スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「GOTIC」。 バルセロナ出身。 70 年代の唯一作で知られるグループ。 ベーシストはマックス・スーニェの PEGASUS にも参加。
Rafael Escote | bass |
Jordi Marti | drums, percussions |
Jep Nuix | flute, piccolo |
Jordi Vilaprinyo | piano, Fender piano, clavinet, mini-Moog, violin, Hammond organ |
guest: | |
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Jordi Codina | classic guitar on 7 |
Josep Albert Cubero | acoustic & electric guitar on 2,6,7 |
78 年発表の唯一のアルバム「Escenes」。
内容は、フルートとエレピをフィーチュアした、メローで涼感あるジャズロック・インストゥルメンタル。
フルートをリードにし、いわゆるフュージョン・サウンドに影響されたファンタジックな作風は、きわめてカンタベリー的である。
フルートがゆったり軽やかに歌うところでは、CAMEL そのもののようなメロディアスで情感豊かな面が浮かび上がるが、アブストラクトな表情で躍動するアンサンブルや深みのある和声など、ジャズの素養はただならぬほど深いようである。
マクラフリン並みの鮮やかなギターが絡んでくる場面もあるが、やはり主役は、フルートとキーボードによる流麗にしてヒネリのあるアンサンブルだろう。
フルートは、キーボードの生み出す幻想空間を漂いつつ、おだやかな歌を響かせるかと思えば、躍動感あるリズム・セクションと渡りあって軽やかなステップで舞い踊る。
みごとな表現力だ。
また、キーボードは、フェイザーで柔らかくトリミングしたエレピを主に、ストリングス・シンセサイザーからムーグ、クラヴィネット、生ピアノと多彩な音色を用いて、華やいだステージを作っている。
ここでのキーボード・サウンドは、現代の水準からすると、ハイファイな音質という点ではごくチープなのかもしれない。
しかし、個人的には永遠に魅力を感じるであろう音たちだ。
また、エレピのプレイは、往時の流行であったフュージョン系のグループ、すなわち RETURN TO FOREVER や WEATHER REPORT の影響下にあるのも間違いないだろう。
もっともスペインのグループであるから、メイン・ストリーム・フュージョンのラテン・フィーリングは本来自然に備わっているのだろう。
デリケートな音使いと幻想的かつ愛らしい演奏は、HAPPY THE MAN にも共通するが、彼のグループほどは、けれんのあるリズム変化はない。
こちらはもっとメロディアスである。
また、キーボードとフルートという、どちらかといえば正確な音程とメカニカルなタッチの音が主なので、ゲストのギターの見せる自然な息遣いのアーティキュレーションが、じつにいいバランスとなっている。
フェイザーを用いた音作りも、あえて音の輪郭をぼやけさせて暖かみを生むことを目指しているようだ。
フュージョンといってしまうと、爽やかさを越えて熱っぽいグルーヴまで強調されるきらいがあり、このサウンドのもつほのかなメランコリーや奥深いリリシズム、風を切って走るような涼感から離れてしまうと思う。
そして、エンディング・ナンバーのクラシック・ギターを囲むアンサンブルからの展開は、豊かなエモーションと幅広い音楽性がナチュラルに盛り込まれており、いわゆるジャズロックにも収まりきらないスケールを感じさせる。
そしてよく聴けば、ハンド・クラップや何気ない変拍子など、意外なしかけもあるのだ。
何かに似ていそうで、しっかりオリジナルな音です。
気持ちのよい聴き心地は抜群。
清水さんのライナーとほとんど同じになってしまいましたが、プログレ・ファンとしての感覚の共通点、ということでご勘弁。
「Escenes De La Terra En Festa I De La Mar En Calma(祭りの大地と静かの海の情景)」
「Imprompt-1(インプロムプト-1)」
「Jocs D'ocells(オセロ・ゲーム)」
「La Revolucio(レヴォルーション)」
「Danca. D'estiu(踊り)」
「I Tu Que Ho Veies Tot Tan Facil(やすらぎのせ界)」
「Historia D'Una Gota D'aigua(アイグアの涙の物語)」
(17.1302/6 / KICP 7003(CD 1024))