THE FOUNDATION

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「THE FOUNDATION」。 TRIBUTE に参加したメンバーで 84 年結成。グループ名は予想通り A.アシモフの SF 小説由来だそうだ。

 Departure
 
Johan Belin synthesizers
Jerker Hardange guitars, cello, lead vocals on 2
Roger Hedin bass, stick
Jan Ronnerstorm drums, percussion, lead vocals on 1, 5

  84 年発表のアルバム「Departure」。 内容は、80 年代らしいデジタルでクリアーなサウンドを活かした清冽で若々しいシンフォニック・ロック。 同時期の CAMEL や Virgin 系のグループ(特に、マイク・オールドフィールドや TANGERINE DREAM の影響は大きそうだ)に通じる、英国ロック風のメランコリーをフュージョン・タッチのポップなサウンドで包んだ作風である。 そして、そこに北欧のグループらしい清潔感や素朴さ(フォーク・ソング志向)が加味されている。 したがって、都会的なイメージの 80 年代サウンドを使った曲なのに、ヴォーカルの訛り含めどこか垢抜けなさがある。 それも個性であり魅力だろう。 脈動するシンセサイザー・ビート、シンセサイザー・ベース、電子処理したヴォイスなどこの時代らしいサウンドが随所で使われている。 (もちろんデジタル、ポリフォニック以外のアナログ・シンセサイザーも使われているが、前者が目立つ) 時代の音を取り入れたシンフォニックなプログレということでは、ハンガリーの EAST や旧ソビエトの KASEKE と同列に並ぶ。 また、この時代から定着してきた民族/ワールド・ミュージック系の音使いも、パーカッションやシンセサイザーに現れていると思う。 最終曲では、メランコリックなアコースティック・ギター弾き語りからミニマルなキーボード・フレーズとストリングスがオーヴァーラップするドリーミーな展開を経て、タイトル通り、彼方へ旅立つような(そしてそれを見送るような)終幕を迎える。 期待と無常感が一つになった、胸に迫る響きである。
  70 年代中盤までは、厚みと深みのあるストリングス系のキーボード・サウンド(またはオルガン)を細かなドラミングと力強く音数多いベース・ラインで支えるスタイルが、交響楽的な広がりと色彩感を持ったシンフォニック・ロックを形作っていたが、70 年代終盤からは、同様な広がりや色彩感、幻想性などをよりシンプルで機械的なビートとデジタル・シンセサイザーの輪郭が明確で透明感のあるサウンドで作り出すようになった。 交響楽のバンド・シミュレーションを超えた、エレクトロニクスによるシンフォニック効果を目指しているといってもいいだろう。 個人的にはこの時代にあふれたデジタル・サウンドには辟易したが、ことシンセサイザーに関していえば、デジタル・ポリフォニック・シンセサイザーによる透明なサウンドはキライではない。 この作品の音もその典型的な一例である。 そして、何より、二十代の若者たちがここまでの音を作りあげたことに感動する。
   自主制作のアルバムの売り上げに貢献したのはどうやら日本のファンだったらしい。 CD は MUSEA 初期の再発に多くある盤起こし。 二曲のボーナス・トラックもぶれのない佳曲である。

  「Walking Down The Avenue」(5:40)
  「Crossing Lines」(12:16)
  「Migration Time」(1:09)インストゥルメンタル。
  「D-Day Down, Forces On The Way, The Last Of All Battles」(8:15)インストゥルメンタル。
  「Final Thoughts, Departure」(12:31)名曲。
  「Red Cross (And My Very Best Wishes)」(5:42)ボーナス・トラック。インストゥルメンタル。
  「Don't Wake Me Up」(15:46)ボーナス・トラック。インストゥルメンタル。カナダ、ケベック圏のグループの作風に通じるクールなロマンのある作品。
  
(HEAVENLY HEIGHTS 224 374 / FGBG3415.AR)


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