アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「EASTER ISLAND」。 73 年結成。79 年に第一作発表。 2000 年再結成、新譜発表。 東洋風味もある陽気なメロディと激しい変拍子が交錯した奇妙な作風が特徴。
Rick Barlett | vocals |
Park Crain | bass, pedals, percussion |
Mark Hendricks | drums |
Mark Miceli | guitar, vocals, gato drum, synthesizers on 1 |
Ray Vogel | Hommond C-3, Mini-Moog, piano, Mellotrons |
79 年発表のアルバム「Now And Then」。
オリジナル LP「Easter Island」の CD 再発盤。
内容は、能天気なハイトーン・ヴォイス、ハーモニーとスピーディで強引な演奏による逸脱調のプログレッシヴ・ロック。
明るいのに妙にひん曲がった感じがするのは、アッケラカンとしたロックンロール調ヴォーカルと音を詰め込んだ技巧的な演奏という奇妙な取り合わせのためだろう。
キーボード、ギターを中心としたアンサンブルは、「Relayer」期の YES に迫る技巧と緊張、構築性のある本格的なシンフォニック・ロック調だが、その曲展開はテクニックを超越した奇天烈さと強引さにあふれている。
要は、屈折しているのにやけに明るいという、かなり不気味な調子なのだ。
ヴォーカルは、一見能天気なハードロック調のハイトーンだが、その表情はなかなか複雑である。
ドゥワップのようだったり、R&B のようだったり、おそらくはルーツ・ポップスのパッチワークであり、メロディ・ラインに凝りすぎるあまり着地点が見えなくなっているようだ。
一方、器楽はリズム・セクションに煽られたギターとキーボードが徹底してけたたましく刻み捲くるスタイルであり、リスナーを決して落ちつかせないのが特徴。
メロトロン・ストリングスやムーグ・シンセサイザーが悠然と鳴り響くと、とたんに演奏は古典的なプログレッシヴ・ロック調に豹変し、ヴォーカルもコーラスやもギターもすっかり YES にまとまる。
その変わり身の早さ、ぬけぬけとした大胆さがおもしろい。
クラシカルな演奏が堂に入っているだけに、毒気や含みのないやたら明るい調子が妙にひっかかるのだ。
どうやらこの怪しさ、大きな特徴といえそうだ。
また、スピーディなアンサンブルは、いかにも GENTLE GIANT 好きのアメリカン・プログレ・バンドというイメージである。
6 曲目から始まる大作組曲「The Alchemist's Suite」は、アコースティック・ギターやドラムスもフィーチュアした変化に富む佳作。
全体としては、YES 似でしょう。
そして、何よりメロトロンが大量に投入されている。
真剣に人生に向き合う歌詞もいい。
ここで紹介する音源は、91 年 ZNR からの再発 CD であり、アナログ LP とはタイトル、ジャケットおよび曲目が異なる。
「Wanderer's Lament」(3:20)91 年録音。
ニューエイジというよりはサイケデリック・ロック調のキーボード・ソロ作品。
終盤のメロトロン・ストリングス、メロトロン・フルートが強烈。CD のみの収録作品。
「Face To Face」(5:49)
リック・ウェイクマンを思わせる派手なシンセサイザーや激しく飛び跳ねてはけたたましく騒ぎ立てるアンサンブルなど「マイナーの YES か、躁状態の GENTLE GIANT か」といった趣の演奏ながら、リフは妙に演歌調でカッコ悪く、ヴォーカルはなんとドゥワップ調である。
この明るくもズッコケた感じ、ある意味非常にアメリカらしい。
ギターはバッキング、オブリガート、ソロにやたらと忙しく音をかき鳴らして詰め込み、シンセサイザーは華麗な指捌きで 9 連符だか 11 連符だかの跳躍アルペジオやスケールを決め捲くる。
とにかく、パターンを切り換えつつもガチャガチャと反復を続ける演奏である。
たとえクラシカルなフレーズを取りこんでも、クラシカルに聞こえずイージーな感じがするのは、ありあまる体力とエネルギーが緩急や音量の変化という音楽の表情付けの基本をぶっ飛ばしてしまうためだろう。困った人達である。
変拍子で疾走するところもあり、全体としては、サウンドとアンサンブルに凝ったロックンロールといえるだろう。
「Genius Of The Dance」(4:18)
メロトロンを演奏の主役に持ってきた純 YES 風のパストラルなフォーク・ロック作品。
メロトロン・フルート、メロトロン・ストリングスが伴奏にオブリガートに活躍し、珍しく細かなパッセージも刻んでいる。
位相系エフェクトを使ったギターのアルペジオもいい感じに決まっている。
全体に「Relayer」YES の影響は大きそうです。
「Solar Sailor」(6:20)
冒頭、GENTLE GIANT、BANCO 風のやや邪悪な変拍子オスティナートが炸裂するも、ヴォーカル・パートはメロディアスなポップス調である。
歌は前曲よりもアメリカン・ロックらしさが強い、たとえば CHICAGO のバラードのような感じである。
フルアコの音とヴァイオリン奏法が、どうしてもスティーヴ・ハウを連想させる。
バックでメロトロンが鳴り出し、ベースが高音でフレーズを刻むともう YES そのものである。
「Winds Of Time」(6:46)オムニバス風に場面展開するインストゥルメンタル中心の作品。
「草競馬」のような勢いで走り出し、テクニカル過ぎてコミカルになってしまったようなアンサンブルが沸騰する序章から、メロトロンとピアノによる珍しく優美でクラシカルなブリッジに着地、しかしギターのリードで再びタイトな演奏が復活、ギターとシンセサイザーの応酬を経て、今度は印象派(RENAISSANCE ?)風のピアノのブリッジ、そしてギター、オルガン、シンセサイザーが渦を巻くアグレッシヴな展開のクライマックスへ。ここでようやくノーブルなヴォーカル登場。
この最後に現れる短い歌の詩詞内容も、なかなか象徴的で高尚である。
全体に 3 連符による転がるような調子が強調されている。
「The Alchemist's Suite」RENAISSANCE ばりの正統クラシック・タッチを見せる傑作。
「prelude」(1:31)ピアノ、アコースティック・ギター、メロトロンによるクラシカルなトリオ。インストゥルメンタル。
「life celebration」(4:18)讃美歌調ハーモニー、ピアノ、シンセサイザー、ベースによる GRYPHON のようなアンサンブルを経て、後半からは、一気にハイ・テンションの演奏が盛り上がる。
「telesterion」(5:31)前曲とクロスフェードするのは、呪術的なドラム・ビートと怪しげな電子音。謎めいたムードである。シンセサイザーやアコースティック・ギターによるシンフォニックなアンサンブルがオーヴァーラップするも、次第に異教風の空気が支配的となる。ラベル、ストラヴィンスキー、EL&P の作風に近いが、メロトロンがゴーっと鳴り響くところが違う。
インストゥルメンタル。
「resurrection」(5:51)一転して A 面のテクニ-コミカル(私の造語)な曲調が復活した終曲。
けったいだが緊張感あるメロディのヴォーカルに、忙しないことこの上ないシンセサイザーが絡み、気まぐれな、ややカントリー風のギターが追いかける。アナログ・シンセサイザーがいい音で鳴っている。終盤、オペラ風の歌唱による厳かな展開へ。
「Summerland」(4:49)グルーヴィなジャズロック調のインストゥルメンタルとメロディ、リズムともに不自然なヴォーカル・パートから成る作品。
インストゥルメンタルの密度は上級フュージョン並だが、いかんせん酔っ払った GENTLE GIANT のようなヴォーカル・パートにインパクトがあり過ぎる。
「Now And Then」(1:43)91 年録音。
荘厳なシンセサイザーとヴォーカルによる讃美歌風バラード。
CD のみの収録作品。
(ZNR CD2001)