ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「EPIDAURUS」。 76 年結成。作品は 94 年の再編後含めて二枚。キーボード主体のシンフォニック・ロック。
Christiane Wand | vocals |
Heinz Kunert | bass, Taurus pedal, percussion |
Manfred Struck | drums, percussion |
Volker Oehmig | drums, percussion |
Günther Henne | Hammond C3 orgam Mellotron, Mini moog, Poly moog, Clavinet D6, Fender Rhodes piano |
Gerd Linke | Hammond C3 orgam Mellotron, Mini moog, 12 string, Clavinet D6, Steinway grand piano, Fender Rhodes piano |
77 年発表のアルバム「Earthly Paradise」。
内容は、ソプラノ・ヴォイスとツイン・キーボードをフルに活かした繊細かつダイナミックなシンフォニック・ロック。
アコースティック 12 弦以外はギターレスで、演奏の中心は二つのキーボードである。
ハードロック/ブルーズ・ロック色は皆無であり、キーボードによるクラシカル・テイストと、あえていえば、フォーク系のサウンドのブレンドである。
フォークにクラシック風のアンサンブルやキーボードによるオーケストレーションを加味したドリーミーな曲調といえば、影響元が GENESIS であることは自明である。
(実際キーボードのオスティナートなどにそれがうかがえる)
そして、アルバムが進むに連れ、音楽はインスト志向の一種独特な「厳格さ」をもったものとなる。
テーマやサウンドはファンタジックで叙情的なままだが、演奏全体に高い緊張感が張り詰めてくる。
このテンションは SFF に通じるものだ。
最終曲のシンセサイザー・シーケンスなど、第一曲のロマンティックな調子とはずいぶん趣が異なると思う。
へヴィな音は主としてハモンド・オルガンが担っており、重みとともにアクセントとしてのインパクトと音の広がりを伴っているので、管弦楽に近い効果がある。
ムーグ・シンセサイザーのレゾナンスの効いたシャープなサウンドとともに、いわゆるプログレらしさの演出としての大役を担っているといえる。
(キーボードのサウンドはトニー・バンクスばかりか数年後のロシア/東欧ロックのイメージもある。これは、ポリ・シンセサイザーの使用によるのだろう)
また、メロトロン・ストリングス/クワイアやストリングス・シンセサイザーによる音の厚み付けもセンスよく行われている。
シンセサイザーのリードが鋭利でなめらかなので、寄り添い追いすがるストリングス系の音が非常にいいコントラストを成しているのだ。
そして、夢想的で神秘的なシーンだけではなく、ジャズロック的なスピーディでキレのある演奏も盛り込まれている。
アルバムとしてのまとまりは今一つだが個々の楽曲の質は高く、特に、この時期の「ドイツ・シンフォ」にありがちな「まったりメロディアス系」とは完全に一線を画している。
要所でフルートも入って、神秘的なイメージを盛り上げている。
Garden Of Delights レーベルによる再発第一号。キーボード・ファンにはお薦め。ドラマーは旧 A 面をマンフレッド・シュトラク、旧 B 面をフォルカー・エーミッヒが担当しているようだ。
「Actions And Reactions」(7:01)ソプラノのリード・ヴォーカルをフィーチュアした繊細でヘヴンリーなシンフォニック・ロック。
「Silas Marner」(7:50)アコースティック・ギターの響きと SBB のようなシンセサイザー・サウンドがマッチした硬派のファンタジー。インストゥルメンタルの充実した傑作。
「Wings Of The Dove」(5:05)ハモンド・オルガンが唸りをあげるクラシカルなインストゥルメンタル。硬軟の対比が生む劇的スリル。
「Andas」(6:15)ジャズロック的なスリリングなインスト・チューン。
「Mitternachtstraum 」(6:05)クラウト・ロックらしさを出した作品。
(GEMA 1004 / GOD CD001)