ニュージーランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「DRAGON」。 72 年結成。作品多数。オーストラリアに進出して成功した。 初期の作品はオルガンを多用したスペイシーかつ叙情的な英国ロック風サウンド。 初期二作は 2in1CD がある。
Marc Hunter | vocals |
Ivan Thompson | keyboards |
Ray Goodwin | guitars, vocals |
Todd Hunter | bass, vocals |
Neil Story | drums |
74 年発表のアルバム「Universal Radio」。
切ない叙情味と物寂しげな表情が魅力の英国ロック風の作品。
どの作品もメイン・パートのメロディ・センスは抜群である。
フォーキーな田園風の長閑な気分や都会的なアンニュイを巧みに表現している。
そして、敏捷でタイトなリズム・セクション(ベーシストは名手)がリードするキレのあるインストゥルメンタル・パートに大きくスペースを取り、ドラマティックな変化を盛り込んだ作品が多い。
内省的なフォーク・タッチとサイケ風味を残した逞しい演奏という点では、PINK FLOYD に近い作風といえる。
また、パーカッションを使った初期 CAMEL に特徴的だったラテン色もある。
リード・ヴォーカリスト、マーク・ハンターの声質、表現法はイアン・アンダーソンに倣っていると思う。
古式ゆかしい英国ロックを正統継承しつつ、時代相応に洒落たところも見せる、不思議な味わいの好作品である。
プロデュースは、リック・シャドウェル。
「Universal Radio」(8:35)マイナーのサビが印象的な泣きのバラード。
「Going Slow」(6:16)
「Patina」(11:48)ギターが主役を張るシャープでスピード感ある演奏が特徴の大作。
ブルーズがからない個性的なギター・プレイのせいか、URIAH HEEP 風のメタリックなイメージもある。ギターに対抗するシンセサイザー・ソロもあり。
「Weetbix」(2:59)CRESSIDA のような埃っぽく男臭い佳曲。ハモンド・オルガンの轟き、マーチング・スネア、素っ気無くも味のあるギター。
「Graves」(6:56)1 曲目に通じる泣きのバラード。抑制と爆発。ギター、オルガン、シンセサイザーによる「引いた」アンサンブルが絶妙。
「Avalanche」(11:13)アーバンなソウル風味とアーシーなタッチが混じったクールな大作。
終盤のサイケデリックなインストゥルメンタルに意表を突かれる。
(Vertigo 6360902)
Marc Hunter | lead vocals on 2,3,4,6 |
Todd Hunter | bass, backing vocals |
Ray Goodwin | guitars, lead vocals on 1,5 |
Neil Storey | drums |
Ivan Thompson | keyboards |
75 年発表のアルバム「Scented Gardens For The Blind」。
内容は、ノリのいいポップ・ロック(特に旧 A/B 面の最初の曲)にアクの強い器楽アレンジを施したシンフォニックなロックである。
サイケデリック・エラの残り香をまといつつ、クラシックの音楽性と表現を大胆に盛り込んだ、英国ロック調の作品である。
時に、YES を思わせるシャープな演奏をメロディアスなヴォーカル・ハーモニーが潤すところが魅力だ。
穏やかな微笑のようなやさしげな表情が印象的である。
ギターやオルガンが音数の多い、パワフルなリズム・セクションとともに駆け巡るが、さりげなくクラシカルなアンサンブルやピリッとしたオブリガート、アンビエントな音遣いなど、その作風は普通のハードロック・バンドの程度をはるかに越えてプログレッシヴである。
演奏の特徴は、クラシカルなオルガンを多用すること、わりとポップなイメージのヴォーカルが前面に出ること、リズム・セクションの主張が強力であること。
ムーグ・シンセサイザーのソロによるアクセントも効いている。
個人的には、75 年にしてはやや古めかしい VERTIGO レーベル風(もっとも、本作品はニュージーランドの VERTIGO から出ている)のハモンド・オルガンのクラシカルなプレイに魅せられている。
マーク・ハンターのヴォーカルも、オルガンに合わせるかのように、60 年代の翳りをまとっている。
ルーズなけだるさの中に英国ロックと同質の先鋭的でアーティスティックなセンスを感じさせる好作品である。
ジャケットのものすごいイラストは、メンバーの手によるものでしょうかね。
「Vermillion Cellars」(3:23)R&B テイストあふれる英国ロック風の好作品。
「La Gash Lagoon」(8:18)60 年代末から 70 年代初期のニューロックのテイストにあふれる佳作。強引な展開も魅力。エンディングのメロトロン・ストリングスもいい。
「Sunburst」(8:33)フォーキーな叙情性と重厚さを併せ持つ力強い傑作。
ムーグ・シンセサイザーが大胆に使われている。野性味あふれる情熱が生む詩的な興奮。激しい演奏が知的なアレンジに裏付けられている。冒頭とエンディングはオルガンによるワルツ。
「Greylynn Candy」(4:57)軽快なカントリー風味の作品。ジャジーなサビもカッコいい。ここでも後半にムーグが飛び出す。
「Darkness」(4:44)ベースが唸りを上げる YES 風の器楽によるグラム・ロック。
「Scented Gardens for the Blind」(7:40)へヴィなオルガンと太いリズムをフィーチュアした、いかにも VERTIGO 風の作品。5 年前に英国で出ていたとしてもまったく違和感のない音である。サックスは誰の演奏でしょう。
(VERTIGO 6360903 / TRC 045)