゆとうドリーミーなシティ・ポップス。序盤の器楽はアドリヴ風に展開する。
リズムの入りとともにメロウな AOR 調に。
アンディ・ラティマー風のヴォーカルあり。
「Tatus」(7:32)ギターがよく歌う、ユーロロックらしい明朗ジャズロック。
イタリアン・ポップス、いや歌謡曲風ですらある突き抜け感。後半は、よりジャジーで技巧的なアドリヴへ。伸びやかなギター・ソロがいい。
「Nova Zembla」(4:00)ピアノとハードなギターサウンドがマッチした重量感も開放感もあるブギー風ジャズロック。ギターに呼応するシンセサイザーの太いアナログ・サウンドも魅力。日本のフュージョン・ギタリストの作品のようです。佳作。
(NR 503)