イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「IF」。 ジャズ・ミュージシャンのディック・モリッシーとデイヴ・クィンシーを中心に 69 年結成。 オリジナル・ラインナップで五枚の作品を残す。 90 年代に一時的に再結成し、2010 年代は新作も発表。 CHICAGO や BLOOD SWEAT & TEARS の英国版といわれるが、管楽器の種類がサックス、フルートに限られていて(トロンボーン、トランペットはゲスト)音質がシャープな点や、ソロをフィーチュアするジャズ・スタイルが顕著な点など、サウンドはやや異なる。
J.W.Hodkinson | lead vocals |
Dick Morrissey | tenor sax, soprano sax, flute |
Dave Quincy | tenor sax, alto sax |
Terry Smith | guitars |
John Mealing | Hammond organ, electric piano |
Jim Richardson | bass |
Dennis Elliott | drums |
2010 年発表の発掘ライヴ盤「Fibonacci's Number More Live IF」。
六曲目までは 1972 年の欧州ライヴからの録音。明記はないが選曲からして第三作録音後のプロモーション・ツアーではないだろうか。全曲初出。
ボーナス・トラックはシングル・ヴァージョン。
モノラル録音。
内容は、メロディアスかつグルーヴィな管楽器のプレイをフィーチュアし、ブラック・ソウル調をふんだんに取り込んでパンチを効かせた英国的ジャズロック。
特にテーマが冴えている。
全盛期のメンバーによるルーズでパワフルなアドリヴを愉しむべし。
本 CD は 2000 年に亡くなったディック・モリッシーに捧げられている。
「Fibonacci's Number」(10:09)第三作より。TV ドラマの OP のようにアッパーでキャッチーな二管のテーマが印象的な作品。
前半のソロはクラシックとジャズが交じったような独特のフルート。中盤はハモンド・オルガン、アルト・サックス(デイヴ・クインシー)。
ギターのコード・カッティングがアル・マッケイ風。最後のソロはドラムス。
「Seldom Seem Sam」(10:13)第三作より。テリー・スミスのカントリー風の個性的なソロ・ギターをフィーチュア。
「Your City Is Falling」(5:59)第二作より。蒼天に突き抜けるような傑作。
スカッと開放感あるヴォーカルがイイ。
ミ―リングのオルガン、モリッシーのソプラノをフィーチュア。
「Forgotten Roads」(9:38)第三作より。ギターはジャジーなフレージングをディストーション・サウンドで聴かせる。キメどころではベンディングも使ってロック魂をアピール。前曲に続きサビがカッコいい。
「Child Of Storm」(3:50)第三作より。
「I'm Reaching Out On All Sides」(9:59)第一作より。
以下ボーナス・トラック。
「What Did I Say About The Box Jack?」(3:04)第一作より。シングル・ヴァージョン。
「Forgotten Roads」(3:22)第三作より。シングル・ヴァージョン。
(REPUK 1096)
Dave Quincy | reeds(flute, sax) |
J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
Dick Morrissey | reeds(sax) |
Dennis Elliott | drums |
Jim Richardson | bass |
Terry Smith | guitar |
John Mealing | keyboards, backing vocals |
70 年発表のデビュー・アルバム「If」。
内容は、クィンシーのフルート、サックス、モリッシーのサックスをフルにフィーチュアしたジャズロック作品。
アップ・テンポのブルージーなロックやメランコリックなバラードに、力強いサックス/フルート・ソロを無理なく盛り込み、R&B 調の弾力性のあるサウンドに仕立てている。
そして、ファンキーなのに翳があるという、いかにも英国らしい粋な音になっている。
管楽器のみならず、パワフルにして表現力あるヴォーカルや、ジャズをベースに破天荒なプレイを見せるギターにも注目しよう。
管楽器、ヴォーカル、ギターらフロントのプレイは、パワフルにしてアンサンブルとしてもきっちりこなれており、迫力のみならず、優れたオーソドキシーともいうべき安定感がある。
したがって、とても聴きやすい。
そして、強烈な力技ソロを支えるのは、ていねいで軽やかなドラムス、俊敏なベース、暖かみのあるオルガンのバックアップである。
インスピレーションに富んだソロとともに、変拍子のテーマやスリリングなインタープレイなど大胆なアプローチもあり、ブリティッシュ・ロックの醍醐味が味わえる作品といえる。
ジャズ・バンドで培った技術/キャリアを持って、堂々とジャズとロックの融合作業に取りかかり、同時にエンタテインメントとして十分楽しめる音楽を生み出している。
そのセンスは並々ならぬものである。
マイルドな COLOSSUEM といってもいい。
パワフルだがブルージー過ぎることなく、ジャジーななめらかさと英国らしい翳りのある好作品。
ブラス嫌いの方もぜひお試しを。
なぜなら、ブラス・ロックというよりは、リード・ロック(サックスは金属製(またはメッキ)だがリード楽器)ですし、それ以前にブリティッシュ・ロックです。
個人的に大好きなグループです。
若きドラムス担当デニス・エリオットは後に FOREIGNER に加入。
「I'm Reaching Out On All Sides」(5:44) 4 分の 7 拍子によるメランコリックなヴォーカル・ナンバー。
トラッド風味のテーマが、いかにもイギリスものらしい。
古楽器のようなギターがおもしろい。
異色作。
「What Did I Say About The Box, Jack ?」(8:22)一転してジャジーなサックス、フルートのユニゾンが気持ちいい、軽やかなジャズロック・インストゥルメンタル。
ビッグ・バンド風のテーマから、トーキング・フルート、ギター、サックスとソロが回る。
全体にメローな音色がいい。
ギター、オルガンのバッキングがみごと。
傑作。
「What Can A Friend Say ?」(6:54)モータウンな雰囲気の強い R&B ナンバー。
イントロは印象的なフルート。
黒っぽくソウルフルなヴォーカルを、ゲストのブラス・セクションとギターがバックアップ。
シンコペーションやブレイクを用いたリズムの変化がドラマチック。
パワフルなモダン・ジャズ風のサックス・ソロに続き、ややロックっぽさを意識したようなギター・ソロ。
カッコいいです。
今でも十分はやりそう。
本曲で ISLAND レーベルとの契約が実現した、とライナーにコメントされている。
ドラムスはハーヴェイ・バーンズ、ブラス・セクションはトロンボーンがジョン・ベネット、トランペットがバド・パークス。
「Woman Can You See(What This Big Thing Is All About ?)」(4:11)ファンキーな快速ヴォーカル・ナンバー。
スピーディなテーマは、サックスとギターのユニゾン。
ヴォーカルのパンチが効いている。
間奏のサックス・ソロは、格別にメロディアス。
ベースとハモンドのバッキングもいい味だ。
うねりよりも、ストレートな疾走がカッコいい演奏だ。
ちょっとエッチなサブ・タイトルがイけてます。
「Raise The Level Of Your Conscious Mind」(3:15)CHICAGO や BST にありそうなキャッチーなメロディ・ラインとゆったりした広がりをもつブラス・ロック。
ピアノとサビの分厚いコーラスは、いかにもだが、シンプルなアレンジによるノスタルジックな暖かみには、何ものにも変えがたい味がある。
シングル・カットされたポップな名曲。
間違いなく 70 年代の音です。
「Dockland」(4:45)パーカッションが心地よく、STEELY DAN 風のハーモニーが美しいメロー・バラード。
演奏は、ヴォーカルを包み込むようなソフト・タッチである。
そんな中で、ギターだけはしっかり自己主張。
後半、演奏/ヴォーカルともに熱気を帯びるが、再び 40 年代ポップス・スタンダード風のくすんだ色合いに帰ってゆく。
フュージョン、クロスオーヴァーといった新しい世界への可能性を感じさせる音である。
「The Promised Land」(3:43)キャッチーなサックスのテーマと R&B 風の調子のいいヴォーカルが冴えるアップ・テンポで力強いナンバー。
パワフルで明るいサックスの押し捲りが、いかにもアメリカン。
中盤には、ここまで裏方に徹したオルガンのソロもフィーチュアしている。
ハッピーなエンディングだ。
(EDCD 505)
John Mealing | organ, electric piano, background vocals, arrangement |
Terry Smith | guitar |
Jim Richardson | bass |
Dennis Elliott | drums |
Dick Morrissey | tenor sax, alto sax, flute, arrangement |
J.W.Hodkinson | vocals |
Dave Quincy | tenor sax, alto sax, arrangement |
71 年発表の第二作「If 2」。
内容は、ホジキンソンのソウルフルなヴォーカルがテーマをリードし、スミスのギターなど充実したソロが次々と現われる、キャッチーなジャズロック。
フォーク風味もあるテーマをジャジーなグルーヴとロックのビートで鍛えた、贅沢極まるサウンドだ。
ファンキーだが、黒っぽい熱さよりも、サクっとした小気味よさがウリである。
主役は、パワフルながらもどこまでもリリカルなサックスとフルートだ。
そして、これら管楽器を凌がんとばかりに、ギターとオルガンも縦横無尽の活躍を見せる。
特にスミスは、テクニカルなジャズ・ギターからジプシー・ギターまで、幅広いプレイを決めている。
2 曲目は、エキゾチックなギターとベースのデュオが、R&B 風のファンキーなブラス・アンサンブルへと発展する、ドラマチックな作品。
終盤のオルガン・ソロはジミー・スミスばりである。
5 曲目のようなソフトなポップ・ナンバーにも、ジャズの魔法がたっぷりふりかけられている。
楽しく聴きやすいアルバムだ。
一部の録音はツアー中のニューヨークで行われている。ある日のプレス向けのギグにマイルス・ディヴィスが訪れたという逸話があるそうだ。
「Your City Is Falling」(5:07)前作の最後とつながるような、伸びやかなテーマをもつアップ・テンポのヴォーカル・チューン。
ハイトーンのヴォーカルによるテーマはきわめて快調。
ソロは、ハモンド・オルガン、テナー・サックス、そしてドラムス。
ジャジーで軽やかな R&B は、70 年代の TV 主題歌そのもの。
なぜだか、望月三起也の劇画を思い出します。クラブ受けしそうです。
「Sunday Sad」(8:25)
田園を思わせる英国らしいフォーク・タッチのなかに、エキゾチックなイメージを大胆に描く作品。
オープニングや中間部では、細やかなスパニッシュ調のギターが大きくフィーチュアされる。
長いギター・ソロ後半から、次第に緊迫感が強まってゆく。
終盤は、管楽器をフィーチュアした元気でグルーヴィなジャズ・ファンクへと変身。
ここでもオルガン・ソロがカッコいい。
「Tarmac T.Pirate And The Lonesome Nymphomaniac」(4:36)
ワウ・ギター、オルガン、管楽器で迫る粋でニュー・オリンズな R&B チューン。
ポップでストレート、リリカルな名曲だ。
テナー・サックスとオルガンのやりとりの呼吸のよさにうっとり。
ニンフォマニアてのは「色気違い」でござんす。
「I Couldn't Write And Tell You」(8:22)
アドリヴ合戦ながらも要所で英国ロックらしい叙情性を発揮する名品。聴き応えがあります。
熱気むんむんなのに音の扱いはあまりにクールで手際がいい。
ベースラインも弾けている。
中盤はテリー・スミスのギターが席巻。
長丁場を管楽器やオルガンの何気ないフレーズが引き締める。
「Shadows And Echoes」(4:29)
フルートが寄り添うメローな AOR タッチのバラード。
珍しくコーラスが入る。
イージー・リスニングのようで、ほんのりフォーキーな翳りも。
意表をついて中盤はあざやかなジャズ・ギター・コンボ。
「A Song For Elsa, Three Days Before Her 25th Birthday」(5:44)
北欧のグループが得意としそうな、パンチを効かせつつも哀愁も漂うジャズロック。
後半は二管がリード、無難に決める。
「お誕生日おめでとう」ソングでしょうか。
(EDCD 506)
John Mealing | keyboards, background vocals |
Terry Smith | guitar |
Jim Richardson | bass |
Dennis Elliott | drums |
Dick Morrissey | reeds |
J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
Dave Quincy | reeds |
71 年発表の第三作「If 3」。
再び熱気ある"ソウル・ジャズロック"を聴かせる、同一メンバーによる三作目。
管楽器を中心にタフでしなやかなソロを繰り広げ、タイトなアンサンブルとホジキンソンのパワフルな歌唱でがっちりとまとめる作風は揺らがない。
ホジキンソンは、得意のパンチを効かせる歌唱以外にも、バラードでも高貴にして毅然たる、卓越した表現力を披露する。
サウンド面ではストレートなアメリカ志向があるものの、バラードで見せる英国のグループらしい憂鬱な叙情性や、フルート・ソロを一番に持ってくるなどのセンスある雑食性も見せる。
それにしても、ジャズ畑出身のミュージシャンでありながら、テーマにおいてこれだけのポップ・フィーリングを打ち出せるから驚きである。
プロデュースはグループとジョン・チャイルド。
「Fibonacci's Number」(7:38)ソロをフィーチュアしたキャッチーなインストゥルメンタル。
ベンベンベースがカッコいい。
ミーリングはハモンド・オルガンを多用する。
管楽器ソロは、ワイルドなフルートからなめらかなテナー・サックス。このサックス・ソロがあまりジャズっぽくないところがおもしろい。
ドラム・ソロもあり。フィボナッチ数は 1,2,3,5,8...という奴です。
「Forgotten Roads」(4:23)熱く勇ましくもキャッチーな歌もの。演奏では技巧を誇るギターをフィーチュア。アッパーなヴォーカルもいい。
「Sweet January」(4:30)凛としたバラード。熱っぽい感傷に身を委ねつつも、クールな抑えも効いている。フルート、サックスをフィーチュア。
「Child Of Storm」(3:39)管楽器セクションとヴォーカルががっちり組んでしなやかに歌う、整ったイメージの歌もの。オルガンのバッキングがさりげなくも演奏を彩る。ソロはアルト・サックス。安定感あり。
「Far Beyond」(4:57)開放感とナチュラルな高揚が心地よい作品。バッキングではピアノのストローク、ソロはギターをフィーチュア。
「Seldom Seen Sam」(4:50)ユーモラスなトラッド調もあるソウル・ジャズロック。エレクトリック・ピアノをフィーチュア。バンジョー風のギター・アドリヴもおもしろい。
「Upstairs」(4:42)8 分の 6 拍子で力強くうねるジャズロック。しなやかなサックスを軸にギター、ベースらがぐいぐいと煽り立ててゆく。サイケデリックに吼えるオルガンがいい。ライヴのエンディングを飾るのにうってつけの作品だ。
「Here Comes Mr.Time」(4:43)ジャジーなクールネスとブルーズ・ロックの重みと苦味を粋に決めるスタイリッシュな作品。
ギターをフィーチュア。ヴォーカル・バッキングのリードのユニゾンが鮮烈。
ヴォーカル、ハーモニー、リードが重なるエンディングは、ロックの魔術、幻視感にあふれる。
(CP 80339)
John Mealing | keyboards, background vocals |
Terry Smith | guitar |
Jim Richardson | bass |
Dennis Elliott | drums |
Dick Morrissey | reeds |
J.W.Hodkinson | vocals, percussion |
Dave Quincy | reeds |
72 年発表の第四作「If 4」。
アメリカン・ロック然としたサウンドが出現するとともに、シャープなクロスオーヴァー/ジャズロック・テイストが加わった無敵のライヴ・アルバム。
ジョン・ミーリングは、エレクトリック・ピアノも頻繁に用い、また、テリー・スミスのギターは、ゲイリー・ボイルも真っ青の超絶プレイを連発する。
ビッグ・バンドの豊麗なるサウンドとジャズロックのキビキビした運動性を備えた演奏、そして黒っぽくなめらかな R&B テイストたっぷりのヴォーカルと、ファンク、ジャズ、ロックなど、全スペクトルにわたる音楽性を見せつける傑作だ。
アメリカン・ロック風の力技を見せながらも、要所を技巧的なソロ/アンサンブルで引き締め、気品あるリリシズムを漂わせている。
アメリカ、カナダでは一部の曲を入れかえた「Waterfall」として発売された。
プロデュースはリュー・ファターマン。
レコード番号は日本プロモ盤のもの。
「Sector 17」目のくらむようなソロがフィーチュアされる大傑作。
ギターはかなりカッコいい。
「The Light Still Shines」あまりにカッコいい R&B チューン。
「You In Your Small Corner」ヴォーカル・ハーモニーの美しいアメリカン・ロック。
「Waterfall」フルートが大々的にフィーチュアされる。テーマはさり気なく変拍子。WEATHER REPORT にも同じ名前の曲がありますが。
「Throw Myself To The Wind」サザン・ロックを意識したようなハード・チューン。
ヘヴィなディストーション・ギターが新鮮。
「Svenska Soma」オルガンをフィーチュアしたゴキゲンなファンク・ジャズ。
(ECP 80534)
Dick Morrissey | tenor sax, soprano sax, flute, background vocals |
J.W.Hodkinson | lead vocals, percussion |
Terry Smith | guitars |
Dave Quincy | tenor sax, alto sax, electric piano |
Cliff Davies | drums |
Dave Wintour | bass, background vocals |
Dennis Elliott | drums on 1,2,6 |
Jim Richardson | bass on 1,2,6 |
John Mealing | piano, organ on 1,2,6 |
73 年発表のアルバム「Waterfall」。
アメリカ、カナダのみで発表された作品であり、「If 4」の一部作品を新曲と入れ替えている。
ハイテンションの 3 曲目、洒脱にしてパワフル(瞬間 SOFT MACHINE)な 5 曲目は別格、ジャズロックの真髄的な秀作、快演だ。
3 曲目のテリー・スミスの爆発プレイに唖然。
個人的には、ホジキンソンの声にもなんともいえぬ魅力を感じます。
アメリカ志向を見せているところが特徴の作品だ。
「Waterfall」(5:38)「If 4」より。カントリー・フレイヴァー漂う秀作。
モリッシーのフルート・ソロのリードで疾走する。
コンガはホジキンソンだろうか。
NEON の TONTON MACOUTE が倍密、倍速となったようなイメージだ。
メロディアスなテーマにシングルヒット狙いもチラつくが、器楽の密度とテンションの高さはあくまでもライヴ・バンドのもの。
ライヴ録音だが、拍手は編集で挿入したような気がしなくもない...
「The Light Still Shines」(5:01)「If 4」より。
のめり気味のビートによるパンチの効いた R&B チューン。
ソウルフルなヴォーカルが伸びやかに、キャッチーにリードしてキメる。
COLOSSEUM と同系統の「黒さ」です。
R&B からジャズへの橋渡しを引き受けるエレクトリック・ピアノ・ソロがカッコいい。
サックス、ギターらのキツキツのハーモニー。
ライヴ。
「Sector 17」(7:59)「If 4」より、別バージョン。
アドホックな即興が無茶なアンサンブルへと収斂してゆく暴発系ジャズロックの傑作。
緊迫感はイタリアの AREA に匹敵。
パワフルなリチャードソンのベースライン、そして、なんといっても、スミスのギター。
純ジャズ出身の人がこういう風にタガを外すのは珍しい。
ジョン・マフラフリンと似た傾向だが、コワレ方は負けていない。
新ドラマーは手数で勝負型。
ビッグ・バンド風の全体演奏が力強く引き締める。
「Paint Your Pictures」(5:11)王道ブリティッシュ・ロック。ヴォーカル表現に漂う雅。
腰にくるセクシーなグルーヴとフォーキーでメランコリックな翳りのシームレスな結合。3 分 20 秒からのオルガン主導の展開は英国またはイタリアン・ロック以外にあり得ない。
「Cast No Shadows」(7:24)新ドラマー、クリフ・デイヴィスの作品。
ヴォーカル、管楽器は変わらずパワフルなブラス・ロック流だが、クロスオーヴァー・タッチを見せるところもあり。
変拍子リフなどは SOFT MACHINE にも通じる。ドラムス・ソロあり。
ギター・ソロ含めかなりプログレッシヴな作風だ。
「Throw Myself To The Wind」(4:39)「If 4」より。
アメリカ向けを意識したようなアーシーな作品。カントリー、ブルーズなどエリック・クラプトンも目指した南西部風。ライヴ。
(BR 101)
Dick Morrissey | tenor sax, soprano sax, flute |
Dave Quincy | tenor sax, alto sax |
Terry Smith | guitars |
John Mealing | keyboars, backing vocals |
Jim Richardson | bass |
Dennis Elliott | drums |
J.W.Hodkinson | lead vocals |
97 年発表のアルバム「Europe'72」。
72 年収録のライヴ盤(正確には、同年のスタジオ・ライヴとコンサートより抜粋)。構成曲から考えて、「If 4」発表後のライヴだろう。
アドリヴ・パートが拡張されていて熱気ムンムンだが、演奏はあくまでタイトで小気味がいい。
エキサイティングかつ王道的なブリティッシュ・ジャズロックであり、ジャジーな R&B の理想形である。
改めて、このグループはイギリス人が秘めている黒人音楽への憧憬をもっとも巧みに、知的に現実化できていると思う。
フォーキーなメロディが何ともいえずいい。
サックスのみならず、ギター、フルート、オルガン、エレクトリック・ピアノらそれぞれが抜群のパフォーマンスを見せる。
アンサンブルの呼吸もすばらしい。
「Waterfall」(4:40)第四作より。カントリー・テイストというか、アメリカン・ロック風のサウンドによる作品。
さりげないリズム・チェンジと変拍子シーケンスと奔放すぎるフルート・ソロは、英国ジャズロックの醍醐味。
エレクトリック・ピアノのバッキングが堅調でいい。
「The Light Still Shines」(5:00)第四作より。ブルージーなグルーヴを打ち出したスタイリッシュなソウル・チューン。ヴォーカルよし。
エレクトリック・ピアノのメローにしてエグ味もあるソロ。サックスによるシンコペーションのリフと泥臭いペンタトニック・ソロ。
「Sector 17」(8:06)第四作より。ギタリストの見せ場。後半はデイヴ・クインシーのアルト・ソロ。テーマ部分はマイルス・デイヴィスっぽい。
インストゥルメンタル。
「Throw Myself To The Wind」(4:01)第四作より。
「I Couldn't Write And Tell You」(9:45)第二作より。
「Your City Is Falling」(5:47)第二作より。
「What Did I Say About The Box, Jack ?」(20:20)第一作より。
(REP 4653-WY)