EGG

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「EGG」。 68 年結成 72 年解散。 74 年再結成。 作品は三枚。 オルガン中心のサイケデリックなサウンドながらあくまで知的でクールな音つくりが特徴。

 Egg
 
Mont Campbell bass, vocals
Clive Brooks drums
Dave Stewart organ, piano, tone generator

  70 年発表の第一作「Egg」。 脱退したスティーヴ・ヒレッジ以上のプレイヤーが発見できなかったためギタリストを採用しないと決心し、キーボード・トリオの道を歩むことになった。 THE NICE に憧れながらも、ただのオルガン・ロックというにはあまりにこんがらがったリズムと変わった調性と音響効果が強調されていて、いかにもクールでモダンな音楽インテリ風の内容となっている。 (キース・エマーソンはプレイにしても作曲のセンスにしても、もっと粘っこく華美で俗っぽい。その一種の垢抜けなさが、EL&P の魅力の一つであった) サイケデリック、ブルーズロック色の強かった前バンドの作風を経て、クラシックを軸により多彩な音楽性を盛り込み実験色が強い。 オルガン・ロックの枠には収まらないスケール感は、スチュアートとキャンベルという優れた音楽センスと演奏能力を持ったミュージシャンが綿密に計画を練りユーモアを駆使した結果だろう。 カッコいいロックは必ずしも巧みな演奏とは直結しないが、ここでは演奏力を高めることでロックのグレードを上げることが試みられている。 そして、決して理屈ばかりの頭でっかちではない。 ハモンド・オルガンのプレイに明らかなように、ロックの基本であるラウドなパンチや荒々しいグルーヴも一流である。 トーンジェネレータのようなテクノロジーが時代ともに陳腐化してしまうのとは対照的に、このオルガンのプレイのノリはいわばロックの不易な部分であり決して色あせない。 キーボード・ロック・ファンのみならず、ジャーマン・ロックのようなサウンド志向のファンにも受けそうな内容だ。 1 曲目とバッハ以外は、すべてグループによるオリジナル作品。 モント・キャンベルによるノーブルで男性的な歌唱も特徴的。 プロデュースはグループ。 オルガンの可能性を追求するためにクラシックやジャズを積極的に取り込んだ実験的キーボード・ロック。 サウンドは同時代の THE NICE に通じるが、インプロに加えて変則リズムや調性の実験のような面も強調されていて、このグループの挑戦的な姿勢が分かる。

  「Bulb」(0:09)爆音のみ。 作者は Gallen とあるが誰?

  「While Growing My Hair」(4:02)8 分の 6 拍子を軸にリズムを変化させるジャジーなスタンダード風の歌もの。 2 拍子系と 3 拍子系が交じり合った骨折シンコペーションと機械じかけっぽいオルガンのフレーズのため、どこか落ちつかず、ずっとムズムズしたままである。 感電しそうなオルガンの音が魅力か。 ヴォーカルだけはあくまで古めのジャズ・ヴォーカル調である。

  「I Will Be Absorbed」(5:11)変拍子パターンによる「動」と謎めいた「静」のコントラストが特徴的な英国ロックらしい歌もの。 オープニングの 8 分の 18 拍子と穏やかな 4 分の 7 拍子の二つのテーマが、ハードなオルガン、ピアノの奏でる 8 分の 13 拍子リフへと展開する、途轍もない変拍子の実験である。 この「凝り性」は、カンタベリー・ミュージックの最大の特性であり、NATINAL HEALTH から BRUFORD にまで引き継がれてゆく。 歌のメロディはノスタルジックながらも、どこか無調性風でもある。 中盤のハイ・テンションな演奏がカッコいい。 ここまで二曲はアブストラクトなイメージの演奏とジャズっぽいヴォーカルの組み合わせの妙が特徴である。

  「Fugue In D Minor」(2:49)バッハの「トッカータとフーガ」より抜粋。 やたらとヒネリの効いた実験曲が多い中においては異色の存在である。 基本は教会風オルガン・ソロにリズム・セクションを加えたものであり、オランダの TRACE 辺りと同じ芸風である。 今ではバロック音楽をポピュラーミュージックの枠内でリアレンジするのはごく普通のことだが、その端緒となったのがこの時代の前衛ロックにおけるアプローチなのである。

  「They Laughed When I Sat Down At The piano...」(1:21) ピアノによる大仰なラフマニノフ、チャイコフスキー調の演奏にトーン・ジェネレータの奇天烈な電子音が笑い声のように絡みつく。 ジョークのような作品。

  「The Song Of McGillicudie The Pusillanimous」(5:09) 8 分の 5 拍子で一直線に疾走するエネルギッシュなサイケデリック・ロック。 鋭く突き刺さるベースのリフと狂乱するハモンド・オルガン、たたみかけるようなリズムの上で繰り広げられる激しいインプロヴィゼーション。 これぞアート・ロックというべき暴力的な芸術性に満ちている。 ノーブルなヴォーカルとガレージ風の演奏のミスマッチもおもしろい。

  「Boilk」(1:04)テープ操作のようにピッチがユラユラと揺れ動き、ノイズやテープ逆回転による効果音が慌しく現れる。 小さな前衛。

  「Synphony No.2」(20:40)オルガンのリードでめまぐるしく変転する、旧 B 面を飾ったクラシカル・ロック・インストゥルメンタル。ここでの「クラシック」はバロックから現代音楽まで幅広い。 A 面同様大胆なリズム・チェンジが特徴である。 ジャズとクラシックの間を現代音楽が駆け抜けていくクールで知的な楽曲だ。
   第一楽章は、軽やかなオルガンのリフレインからベースとオルガンのユニゾンによる 4 分の 9 拍子の無機質なリフへと発展する。 テンポアップしたかと思うと、グリーグの「山の魔王の宮殿」のテーマが快調に飛び出してびっくり。 一転してジャジーなオルガンのインプロヴィゼーションへ。 ひと時も油断できない展開だ。 両手でフルに弾きまくるハモンド・オルガンの音色は抜群。 フレージングもスリリングだ。 さらにブルージーな 4 分の 3 拍子のリズムでオルガン・ソロが続き、オープニングの 4 分の 9 拍子のベースとオルガンによるユニゾンのリフレインが回想されてカタがつく。
   第二楽章は、オルガンによるファンファーレ風のテーマをフロアタムとスネアのざわめきが支えるイントロダクションから。 不気味に蠢く低音と散りばめられる打撃音、そして重い 4 分の 5 拍子でオルガンとピアノがハモる重厚なテーマへ。 またも湧き上がる 3 連のビートと打撃アクセントによる不気味なざわめき、そしてさきほどの重厚なテーマが甦る。ベースラインも俊敏だ。 三度トムトムのような打撃音がざわめき不安をあおる。 三度オルガンのテーマ、そしてそのテーマの末尾が次第に侵食されてゆく。 やがてトーン・ジェネレータがサイレンのように高まり、ビートこそ堅実だが世界はノイズとともに混沌とし始める。 混沌を貫くのはあのテーマだ。
   断章(Blane)は、工作機械が立てるような電子音のノイズから始まる。 十年早いインダストリアルな音作りである。ワウワウ・オルガンとトーンジェネレータを組み合わせが金切声を上げる。 渦を巻くようなノイズの暴風が吸い込まれるように去ると、教会風のオルガンが厳かに流れ始める。 しかし、急激なヴォリューム変化と強烈なファズ音がその調べを遮ってしまう。 背景では掛け声のようなノイズが繰返されている。 ここからは強烈な電子音のノイズが猛威を奮い始める。 重厚なテーマがノイズの向こうにかろうじて見えてくる。
   第三楽章は未収録。「春の祭典」の「乙女たちの踊り」をモチーフとした楽曲らしいが著作権上の制約で最初版の LP 以外には収録されていない。
   第四楽章では、オルガンがクールな 7 拍子のテーマを提示。調性を希薄にするのが得意らしい。 対抗するのはファズ・オルガンのテーマ。 オルガンとベースによるジャジーなインタープレイ。 ベースのライヴで奔放なプレイがいい。 再びオルガンの二つのテーマの呼応。ベース・ラインが活発だ。 今度はオルガンのコールに応じるドラムスのソロ。 テーマをつなぎにソロをフィーチュアするシンプルなジャズ・スタイルながらもロックでタイトなアンサンブルが楽しめる。

(SDN 14 / POCD-1843)

 The Polite Force
 
Mont Campbell bass, French horn, organ, piano, vocals
Clive Brooks drums
Dave Stewart piano, organ, tone generator
guest:
Henry Lowther trumpet
Mike Davis trumpet
Bob Downes tenor sax
Tony Roberts tenor sax

  70 年 11 月発表の第二作「The Polite Force」。 内容は、第一作同様一筋縄ではいかないキーボード・ロック。 とはいえ、実験色と若々しい諧謔はそのままに、ロマンティックな叙情性も加味してより聴きやすくなった。 まずはスチュアートのハードなハモンド・オルガン、ピアノのプレイで楽しもう。 とてもよく楽器を歌わせているし、要所でヘヴィで痛快な演奏をぶちかましてくれる。 彼がレスリーを通したハモンド・オルガンをプレイするのは、この作品が最後ではないだろうか。 クールで知的なイメージのあるデイヴ・スチュアートだが、本作ではキース・エマーソンばりに熱く大向こう受けするフレーズをアグレッシヴに叩き出してくれる。 もちろんジャジーでメロディアスなプレイのセンスもいい。 また、スチュアートが作曲とともにプレイヤーとしてもエネルギーを使っているのに対して、キャンベルは複雑な楽曲の作曲に力を入れているようだ。 前作がやや生硬で気負いがあったのに比べて、本作では若く瑞々しい感性が素直に出せている上に構成力も向上している。 プロデュースはニール・スレイヴン。 スティーヴ・ヒレッジの KHANCARAVAN のファンなら絶対に気に入るはず。

  1 曲目「A Visit To Newport Hospital」(8:26)。カンタベリー・ジャズロックの名品。 オープニングのファズ・ベースからして「これぞカンタベリー」である。 というか、メロディアスな変拍子テーマを奏でるハモンド・オルガン、オブリガートと間奏のプレイ、控えめながらも小粋なピアノは元々スチュアートのものであり、それにカンタベリーという名前がついたというべきだろう。 (ただし、ファズ・ギターのようなオルガン・サウンドの特許だけは、デイヴ・シンクレア、マイク・ラトリッジと分け合わねばなるまい) どうしても HATFIELD AND THE NORTHCARAVAN を思い浮かべてしまう華やかさがある。 ヴォーカルの末尾のシャウトと重なるハモンド・オルガンの決めのフレーズの鮮やかなこと! ジャジーな歌メロもすばらしい。 ヘヴィさとジャジーなメロディがうまくバランスし、サイケなアートロック色も失っていない傑作である。 音色から考えて、二つのオルガンを使い分けているようだ。

  2 曲目「Contrasosng」(4:24)ブラス・セクションを迎えた作品。 変拍子の実験曲(レコードなら、針が飛んでいないか心配になる)としか思えない内容である。 けっつまずきそうなリフの連続。 テーマは 8 分の 5 拍子 + 8 分の 9 拍子。 おそらくキャンベルが主導権をとった野心作である。 この凝り方、GENTLE GIANT とも共通する。

  3 曲目「Boilk」(9:21)(なぜか第一作にもあった名前の曲だ) 鐘の音やヴィブラフォンそしてテープ逆回転効果のコラージュのような実験曲。 オルガンの逆回転音は、メロトロンに似ている。 ドラムスの逆回転音は、ギターのストローク。 電子音ノイズが唸りを上げる。 エンディングに、チャーチ・オルガンの奏でるバロック音楽(原曲はバッハらしい)が重なってくる。 この頃の常套手段ではあるが、救いの手をさし伸べられたようで心やすらぐ。 前作でも同様な作品があったが、こういう音でも音楽になることを発見したアーティストとしての悦びは分かるが、普通のリスナーには聴き通すのはなかなかつらい。

  4 曲目の組曲「Long Piece No.3
  一楽章(5:07)オープニングのシリアスなリフレインが強烈。 ベースが 8 分の 9 拍子でリフを刻み、オルガンは 8 分の 7 拍子 + 8 分の 2 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 4 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 6 拍子、8 分の 7 拍子 + 8 分の 8 拍子のシーケンス。 小太鼓調のドラムスが刻むリズム・パターンを意識すると頭が痛くなる。 エフェクトで歪んだベースとオルガンの音は、SOFT MACHINE と同じスタイル。 唐突なブレイクやポリリズミックなアンサンブルなど終始な複雑な展開を見せる。 オルガンは機を見て飛び出す。 ピアノの出現から若干雰囲気が変わるも、無機的でインダストリアルな調子はそのまま。 ドラムとピアノのビートのせいで心臓の鼓動が変になりそうだ。 さまざまなノイズを引き延ばしてこね回したような作品だ。
  二楽章(7:37)温かみある小気味のいいハモンド・オルガンのテーマが示されるオープニング。 前曲よりも人肌感あり。 ブレイクを経て、キーボードの限界を確認するような無調、リズムレスでエコーがざわめく電気の混沌へと突っ込む。 SOFT MACHINE そのもの。 無機的な展開だがここでは熱気が感じられる。 一転してピアノとオルガンのデュオ(トリオ?)によるクラシカルだが変拍子実験風のアンサンブルへ。 小難しいがずしっと重みのある演奏だ。 オルガンのロングトーンがオープニングのハモンド・オルガンのテーマを呼び覚まして終り。
  三楽章(5:02)ベースとピアノのデュオによる込み入ったアンサンブルがやがて軽やかなオルガンを覚醒させる。 一気に立ち上がるヘヴィに突き進むアンサンブル。 オルガンが唸りを上げ、絶叫する。 リズムチェンジとともに軽やかに走るオルガンには祝祭的なノリもあり。 表情を険し気に、わびし気に、明るくとさまざまに変えてオルガンのリードするアンサンブルが走る。 圧迫感はあるがクラシカルである。 轟々と湧き立つピアノ。 オルガンとピアノ打撃の呼応を経てファズ・オルガンが牙をむく。 幽鬼の絶唱のようなトーン・ジェネレータの電子音が次第に周囲を圧し始め、秩序が去ってゆく。 狂的なエネルギーを感じさせる作品だ。
  最終楽章(2:51)ハモンド・オルガンの 7 拍子リフレインがリードする疾走感あふれる演奏。 スピーディーに跳ねる 5 拍子のドラミングとともにオルガンが走る。 数多いブレイクにつまづくこともなく 9 拍子のオルガンのリフレインと複雑怪奇な拍子のドラムスがポリリズミックな絡みを見せる。 またも複合リズムの実験だ。 終盤のベースのリフが自信に満ちていてカッコいい。 個人的にはハモンド・オルガンの音で救われている。

(SML 1074 / POCD-1844)

 The Civil Surface
 
Mont Campbell bass, voice, French horn, piano
Clive Brooks drums
Dave Stewart piano, organ, bass on 6
guest:
Jeremy Baines germophone, bonkLindsay Cooper oboe on 1,6, bassoon on 1,6
Tim Hodgkinson clarinet on 1,6Steve Hillage guitar on 5
Maurice Cambridge clarinetStephen Salloway flute
Chris Palmer bassoonThe Northets choir on 4
Amanda Parsons, Ann Rotherthal, Barbara Gaskin vocals on 4

  74 年発表の第三作「The Civil Surface」。 すでにグループは解散していたが、HATFIELD AND THE NORTH のメンバーとして活躍していたデイヴ・スチュアートが、ヴァージンからソロ作のオファーを受けたことをきっかけにグループを再結成して本作が録音された。 内容は、EGG らしいクラシカルな作編曲と現代音楽指向に、HATFIELDS を経たジャジーなポップ感覚が融合した前衛色濃いもの。 前作までの迫力あるオルガン・ロック+クラシックという作風をさらに発展させ、多彩なリズムと器楽による効果を綿密に計算して仕上げた音楽的な密度の高い作品集である。 変拍子や不協和音、反復を多用した現代音楽的な作風を、室内楽やロックのフォーマットにうまく落とし込んでいる。 そして、緻密にして抽象的、無機的な作編曲と強迫的な演奏にもかかわらず、独特のシニカルなユーモア・センスやロマンティシズムが分かるところがいい。 このサウンドを支えるゲストも多彩だ。 HATFIELDS のハーモニーを支える NORTHETS ばかりか、HENRY COW のメンバーや旧友スティーヴ・ヒレッジも参加している。
  タイトルである「the civil surface」という表現は「普通に見える暮らし」という意味らしい。Below the civil surface というと「市民生活の表層の下には...」のような、ややジャーナリスティックでセンセーショナルなニュアンスが出るようだ。 ジャケットのオレンジがその市民生活だとすると、その中には? オレンジを配達したらしいトラックも小さく描かれている。

  「Germ Patrol」(8:31)ややコミカルな行進曲風のインストゥルメンタル。 意図的にダイナミックレンジを絞ったようなパフォーマンスである。 一見こじんまりとしたおもちゃの行進曲のようでいて、強圧的な変拍子アンサンブルや時限爆弾のタイマーのように不気味な緻密さをはらむ。 ギターのいない HATFIELDSHENRY COW といっていい。 リチャード・シンクレアのスキャットが入ってもまるで違和感なし。

  「Wind Quartet 1」(2:20)キャンベルによる管楽器アンサンブル。

  「Enneagram」(9:06) スリリングにして洗練されたファンタジーの味わいもある名作であり、「偏執的にしてキュート」という HATFIELDS 的なセンスが強く感じられる。 いたずらっ子のようなオルガン、キャンベルのファズ・ベースもカッコいい。 坂本さんのライナーノーツにあるとおり、音数を組み合せたアンサンブルではなく、限られた音数の中、各自のフレーズとプレイヤー間の呼吸のみでいかに緊張感やドライヴ感を演出できるかという試みであり、それは大成功している。 次世代のフォロワーへの影響の源となった音の一つだ。

  「Prelude」(4:17) NORTHETS が参加し、瞬間 NATIONAL HEALTH と化す。

  「Wring Out The Ground Loosely Now」(8:11)ヴォーカルはキャンベル。 さりげなくもつまずきそうな変則リズムの上でスチュアートの爆発的なアドリヴあり。 ヒレッジのギターはおとなしめ。

  「Nearch」(3:23) 放送事故誘導箇所があるためラジオではかかりません。 打楽器と管楽器による民族音楽風の小品。スチュアートはベースを弾いているらしい。

  「Wind Quartet 2」(4:45)未知の田園風景を描いたような「1」よりも謎めいた管楽器室内楽。 どことなく御伽噺をイメージさせる、非常に美しい現代音楽である。 アルバム最後の二曲で非迎合的な姿勢を鮮やかに印象付ける。
  
(C1510 / VJCP-68688)

 The Metronomical Society
 
Clive Brooks drums
Mont Campbell bass, vocals
Dave Stewart organ, piano, tone generator

  2007 年発表の作品「The Metronomical Society」。 BBC 音源やライヴ音源から構成される編集盤。 「The Civil Surface」に収録された作品も多く、名品「Enneagram」もあり。 改めて THE NICE と並び称すべき野性味あふれるモダン・クラシック寄りのオルガン・ロックの高峰であり、さらに、オルガンとファズ・ベースによる対位アンサンブルのクールさでは一歩も二歩も先へ行っていることに気づく。 この緻密に計算された、頭いい感じの音にもう一歩親しみやすさがあれば(抜けているところがあれば、かな)、チャートの上位に飛び出しただろう。 アイロニカルなユーモアというのは、信じ難いほどに世間には通じにくいのだ。 モント・キャンベルのヴォーカルがなかなかノーブルであることも再発見した。 音質は超上級の海賊盤程度だが、ファンには垂涎の内容だと思う。

  「While Growing My Hair」放送用音源。第一作より。8 分の 6 拍子による熱っぽいオルガン・サイケデリック・ロック。
  「Seven Is A Jolly Good Time」放送用音源。キャンベルのノーブルなヴォーカルをフィーチュアしたクラシカルな歌もの。真面目なようでいてカンタベリーらしいユーモア・センスにあふれる。
  「Germ Patrol」放送用音源。第三作より。 ズンドコ・ドラムスのビートの効いたクラシカルなアンサンブル。ベースとオルガンのポリフォニーがみごと。
  「Enneagram」放送用音源。スリリングな変拍子による音のパズルのようでいて抽象的なイメージにとどまらず、さまざまな表情を見せる名曲。 カンタベリーの代表曲の一つともいえる。第三作より。 このサスペンスフルな現代音楽調の緊張感とそれを突き抜けた先にある桃源郷のような開放感がクセになる。
  「Long Piece No.3 Part 2」72 年のライヴ音源。第二作より。クールなオルガンのテーマが印象的な組曲第二楽章。
  「Long Piece No.3 Part 4」72 年のライヴ音源。HF&N の第一作でも使われていたキャンベルのテーマが現れる。 第二作より。
  「There's No Business Like Show Business」放送用音源。ピアノ、オルガンとヴォーカルによるノスタルジックなスイング・ジャズ、そしてヴォードヴィル。もちろんバーリンの「ショウほど素敵な商売はない」。
  「Blane Over Camden」72 年のライヴ音源。トーン・ジェネレータによる過激なノイズ。
  「Long Piece No.3 Part 3」72 年のライヴ音源。。第二作より。
  「Wring Out The Ground Loosely Now」放送用音源。第三作より。
  「McGillicudie The Pusillanimous」放送用音源。第一作より。
  「I Do Like To Be Beside The Seaside」71 年のライヴ音源。オーディエンス録音。

(CD69-7202)

 Music From A Round Tower
 
Dirk Mont Campbell instruments
Lucianne Lassalle vocals
Barbara Gaskin vocals

  97 年発表の作品「Music From A Round Tower」。 EGG の頭脳モント・キャンベルの初ソロ・アルバムである。 内容は、素朴かつ重厚なワールド・ミュージック。 ポリリズミックな展開やマイク・オールドフィールド風のミニマリズム、空間を活かした実験的な作品もあり、プログレッシヴな内容といえる。 ポピュラー音楽向けの加工をあえて行わず、素材そのままの音のタッチを尊重していると思う。 器楽はすべてキャンベルの演奏。

(RES120CD)


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