イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ILLUSION」。 76 年結成。最初期 RENAISSANCE を脱退したメンバーを中心に活動。作品は再編時含め四枚。(第三作は未発表盤の発掘)ピアノが彩るメランコリックなフォークロック。
Louis Cennamo | bass |
John Knightsbridge | guitars |
Eddie McNeil | drums, percussion |
John Hawken | piano, Fender Rhodes, Mini Moog, Mellotron, organ |
Jane Relf | vocals |
Jim McCarty | vocals, acoustic guitar, percussion |
77 年発表のアルバム「Out Of The Mist」。
内容は、多彩なキーボードが支えるメロディアスなフォーク系ロックで、たまに FLEETWOOD MAC 風のメイン・ストリームに寄る。
男女二人のヴォーカリストを擁し、曲調によって使い分ける。
ジェイン・レルフはソプラノではなく芯のある中低音の響きがいいタイプである。
美声でもコケティシュでもないが、飾らないミスティックな色気がある。(つまり、クリスティン・マクヴィーと同系統である)
何より一番の特徴は圧倒的なピアノ演奏だろう。
最初期 RENAISSANCE から STRAWBS への参加を経て再合流したベテラン、ジョン・ホウクンが余裕の佇まいで演奏を仕切っている。
クラシカルな曲調の作品では、70 年代も後半だが、メロトロン・ストリングスが変わらぬ幽玄の響きを随所で聴かせてくれる。
一方シンセサイザーは要所でのアクセントになっている。
穏やかな表情と適度にドラマティックな展開が特徴のクラシカル・フォーク・ロック。
プロデュースはグループとダグ・ボギー。
「Isadora」(6:58)70 年代初頭に作られたようなニューロック色豊かな哀愁ロック・バラード。コーダのインストゥルメンタルがすばらしい。
「Roads To Freedom」(3:55)
「Beautiful Country」(4:15)
「Solo Flight」(4:20)
「Everywhere You Go」(3:18)
「Face Of Yesterday」(5:45)メロディアスで美しい佳作。
「Candles Are Burning」(7:10)シュアーなリズムとストリングス、ピアノらによるクラシカル・タッチが冴える劇的な傑作。ポップスに大幅に寄せたシンフォニック・ロックの傑作。
(ILPS 9489/ ACA 8062)
Louis Cennamo | bass |
Eddie McNeil | drums, tubular bells, timpani, percussion, vibes, effects |
John Knightsbridge | electric & acoustic guitar |
John Hawken | Fender Rhodes, piano, Mellotron, Hammond organ, Mini Moog, Arp, Poly-moog, harpsichord |
Jim McCarty | vocals, acoustic guitar, percussion, backing vocals |
Jane Relf | vocals, backing vocals |
Paul Samwell-Smith | backing vocals |
Robert Kirby | strings arrangement |
78 年発表のアルバム「Illusion」。
内容は、前作の作風をさらに洗練したメロディアスでアコースティックな響きのメインストリーム・ロック。
前作はピアノがメインだったが、今回はエレクトリック・キーボードを大いに活かして作品のイメージを決めている。
ストリングス・セクションも動員して音のバリエーションを広げ、さらに巧みな作曲とアレンジを駆使している。
その結果、深い味わいのある楽曲が揃った。
オブリガートやコーダなどインストゥルメンタル・パートの活かし方が非常にいいので、メロディアスな歌ものの楽曲が一段グレードアップしている。
ロックな躍動感、健やかでストレートな美感、神秘性、すべての彫りが深くなるのだ。
音楽的な方向性がややあいまいではあるが、70 年代オールド・ウェイヴ・ロックの予定調和を味わうには適したアルバムだと思う。
プロデュースは盟友ポール・サミュエル・スミス。
「Madonna Blue」(6:47)ストリングスをフィーチュアしたブルージーなオールド・ウェーヴ・プログレッシヴ・ロックの大傑作。
説得力抜群のギター・プレイ。全編を彩るピアノ。さりげない変拍子リフレイン。
エンディングに向かう演奏がすばらしい。
「Never Be The Same」(3:17)ウエスト・コーストを意識したかのようなハーモニーの美しいフォーク・ロック。
「Louis' Theme」(7:43)ジェイン・レルフの歌唱による幻想味あふれるバラード。
キーボード・サウンドが美しい。ドラムレス。エフェクトされたベースの音が深い海の底から立ち上る泡のように全編を彩る。
「Wings Across The Sea」(4:48)ツイン・ヴォーカル・ハーモニーによる、ややジャジーな響きもあるメインストリーム・ロック。タイトなリズムとうっすらとしたファンタジー風味の取り合わせがみごと。名曲。
「Cruising Nowhere」(5:02)トライバルなドラム・ビートとギターが吠えるマジカルでハードな異色作。シンセサイザーも大胆。
「Man Of Miracles」(3:28)ローズ・ピアノの響きに抱かれたレルフのソフトな歌唱が綴るスペイシーなファンタジー。
「The Revolutionary」(6:15)ストリングスを生かした勇壮なるシンフォニック・ロック。オペラ風のヴォーカルなど、リック・ウェイクマンのクラシカル・ロックに通じる作風だ。
(ILPS 9519 / ACA 8062)