イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「GRUPPO 2001」。 サルディニア島出身。 71 年結成。アルバム以外にもシングルを多く発表。
Piero Salis | keyboards, vocals |
Pietro Carrus | guitar |
Ciccio Solinas | guitar |
Paolo Carrus | bass |
Tore Corazza | drums |
72 年発表のアルバム「L'Alba Di Domani(新世代の夜明け)」。
内容は、メロトロン、オルガン、エレピらキーボードやフルートに守り立てられた、アコースティックな歌ものロック。
素朴にしてロマンティック、陽気にしてどこか哀しげな、カンタゥトーレの魅力あふれる作品である。
そして、イタリアン・ポップスとしての魅力ばかりか、ときに英国フォーク風のデリケートな表現も見せる。
土臭いリード・ヴォーカルは、ファルセットのハーモニーとともに力強くも夢見るようなキーボードに抱かれて、意外なまでのドラマを描いてゆく。
たおやかなヴォーカル・ハーモニーのまま、展開部分では、切れのいいドラムスを中心に BANCO ばりのパワフルなアンサンブルも見せる。
この大きくダイナミックな曲調の変化は、まさしくイタリアンプログレのものだ。
ストリングスやエネルギッシュなハモンド・オルガンが飛び出す、めまぐるしい演奏もあるが、基本はおだやかなメロディを活かしたヴォーカル主体のアルバムである。
初め胸が熱くなり、やがて、おだやかな気持ちが訪れる作品です。
クレジットは見当たらないが、フルートが多く使われています。
「Maggio(五月)」(6:18)
フルートも交えたスリリングなオープニングから、キーボード(メロトロン、チェンバロ)、ギター、コーラスを中心にダイナミックな曲調の変化を繰り広げるシンフォニックな歌ものロック。
冒頭のイメージは完全に JETHRO TULL、そして、のどかさと淡い夢想とが絶妙の配合を見せるイタリアン・ロック特有の世界になってゆく。
各自短いながらもソロの見せ場をもっており、器楽の腕前はかなりのものであることが分かる。
走る場面でも、荒っぽいようでいて、なめらかなノリがあるのだ。
また、ビジーな展開のなかで、声質の異なる二人のヴォーカル(男性的なバリトンとか細いテノール)と甘目のコーラスがラテン風のロマンティックな味わいを残す。
後半、牧歌的にして悠然たる演奏を繰り広げ、いい感じの余韻を残す。
ドラムスにかなりの存在感あり。
「Una Bambina ...Una Donna(一人の少女...一人の淑女)」(3:36)
アコースティック・ギター、ウッド・ベース、フルートらの伴奏による穏やかなフォーク・ロック。
フルートのオブリガートは素朴な味わいをもち、さざめくようなアコースティック・ギターが、静かなファンタジーにマジカルな色を浮かび上がらせる。
ささやくような歌には、ほんのりと寂しげな表情が浮かび、サビの表情は切ない。
最後は THE BEACH BOYS ばりのファルセットによるヴォカリーズも。
「Era Bello InsiemeA Te(美しい日々)」(5:04)
エレクトリックなアレンジで彩られたフォークロック。
泡立つような音は、エフェクトされたハープかギターだろうか。
前半はアカペラこそ厳かで力強いが、白昼夢のようにすべてがぼんやりとにじむ世界である。
アコースティック・ピアノのブギー調のコード・ストロークとともにアンサンブルは動き出す。
ピアノ、シンセサイザーが高まり、緊張感ある和音とともにシンフォニックに盛り上がるが、歌はかわらずフォーク調であり、
最後まで夢見るような調子を持ち続ける。
このギャップがおもしろい。
ヴォーカルをファルセットのコーラスがなぞる。
エレクトリックなスリルとのどかな空気が交じり合った色合いは、このグループの作風ではないだろうか。
「Paesaggio(景観)」(1:33)
2 曲目よりもさらにデリケートにして密やかな弾き語り。
野太い声に優しさがあふれる。
ホッと息をつかせるような穏やかなナンバーだ。
「Volo D'Angelo(天使の飛行)」(4:11)
プログレらしい過激かつ不可逆な曲調の変化を繰り広げる作品。
冒頭の空間的な演出は、PINK FLOYD 風である。
神秘的なイントロから、一転イタリアらしいフォーキーにして情熱的なヴォーカル・パートへ(この落差というか破断も FLOYD 風)、そして、ハモンド・オルガンのパワフルなリードによる烈しいアンサンブルを経て、後半はかなりヘヴィな繰り返しである。
エネルギーを溜めて爆発する過激な展開だ。
ヴォーカルは、中間部では正統的な歌唱力を見せ、後半の狂的な展開では、ファルセット・ヴォイスでギター、ムーグと激しく渡りあう。
ハードロック調のギターやパーカッシヴなハモンド・オルガン、ムーグそして荒れ狂うドラムスも聴きもの。
突然の爆音の後、取り残されたような気持ちになる。
まさにプログレだ。
「Padre Vincenzo(父ヴィンチェンツォ)」(4:23)
弾き語りフォークを、メロトロンやフルート、チャーチ・オルガンで彩った作品。
素朴な味わいのヴォーカルとシンフォニックにどんどん広がってゆくキーボードの組合わせがドラマを生む。
イタリアの THE MOODY BLUES といった感じ。
オープニングとエンディングは、厳かにチャーチ・オルガンがなり響くがやや突拍子がない。
もう少し録音がよければ最高の味わいだろうに、とここでも改めて思いました。
「Denise(デニーズ)」(3:06)
英語による、ハーモニーの美しいフォーク・ソング。
たおやかなリード・ヴォーカルは 2 曲目と同じ人物か。
maj7 和音が象徴するぼんやりと薄靄に包まれたような幻想性は、完全に英国フォーク調である。
メロトロン、エレピなどキーボードも、TRADER HORNE や MELLOW CANDLE を思わせる音だ。
やや掟破りかもしれないが、一際目立つ作品である。
名曲。
「L'Alba Di Domani(新世代の夜明け)」(3:48)
長いモノローグを引き裂いてテクニカルなアンサンブルが噴出する。
オープニングは、言葉が分かれば、もっと味わいがあるのだろう。
切れ味いいドラミングとつややかな響きをもつコーラスがいい。
ハモンド・オルガンとギターのリードによる演奏が力強い。
「Sa Danza(あの踊り)」(1:09)
いかにもエピローグ風のインスト小曲。
バグパイプ調のシンセサイザーをテクニカルなドラムスが支える。
不思議な余韻を残すエンディングだ。
「Messagio(メッセージ)」(3:22)。
ボーナス・トラックのシングル盤。
DELIRIUM や FORMULA TRE を思わせる大人のポップス。
軽快なのに粘っこいヴォーカルがいい。
(NLU 62019 / KICP 2835)