メキシコのキーボード奏者「Jose Luis Fernandez Ledesma Q」。 NIRGAL VALLIS のキーボーディストから出発してソロ・キャリアを積む。 作風は、シンフォニックなものから RIO 的なアヴァンギャルド・ミュージックまで多彩。作品多数。
Jose Luis Fernandez Ledesma Q | keyboards, guitars, sound effect, percussion, kalimba, ocarina, rhythm programming, voices | |||
guest: | ||||
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Alquimia | vocals on 11 | German Bringas | sax on 4, 10 | |
Francisco Delahay | acoustic guitar on 11 | Ma Elena Duran | vocals on 7 | |
Laura Herrera | bongo on 5 | Francisco Lelo de Larrea | guitar on 10,14 | |
Beatriz Luna | vocals on 13 | Ramon Nakash B | violin on 4,6 | |
Sergio De Regules | keyboards on 11 | Julio Sandoval | bass on 3,5,13,14, acoustic guitar on 6 | |
Alejandro Schmiot R | guitars on 9 |
97 年発表のアルバム「Extractos」。
1986 年から 1993 年にかけて作曲された作品を集めた編集盤。
キーボードを中心としたクラシカルなロマンチシズムと素朴なフォーク色が交じり、もの悲しさと華やぎが同居する魅力的な作品である。
西洋クラシック、中南米らしい民俗音楽タッチ、マイク・オールドフィールド、ややレコメンなど、さまざまな要素が交じり合った作風は、内省的といえそうだが、決して暗くはなく、一人遊び特有のおだやかで丸みを帯びた世界である。
宅録キーボード・ソロも、演奏のセンスか解釈のよさか、チープな音なのに不思議と胸に響いてくる。
波長が合ってしまうと、なかなか手放せない音だ。
また、1 曲目のような緊張感ある展開やドラムスの加わった演奏では素直にプログレッシヴ・ロック全開となる。
GENESIS を思わせる優美でシンフォニックな展開もある。
本人はキーボード以外にもさまざまな楽器を操るが、特にアコースティック、エレクトリック両ギターとパーカッションの使い方がいい。
カリンバは特技のようだ。
NIRGAL VALLIS のメンバーに加えて、管楽器、弦楽器、ギターらのゲストを迎えている。
作品は、初出ではないようだが、スペイン語が読み取れないため詳細は不明です。
ジャケット違いの CD もある。
(CDLN-03)
Jose Luis Fernandez Ledesma Q | keyboards, sound effect, percussion, kalimba, ocarina, voices |
Margarita Botello | vocals, effected voices, bass, percussion |
2000 年発表のアルバム「Sol Central」。
女性ヴォーカル、管楽器をフィーチュアした ART BEARS、THINKING PLAGUE、MOTER TOTEMIST GUILD 直系のアヴァンギャルド・ミュージック。
管楽器主導の込み入ったアンサンブル、変則的なリズム、および独特の和声進行による攻撃性、深刻さなど RIO 系の演奏である。
キーボードによるメタリックで非人間的なサウンド・メイキングアンサンブルなど、ART BEARS に端を発し、そこからつながる西海岸レコメン第二世代の影響(交流?)はかなりあるようだ。
ただし、多彩な音響処理、多重録音ハーモニーの多用、即興風のリズムレスのパートにおける叙情性、クラシカルなタッチは独自のものだ。
エフェクトによる加工は、ヴォーカル含めかなり大胆に使用している。
HENRY COW か 5UU'S のようなヘヴィ・メタリックなギターも飛び出すが、それ以上に個性的なのは、民族楽器と呪術的ヴォーカリゼーションが呼び覚ます土俗のエキゾチズムである。
荒地に吹きすさぶ風に捲かれたようなヴォーカルは、ラテン風のフォーク・ソングを越えて、サビヤ・ヤナトゥにも迫るクラシカルで普遍的、超越的な響きを帯びている。
特に、攻撃的で多層的なヴォーカリゼーションには、ブラジルの鬼才、アヒーゴ・ベルナベに通じる表現力がある。
また、パーカッション類も多用されている。
さらに、ギターの反復パターンとメロトロン風のストリングス処理、孤高のトランペットなど KING CRIMSON への憧憬の如き大感動シーンもある。
表題作は、七部構成の長大な組曲。
二曲目は、組曲とは異なる作風のエキゾティックなアンビエント・ミュージック。女性ヴォーカルとトランペットをフィーチュアしている。
また、本作品には、元祖レコメン、クリス・カトラーの賛辞がある。まさに「お墨付き」ということだ。
「Sol Central」(35:45)
「Pueblos Perdiodos」(9:03)
(CDLN-12)
Jose Luis Fernandez Ledesma Q | keyboards, guitars, recorder, ocarina, percussion, bass | ||
Margarita Botello | voice, autoharp | Heman Hecht | drums |
Raul Flores | percussion | Alejandro Sanchez | violin |
Angela Aldama | violin | Vera Koulkova | violin |
Vitali Roumanov | cello | Hugo Santos | stick |
Julio Sandoval | bass | Fernando Dominguez | clarinet, bass clarinet |
Manuel Ugarte | recorder |
2002 年発表のアルバム「Designios」。
女性ヴォーカル、アコースティック・ギター、フルート、ヴァイオリンらによる透き通るようなアコースティック・サウンドに、エレクトリック・キーボードが丁寧にクラシカルな装飾を施してゆく、ファンタジックで繊細な作品。
特徴は、エレクトリック・キーボードがアコースティックなアンサンブルと自然にとけあっているところと、その結果としてのアコースティックな響きの美しさだろう。
先鋭的な音楽家らしい幾何学的な反復による精緻な構造と、民俗性やロマンティックな旋律という自由度が組み合わさって、豊かな味わいの作品になっている。
緩急や緊張弛緩の呼吸がとてもいい。
前半は、女性コントラルトによる神秘的ながらもメロディアスな歌ものシンフォニック・チューンでまとめ、後半には、アコースティックで民族的なサウンドながらもムーグ風のシンセサイザーが唸り、変拍子オスティナートが緊張を高める NIRGAL VALLIS の未 CD 化アルバムからの再録作「Abismo」、「Los Designios De Geminis」がある。
特に、18 分近い「Los Designios De Geminis」のドラマはかなりの手応えあり。
全体にバランスの取れた安定感ある作風であり、レーベル・メイトであるスペインのエキゾティック・フォーク・プログレの旗手 AMAROK からのいいヴァイヴレーションを受けとっている可能性もある。
クレジット上の flauta は、いわゆる現在のフルートではなく、中世ヨーロッパと同じく「リコーダー」を意味するようだ。
(LUNA NEGRA / CDLN-21)
Jose Luis Fernandez Ledesma Q | Fender Rhodes, sinthesizer, sequencer | ||
Ramon Nakash B | violin | Alejandro Schmiot R | guitars, bass |
Claudio Martinez De Alba | vocals, chorus | Rafael Gonzalez | drums, percussion |
Arturo Meza | instruments | Maja Rustige | instruments |
Alejandro Gonzalez | recorder |
84 年発表の編集盤「Y Murio La Tarde / In Princopio Erat Verbum & Verbum Erat Apud Deum & Deus Erat Verbum Hocerat In Principio Apu Deu」。
A 面は NIRGAL VALLIS による作品集であり、柔らかな女性ヴォーカル、ヴァイオリン、木管風のキーボードなどをフィーチュアした、クラシカルかつフォーク風味も強いシンフォニック・ロック。
演奏は、キーボードを中心にしたヴァイオリン、アコースティック・ギターらによる、素朴な誠実さを感じさせる丹念なアンサンブルが中心である。
キーボードの演奏で特徴的なのはフェンダー・ローズと金管風のムーグ・シンセサイザー。
前者は、ジャズ・タッチというよりはファンタジックで愛らしい雰囲気、いわば CAMEL 系の演出に大いに役立ち、後者は、ファンファーレ調でおとなしめの曲調に勇ましいアクセントとなっている。
ホイッスル系のサウンドがデジタル・シンセサイザー特有の薄っぺらな響きになっているのが少し残念だ。
一方、素朴なペーソスは、淡々としたアコースティック・ギターやヴァイオリンの担当である。
また、ヴォーカルは、歌唱そのものよりも声質の奥底に哀感をはらんでいるタイプ。
これらによる比較的シンプルな音の配置にもかかわらず、音楽に穏かな流れと生命力が感じられる。
シンセサイザーの木管系サウンドがややチープなこと、躍動的な演奏が若干不安定なことさえ我慢できれば、音楽的には申し分のない作品です。
いろいろな意味で「素朴さ」がキーワードになる佳作である。
(MUSEA 盤 CD では、この A 面の内容に 95 年新録音の 4 曲を追加している、はず)
ちなみに、NIRGAL VALLIS のカセット作品である第二作「Barnard 11 Anos Luz」(1986)、第三作「El Orfebre」(1991)は、未 CD 化。
B 面は、Arturo Meza & Maja Rustige による雅楽を連想させる薄く鋭い音やアンビエントな音響が印象的な、かなり前衛的なインストゥルメンタル集。「プログレッシヴ」という言葉の真の意味に迫るのは、この B 面の内容である。
(GENTE DE MEXICO 003)