DIVÆ

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「DIVÆ」。 94 年デビューだが源は 70 年代末にまでさかのぼるらしい。 2007 年現在作品は一枚(2004 年新作発表予定だったはず)。ツイン・キーボードを擁す。 グループ名は、「歌姫(ディーヴァ)」の意。

 Determinazione
 
Luis Dragotto Moraleda guitarEnzo Di Francesco hammond organ, synthesizer, mellotron, electric piano
Romolo Amici bassMarco Vantini acoustic & electric piano, synthesizer
Alessandro Costanzo vocalsUgo Vatini drums, percussion, keyboards
guest:
Lino Vairetti vocals on 8Gianni Leone synthesizer, hammond organ on 4
Jerry Cutillo flute on 8Sandro Cofrancesco guitar on 8
Luigi Tega bass on 8Francesca Paganucci chorus on 7
Michela Bernardini chorus on 7

  95 年発表のアルバム「Determinazione」。 OSSANA のリノ・ヴァイレッティ、IL BALETTO DI BRONZO のジャンニ・レオーネら、錚々たるゲストを迎えたクラシカルでメロディアスなキーボード・ロックの力作。 俊敏かつ強靭、現代的な表現に長けたリズム・セクションに支えられてツイン・キーボードとギターが音吐朗々歌い上げる、インストゥルメンタルの割合の高い内容である。 曲調/サウンドからくるイメージは、きわめてクラシカルにしてファンタジック、そして、モダンなまとまり感とニューエイジ・ミュージック風の涼感が特徴であり、典型的なネオ・プログレッシヴ・ロックといえるだろう。 GENESISCAMEL に近い優しげなメロディを活かしたムーグ風(ややチープなのであくまで「風」)シンセサイザー、ストリングス・シンセサイザー、ハモンド・オルガンが、時にワイルドに時にリリカルにメリハリよく鳴り響くスタイルである。 アコースティック・ピアノによる上品さ、エレガンスの演出も怠りない。 ポップス調のメロディ・ラインや素直に泣くギター・プレイのおかげで、キーボードの砦のごとき厳しいイメージはなく、ロマンティックで素直に感情移入ができる音になっている。
   キーボードの演奏はあくまで明快でまっすぐなフレーズを中心にしたものであり、ていねいにアンサンブルで音を積み上げる。 やや凡庸な変拍子オスティナートに食傷する可能性は若干あるだが、EL&P 路線上のクラシカルなアレンジは、オーソドックスながらも過たずツボを突いている。 ヘヴィな音には、モダンなメタルっぽさよりも、70 年代のハードロックへの共鳴を感じる。 クラシックのネタ元は、どちらかといえば、「近現代邪悪」系ではなく「ペール・ギュント」やイタリアン・バロックのような「陽性ファンタジー」路線である。 また、現代のグループらしく、リズム・セクションや基本のサウンドにフュージョン・タッチの軽やかなニュアンスもある。 それがごく自然なので大きな瑕疵ではないが、重厚な場面までにもこの爽やかさ、たおやかさが染み出すと少し弱々しい印象になる。 (これは、おそらく演奏そのものというよりは、アルバム製作者の感性の問題なのだろう) 8 曲目のヴァイレッティのヴォーカルが R&B 的でタフなニュアンスをもち非常にカッコいいだけに、演奏面でも、こういう骨太なところが基調にあるともっとよかったろう。 この曲に入った瞬間に、空気は乾き、クリント・イーストウッドかジュリアーノ・ジェンマ(知らない人はお父さんに聞いてください)がポンチョを風になびかせて立ち尽くしているような幻影が、ぐわっと浮かび上がる。 また、最終曲の組曲「The Return Of The Gentle Giant」は、キーボード・オーケストレーションを駆使した GENTLE GIANT へのオマージュらしい。(巨人といえば、4 曲目もラブレーのガルガンチュアに関連する内容のようだが、浅学のため詳細はわからない) ただし、音楽的には GG よりも YES に近いような気がする。 ライヴではゲイリー・グリーン本人と共演しているそうだから驚きだ。 本曲もそうだが、全体に長編をうまく描き切る手腕はかなりのものだと思う。
   リード・ヴォーカルはイタリア語。 音程は若干揺らぐが、「ベル・カント」を活かしたハードロック・スタイルです。 本作後、本グループのリズム・セクションが、 IL BALLETTO DI BRONZO 再編へと係わってゆく。 アルゼンチンの NEXUS が気に入ったらこちらもお薦め。

  「E Con Il Mattino Torneranno Gli Eroi」(6:10)鳥のさえずりと不穏な風の音から幕を開ける、どことなく「ペールギュント」なクラシカル・チューン。
  「Libero」(5:43)邪悪系を意図するも可愛らしくなっている変拍子オスティナート・チューン。 メイン・パートはピアノ伴奏のバラード。ギターもやおらむせび泣く。 リズム・セクションは HM 系テクニカル・フュージョン志向か。
  「Robin Hood」(4:40)タイトル通り、PIXAR かディズニー映画のサントラ風のファンタジックかつ勇壮な作品。 ヴォーカリストの男臭さが曲想を越えてやや過剰。 世界が善悪に分かれていると信じていた頃には胸にしみたでしょう。
  「Gargantua Bestemmia Dio E Viene Trasformato Nel Gigante Di Pietra Posto A Guardia Della Tana Del Drago Di Altomonte... Da Dove Il Suo Sguardo Scruta L'orizzonte Per L'eternisino Al Dorato Mare Di Sibari」(8:20) イントロのベース・ソロは不要だが、ボレロ風で幕を開ける序盤は安定感のある好演。 フュージョン風の EL&P があるとすればこういう感じだろうか。
  「Regina Delle Fate」(5:48)ギターとシンセサイザーが共鳴する序盤、エモーショナルに高まるメイン・パートなどストレートな表現で迫るバラード系ハードロック的プログレ(笑)の力作。 最終部もカッコいい。
  「Frammenti」(7:27)EL&P (いや MUSEO ROSENBACH か?)のハードで邪悪な面に倣ったオルガン、ピアノを活かした 70 年代風の佳作。 オルガンとシンセサイザーの切り換えやリズム・チェンジなどにこだわりを感じる。
  「Determinazioni Oggettive ? Determinazioni Suggestive!」(8:03) ネオプログレらしさが出た作品。
  「Vento Che Va」(4:25)ベスト。やはりヴァイレッティ氏は稀代のヴォーカリストである。
  「Il Ritorno Del Gigante Gentile」(12:25)
  
(GMP 001)


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