イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「CRESSIDA」。 60 年代末期にロンドンにて結成。 VERTIGO に二枚のアルバムを残す。 解散後、イエイン・クラークは URIAH HEEP、ジョン・カリーは BLACK WIDOW に加入。 哀愁のメロディとリリカルなオルガンによるデリケートな英国滋味と 60 年代終盤のアメリカン・ロックの埃っぽさがクロスした逸品。 サイケデリック・テイストはさほどでないが、DOORS や VANILLA FUDGE のファンへも一応お薦め。もちろん、THE MOODY BLUES とベルセバのファンには絶対。
Angus Cullen | vocals |
John Heyworth | guitar |
Peter Jennings | harpsichord, organ, piano |
Kevin McCarthy | bass |
Iain Clark | drums |
70 年のデビュー盤「Cressida」。
内容は、ノーブルなヴォーカルとオルガンをフィーチュアした、フォーキーかつジャジーなオルガン・ロック。
リズムやギター、オルガンはジャジーな表現が主である。
一方、曲想はとっ散らかったといっていいほど多彩である。
その多彩さを貫くのは、英国の音らしいメランコリーと斜に構えたように冷え冷えとしたロマンチシズムである。
リズム・セクションとオルガンを除けば技巧はさほどでない。
しかし、和声進行やリズムの組み立てはなかなか凝っている。
曲を味わいやすい歌メロで包む辺りのセンスもいい。
楽曲は、長いものでも 5 分程度という小粒(フェード・アウトも多い)揃いではあるが、概ね、短い中でリード・ヴォーカルとインストゥルメンタルのバランスを取って、しっかりした構成を見せている。
印象に残る音という意味では、やはり叙情的な響きのオルガンが筆頭だろう。
ジャスティン・ヘイワードを意識したような(地味なジム・モリソンともいう)ヴォーカル・スタイルや俊敏なオルガン、アコースティック・ギターなど、ほんのりサイケデリックなビートポップの名残も見せる本作をステップとして次作で飛躍を見せる。
しかし、ポップでややアメリカンな 60 年代テイストを携えた本作も、なかなか魅力的な作品ではないだろうか。
また、「たられば」はいけないかもしれないが、もしヴォーカルにもう少し渋味があったら、本作は意外にも SPOOKY TOOTH の第一作に近いニュアンスをもったかもしれない。
プロデュースはオシー・バーン。
1 曲目
「To play Your Little Game」(3:15)
オルガンが支える感傷的な歌もの。
クラシカルなオルガンのバッキングとオブリガート、裏拍アクセントの引きずるようなリズムも特徴的。
徹底してセンチメンタルなメイン・パートのメロディと対照的に、サビでは転調とともにハーモニーによる伸びやかな広がりを見せる。
ギターは最後にファズを効かせた、やや荒っぽいプレイを披露。
2 曲目「Winter Is Coming Again」(4:42)
DONOVAN、あるいはサンフランシスコ風のキュートなサイケデリック・フォークロック。
若々しさの感じられる作品だ。
ヨれたナチュラル・トーンのギター・ソロはヴェルヴェッツ風。
クラシカルにして軽やかなオルガン・ソロあたりから、心地よい疾走感が生まれてくる。
3 曲目「Time For Bed」(2:18)
トラッド・フォーク調とジャズ・タッチが絶妙のブレンドを見せる佳作。
なんとエレキギターではきわめて頼りなかったギタリストが、アコースティック・ギターでは別人のようなみごとなプレイを見せる。
キーボードもブルージーなピアノをフィーチュア。
4 曲目「Cressida」(3:57)
オルガンによる 5 拍子のリフがリードするセンチメンタルでブルージーな作品。
投げやりな感じのリフがいい感じだ。
ベースも挑発的なランニングで迫る。
中盤のストリングスのような音はメロトロンだろうか。
オルガン・ソロでは、このリフを微妙に変化させつつ、リズムも変化させる。
後半はセミアコ風のギターによるトレモロを交えたソロもあり。
エレキギターよりもずっと達者な演奏だ。
5 曲目「Home And Where I Long To Be」(4:04)
ギターのシャフル・アルペジオによる流れるようなイントロダクション。
何気ないオルガンの調べに、ギターの小気味いいコード・カッティングがからむ。
ヴォーカルは、やや投げやりで平板。
どうやらジョン・ヘイワースによるらしい。
もっともサビのコーラスには、カレンも加わっているようだ。
間奏は、3 拍子に切り換り、唐突ともいえるハープシコードのメランコリックな演奏。
サビのバックのギターがレゲエ風である。
二回目の間奏では、クラヴィネットとギターによるジャズっぽくスピーディなアンサンブル。
受け止める奇妙なキメの連続もおもしろい。
その後はオープニングからの展開を繰り返してゆく。
最後のメジャー・コードの響きもいい。
ギターをフィーチュアした幻想的な作品。
なかなか破天荒な展開を見せ、。
ギター・リフの最後の maj7 コードの余韻がどこか白昼夢的な非現実感を生む。
リズムの変化やコード進行もプログレッシヴ。
リード・ヴォーカルはギターのジョン・ヘイワース。
この人はピックでなく指でエレキギターを弾いているようだ。
6 曲目「Depression」(5:05)
オルガンのトッカータによる厳かな教会音楽調のイントロ。
一転テンポよく演奏がスタート。
ヴォカリーズとともに快調にヴォーカルが飛ばす。
得意のウエスタン調のメロディだ。
ドラムスが止みオルガン、ヴォーカル、パーカッションによるスリムなアンサンブルへ。
ややミステリアスなムードだ。
再び元気よくドラムスが戻り、ハードなギター・ソロへ。
アコースティック・ギターのコード・ストロークにあおられるように、次第に盛り上がってゆく。
続いてスピードあふれるクラシカルなオルガン・ソロ。
ひたすら走るアンサンブルはフェード・アウト。
疾走するハードなナンバー。
クラシカルなイントロやパーカッション、オルガンによるアンサンブルなどアクセントを巧みにつけておりメリハリあり。
間奏のギター、オルガン・ソロの応酬はロックにしかないカッコよさ。
特にオルガンのプレイは重みも粘りもあるいいプレイだ。
軽快に走り抜けるスピード感がいい。
甘めの DEEP PURPLE。
7 曲目「One Of A Group」(3:38)GENESIS 調の印象的なオルガン・リフレインによるイントロ。
歌メロは再びフォーク・ソング風。
切ない表情がいい。
長調のクラシカルなオルガンの間奏と短調のピアノ伴奏のヴォーカルの泣きが妙な取り合わせだ。
そしてバロック風のオルガンの間奏からヴォーカル。
再びオープニングのオルガンが入ってすぐにファズ・ギターのソロが始まる。
テンポも快調に上がる。
一転テンポは落ちてピアノ伴奏のロマンティックなヴォーカルへ。
突如リズムが 3 拍子に変わってジャズ・ピアノのソロだ。
ギターも絡みつつフェード・アウト。
バロック風のオルガンのフレーズとメランコリックなヴォーカルの妙なコントラストが活きるナンバー。
そしてピアノがジャズになってしまうというプログレッシヴな(ややとっ散らかった)おまけもある。
ヴォーカル・メロディの切々と訴える哀愁がすばらしい。
8 曲目「Lights In My Mind」(2:47)この曲もオルガンのロングトーンからクリアな 8 ビートが始まるテンポのいいナンバー。
歌い上げるヴォーカルと引き締まったリズムそしてタイミングのいいオルガンのオブリガートが疾走感を煽る。
バッキング、オブリガート、ソロすべてにオルガンが冴え渡る。
コーラスの入るサビからヴォーカルの伸びやかな声とオルガンが重なる気持ちよさそして走りつづけるカッコよさ。
ドラムスとオルガンがかけ合いながらのエンディングも GOOD。
ウエスト・コースト風のセクシーなヴォーカルと疾走するオルガンがカッコいい。
短いがシャキッとしたメロディアスな曲。
ギターとマインドは完全にグループ・サウンズ風。
9 曲目「The Only Earthman In Town」(3:35)こもったオルガンの伴奏でヴォーカルが静かに歌い上げるオープニング。
ハイハットのリズムがスピーディな展開を予感させる。
ドラムスのピックアップでリズムが入って演奏が始まるところは息を呑むほどカッコいい。
間奏のオルガンのせわしないアルペジオがさらにスピード感を出す。
テンポが少し落ちたマイナーなコーラスとアップテンポのメジャーな演奏が交互に現れる。
ギターの生々しいアルペジオに続くオルガンのソロも珍しくジャジーで軽快だ。
フェード・アウトは残念。
マイナーのコーラスのどうしようもないメランコリーとメジャーのヴォーカルのポジティヴさの対比がみごと。
また突っ走るオルガンは抜群によし。
イントロもスリリングだ。
10 曲目「Spring'69」(2:16)アコースティック・ギターの重苦しいアルペジオから憂鬱なヴォーカルが入る。
トラッド・フォーク風の演奏だ。
次第にほんのり明るさも出てくるがこのメランコリックな旋律が美しい。
アルペジオを続けるギターのコード進行も少し変わっている。
アコースティック・ギターとヴォーカルのみのフォーク・ソング。
夢見るようでいながらもどこか空ろで暗く哀しい。
11 曲目「Down Down」(4:17)オルガンのクラシカルなイントロは彼岸の幸せを唱えるような哀愁が漂う。
シンバルの響き。
そしてわらべ歌のように優しいが哀しいメロディのヴォーカルが歌う。
祈りのようなリフレイン。
ゆったりと抱き上げるようなオルガン、メロトロンの響きとつぶやくようなギターそしてシンバルの響きが幻想的だ。
ドラムスがマーチのようにリズムを刻む。
突如 8 分の 6 拍子に変わってギターがたたみかけるような不安なリフを繰り返す。
オルガンもこのリフに絡みつく。
しかし決してヴォリュームは上がらない。
沈み込んだ雰囲気のまま進む。
やがて再びリズムが消えるとオルガンはイントロと同じフレーズを繰り返してシンバルが響く。
そしてマーチング・ドラムスに乗って静かなオルガンのソロ。
ギターも爪弾いている。
最初から最後まで静かなまま進む幻想的なナンバー。
すべてを諦めて達した境地の様に穏やかだ。
後半のリフからのオルガンのクラシカルなソロそしてドラムス、ギターとのアンサンブルはドラマチックな展開の準備のようであり後の大作を予感させる。
静かなリリシズムがしみ透る作品。
12 曲目「Tomorrow Is A Whole New Day 」(5:18)(すてきなタイトルだ)クラシカルなチャーチ・オルガンの和音に導かれ淡々とした 8 分の 6 拍子でヴォーカルが歌いだす。
アコースティック・ギターが丹念なコード・ストロークで伴奏する。
優雅さと哀しみ。
強い 8 ビートに変わってギターが決めを繰り返す。
そしてたたみかける様なリズムでヴォーカルが歌いコーラスとハモる。
再びギターの決め。
ドラムスのきっかけからギター・ソロ。
ややブルージーだがなめらかだ。
リタルダンドしてドラムスが退くとオルガンのカデンツァ。
静かに入るアコースティック・ギターがオルガンと反応する。
エレキギターも加わる。
オルガンの静かなメロディ。
ドラムスが戻りヴォーカルが勇ましく歌い出すがどこか力なく優男的。これもまたよし。
オルガンから力を得てコーラスが響きロマンチックなメロディがシンフォニックな広がりを持ち始めるとファズ・ギター・ソロが入ってさらに盛り上げる。
オルガンとドラマチックなドラミング、そしてコーラス。
ギターが続く。
シンフォニックな盛り上がりでは一番の作品。
哀愁漂うひ弱なヴォーカルを活かしつつインストクルメンタルが積み重ねられ劇的な展開を作っている。
途中のインスト部分でブルージーな(やはり GS 風である)ギター・ソロからクラシカルなオルガンへ移り再びヴォーカルへと帰るところにはドラマを感じる。
さらにエンディングでドラマチックなドラミングとともにコーラスとギターが絡みつつ盛り上がるところはこのアルバム中では一番感動的である。
ビートポップ風、トラッド風と実に多彩だが、アルバムとしてはやや散漫な印象あり。
しかし、オルガンの彩りが加わることによって、どの曲も輝き始める。
哀感ある歌メロとそれを支えるバッキング、ソロ。
散漫だったはずの印象が、次第にコンパクトにまとまったドラマの綴れ織りに思えてくるから不思議だ。
走っても、ゆったり歩いても、英国の木枯らしのような寂寥感が静かに巻き起こる。
もっとも、ヴォーカル+ギターもしくはオルガン・ソロ+ヴォーカルという展開がワンパターンになりがちなのも確か。
そこをなんとかせねば、というわけで 11、12 曲目、そして次作へと発展してゆく。
オルガンは、クラシックをベースにジャジーなフィーリングと適度な黒さもある。
ブルージーな重みよりも、軽快でメロディアスな表現を得意とするようだ。
アコースティック・ギターの多用もあって、STILL LIFE と比べると黒さは薄く、フォーク色が強い。
ギターは全体に控え目だが、仕事はしっかりやっている。
ヴォーカルは世間で言うほど弱いとは思わない。
むしろ線は細いが魅力的ではないだろうか(DOORS に似すぎですが)。
60 年代のビート・サウンドと 70 年代のニューロックにかかった、ささやかな橋の一つである。
(REP 1299-WP)
Angus Cullen | vocals, acoustic guitar |
John Culley | lead & acoustic guitar |
Peter Jennings | organ, piano |
Kevin McCarthy | bass |
Iain Clark | drums |
Harold McNair | flute |
guest: | |
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Paul Layton | acoustic guitar |
71 年発表の第二作「Asylum」。
ギタリストはジョン・カリーに交代、さらに、セッション・ジャズメンであるハロルド・マクネアをフルート奏者として迎えている。
内容は、オルガンのトーンが熱気ある時代の息吹を感じさせる、クラシカルにしてジャジーな正調ブリティッシュ・ロック。
その内容は、オーケストラの導入に始まって、組曲形式の大作、インストゥルメンタルの拡充、さらにはモダン・ジャズ的な要素の投入、予想を裏切る過激な展開など、プログレッシヴ・ロックと呼んでさしつかえない。
前作を整理して、重厚なドラマを編み出した傑作である。
プロデュースはオシー・バーン。
オーケストラ・アレンジはグレイム・ホール。
ジャケットがキーフなのはいうまでもない。
サウンドの特徴は、くすんだ色彩をもつ、フォーク・タッチのヴォーカル、冷ややかにして熱気もはらむオルガン、アコースティック・ギターによる丹念なコード・ストローク、ジャジーなピアノ、そして、管弦楽を代表に全体に散りばめられたクラシカルなアンサンブルなどである。
そして、その凝ったアレンジの上に魔法のメロディを乗せて送り出すという巧みな作風である。
60 年代からの遺産であるグルーヴィな R&B タッチも魅力だ。
1 曲目「Asylum」(3:33)
第一作でも見せたリズミカルに疾走する作品。
躍動するベース・リフ、アコースティック・ギターのストロークに追われるような「走り」の魅力とともに、一風変わったオブリガートやオルガン・ソロなど個性的なプレイを打ち出している。
歌メロの勇ましいようでか細いという矛盾した性格がユニークである。
基本的にはメランコリックなのだ。
オルガンはこれらのアイデアあふれるプレイからバッキングまでさまざまに存在をアピール。
オブリガートのギターなどさほど冴えたプレイではないが、リズミカルに押す勢いでカバーしている。
カレンの作品。
2 曲目組曲「Munich」(9:33)
弦楽とオルガンをフィーチュアした劇的な大作。
ヴォーカルがメランコリックながらも切々と歌い上げ、熱いインストゥルメンタルがドラマを彩ってゆく。
大まかに三部構成であり、ロマンティックな幻想美をたたえる第一部、ジャジーなインストゥルメンタル・パートの第二部、第一部の再現とフィナーレとなる第三部となっている。
第一部では、オーセンティックな朗唱を暖かみあるオルガンと透きとおるようなストリングスが支えるシンフォニックな展開。ロマンをかき立て胸を震わせる。
中盤は 8 分の 6 拍子でギターのブルージーなアドリヴ、クラシカルなオルガン・ソロをフィーチュアしたソウルフルなビートロック。
第三部では管絃、オルガンとともにテーマを回想し、エネルギッシュなクライマックスへと達する。
順に追ってみよう。
ベースとオルガンの G#+9 のアルペジオによるオープニング。
冷ややかにしてうっすらと夢見るような演奏は GREENSLADE の初期作品にも通じる。
また、弦楽のテーマ演奏、オブリガートともに切々と胸に迫る感じは「A Whiter Shade Of Pale」的といえばいいだろうか。
いずれにせよ、英国ロックならではのロマンティシズムである。
ヴォーカルは、水彩画のような淡い色合いのタッチをもつ。
左右のチャネルから流れ出て交わるギター・ソロも今度はカッコいい。
中盤は、8 分の 6 拍子でギターとオルガンによる R&B、英国ビート調のインタープレイが続く。
ブルージーなギター・ソロに続き、ソウル・ジャズ調のオルガン・ソロ。
荒々しくも音を惜しまないドラムスにも注目。
この間奏パートは、初期の CAMEL に迫る出来映えである。
ここから、終盤への切りかえとなるオーボエ、ストリングの入りは映画音楽のような奥行きがあり、絶妙である。
終盤は冷ややかなメイン・ヴォーカル・パートが再現されるも、管弦楽、オルガンとともに次第に柔らかな表情へと変化し、テーマの変奏を経て、エンディングへとなだれ込む。
ジャジーなギター、息を呑ませるアカペラ、クラシカルなオルガンの火を噴くカデンツァ、そして管弦楽と一体となった熱っぽい演奏とともに熱狂的なフィナーレを迎える。
みごとな演出だ。
明快にして無駄のない構成、必要十分な音づかい、切れ味ある演奏と豊かな情感、すべてそなえた名作である。
管弦楽を動員した、PROCOL HARUM の諸作と通じる重厚なロマンといえるだろう。
密やかにしてロマンティックなオープニングと、そのオープニングと対照的するように過剰なセンチメントを冷ややかに切り捨てるようなギター、オルガンのソロがすばらしい。
ギターはロビン・トロワーの線をやや細めたような印象である。
ジェニングスの作品。
3 曲目「Good Bye Post Office Tower Good Bye」(2:50)
切れのいいアコースティック・ギターのストロークとリズミカルなピアノをフィーチュアしたブリティッシュ・ビート調の作品。
ワンノート連続の歌メロが ROLLING STONES にすら通じる不良っぽさを演出。
ノーブルな声質とのミスマッチのおもしろさもある。
ピアノはジャジーにクラシカルにと自由闊達に振舞う。
最後はなぜか爆音がオーヴァーラップ。
ビートなのにどこか余裕があるところは Sergio Mendes に似る。
カレンの作品。
4 曲目「Survivor」(1:34)
管弦楽、オルガンを用いたシンフォニックな小品。
西部劇映画のサウンド・トラックを思わせる勇壮な盛り上がりがある。
一瞬で終わってしまうが懐の深い弦楽、高らかな管楽の響きと荒々しい奔馬のようなオルガンが真っ向ぶつかり、昂揚させる。
カレンの作品。THE MOODY BLUES 直系。
5 曲目「Reprieved」(2:28)
一転、ジャズ・ピアノを主役にした小洒落たフレンチ・ポップ風インストゥルメンタル。
クールなスキャット、心地よく鼓動するベース・ライン、シンバル中心の大人なドラミング、本格的なジャズ・ピアノ・ソロ。
前々曲のようなビート風の作品と、本曲のようなロマンティックな正統ジャズが同居するから驚きだ。
ジャジーでポップなこなれ方は MANFRED MANN に通じる。
ジェニングスの作品。
6 曲目「Lisa」(5:08)
オルガン主導のクラシカルなモチーフを散りばめ、テンポ、リズム、音量、曲調の急激な変化を繰り返しつつも終始メロディアスな印象を与える、プログレらしい作品。
やや甘めのビート・ポップ調メイン・ヴォーカル・パートに続き、さまざまな音と演奏がパノラマのように次々と現れ消える。
パストラルな調子が一貫するため、イタリアン・ロックに近いニュアンスもある。
オルガン、管弦楽とともに、本作品でみごとな存在感を放つのがハロルド・マクネアによるフルートのプレイ。
ヴォーカルを彩り、ロマンティックな味わいを付与するのが、ストリングスとこのフルートである。
一方オルガン、ギターは、強烈なアクセントとして機能する。
特に、オルガンによるベートーベン風のテーマは印象的だ。
中盤、ストリングスが寄り添う哀愁の弾き語りに続く、クラシカルなオルガン・ソロ、ブルージーなギター・ソロが見せ場だ。
ヴォーカルにも寄り添い、舞い踊るフルートがいい。
メロディアスなアンサンブルとリズミカルでひっかかるようなプレイを巧みに対比して、自然に流してゆく辺りがすごい。
もっとも、曲の最後で最初が思い出せないのも確かなのだが。
シンプルなラヴ・ソングを思わせるタイトルにもかかわらず、内容はかなり芸術的である。
フリー・フォームに近い演奏でも堂々としたロマンを歌い上げている。
初期 DEEP PURPLE のようなハードロック寄りのシンフォニック・ロックの力作である。
カレンの作品。
7 曲目「Summer Weekend Of A Life Time」(3:25)
再び、日本のフォークを思わせる、メランコリックな C&W 調の作品。
内ジャケの写真でもメンバーが西部劇風の衣装に身を固めており、ひょっとするとそっち方面への憧れがあるのかもしれない。
ヴォーカルはなかなか颯爽とした表情だが、スリリングというにはやや甘ったるい歌メロが、どうしても ジャップス・フォークを思い出させる。
伴奏は、豊かにこだまするオルガンの和音、間奏は、スタイリッシュにして素朴なファズ・ギターとトーン・コントロールしたハモンド・オルガンによるインタープレイだ。
C&W なので埃っぽく暑苦しいイメージのはずだが、なぜかどこまでも冷ややかである。
最後の意味不明なヴォーカル・エコーのように、せっかく歌い上げた正統的なロマンチシズムをやけっぱち気味のアイデアで崩壊させてしまうところがおもしろい。
カレンの作品。
8 曲目「Let Them Come When They Will」(11:44)
得意のクールな味わいを基調に、自由奔放に音を綴ったオムニバス風の大作。
小粋なフォーク・タッチの弾き語りから始まる。
リズミカルなギターのストロークが都会的な空気を漂わせるヴォーカルに絡む。
やや頼りないサビは、上品なストリングスが支える。
ここから、各パートのソロをフィーチュア。
まずはジャジーなギター・ソロ。ウェス・モンゴメリー風のオクターヴ奏法も披露。
ドラムス、オルガン、ベースも歯切れのいいビートで堅実にギターを支える。
次は、オルガン・ソロ。
歯応えのあるトーンを用いた、クラシカルにしてソウル・ジャズ風の粘りもある、カッコいいアドリヴだ。
リズム・ギターもいい感じだ。
続いて、アフロなパーカッション・ソロ。
にぎにぎしいリズムに刺激されたかのように、パワフルな管楽器セクションが飛び出して、最初のクラマックスに到る。(4:35)
最高潮の余韻のままに、静寂の果てから、うっすらとたなびくオルガン、リム・ショットの音とともに、ギターがつぶやき、空ろな歌がこだまする。
悩ましげな詠唱に付き従うは哀愁のストリングス。
空しさでいっぱいのバラードである。
高まる歌唱に哀れを誘うオーボエが寄り添い、絶唱とともにオルガンと管弦楽が次第に力を蓄えてゆく。
高潮を経て、オルガン、ギターの余韻がたなびき、去りゆくヴォーカルとともにすべてが沈んでゆく。
立ち去ることをよしとしないのか、バロック調のオルガンによるカデンツァが左右のチャネルを駆け巡る。
謎めくオルガン、トリル、うっすらとこだまするストリングスが何かを期待させる。(9:00)
軽やかなドラム・ピックアップから始まるのは、意外や、4 ビート・ジャズ。
堅調なベース・ランニングを受けてまずはオルガンが炸裂、ギターもクランチなコード・ストロークで追いかける。
ソウル・ジャズ風のオルガンの演奏にフォーキーなメイン・ヴォーカルがオーヴァーラップし、管弦楽も現われる。
一気に最高潮の大団円。
スピード感あふれるギター・アドリヴ、そして、パワフルにして一体感ある演奏でひた走る。
組曲というにはあまりに融通無碍な展開の大作。
大まかには、小洒落たビート・ポップス、無常感ある中間部、情熱的な疾走の 3 部から成り、オルガンとギターを軸にしてジャズからクラシックまでを大胆に駆け巡る。
管弦楽を味つけに熱気たっぷりに繰り広げるジャムがカッコいい。
クラシカルにしてソウル・ジャズ風の粘っこいプレイを見せるオルガンもさることながら、ギターも実力を超えた多彩にして腰の据わったプレイを見せる。
ジャズからオーソドックスなブルーズ、ハードロックまでなかなか多芸だ。
テーマとなるものに存在感がないため、若干散漫な感じも否めないが、演奏そのものには迫力がある。
前任ギタリストのヘイワースの作品。
1 曲目の軽やかな「走り」に明らかなように第一作の延長線にありながら、より練られた曲展開と管絃との協調などで、さらなるグレードアップを遂げた快作。
単にギターがうまくなっただけではなく、ドラマ性とストーリー・テリングでも前作を凌ぐ。
そして最も味わいがあるのは、斜に構えたような淡々とした表情である。
メロディ、ヴォーカル、オルガンからストリングスの響きまですべてに、穏やかにして真剣なクールネスが感じられる。
オルガンの音色、プレイについては、もはや多くを語るに及ばない。
ジャジーでソウウフルな逸品とだけいっておこう。
全体に渋めの演奏にあって、色彩感を出しているのは、フルートやヴァイオリンの繊細なプレイ、オルガンのパワフルなフレージング、そしてなかなか器用なギターだろう。
2 曲目の大作は英国ロックの代表作の一つでしょう。
(RR 4105-WP)