スウェーデンのマルチ・インストゥルメンタリスト「Lach'n Jonsson」。 ZUT UN FEU ROUGE、UR KAOS で活動。 RIO 色の強い個性的なソロ作品で知られる。作品は四枚。BAUTA RECORDS 主催。
Lachen J | drums, talking drums, drum machine, strings, bass, xylophone, organ, harmonium | ||
guitar, synthesizer, pasalterion, recorder, tape loop, clavinet, viola, vocals | |||
Emöke Vang | piano | Andreas Hedvall | trombone |
Björn Hellström | bass clarinet, soprano sax | Johan Hodrén | electric piano, clavinet, synthesizer |
Mats Paulsson | bass | Kenneth Schlaich | alto sax |
Elin Hultkvist | voice | Ingemo Rylander | recorder |
85 年発表のアルバム「Music For The Dying Forest」。
ピアノ、管弦にドラムス他打楽器を持ち込み、険しく強圧的な変則リズムと不安をかき立てる旋律/和声とインダストリアルなノイズで迫るチェンバー・ロック作品である。
一人多重録音にゲストを迎えた形であり、パーソナルでコンパクト、こじんまりとした演奏である。
自分以外には信者のいない宗教のような閉塞感があり、いわゆる暗黒系のような恐さはないが、その代わりに、絶望の果てらしき不気味な弛緩と薄笑いのようなユーモアがある。
要は、誰に宛てたものでもないメッセージをブツブツつぶやくような怪しい演奏なのだ。
チャイルディッシュで素朴なところと病的な複雑さやデリカシーがあるところは、RASCAL REPORTERS や KULTIVATOR、それら祖先の一つの EGG に近い。
底なしに暗いカンタベリーであり、間違いなく HENRY COW の一分派である。
8 曲目のように奇怪に捻じれたニューウェーヴ風のロック・ビートもある。
朗読、詠唱、呪文(?)調のヴォイスもあり、歌い手としての存在感は悪くない、というかむしろキャラが立っていて見栄えがいい。
この手のアヴァンギャルドな音楽では、打楽器系の音で執拗に追い込むという表現がよく見られるが、本作品もそうである。
音楽のプリミティヴなパワーを呼び覚ます呪文(13 曲目なぞさながらウンババ族の祈祷である)には打楽器がうってつけなのだろう。
打楽器を共通項として、現代音楽とロックが邂逅したのが、RIO といってもいいくらいだ。
愛らしいシロホンの音色がこれだけ不気味に響くのも珍しい。
救いは原語の妙にひなびた和やかな表情である。
やたらと真っ黒なスリーヴには、「死は喜劇であり、音楽は喜びである」で結ぶ詩のようなものが書かれている。
曲順は LP と再発 CD で異なり、最終 15 曲目は CD 化の際に追加されたようだ。(変拍子で疾走する UNIVERS ZERO 風のスリリングな佳曲である)
ヴォーカルはスウェーデン語。
アブストラクトでやや病んでいる風ではあるが、それを自分らしさとポジティヴにとらえているせいなのか意外と聴きやすい。
鍵盤楽器、鍵盤打楽器の変拍子オスティナートが妙に明るくてユーモラスなので、ラーシュ・ホルメルのファンにもお薦め。
「Vattnets Dans I Trädtopparna」(3:04)
「Waltz For Nova Scotia」(2:12)
「Skogen Flyr」(3:01)
「Dämonvärk」(2:52)
「Ordsnår Leder Vilse」(1:26)
「Skuggan」(3:15)
「Ett Liv Som Tiden Regnar Bort」(2:29)
「Watasenia - Before And After」(5:16)
「Eldbevekelse」(5:19)
「Räven Haltar På Sitt Tredje Ben」(3:08)
「Frusen Bark」(4:04)
「Hybris」(2:37)
「Humbaba Och Cedrarna」(3:42)
「Amazonas」(5:00)
「Flaubears Dancing」(4:47)
(BAR 8503 / BAR 0901)
Lach'n Jonsson |
89 年発表のアルバム「Songs From Cities Of Decay」。
HENRY COW から ART BEARS への展開をなぞるように前作から作風は若干変化し、器楽を越えてテキストと多重歌唱の比重が高まった。
当然メロディも見えやすくなった。
前作のような打楽器とアタックの強いビートを強調したチェンバー・ロック色はやや減退し、ピアノと歌唱、ヴォイス表現、怪奇な効果音風の器楽/ノイズがおりなす幽玄にして浪漫のある世界となった。
必然的に「静」の部分がクローズアップされ(特に前半)、怪奇なイメージも、前作における悪夢で追い立てられるような恐ろしさから、地獄の門の軋みとともに数知れぬ亡者のうめきが染み出てくるようなおぞましさへと変化している。
旧 B 面は 20 分以上の大作一曲であり、序盤と終盤では得意のシロホンを使った圧迫感あるアンサンブルも見せるが、多声のアカペラ(ときに声明)がより印象的。
中盤のオルガン、弦楽、ピアノによる重厚なアンサンブルは THINKING PLAGUE と同質の禍々しくもシンフォニックな展開である。
ややゴシック調のオペラ作品ともいえそうだ。
8 曲目と 9 曲目は UR KAOS との共演。
ヴォーカルはスウェーデン語。
「Han Såg ... (He Saw ...)」(3:33)
「Stad (City)」(3:37)
「The Song Of The Rats」(2:38)
「Askvarelsen (Creature Of Ashes)」(2:16)
「Ur Träsken Och Skogarna (Out Of The Swamps And Forests) 」(2:52)
「Vindens Sång (The Song Of The Wind)」(2:42)
「Livskänslan (The Feeling Of Life) 」(1:47)
「Tomma Bakgårdar (Empty Backyards) 」(2:41)
「Intermezzo: Andning (Breath) 」(1:05)
「Monument (Monuments)」(24:11)
(BAR 8901 / BAR 9602)