ERTLIF

  スイスのハードロック・グループ「ERTLIF」。 69 年結成。 78 年解散。 92 年再結成。 2002 年新作発表。 メロトロン、オルガンとギターによる VERTIGO 風のサウンド。 ヴォーカルも男臭く古き良き音である。 グループ名は高名な錬金術師からとられた。

 Ertlif
 
Richard John Rusinski vocals, 12 string guitar
James Mosberger organ, Mellotron, piano
Teddy Riedo bass, VCS3
Hanspeter Börlin drums, percussion
Danny Andrey lead guitar on 2-9
Robi Süffert lead guitar on 1
Andy Gerber grand piano on 1, violin on 1

  72 年発表のアルバム「Ertlif」。 内容は、ピアノ、オルガン、メロトロンを中心にしたクラシカルな曲調に土臭い男性ヴォーカルとギターを盛り込んだ 70 年代初期の典型的なプログレッシヴ・ロック。 ハードロックのヘヴィネスとメロディアスなデリカシーが両立しているところが特徴である。 男っぽいヴォーカルや野太いドラムスなど音質は決してソフトではないが、ブルーズ色が希薄であることに加えてオルガン中心のキーボード・プレイが生む音のまろみと工夫を凝らしたアレンジが曲調にゆったりした広がりを与えている。 ブリティッシュ・ロックのコピー的な面が強い一方で、どこかのほほんと鷹揚に構えているところがあって英国ほど屈折した憂愁は感じさせない。 むしろアーシーなロックンロール色を強く打ち出してノリよく盛り上がることもある。 こういう硬軟織り交ぜた多彩さはライヴ・バンドとしてのキャリアのなせる技なのだろう。 イージー・ゴーイングなスタイルもちゃんと似合うのだ。 とはいえ、随所で見せるユニークなアンサンブルや劇的過ぎる展開が新しいロックを感じさせたのもまた間違いない。 オルガンをフィーチュアした 2 曲目や 9 曲目の DEEP PURPLEPROCOL HARUM 調の哀愁がアルバムを引き締めている。 演奏はまとまりよく完成度が高い。 ヴォーカルは英語。 再発 CD では 1 曲目に 74 年録音のボーナス・トラックがつく。 60、70年代英国オルガン・ロック・ファンにはお薦め。

  「Plastic Queen」(7:10)ボーナス・トラック。 シンセサイザー、メロトロンを用いたシンフォニックなナンバー。 ハードロック調のヴォーカルの脇をピアノとオルガンが固めている。 どうということない曲だがクラシカルなキーボードがみごとにレベルを引き上げている。 この路線でアルバムが欲しかった。

  「Try Making It Easy」(4:23)オルガン、メロトロンをフィーチュアした哀愁あるクラシカルなナンバー。 シンフォニック。

  「Train Of Time」(6:48)カントリー・ウエスタン風のテーマをもちながらアコースティック・ギターのストロークとメロトロンがシンフォニックな高まりを見せてゆく。

  「You're Nothing At All」(2:40)イアン・アンダーソンを思わせるトラッド風のヴォーカルとアコースティック・ギターによる 3 曲目のエピローグ的な存在の小曲。

  「There Is Only Time To Die」(5:40)ピアノとオルガン、アコースティック・ギター、ストリングスによる讃美歌調オルガン・ロック。 ヴォーカルの男臭さとクラシカルな曲調の絶妙の取り合わせである。 イタリアン・ロック調の荒々しい展開や郷愁あふれるアコースティック・パートあり。

  「The Song」(5:05)アシッドなハモンドが唸りをあげる泣きのハードロック。 ファズ・ギターも珍しく全面に出る。 だみ声ヴォーカル、ギターを中心にブルージーなテーマをキープし間奏部分ではやや軽快に変化しクラシカルなオルガンを目一杯フィーチュアする。 CRESSIDASTILL LIFE に通じる世界である。

  「High And Dry」(2:23)ヘヴィなギター・リフがドライヴするハードロック。 ラフでブルージーな典型である。 ドラムスのオーヴァー・ダブあり。

  「Walpurgis」(4:37)ギターとオルガンによるミステリアスなテーマが面白いナンバー。 オルガンはクラシカルなプレイからヘヴィ・メタル風のリフ、ジャジーなソロまでたっぷり使われる。 タイトルのイメージ通りの怪しげなナンバー。 オルガン入り BLACK SABBATH

  「Classical Woman」(7:50)アコースティック・ギターとメロトロン、オルガンによる勇壮かつ叙情的な大作。 ヴォーカルを軸にした宗教劇的な場面から自由な曲想の即興的アンサンブルを経て悠然たるメロトロンとオルガンのデュオへと進む。 エンディングはバロック音楽とヘヴィ・ロックのみごとな融合。 全体として DEEP PURPLE 的。

(BRR-CD 001)


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