オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「DIFFERENCES」。75 年結成。作品は二枚。 リーダー格のキーボーディストは、後に MARYSON の後継グループ ICE に参加。
Ardie Westdijk | keyboards, backing vocals |
Aad v.d. Valk | bass pedals, harmonica, lead vocals on 6, backing vocals |
Gerard Lock | drums, percussion, backing vocals |
Arjen Westdijk | guitars, lead vocals |
82 年発表のアルバム「The Voyage」。
録音は 79 年に終わっていたそうだ。
内容は、CAMEL、GENESIS 系のライトでメロディアスなシンフォニック・ロック。
流麗で上ずった調子のフレージングと丹念なアルペジオを駆使し、ときに不器用なヘヴィさも見せるギターと、分厚くキラキラと背景を彩るキーボードをフィーチュアした、典型的なヨーロピアン・テイストのロックである。
全編をファンタジックかつロマンティックなムードが貫いている。
注目するほどテクニカルなプレイはないが、ギターもキーボードもシングル・トーンのフレーズに表情をつけて歌い上げており、楽曲の流れを丁寧に作り上げている感じが伝わってくる。
2 曲目に象徴されるように、メローでキャッチーだが安っぽくない。
これは、夢見るような雰囲気とヘヴィなタッチとの切りかえや、リズム・チェンジによる雰囲気の変化のつけ方が巧みだからであろう。
キリキリ舞いするようなアンサンブルからすっと牧歌的な雰囲気へと落ちつくところなど、まるで YES のような鮮やかさである。
また、シンプルながらも切れのいいリズム・セクションのおかげで、全体にゆったりと流れてゆくわりには小気味がよく、走る場面での快調さもいい感じだ。
そして、アコースティック 12 弦ギターのさざめくようなアルペジオによる美しい演奏もある。
英語のヴォーカル・ハーモニーには、オランダのグループらしいきわめて素朴な明るさがあり、どこまでも人懐こい。
そして、感傷を臆せずに歌い上げるところが若々しく清々しい。
器楽をリードするのは、こまめに多彩なフレーズを繰り出すギターだと思う。
このギターのレガートなフレーズがインストゥルメンタル・パートでの主役になることが多い。
全体に製作含めアマチュア風であり、ふんわりとした薄味タイプの音なので見過ごしがちだが、70 年代終盤の空気を封じ込めていること、繰り返し聴くたびに味が出てくることなどから、かなりの好作品と思う。
KAYAK のような抜群のメロディ・センスはないが、スウィートなのにメランコリックなメロディ・ラインには、オランダものらしい感傷的な魅力があふれている。
朴訥とした感じと垢抜けた感じが交錯するところは、ISOPODA に似ている。
B 面 1 曲目は、ストリングスとヴォーカル・ハーモニーが ELO を思わせるも、中盤からは、キーボードがシンフォニックに盛り上げてゆく。
B 面最後から 2 曲目は 15 分を超えるスペイシーで劇的な大作。GENESIS と PINK FLOYD のブレンドのような幻想プログレである。
スケールも大きい。
プロデュースはグループとピーター・ニーベー。
ジャケットの、宇宙に浮かぶ石像のようなロゴも、なんとなくホワイトヘッド画伯のものを連想させる。
ギタリストとキーボーディストは兄弟ですかね。
「Helix Harmony」(6:10)
「Asgarith's Song」(4:00)
「True Or False」(7:35)
「The Voyage」(6:27)
「Daily Things」(4:50)
「Battle Of Somme」(3:58)
「The Melody」(17:03)
「5 O'Clock」(2:20)
(FRIZZBEE 7)