アメリカのベーシスト & ドラマー「John Lee & Gerry Brown」。リーは 52 年生まれ。ブラウンは 51 年生まれ。70 年代ジャズロック・シーンの名リズム・セクション。ヨーロッパのミュージシャンと交流し、佳作を残す。
Gerry Brown | drums, percussion |
John Lee | electric & acoustic bass, percussion |
Gary Bartz | alto saxophone, soprano saxophone, percussion, whistle |
Chris Hinze | flute, alto flute, bass flute, piccolo flute, bamboo flute |
Henny Vonk | vocals, percussion |
Howard King | percussion |
Rob Van De Broek | piano, electric piano, percussion |
Hubert Eaves | piano, electric piano, percussion |
Jasper Vant' Hof | organ, electric piano |
Wim Stolwijk | piano, voice |
74 年発表のアルバム「Infinite Jones」。
CD 再発ではタイトルが「Bamboo Madness」となった。
大御所クリス・ヒンゼの号令の下、ヤスパー・ヴァントーフなどオランダのジャズ・ミュージシャンを多く動員して製作された作品である。
内容は、リズム・セクションが大いに自らをアピールするジャズロック。
ジャズロックといってしまうとスタイルを限定してしまいあまりよろしくない。
むしろ、リズム楽器を主役にしてジャズやロックの形式に倣ったイマジネィティヴな一種のフリーミュージックである。
フルートやサックスなど管楽器と鍵盤がフィーチュアされる一方ギターがないため、ジャズロックのジャズの部分が思い切りモダン・ジャズ的ではあるが、卓越したパワーのリズム・セクションがパーカッション類のサポートも得て、タメの効いたグルーヴと鋭いビート感を打ち出すことに成功している。
逆にモダン・ジャズとしての素養が深いリリシズムの演出には活かされているし、クリス・ヒンゼのパフォーマンスでは予想通り怪しげなラウンジ・ミュージックとしての味わいも出ている。
ゲイリー・バーツのサックスは空隙を意識させる独特の味わい。乾いた音でよく歌っている。
スキャットによる神秘性の演出も、お決まりとはいえ、ハマっている。
そして、アメリカものとは異なる厳しいスリルときらめくような王朝風ロマン、フォーマルな気品もある。
エレクトリック・ピアノのプレイはまさにポストフリー以降のこの時代を象徴するものである。
また、この時代ならではのサイケデリックなエキゾチズムの演出も効いている。
ベースはハードなアタックを効かせた重低音エレクトリック・ベースからファズ・ベース、挑戦的なダブル・ベースまで、派手なフレージングやポルタメントで目立ち捲くる。
ドラミングは、アルフォンソ・ムーザンの音数をそのままに上品にしたといえばいいだろう。
随所でロールが牙をむくので油断ができない。
サンプリングにも最適ではないだろうか。
まずは、LP 時代のタイトル曲「Infinite Jones」でぞわぞわっときて、「Deliverance」の強引過ぎるソロ、合わせずに競い合うドラムスとベースなどのラフなカッコよさにぶっ飛ばされます。
NUCLEUS のように妖艶でメランコリックな「Rise On」やタイトル曲「Bamboo Madness」の怪しさも魅力。
初期 WEATHER REPORT、初期 RETURN TO FOREVER の亜種として、ファンにはお薦め。
プロデュースはクリス・ヒンゼ。
「Infinite Jones
」(6:42)
「Deliverance
」(13:43)
「Jua
」(7:04)
「Absitively Posolutely
」(2:57)
「Rise On
」(3:17)
「Who Can See The Shadow Of The Moon
」(5:17)
「Bamboo Madness
」(2:30)
(KT 444.056 / FCD 0001)
Gerry Brown | drums, percussion |
John Lee | electric bass, synthesizer on 7, clavinet on 3 |
Rob Franken | electric piano, synthesizer |
Eric Tagg | clavinet on 5, synthesizer on 5 |
Mike Mandel | synthesizer on 5 |
Jasper Vant' Hof | clavinet on 8 |
Eeef Albers | guitar |
Philip Catherine | guitar |
Wah Wah Watson | guitar on 1 |
75 年発表のアルバム「Mango Sunrise」。
名門 Blue Note から発表された。
内容は、ギターをフィーチュアし、エレクトリック・キーボード・サウンドを大いに取り入れたハードなファンク系エレクトリック・ジャズ、ジャズロック。
前作との違いは、管楽器の不在とギターを大きく取り上げているところ、えげつないまでのシンセサイザー・サウンドのフィーチュア、である。
ともに FOCUS に参加した名手イーフ・アルベルスとフィリップ・カテリンが、ブルーズ・フィーリングあふれるギター・プレイを全編で披露している。
キーボードについては、シンセサイザーを大幅に増量して WEATHER REPORT に一歩も二歩も近づき、よりスペイシーでアブストラクトなイメージを与えるサウンド・メイキングを成し遂げている。
本作の作風については、単に「フュージョン色が強まった」というより、管楽器やピアノといった肉感的でモダン・ジャズ的なファクターを失うことで、息遣いの感じられたリリシズムよりも未来志向的な人工的なサウンドによる新しいジャズの可能性を目指したというべきだろう。
いずれにしても、ロジャー・パウエル風の達者なシンセサイザー・プレイなど、個人的にはプログレッシヴ・ロックとして捉えらることにいささかのためらいもない。
そして、さらに面白いのは、R&B、ファンク的なノリ/グルーヴはあるが、ファンキーという言葉で片付けるのが似合わない「鋭さ」や「叙情性」があり、気軽なノリのよさよりも音楽的な緻密さや厳密性を優先しているふしがある。
クラシックのアンサンブルに近いものが感じられるのだ。
そして、ギターを駆使したエレクトリック・サウンドによるハードでイージーゴーイングなロック・テイストと、深淵を思わせる暗くスペイシーな広がり、憂いを湛えた、奥深い翳りのある表情が矛盾なく並置されている。
この辺りがヨーロッパ・ジャズの微妙さである。
なににせよ、いわゆるフュージョンとは若干異なるテイストの作品だと思う。
ファンキーさと機械油の香りのブレンドなど、ハービー・ハンコックの諸作品との共通性はある。
キーボード・ファンにはお薦め。
プロデュースはスキップ・ドリンクウォーター。
「Mango Sunrise」(5:18)
「Breakfast Of Champions」(4:04)
「Keep It Real」(5:23)
「Ethereal Cereal」(3:42)
「The Stop And Go」(3:14)
「Her Celestial Body」(5:14)
「Pickin' The Bone」(4:04)
「Magnum Opus」(5:13)ゴリゴリのテクニカル・チューン。
「Haida」(2:53)
(BN-LA541-G / TOCJ 50576)