メキシコのプログレッシヴ・ロック・グループ「DELIRIUM」。83 年結成。 作品はアーカイヴ含め三枚。 グループ名は「妄想」、「譫妄」の意。
Manolo Lhoman | bass |
Alberto Herr | drums |
Daniel Rivadeneyra | guitars |
Amador Ramirez | keyboards |
Alfredo Flores | violin on 1,2,4 |
85 年発表の第二作「Primer Dialogo」。
(オリジナル LP はグループ名と同名だが、97 年の CD 化の際に本タイトルがつけられた)
録音されたがお蔵入りになり後に発表される「El Teatro Del Delirio」を第一作とすると二作目となるようだ。
内容は、せわしなくも情熱的なシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。
英国で 70 年代の初頭に極められたクラシック風味のハードロックがイメージとして近い。
キーボードによるクラシカルな演奏を、ヘヴィなファズ・ギターと無闇に音数の多いリズム・セクションが支えて、ひたすらスリリングに、テンション高く迫る、あのスタイルである。
キーボード、ギターとともにベースも旋律を担い、ポリフォニックなアンサンブルを構成している。
そしてそのアンサンブルを駆動するエネルギー源が、無限のパワーを誇るドラムスである。
勇壮なテーマで全体が一つになってひた走るのが得意技だ。
荒っぽさや多少のヘタリは気にもとめずに芸術道をまい進するという点で一番近いのは、往年のイタリアン・ロックの世界である。
きわめてチープなサウンドのシンセサイザー(ギターの古いエフェクターをかけ過ぎたようなサウンドだが、味はある)のリードで攻め立てる調子になるところでは、EL&P に迫る勢いを見せ、メロディアスなテーマを中心した全体演奏では、中南米らしい素朴な熱っぽさ、ラテン色が現れてくる。
驚くべきはエフェクトされたエレクトリック・ピアノの音であり、よくまあここまで 70 年代初期のイタリアン・ロックのような音(SEMIRAMIS か?)をぶち込んでくるものだ。
その思い切りのよさに感心してしまう。
また、ヴァイオリンは田園風味を演出するが、クラシックというよりも流行のニューエイジ・ミュージック的な役割を割り当てられているように感じる。
おそらくヴォーカルがあればさらに充実した内容になったろう。
製作がよくないために全体にチープな印象がぬぐえないが、演奏そのものは同系統の ICONOCLASTA 辺りよりは安定感はある。
そして、クラシカルなシンフォニック・ロック路線を歩むのが難しかった 80 年代という時代を考慮に入れれば、大健闘である。
クラシカルだがなぜか垢抜けないところは QUATERNA REQUIEM とよく似ている。
全編インストゥルメンタル。CD は録音レベルがかなり低い。
「Armagedon」(2:50)
「Atrio De Las Animas」(5:47)
「Nocturno En Caminata」(6:13)
「Primer Dialogo」(7:13)
「Hellyet」(3:21)
「Lagrimas」(5:13)
(PCS 9913 / SMOGLESS RECORD 2012)