イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「HANNIBAL」。 解散した BAKERLOO の契約消化のために一時的に集められたメンバーによって 69 年結成。71 年解散。鍵盤奏者は、初期 ELO や WIZZARD に加入。
Alex Boyce | vocals |
Adrian Ingram | guitar |
Jack Griffiths | bass |
John Parkes | drums |
Cliff Williams | tenor sax, clarinet |
Bill Hunt | organ, French horn |
70 年発表のアルバム「Hannibal」。
内容は、管楽器をフィーチュアしたブルージーなハードロック寄りのブラス・ロック。
ギターにしてもオルガンにしてもリズムにしても、ジャズよりも遥かにロック寄りであり、流行のアフロ・ロックへの目配りもありそうだ。
特にギタリストはジャズ畑出身らしいが、ブルーズロックによくあるフリーキーなペンタトニックのアドリヴ(これがオーソドックスながらかなりカッコいい)を放ち、バッキングに回っても攻撃的で尖った音を出し続ける。
ただし、たまに見せるクロマティックなフレーズのアウト・スケールにお里が感じられなくもない。
ジャズ・ギタリストなら CREAM の真似くらい簡単だよ、といっているようなプレイである。
(INDIAN SUMMER にもそういう面があった。IF のテリー・スミスのクラスになると、スタイルの模倣を一瞬で超越し、個性的過ぎるプレイへと一気に駆け上がっている)
そして、おもしろいことにソウルフルな黒人ヴォーカルを迎えているにも係わらず、音楽的な志向は R&B を通り過ぎて、アンサンブルの実験を盛り込んだハードロックに向かっている。
ジャズはこのニューロック的な展開の中で一ファクターとして再浮上している感じだ。
この「どっちつかず感」と、「キャッチーな R&B のようでいて、いったきり帰ってこない曲展開」が個性である。
一方、サックス・ソロはフリージャズの影響ありありのデヴィッド・ジャクソン・タイプ。
強引なブロウでギターと双頭でフロントをつとめている。
ブラス・ロックと書いたが、基本的に一管であり分厚いオブリガートもなく、いわゆるブラス・ロックというニュアンスはさほどでない。
ただし、サックスの音色そのものは太くクリーンな存在感があり、ヴォーカルのメロディ・ラインをうまく支えている。
それにしてもこの時代のバンドというのは演奏がうまい。
安定感抜群で腰のすわったグルーヴを供給してくる。
プロデュースはロジャー・ベイン。ネガポジ反転ジャケットはキーフ。
「Look Upon Me」(6:13)管楽器をフィーチュアしたキャッチーなジャズロック。
タイトなドラミングや敏捷なベースライン、キレのあるギターなどレベルの高い堅実なパフォーマンスである。
「Winds Of Change」(7:26)ファンキーなようでいて変拍子のリフなど尖った感性も随所に顔を出し、ヴォーカルとともに次第に英国ロックらしい叙情性があふれ出てくる佳品。
ギターのアルペジオ、オルガンのおだやかな調べ。ぶっ飛んだギター・ソロと機嫌の悪いサックス。
「Bend For A Friend」(10:27)ジャズ・ギターらしいプレイやスインギーなクラリネット、デューク・エリントン風のミステリアスなオルガンもあり。
「1066」(6:28)
「Wet Legs」(4:44)
「Winter」(8:06)
(CAS 1022 / GTR-017)