ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ「FUGATO ORCHESTRA」。2000 年結成。作品は三枚。最新作は 2017 年発表の EP「Hybrid Harmonies 1」。小管弦楽編成によるクラシック風のボーダーレス・サウンド。
Gábor Veisz | bass | Réka Bartányi | contrabass | Anna Radványi | cello | György Lelovich | cello | Tamás Zétényi | cello |
Delov Jávor | drums | Helyettese Jelenlegi | drums | Zsolt Nagy | drums | Dániel Papp | percussion | Zsolt Kugyelka | percussion |
Kriszti Lukács | flute | Lívia Marschall | flute | Gábor Valentiny | flute | ||||
Mónika Szénási | guitar | Gyõzõ Széki | oboe | Péter Hargitai | trumpet | ||||
Dávid Tóth | viola | Dóri Jekl | viola | Beatrix Kutas | violin | Diána Bazsa | violin | ||
Ferenc Puss | violin | Kinga Ujszászi | violin | Radics Ádám | violin | Györfi Anna | vocals |
2004 年発表のアルバム「Neander Variations」。
内容は、ノーブルな管弦楽曲にエレクトリックなサウンドで味付けしたシンフォニック・ミュージック。
ドラム・ビートや低音部などのロック・バンドらしさとキーボードによるカラフルな音響を巧みに生かしている。
同郷の雄 SOLARIS と共通しつつも無作法なハードロック・テイストを取り除いた、よりクラシカルで品のいいタッチの作風である。
メロディや抑揚にためらいのない甘さやロマンチシズムをこめるところや、軽快なビートと明快極まるアンサンブルなどポップス・オーケストラと似たイージーリスニング的な機能性もあり。
もちろん耳に優しいばかりではなく、さりげなくテクニカルなキメに落とすドヤ顔的パフォーマンスやけれん味あるアレンジもある。
軽めのビートに煽られるままにピアノとトランペットがせめぎ合うシーンなどは、「EL&P を連想して AFTER CRYING のパフォーマンスに鳥肌を立てていた」時代を思い出させてくれる。
本格的な遁走曲といった正統クラシック調からインダストリアルなタッチのモダンロック風の作品、変拍子を強調した現代音楽など作風は多彩。
モノトーンでデジタル、クールなコンテンポラリー・タッチと普遍性のある宗教的な重厚さが一つになって全体を貫いている。
演奏の軸となっているテーマに浮かびあがる土臭く素朴なペーソスとそれを彩るエレガントな音遣いが特徴だ。
教会コラール風の詠唱もあり。
フルートのアクセントの効かせ方が SOLARIS まんまなのは意図的なのだろうか。
(BGCD 121)
Fugato Orchestra |
2010 年発表のアルバム「Noé」。
AFTER CRYING 路線強まる。
つまり近現代クラシックのステージに古今のポピュラー・ミュージックを引っ張り上げるとともに吹奏楽やジャズのビッグバンド化を伸長し、高尚なムードとともに演歌っぽい哀愁とアーバンな洒脱さ、アヴァンギャルドな逸脱感も盛り込んで面白さは倍増した。
変拍子含めリズムの多様化も図られている模様。
各パートの旋律がせめぎ合うアンサンブルはスリリングにして躍動感もあってじつに楽しい。
さらりと現れる「ビバリーヒルズ・コップ」のテーマはあたかも本作がエンタテインメントとして優れていることを象徴しているようだ。
そしてクラシカルな透徹さや厳粛さはこの変化の中でさらに際立ってくる。
男女ヴォーカルも本格的、そして JAMIROQUAI ばりのヒップホップ感覚すら披露。
タイトル曲は重厚なプレゼンスと繊細な美しさのある王道コンテンポラリー・ハイプリッド・クラシカル・ロック。
しかしながら、トランペットが鳴ると AFTER CRYING に聴こえ、フルートが舞い踊ると SOLARIS に聴こえてしまうわたしの耳の貧しさはいかんともし難い。
何にせよ多様な音楽を取り込んで生き生きとした新しい表情を作り上げたアコースティックな管弦楽ロックの逸品といえる。
作曲センス抜群。
(BGCD 212)