ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ「AFTER CRYING」。 86 年結成。 アコースティックな即興室内楽からスタートして、シンセサイザーやリズム・セクションを順次導入し、ヘヴィなシンフォニック・ロック・バンドへと進化した。 EL&P や KING CRIMSON を敬愛する。 「Starless」が好きな人にはお薦め。
Batky Zoltán | vocals, lyrics |
Egervári Gábor | lyrics, narration, claps, vocals, live sound |
Madai Zsolt | drums, percussion, claps, vocals |
Pejtesik Péter | compositions, cello, violin, bass, keyboards, vocals, programming |
Torma Ferenc | compositions, guitars, keyboards, claps, programming, bass, vocals |
Winkler Balázs | compositions, trumpet, zink, keyboards, programming, vocals |
2011 年発表の八作目「Creatura」。
前作に続き、怪しげなナレーション、ヴォーカルが導く陰鬱で重厚なコンセプト・アルバム。
本作でも、EL&P を管弦楽で逆再現したような、または KING CRIMSON の「Starless」の再現専門のような、攻撃的なモノクロームのアンサンブルで迫っている。
そして、抜群の存在感を放つのはやはりチェロとトランペット。
今回は予定調和を破壊する薬味のようなヴァイオリンもなかなかのものだ。
近作では現代音楽/ワールド・ミュージック調が強まってきたが、その一方で、優美かつ厳かな賛美歌ロック・テイストも残っている。
緩やかで静かな作品においても、ワールド・ミュージック系のやや安易な癒しというよりは、教会における「魂の救済」をイメージさせるものになっている。
ピアノと弦楽、金管のコンビネーションがクラシックとジャズの間を揺れ動くような(つまり EL&P っぽい)ところもある。
インストゥルメンタルでの緊張感をほぐすかのような歌ものにおける特徴的な逸脱感も、変わらぬ魅力の一つになっている。
そして、厳つい原語によるポップな味わいにももはや貫禄が見える。
一方、近年の東欧諸国の熱気にあてられたか、アコースティックかつモダン・クラシカルなアンサンブルにおいてメタリックなギターを躊躇なく咆哮させて、KING CRIMSON の作風とはまた異なったタッチの、いわば今風なハイテンションで突っ走っている。
この辺りは新しい趣向だと思う。
さまざまな音楽をまぜこぜにした上で個性的な響きとして打ち出すことができている、つまり成人ファン向けの現代プログレである。
東西南北(順番は、西北東南だが)で四曲というのは、少し前のプリンスやパット・メセニーと同じ趣向か。
(BGCD 201)
Vedres Casaba | piano, synthesizer, vocals on 1,3,5,6 | Pejtesik Péter | cello, vocals on 2,4 |
Fogolyan Kristof | flute | Maroevich Zsolt | viola |
Andrejszki Judit | vocals | Makovecz Pal | trombone |
Racz Otto | oboe | Tuske Aladar | basson |
Winkler Balázs | trumpet |
90 年発表の一作目「Overground Music」。
内容は、キーボードをフィーチュアした小管弦楽編成によるアコースティックな歌ものプログレッシヴ・ロック。
器楽構成から明らかなように音楽のベースはクラシックであり、そこへ饒舌なヴォーカルやフリー・ジャズを放り込んでポピュラー音楽へと接近してきた、ユニークなサウンドである。
超絶的なアコースティック・ピアノが、アグレッシヴなビート感と果敢なフレージングで楽曲の展開をリードして、抜群の存在感を放つ。
一方、ヴォーカルは頼りなげながらも個性的な風情で全曲歌い切っている。
クラシカルなのに「性急」で「奔放」、「過剰」な感じが、まさしくプログレ王道なのだ。
また、KING CRIMSON や VAN DER GRAAF GENERATOR のクラシカルな部分の再現から始めて、そのままプログレに寄ってきたともいえそうだ。
ドラムス不在は次のアルバムで解消される。
ヴォーカルは英語。
作曲は、ピアニスト、ヴェドレス・シャバとチェリスト、ペジテシク・ペーテル。
1 曲目「European Things(Hommage a Frank Zappa)」(8:27)
フルート、オーボエ、ヴィオラ、ヴァイオリン、さらにはトランペットも用いた、ミニ・オーケストラ編成に、超絶ピアノと変態ヴォーカルを加えたニュー・ミュージック大作。
ジャズとクラシックとポピュラー音楽の衝突と融合がスリリングに展開される、一種のアヴァンギャルド・ミュージックである。
あくまで各スタイルの明解なパッチワークであるが故に、展開が予測できない面白さとともに、各パートの聴きやすさがあるところがおもしろい。
この手のサウンドにありがちな、強圧的で衝撃的、ときには苦痛ですらある難解さはない。
その明快さは、NEW TROLLS がストリングス入りのロックをやったときと同様である。
あくまで、芯が通ったポップスなのだ。
たまたま演奏において、クラシックやジャズへと手を広げているだけなのだ。
さて、ヴォーカルにザッパらしさが漂うものの、演奏や作曲技法にどれだけ影響があるのかは定かでなく、あまりタイトルに拘泥する必要はないようだ。
ただいえるのは、これだけ複雑な作曲を完全なアンサンブルで演奏する技巧はただごとではない、ということ。
特に、ピアニストは演奏全体をリードし、アクロバチックな演奏を難なくかっ飛ばしている。
前衛的かつメロディアスな稀有の作品であり、新たなチェンバー・ロックの出現かもしれない。
ヴォーカルが垢抜けないところが、なんともおかしい。
2 曲目「Don't Betray Me」(3:02)
パストラルなラヴ・ソング。
トランペットのオブリガートが輝かしく高鳴り、間奏では、トランペットを弦楽アンサンブルが豊かな低音で支える。
神経症的超絶ピアノは、伴奏を超えた存在感で間断なく奏でられる。
このグループの「静」の部分を見せる、典型的アコースティック・アンサンブル。
3 曲目「Confess Your Beauty」(6:50)
ピアノ伴奏による、クラシカルかつジャジーな歌もの。
垢抜けないポップス風歌メロとシリアスな弦楽、目のさめるように本格的なピアノ演奏がすさまじい対比を見せる。
ピアノは、モーツァルトのエチュードからジャズまでシームレスに変化。
間奏は、まずフルート、チェロ、コラールらによる近代風アンサンブルだ。
弦楽のせわしないボウイングの嵐を貫くフルートが美しい。
叙景的な演奏だ。
続いて、ランニングするチェロのピチカートと超絶ピアノ・ソロ。
間奏後のアンサンブルでは、再びフルートが現れ、ヴァイオリンとともにバルトーク風の演奏を繰り広げる。
4 曲目「Madrigal Love Part One」(2:14)
ピアノ伴奏によるパストラルな教会音楽風のヴォーカル曲。
おそらく、タイトル通りマドリガルなのだろう。
5 曲目「...to Black...」(5:05)
管楽器をフィーチュアした、ピアノ伴奏のファンタジックなヴォーカル曲。
フルート、オーボエ、トロンボーン、バスーンらがソロやアンサンブルを見せる。
管楽器がのどかな音色で優美な表現を見せるのに対し、ピアノ、弦楽器は神経症的なオスティナートを刻む。
間奏の冒頭のオーボエ、枝を飛び交う小鳥のようなフルートのオブリガートが美しい。
全体的には甘めである。
KING CRIMSON の「Lizard」や「Starless」を思い出してしまう音である。
6 曲目「Madrigal Love Part Two(Over Every Sea)」(3:00)
一転ジャズっぽい 4 ビートのハイハットによるリズムと、クラシカルな器楽を無理やりつなげた調子のよいパート 2。
ツイン・ヴォーカルがユニゾンし、メロディはパート 1 同様クラシカルだ。
金管アンサンブルが、ややクレイジーにオブリガートする。
金管と女性ヴォーカルをフィーチュアしたジャズ・コンボの投入も楽しい。
メロディアスなヴォーカルと緊迫したリズムの組み合わせには、どこかイラつくところがある。
すわりの悪い曲だ。
7 曲目「Madrigal Love Part Free」(0:51)
パート 2 の断片を用いて、脈絡をさらに崩壊させたコラージュ風の小品。
ジャズ・コンボにチェロも参加しようとするが、突然断ち切られ、ヴォーカルやドラムス、ピアノが次々と現れてバタバタと崩れてゆく。
8 曲目「Shining(...to the Power of Fairyland)」(10:44)
管絃を総動員し、コケットな女性ヴォーカルをフィーチュアしたドラマチックなシンフォニック・バラード。
低音を強調したピアノ/弦楽による重厚かつ厳格な現代音楽に、金管のファンファーレと優美なフルート、オーボエが舞い踊る、美しく深みのある作品だ。
ピアノとヴォーカルは、ポップス風からクラシックまでを境界を感じさせずに行き交い、雰囲気をファンタジーから宗教音楽まで自在に操る。
序盤は、やや暗めの RENAISSANCE といった感じのクラシカル・ポップス。
間奏は、近代ものを思わせる美しい弦楽奏。
バルトークだろうか。
フルートが交錯するところが、最初のクライマックス。
ヴォーカル・パートは神々しい美声ファルセット。
清らかである。
即興風のフリー・フォームの演奏をエア・ポケットのように通過し、再びメイン・ヴォーカル・パート、そして雄大なエンディングへ向かう。
中盤以降は管絃、ピアノ、ヴォーカルが、クラシック演奏の本領を発揮して美しくも気品ある演奏に仕上げている。
爆発的、圧倒的な演奏力のピアノを軸に、室内楽に過剰なエネルギーを注入したアンサンブルによって、ジャズ、ロックなどポピュラー音楽の方へと乗り込んできたユニークな作品。
ベースとなるクラシックは、深刻さと破格、そして宗教色からバルトーク系だろう。
ブラスとピアノに顕著なジャズ・タッチは、意識的なのかどうか分からないがパロディ風であり、唐突なコーラジュなどによるユーモアの感覚はフリー・ジャズを超えている。
そして、これだけ大仰に広げた音楽的風呂敷にもかかわらず、ヴォーカルがポップス寄りなのもおもしろい。
この音楽は、RENAISSANCE のような、いわゆるプログレのタームでの「クラシカル・ロック」とは一味違う。
いわば、管弦楽奏者がちょっと気が変になって、そのまま突然ザッパや KING CRIMSON や VAN DER GRAAF GENERATOR のようなロックもやれば、弾き語りもやる、ようなのだ。
そして、その転身のパワーの源泉は、徹底して情熱的で変幻自在、キース・エマーソンもビックリの超本格的ピアノである。
ほかにも、チェロを筆頭にすべての楽器が正統的なテクニックを誇っており、この調子でプログレのエリアを驀進したら、どういう音がでてくるのか見当がつかない。
目が離せないグループだ。
歌ものアコースティック・プログレの傑作。
(BG CD 001)
Vedres Casaba | piano, vocals | Pejtesik Péter | cello, synthesizer, vocals |
Winkler Balázs | trumpet, synthesizer, vocals | Gacs Laszlo | drums, percussion, vocals |
guest: | |||
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Winkler Orsolya | violin on 2 | Winkler Zsofia | violin on 2 |
Fias Barbriella | oboe on 1,3 | Maroevich Zsolt | viola on 2,5 |
Andrejszky Judit | vocals on 2,5 | Makovecz PalWinkler Zsofia | trombone on 1 |
Acs Akos | clarinet on 1 | Tuske Aladar | bassoon on 1 |
92 年発表の二作目「Megalázottak És Megszomorítottak」。
管弦楽はゲスト扱いとなり、メンバーにはわずかにトランペット奏者を残すのみとなった。
一方、ドラム奏者が新たにメンバーとして迎えられている。
しかし、打楽器加入がそのままロック色の強化にはなっていない。
むしろ、一作目と比べて、エネルギッシュなパートよりも美しい旋律とおだやかなアンサンブルが目立つ、よりクラシカルな作風になっている。
ピアノが暴走するような場面はなく、チェリストのプレイを軸に最小ユニットによる堅実なアンサンブルが優美にして緊張感ある演奏を繰り広げる。
ヴォーカルは少なめ。
新しいスタイルのチェンバー・ロックの提案ともいえそうだが、どちらかといえば、KING CRIMSON や VAN DER GRAAF GENERATOR のクラシカルなところを抽出して真似(相当高度な真似ではあろうが)しているうちに、音楽的な方向が定まったきた感もあり。
「A Gadarai Megszállott」(22:10)
ピアノ、チェロ、管楽器による巨大なインストゥルメンタル・パートをフィーチュアした、陰鬱ながらも情熱が渦巻く弾き語りフォーク風の作品。
重厚なサウンドによる厳めしい展開であり、賛美歌風になるところもあるが、ポップスの狂おしいバラードのようなニュアンスも強い。
クラシックのオペラから下界に降りたのがポップスのバラードならば、下界の歌を歌いたかったがサウンドだけ天国のままだった、という感じである。
これはそのままこのグループの個性である。
シンバル中心のリズムの上で、管弦、シンセサイザー、ピアノらが印象的なテーマを次々に綴り、緩やかにやり取りを繰り広げる。
ヴォーカル、モノローグは一部のみにもかかわらず存在感がある。
終盤、フリー・ジャズも飛び出して激しく煮えたぎるが、そこまでは深刻さと緩やかさが交じった、長い長いクレシェンドをたどるような、なんともいえない曲調である。
器楽アンサンブルというよりは、細い緊張の糸をたぐるプレイの連続というイメージである。
個人的には、毀誉褒貶喧しい KING CRIMSON の「Lizard」を思い出してしまう内容だ。
「A Kis Hõs」(3:23)弦楽アンサンブルと混声のコラールによる厳かで、なおかつ雅な小品。
タルコフスキーの映画を思わせる静かで謎めいた曲調であり、険しく悲愴なタッチが一貫する。
「Noktürn」(1:52)
ハーモニウムのような丸みのあるシンセサイザーが伴奏する歌もの。
ディレイがかかったスネア・ドラムス、子供の嬌声のようなオーボエ、いかにも欧州然とした男性ヴォーカル、ノスタルジーの温もりもあるが、すべてが淡くはかない。
「Megalázottak És Megszomorítottak」(11:40)
リズム・セクションがフル回転するチェンバー・ハードロック。
チェロが絶叫しながら駆け巡り、ピアノは壮絶なるオスティナートで攻め立てる、凶暴で怪奇なアンサンブルである。
極端な沈滞と高揚を繰り返し、遮二無二駆けずるかと思えば、ふと我に返って祈りを捧げる。
トランペットや弦楽器の使い方には、「Lizard」や「Islands」の CRIMSON を思わせるところもある。
荒々しさに暗闇に沈んだような知性を感じさせる傑作。
「Végül」(2:25)
緩やかなバックグラウンドに奔放なソロを重ねたフリーミュージック。
空へと羽ばたいてゆくようなメロディと、ピチカートによる西アジア、地中海風味のエキゾティックなソロを見せるチェロ、ようやく出番を得てヤケクソ気味のドラム・ソロ、神秘的なシン
セサイザーの調べ。
エピローグ的な位置づけだろう。
(QUI 906014)
Torma Ferenc | guitars |
Pejtesik Péter | bass, cello |
Gacs Lazlo | drums |
Egervári Gábor | flute |
Vedres Casaba | pinao, synthesizer |
Winkler Balázs | trumpet,synthesizer |
94 年発表の三作目「Föld És Ég」(「Earth and Sky」「大地と天空の寓話」)。
ロック・バンド化は加速し、サウンドも急転換、一気に EL&P になってしまった。
まず衝撃的なのが、メドレー風の 1 曲目「Manticore erkezese 1(マンティコアの回帰 T)」と 2 曲目「Manticore erkezese 2(マンティコアの回帰 U)」。
タイトルとおり、演奏は、若干けたたましさの少ない EL&P そのものである。
無聊をかこつ手遊びは、いつしか本職を凌駕し、遂には誰にも止められぬ状態へ突入したようだ。
このサウンド、二作目までは小手調べであり、本作からこそが本性むき出しの大勝負であったことが判明した。
それにしても、東欧圏のど根性プログレ魂には、開いた口がいったんふさがってまた開きっぱなしになりそうだ。
作品は、キーボードが中心になるものとトランペットやギター主体のものに大別される。
トランペットは、バロック音楽または現代音楽調の活躍を見せ、存在感あり。
最もイメージ的に近いのは、おそらく、BANCO のオーケストラ共演の名作「Di Terra」である。
1 曲目「Manticore erkezese 1(マンティコアの回帰 T)」(1:48)
8 分の 6 拍子、3 連符でたたみかける低音の旋律と、エキゾチックな和音が強烈なピアノ曲。
そこにフルートもからんでくる。
ただし、あくまで前に前にと駆り立てるエマーソン風のピアノが主役であり、強烈な印象を残す。
手数の多いドラミングも、初っ端から絶好調である。
2 曲目「Manticore erkezese 2(マンティコアの回帰 U)」(6:36)爆発音を経てベースがシャフルのワンノート連打を繰り出すと、満を持してオルガン登場。
かみつくようにアグレッシヴなリフに総毛立つ。
高らかに和音を放つオルガンにシンセサイザーが重なる。
ヘヴィなオルガンのリフレインにストリングスがオーヴァーラップし、まず一山。
ヴォーカル・パートは山を越えたややリラックスしたムード。
あいかわらず英語が垢抜けず、のんびり感あり。
しかし興奮しているので、ちょうど一息入れられる。
間奏で低音のシンセサイザーがオルガンのリフを繰り返すところでも、鳥肌である。
イメージは完全に「Toccata」でしょう。
ヴァースに続くのは、転がるようにスピーディなオルガンのスケルツォ。
メロディアスなヴォーカルを引き継いで、オルガンが 3 連のフレーズを華やかに叩きつける。
ストリングスの轟き。
オルガンがサスペンスフルな和音を決める。
冒頭から唖然である。
技巧的にも本格派といえるピアニストが、何を思ったかオルガンも弾いてしまった。
エマーソンが憑依しているとしか思えない衝撃の作品。
ハンガリー恐るべし。
3 曲目「Enigma(謎)」(1:22)シンセサイザー・ストリングスをバックにしたコラール風のハーモニー。
哀愁あるチェロの旋律。
タイトルがいい。
4 曲目「Rondo(ロンド)」(3:40)「悪の経典・第二印象」。
ドラムスとピアノによるジャジーでワイルドなデュオ。
途中オルガンも加わる。
中盤からホンキートンク風のプレイへと変わり、「用心棒ベニー」そのまんま。
それにしてもピアノの演奏は圧巻。
5 曲目「Zene Gitarra(ギターの為の楽曲)」(3:14)鳥がさえずる中を、アコースティック・ギターが静かに流れてゆく。
7 th やテンションも用いたアルペジオは、ハンガリー風というよりも中南米風。
そして、クラシックというよりはジャズ風である。
控え目ながらも心地よい余韻を残す演奏だ。
アコースティック・ギター・ソロ。
6 曲目「Leltar(エチュード)」(3:58)3 曲目と同じく教会コラール。
終盤まで無伴奏である。
バロック・トランペットの響きは、静かな祝福である。
いかにも大陸/カソリック風の、雅にして厳かな雰囲気。
最後は突如遠くで銅鑼が鳴る。
7 曲目「Cisz-Dor Koncertetud(目録)」(3:10)再び圧倒的なピアノ・ソロ。
左手の繰り返しのパターンは「石をとれ」の後半。
ジャズとクラシックを何の境目もないように自由に華麗に動き回るプレイに、再び呆然。
これで R&B 的ルーズさがあれば、ほぼ完璧にエマーソン。
クラシック・ピアノだけならは彼よりうまいでしょう。
8 曲目「Puer natus in Bethlehem(ベツレヘムのプエル・ナトゥス)」(6:03)静々と湧き上がるストリングスを貫いて、バロック・トランペットが滔々と響き渡る。
無常感と安らぎがともに訪れる。
慈愛に満ちたミサ曲である。
心洗われます。
9 曲目「Judas(ユダ)」(9:39)
ミステリアスなシンセサイザーがゆったりと広がり、マイルス・デイヴィス風のトランペットが突き刺さる SF 映画調オープニング。
一転スピーディなリズムが飛び込み、ギターやトランペットが高鳴ってスリリングな演奏が走り出す。
怪しげながらもメロディアスなところは、さすがに今のプログレである。
とはいえ快感。
テンポがやや落ちつくと、ヴォーカル登場。
本作では、ロック・ビートとギターのヘヴィなディストーションは、かなり新鮮だ。
ややおっかなびっくりという感触もある。
情感の希薄なヴォーカルに対し、「ユダ」を繰り返すコーラスは神々しく気高い。
熱を帯びアジるようにヴォーカルが叫び、輝かしきバロック・トランペットが高鳴る。
ピアノが静かに伴奏し、音に厚みを与えている。
続いて不気味なギターのロング・トーンとトランペットの呼応。
鐘も鳴る。
静かに沈みこむ演奏。
機械的なドラム・ビート。
ストリングスとトランペットの呼応。
続いてギターとストリングスがゆるやかに流れ出す。
そしてヴォーカル。
フリップ風のギターによる重々しい演奏が「ユダ」のコーラスでふと力をぬきリラックスする。
再び熱っぽいサビのシャウト。
トランペットが華やかに響き、ギターは荒々しくざわめく。
グリッサンドでアップ・ダウンするベース。
トランペットとギターのかけあいがエキサイトする。
トランペットとギターがハーモニーをなすと、一気にテンポ・アップ。
ミステリアスなテーマが快調なテンポで奏でられる。
トランペットのフレーズをベース、ピアノと引き継いでゆくうちに、テンポ・ダウン。
うつろな表情でヴォーカルが歌いだす。
トランペットももの哀しい。
そして、「ユダ」を繰り返すコーラス。
最後は、グレゴリオ聖歌風のように厳かに終わる。
初めて現れたエレクトリックなロック。
クラシック・アンサンブルの神秘的な面をうまく生かして雰囲気をつくり、優美さと荒々しさがコーラスとともに花開いて、昇華する佳作である。
ヘヴィさよりも、メロディアスな面と明解な流れを優先しており、聴きやすい。
純クラシックではないロック・ビートのナンバーへのチャレンジとしては上出来でしょう。
エマーソン調の作品に比べると、ぐっとソフトなのもほほえましい。
10 曲目「Bar ejszaka van(夜の歌)」(7:06)ストリングス系シンセサイザーと重々しいパーカッションによる黒々とした幻想世界。
モノローグは唐突に始まる。
チェロのうめき。
ピアノのささやき。
ギターがざわめく。
うっすらとさす光をたどって、静かに演奏は動き出す。
アンビエントというには暗過ぎ、インプロと呼ぶには静謐である。
モノローグを囲むように、次第にピアノ、ギター、チェロ、ストリングス、パーカッションが浮かび上がり、するすると回り出す。
印象派でもなく現代音楽でもない。
冷え冷えとさえわたる空間に、チェロが声を荒げる。
「Moon Child」や初期 WEATHER REPORT をも思わせる闇黒のアンビエント・ミュージック。
おそらく器楽は即興なのだろう。
11 曲目「Ketezer ev(2000年)」(13:39)哀愁のフルートをさざめくようなピアノが伴奏するロマンティックなアンサンブル。
チェロがもの哀しく響き、ヴォーカルも感傷的である。
ピアノは潮騒のように美しくざわめく。
セカンド・ヴァースでは、トランペットの透明なオブリガートが加わる。
そして、ヴォーカルの末尾にはほのかな長調の響き。
コラール。
ピアノに代わって、夢見るようなハープが伴奏し、シンバルによるリズムが刻まれる。
ロングトーンのギターが静かに加わる。
トランペットとともにヴォーカルが戻る。
オブリガートは舞うようなフルート。
再び天上への誘いの如きコラールへ。
リズミカルかつヘヴンリーな曲調である。
二声のコラールが美しい。
そして、ヴォーカルのひとくさりを経てチェロのソロへ。
厳格な音によるメロディアスなプレイである。
ドラムスも加わってエネルギッシュな盛り上がりを見せる。
コラール。
リズムは明確になりスネアも聴こえる。
ピアノ、チェロ、フルートがコラールを支えてともに走り続ける。
ヴォーカルがワン・コーラス歌ってリズムは消える。
ピアノとシンバル、マリンバ、フルートが、可憐なアンサンブルをなすも、儚げに消えてゆく。
そして始まるのはオープニングのピアノ、フルートのアンサンブル。
ハープも加わって哀愁と雅の共演。
ヴォーカルは、哀しげな表情にほのかな明るさをはらむ。
チェロが低くうめく。
再びコラール。
鐘が鳴る。
天上への最後の誘い。
シンバルのビートのみの静かな伴奏でコラールが響き渡る。
コラールに重なるのはチェロだろうか。
ピアノが湧き上がり、ヴォーカルがワン・コーラス。
続くはフルート、チェロ、ギターによるなんとももの哀しい旋律。
ペール・ギュントのオーゼの死である。
長調へと転調、ギターとチェロ、フルートが安らかな終わりを告げる。
無窮動のクラシック・ロック。
ロマンと無常感に満ち、永遠の救済をイメージさせる傑作である。
曲は、ピアノを主に、一部ではシンバルとスネアも用いてリズムをキープし、ヴォーカルがテーマをリードする歌ものであり、フルート、チェロ、トランペットが効果的なフレーズでヴォーカルを取り巻く。
幾度も繰り返し表れるコラールは、下界へ語りかける天上人のメッセージのよう。
宗教的な慈しみにあふれる賛美歌ロック。
前半は、怒涛の EL&P 型キーボード・ロック、そして後半はロマンチックにして厳かなクラシック・ロック。
アンサンブルとしてのクラシック・ロックの試みは、地味ながらも後半の大作に高い完成度で現れている。
リズム楽器のの使用も違和感なし。
モノクロで上品、厳かで優美なサウンドである。
しかし圧巻は前半。
「似ている」ということがもつインパクトは次第に勢いを失うはずだが、ここでの一発芸的なアプローチは、とにかく一瞬でも「エマーソンしたいっ」という切なる思いが爆発したものであり、そもそも持続性なんて眼中にないようだ。
それだけに不意打ちの衝撃は大きい。
しかし、このピアニストは、思いを遂げたのか本作で脱退。
そこで、「嗚呼もう EL&P は聴けないのか」と嘆く諸兄、大丈夫、次の作品では再び脳天に直撃を食らいますのでご安心を。
アコースティック・ロックの傑作。
(BG CD 002)
Egervári Gábor | flute, voice |
Gacs Lazlo | drums, percussion |
Görgényi Tamás | lead vocals |
Pejtesik Péter | bass, cello, lead vocals, vocals |
Torma Ferenc | guitars, synthesizer, vocals |
Winkler Balázs | keyboards, trumpet |
96 年発表の四作目「De Profundis」。
十人を越える管楽器中心のアンサンブルをゲストに迎えて繰り広げる、勇壮にして神秘的、巨大なシンフォニック作品である。
イメージしやすいのは、後期 EL&P の「Works」である。
ヴェドレス・サバは脱退するも、サウンドの迫力、エキセントリシティ、クラシカルかつ重々しいアンサンブルにいささかの瑕もない。
ヴォーカルの処理もこなれており、シンフォニックな器楽との相性がいい。
今までとの違いは、ギターの存在感が大きくなったことと、全体にバンド演奏の音がハードになったことである。
壮麗優美なコラールで幕を開け、4 曲目ではやくもピークに達し、テンションが落ちないまま 60 分あまりを駆け抜ける。
重厚な大作の間に独奏や二重奏の小品も散りばめた、圧倒的な作品だ。
タイトルは「深き淵より」の意のラテン語。おそらく何らかの主題が貫くトータル・アルバムである。
「Bevezetes」(3:39)厳かにして美しい中世コラール。
「Modern idök」(7:36)中間部の「ラップ」の処理こそプログレの醍醐味。
「Az ustokos」(1:43)激しいピアノ独奏。ヴェドレスなき後、誰がこれを演奏しているのか?
「Stalker」(12:12)ギターをフィーチュアしたヘヴィなバンド演奏と勇ましい管楽器アンサンブルが重なる迫力満点の力作。ヘヴィ・メタリックなギター・サウンドと郷愁の鐘の音やモノローグ、哀愁のリコーダーの調べが違和感なく一つに収まっている。東欧には我々にはうかがい知れない魔術があるようだ。終盤、ギターも哀愁に巻き込まれて憂鬱に歌う。名曲。
「Stonehenge」(4:34)ギターのようにブルージーな超絶チェロ独奏。
「Kulvarosi ej」(3:34)ギター、チェロ、トランペットの三重奏。簡素な音がえもいわれぬ感動を呼ぶ。
「Manok tanca」(5:00)クラシック翻案のテーマを使った作品。ピアノがリード。
「Kifulladasig」(5:18)ギター、ベースによる 80' KING CRIMSON 調デュオ。今までアコースティックな質感の音に耳に馴染んでいただけに、ここでの金属的な音は不思議な印象を与える。
「De Profundis」(11:29)管絃、打楽器が彩るロマンティックな歌もの。最近の LITTLE TRAGEDIES が参考にしているのは、この作風か。間奏部は、ピアノ、ヴァイオリン、ギター、管絃が一体化した、このグループならではの気高く美しい演奏。
「Jonas imaja」(2:24)
「Elveszett varos」(1:56)
「Kisvasut」(2:03)
「Eskuszegok」(8:13)
「40 masodperc」(0:40)
「A vilag vegen」(3:41)
(BG CD 005)
Egervári Gábor | flute, vocals |
Pejtesik Péter | cello, bass, keyboards, vocals |
Torma Ferenc | guitars, bass, keyboards, vocals |
Vedres Csaba | piano, vocals |
Winkler Balázs | trumpet, keyboards, percussion, vocals |
96 年発表の五作目「Elsõ Évtized」。
今までのアルバムから選曲したベスト・テイクと 1991 年のライヴ録音をまとめた作品。
この作品で本グループの音楽が一望できる。
改めて、本グループの音楽性に EL&P の「Works vol.1」と KING CRIMSON の「Starless」、「Islands」の影響を感じる。(近現代クラシックからの流れということだろう)
アコースティックなタッチのロック・シンフォニーを楽しみたいむきには絶対お薦めの作品だろう。
ライヴ・テイクでは KING CRIMSON の「21st Century Schizoid Man」のカヴァーもあり。
CD 二枚組。
CD1 スタジオ
「Modern idök」(7:36)「De Profundis」より。
「Noktürn」(1:52)「Megalázottak És Megszomorítottak」より。
「Kétség és remény közt」(4:00)
「Tépd el a képeket!」(6:00)
「Fly!」(2:00)
「Közjáték II.」(2:00)
「A Novelty」(2:00)
「Sötétben」(5:05)「Overground Music」より。
「Árnyékos dal」(4:00)
「Madrigál II.」(3:00)「Overground Music」より。
「Vándor」(9:20)
「Manók tánca」(5:00)「De Profundis」より。
「Ébredés」(3:00)「Overground Music」より。
「Elveszett város」(2:00)「De Profundis」より。
「Júdás」(10:00)「Föld És Ég」より。
「A világ végén」(3:41)「De Profundis」より。
CD2 ライヴ
「Nyitány」(2:20)
「Shining」(10:15)
「Így hallgattam el」(6:30)
「“Immár a nap leáldozott”」(9:40)
「Hommage a Frank Zappa」(8:20)
「Impromptu no. 7.」(6:00)
「Jó éjt!」(11:00)
「Zsoltár」(3:10)
「Herkules dala」(4:20)
「21st Century Schizoid Man」(7:00)KING CRIMSON の「In The Court Of The Crimson King」より。カヴァー。
(BGCD 006/007)
Egervári Gábor | flute, voice |
Görgényi Tamás | lead vocals |
Pejtesik Péter | bass, cello, synthesizer, lead vocals, programming |
Torma Ferenc | guitars, bass, programming |
Winkler Balázs | keyboards, trumpet, percussion, programming |
96 年発表の六作目「6」。
メンバー構成は、ドラムス不在でキーボーディストが管楽器を兼任するという変則フォーメーション。
したがって、弦楽アンサンブル、ホーン・セクション、ドラムスやベースなど、総勢 20 名あまりのゲストを迎えている。
音楽的なリーダーシップは、大半の作品を手がけるキーボード/トランペット奏者のウィンカー・バラズのようだ。
アルバム構成は、30 分に渡る組曲を二曲とオープニング、間奏曲、そしてエピローグの三曲を合わせて計五曲。
内容は、本物の管弦楽にシンセサイザーが加わったオーケストラと、ハードロック系のギター、リズム・セクションが合体した、巨大な構築物のようなシンフォニック・ロック。
アコースティックなクラシカル・サウンドとコンテンポラリーなデジタル・エレクトリック・サウンドが両立し、アルバムを通した音質と音量のメリハリには、すさまじいものがある。
宗教色ある厳かな演奏やトラッド的なたおやかな味わいもあるが、やはり、たたみかけるリズム、唸りを上げるキーボード、轟くトランペット、渦巻くコラールなど、大仰なしかけを総動員して驀進する演奏がメインといえるだろう。
シンセサイザー含め管楽器系の音が目立つため、派手なビッグバンドによるクラシカル・ロックという、そもそも矛盾したような趣もある。
そして、本格的なクラシックとロックがそれぞれの方向へと離れてゆこうとするのを、むんずと首根っこをつかんで留まらせるのが、70 年代プログレッシヴ・ロックへのマニアックなまでのオマージュである。
けたたましくも重厚、荘厳にして哀愁漂う音楽は、プログレの到達したバロックの極致の一つといっていい。
エレクトリックなヘヴィ・ロック・バンドに管楽器を加えて勇壮かつシンフォニックな高まりを生むというブリティッシュ・ロック的なアプローチと、荘厳美麗なる弦楽にビートとヴォーカルを持ち込んで世俗の熱気に曝すというイタリアン・ロック的アプローチがぶつかりあったところに生まれ、クラシックとポップス、ロックの全方位に展開する、究極のシンフォニック・ロックである。
本作はそんな彼らのアプローチの完成形といえる。
金管とシンセサイザーをフィーチュアした勇壮にしてメロディアスな展開は、「Works vol.1」など後期 EL&P に迫り、ヘヴィなギターが轟く場面では、現在の KING CRIMSON を思わせるところもある。
盛り上がり一直線のシンフォニーとメタリックなヘヴィさだけではなく、ビッグバンド・ジャズ風のゴージャスでグルーヴィなノリとフランク・ザッパ的逸脱感もしっかり備えている辺り、凡百のプログレ・リヴァイヴァルとは一線画している。
もはや天下無敵のシンフォニック・ロック・グループといえるだろう。
「Save Our Souls」(2:48)なんとなくディズニー映画を思わせるオープニングから、怪しくエキゾチックなムードやきわめてクラシカルにして厳かなムードまでが重なりあう序曲。
まさに、このグループの雑多な音楽性を物語る小品である。
ややズッコケ、外し気味風のところがじつは個性かもしれない。
「Panem et Circenses」(29:13)「パンとサーカス」とは、食べ物と娯楽が揃ってこその楽人生、というローマ人の生活信条を示した格言。曲の内容を直接指すのか皮肉なのか、ここでの意図は不明。
サスペンスフルなビッグバンド・ジャズに HR/HM ギターが切り込むファンファーレの序曲から、トランペット、木管と女性ヴォーカルによる賛美歌風の「Providence」、ヘヴィな小組曲「Salto Morale II」(Trash-Flow)、管楽器のテーマが印象的なバラード「Sleepin' Chaplin」、第一作の楽曲の続編である弦楽伴奏の歌もの「Madrigal Love Part Four」、再び超ド級のヘヴィ・ビッグバンド・インストゥルメンタル「Final(Big Evil Fun Fair Finale)」を含む組曲大作。
「Intermezzo」(2:43)なめらかなストリングス、泡立つようなギター伴奏をしたがえ、管楽器による透徹なテーマが朗々と歌われる間奏曲。
後半はサックスによるジャズ風の変奏。
「Farewell To 20th Century」(27:13)
「Conclusion(A tribute to Keith Emerson)」(10:45)
厳かなピアノと弦楽の調べ、オペラ風のバリトン・ヴォイス、さらには YAMAHA GX-1 を思わせる金管シンセサイザーが高々と雄たけびを上げるクラシカル・ロック。
「Works vol.1」や「Love Beach」におけるシンフォニック・チューンをほうふつさせる力作である。
エマーソンも草葉の陰でほくそえんでいるでしょう。
(BGCD 009)
Egervári Gábor | lyrics, narration, live sound | Görgényi Tamás | artistic director, lyrics |
Lengyel Zoltán | grand piano, keyboards, synthsizers, chorus | Légrádi Gábor | lead vocals |
Madai Zsolt | electric drums, cymbals, snare drum, vibe, timpani on 3 | Pejtesik Péter | cello, bass, compositions, conduct |
Torma Ferenc | guitars, synthesizer, composition | Winkler Balázs | trumpet, synthesizer, piano, composition, conduct |
2000 年発表の作品「Bootleg Symphony」。
管弦楽との競演によるライヴ・アルバム。
競演といっても、メンバーは一部器楽を担当するも主として指揮や作曲、アレンジ、コンセプトなどをリードしており、演奏は管弦楽が主導である。
AFTER CRYING の作品を管弦楽によって演奏する試み、といった方が正しいようだ。
元々演奏が勇壮なクラシック・スタイルだったので、バンドのみ演奏と大きくイメージは変わらない。(思えば、そういうところ自体がやはりかなり変わったグループといえる)
当然のように KING CRIMSON のフレーズも飛び出す。
自然な哀感を湛える歌ものもいい。
バンドと管弦楽が一体となった大編成交響楽スタイルの作品といえば、NEW TROLLS の有名作や北欧の ISILDURS BANE などいくつかの作品が思い浮かぶが、均整が取れていて無暗な難解さもないという点では、AFTER CRYING が群を抜く。
個人的には管楽器のアレンジに魅力を感じる。
この作品と前後して発表された「Live Struggle For Life」と本作品を聴き比べると、バンドのみの演奏との対比が分かっておもしろい。
フィナーレはなかなか感動的だ。
I
「Viaduct (Symphonic Version)」(6:00)
「Struggle For Life I. - With A Pure Heart (Var. 1-6 On A Hungarian Folksong)」(5:23)
「Enigma (Symphonic Version - Var. 7 On A Hungarian Folksong)」(1:15)
「Struggle For Life II. - Waiting For Better Days (Var. 8, 9, 11 On A Hungarian Folksong) - Including: Great Deciever - excerpt (Var. 10 On A Hungarian Folksong)」(3:15)
II
「Suburban Night = Külvárosi Éj」(3:19)
「Cool Night = Jó Éjt」(3:48)
「Night-Red = Éjszaka」(3:24)
「Cool Night - Reprise = Jó Éjt - Visszatérés」(2:17)
III
「Arrival Of Manticore I. = Manticore Érkezése I. (Symphonic Version)」(2:28)
「Aqua」(2:01)
「Intermezzo」(2:39)
「Burlesque」(3:04)
IV
「Finale - Excerpt From Big Evil Fun Fair Final」(4:26)
「Shinin'」(11:37)
(BGCD 080)
Egervári Gábor | flute, lyrics, narration, live sound | Görgényi Tamás | lyrics |
Lengyel Zoltán | piano, keyboards | Légrádi Gábor | lead vocals |
Madai Zsolt | rums, percussion, keyboards | Pejtesik Péter | cello, bass, violin, vocals |
Torma Ferenc | guitar, keyboards, vocals | Winkler Balázs | trumpets, keyboards, piano, bird |
2000 年発表の作品「Struggle For Life」。
キャリアを総括する巨大なライヴ・アルバム。
録音は 97 年-99 年。
重厚荘厳なはずの曲想がどこまでも明朗でポジティヴで躍動的になるという面白さ。
華やかなる「吹奏楽部ロック」の誕生である。
ポピュラー・ミュージックからのモダン・クラシックの解釈へのアプローチとしても胸を張ることのできる内容ではないだろうか。
EL&P や KING CRIMSON が時代の勢いのままに果たした斬新な試みに改めて感動できる。
CD 二枚組。
ジョン・ウェットンをヴォーカルに迎えた KING CRIMSON の「Starless」のカヴァーあり。
「Viaduct」(5:15)「6」より。
「Stalker」(12:32)「De Profundis」より。
「Sleepin’Chaplin」(3:17)「6」より。
「Little Train」(2:23)「De Profundis」より。
「Suburban Night」(3:36)「De Profundis」より。
「To Black - excerpt I.」(1:35)「Overground Music」より。
「Intermezzo」(2:33)「6」より。
「Pilgrims’March」(5:09)「Almost Pure Instrumental」より。
「Sonata for Violincello and Piano」(3:47)「Almost Pure Instrumental」より。
「Burlesque」(3:07)「6」より。
「To Black - excerpt II. ImproVision」(5:05)「Overground Music」より。
「Goblin Dance」(5:16)「De Profundis」より。
「European Things(Hommage a Frank Zappa)」(8:46)「Overground Music」より。
「Starless」(11:35)KING CRIMSON の作品「Red」より。カヴァー。
「Fun Fair Land Opening - excerpt」(1:25)「6」より。
「Judas」(9:16)「Föld És Ég」より。
「Windblown Waltz」(3:13)「Almost Pure Instrumental」より。
「Struggle For Life」(8:23)「6」より。
「Big Evil Fun Fair Finale - excerpt」(2:06)「6」より。
「Crash And Cry」(5:30)未発表曲。
「Stonehenge」(4:35)「De Profundis」より。
「Conclusion」「6」より。
「Conclusion」(10:32)
「Arrival Of Manticore II/1 / Confess Your Beauty」(5:20)
「Cello-Guitar Duet」(2:24)
「Piano Solo」(1:33)
「Drum Solo」(3:46)
「Trumpet Solo」(1:19)
「Arrival Of Manticore II/2.」(1:50)
「Conclusion - Finale」(3:08)
(BGCD 054/055)
Batky 'BZ' Zoltán | vocals, tunes | Egervári Gábor | words, narration, ideas, Hardware wizard, cracks & warez |
Görgényi Tamás | conception, dramaturgy, words, tunes, rhythms, programming | Lengyel Zoltán | grand piano, keyboards, synthsizers, ideas |
Madai Zsolt | drums, percussion, rhythms, ideas | Pejtesik Péter | compositions, arrangements, orchestrations, bass, cello, vocals, programming |
Torma Ferenc | guitars, ideas, programming, editing, recording | Winkler Balázs | keyboards, trumpet |
2003 年発表の七作目「Show」。
人類の現在と未来に対して警鐘を鳴らす、重厚かつウィットに富むトータル・コンセプト・アルバム。
専任ヴォーカリストとナレーターを導入して今まで以上に「声」を大きくフィーチュアし、物語性を前面に出している。
作風は、金管、弦楽をフィーチュアし、リズムを強調した近代クラシック(みごとな翻案もあり)とヘヴィ・ロックの合体(すなわち KING CRIMSON)を基本に、往年の PINK FLOYD を思わせる大胆な SE やコラージュ、反復などの手法や、ヒップホップなどコンテンポラリーな音も駆使した、複雑にしてシリアスなもの。
クラシカルなピアノとブレイクビーツ調のリズムがオーヴァーラップし、ビッグ・バンド風のトランペットが高鳴り、邪悪なトゥッティがギターのリードで突っ走る。
もっとも、素っ頓狂なジャズ・テイストなどフランク・ザッパ風の逸脱調があり、どうしても垢抜け切らないところは相変わらずである。
多彩なサウンドには、ハードディスク・レコーディングを大幅に取り入れた成果という面もありそうだ。
バロックなヴォリューム感、シリアスな題材に真っ直ぐ取組む姿勢、ごった煮の面白さという点で、近年まれに見る作品である。
クライマックス 11 曲目は、ラヴェル、ストラヴィンスキー、「Starless」KING CRIMSON がこん然一体となった傑作。
「NWC (New World Coming)」(4:29)
「Invisible Legion」(9:37)
「Face To Face」(2:35)
「Welcome On Board」(3:50)
「Paradise Lost」(2:55)
「Remote Control」(9:07)
「Technopolis」(7:50)
「Globevillage At Night」(1:31)
「Bone Squad」(2:55)
「Wanna Be A Member?」(4:31)
「Secret Service」(15:24)
「Farewell」(2:48)
「Life Must Go On」(4:29)
(BGCD 101)