ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「EPIDERMIS」。 作品は 77 年と 90 年代の再編後の一枚の計二枚。 GENTLE GIANT に影響を受けたと思われる込み入った演奏が特徴。
Reiner Neeb | drums, glockenspiel, recorder, vocals |
Wolfgang Wunsche | bass, vocals |
Rolf Lonz | guitar, recorder, vocals |
Michael Kurz | keyboards, vocals |
77 年発表のアルバム「Genius Of Original Force」。
内容は、多彩な器楽を動員した技巧的なアンサンブルと三声の込み入ったハーモニーが特徴的なシンフォニック・ロック。
GENTLE GIANT の影響らしく、タイトル曲を中心にほぼ全曲で複雑なマドリガル(多声の追いかけコーラス)を採用している。
リコーダーの使用も本家の影響なのだろう。
GG や初期 YES を思わせる、小刻みなフレージングやリズムを強調した鋭角的な演奏である。
いわゆるロックといったときに連想されやすいブルーズ・ロック系のハードロックとは完全に種類を異にする音であり、どちらかといえば、サイケデリック・ロックからルーズさを取り除いてミニマリズムのフィルタを通したような感じだ。
そういった演奏によって、曲調は暗めなのに素っ頓狂なメイン・テーマを巡って比較的ゆるゆると変化してゆくが、その変化の幅そのものはかなり大きい。
コーラス以外にもアコースティックな音や三拍子系のアンサンブルなどクラシカルな演出はある。
展開をリードしているのはギターのフレージングだろう。
キーボードはクラヴィネット、チェンバロ系の音でギターとともに展開を支え、他の鍵盤でよろずサポート役として機能している。
そして、肝心のメッセージを刻み付ける役割を立体的なヴォーカル・ハーモニーが担っている。
全体に、地味でこじんまりした印象はぬぐえないが、丁寧なつくりではある。
GG の影響は、リコーダー・アンサンブルにも顕著だ。
ヴォーカルは英語。
ジャケットは CD 化に際して変更された。(オリジナル LP では、紙に開いた大きな破れ目から脳が見える不気味なものだった)
CD 最終曲は、90 年代に同じメンバーで録音された作品。作風が大きくは変わらないことに驚いた。
「The Non-Existent Surroundings Of God」(10:40)長いクレシェンドによるフェードインが呼覚ますのは、ベースやクラヴィネットらによる硬く粒立った音色のアンサンブルと教会風のコーラスである。ハーモニーは、デレク・シャルマンとケリー・ミネアのコンビによく似ている。
意外なほどクラシカル。終盤のインストは、本家ほどテクニカルではないが、アブストラクトなフレーズを組み合わせた力演である。
「A Riddle To Myself」(6:35)どことなく 60 年代ヒット曲のような感傷を引きずるテーマによるメロディアスなバラードが得意の小刻みで込み入ったアンサンブルへと変化。それでも最初のポップス的な味わいを忘れない。
「Genius Of Original Force」(11:35)GG への憧憬をストレートに表しつつ大胆な展開を見せる力作。
無調風のメロディのセンスは、WEB/SAMURAI にも通じる。クラヴィネット大活躍。
「Prime Origin」(5:35)ドイツ語では「Der Urknall」と表記されているので、「ビッグバン」のことだと思う。基本的にインストゥルメンタルだが、第一曲のテーマを再現し、短いメッセージを繰り返す。
「Feelings」(4:52)ボーナス・トラック。90 年代の録音。
ピアノ伴奏によるバラード。ハーモニーやメロディ・センスは大きくは変わらない。
(KERSTON GER 65063 / WWMS 010)