LOS CANARIOS

  スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「LOS CANARIOS」。64 年結成。元々は R&B グループ。一大プロジェクトと化した四作目のシンフォニック絵巻が名高い。

 Ciclos
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Alain Richard drums, percussion
Antonio Garcia De Diego guitar, acoustic guitar, vibraphone, voice
Mathias Sanvellian electric piano, Hammond organ, spinett, acoustic piano, violin
Christian Mellies bass, synthesizer, theremin
Alfredo Carrion choral arrangement, conduct
Teddy Bautista synthesizers, voice
Rudmini Sukmawati voice

  74 年発表のアルバム「Ciclos」。 内容は、ベテラン・ビート・グループがさまざまなサポートを得て作り上げた一大クラシカル・ロック・コラボレーション。 ヴィヴァルディの「四季」を大胆に脚色した力作である。 「四季」の全楽章に誕生から死までの人生ドラマと創世記から黙示録までの宗教ドラマを重ね合わせた、なんというか、主題としてこれ以上大仰になり得ない内容であり、その力み返ったアプローチそのものがまさに「プログレ」である。
   演奏は、原典には存在しないギターやリズム・セクション、多彩なキーボードを含む大胆な電子処理、オペラ歌唱、 混声合唱をフィーチュアしている。 さらに、原典の楽章間に不気味なブリッジを挿入し、ジャズやポップスによるアクセントやいわゆるスパニッシュな薬味も十分に効かせている。 ジョー・コッカーばりの野太いバラード調も悪くない。74 年、まだまだロックそのものに説得力があった。 バンド演奏が入っているので原典にはほとんどない打楽器の音が目立つのは当然だが、いわゆるクラシック翻案ものとしては、例外的に打楽器系の音の扱いがうまい。 ティンパニ、ヴァイブ、ブラスト気味の連打など、場面とアンサンブルに合わせて、効果的な演出が施されている。 また、イタリアン・ロックによくあるベタな 4 ビート・ジャズや下品な(まあ主観の相違もあるが)サウンド・エフェクトなどのコラージュはここにはない、というか、そういったガラクタ的なものから音楽的な効果を上げるための手法の選択ややり口がもっと巧みである。 それは、パロディ精神やシニシズムを音にするセンスがいいといえばいいだろうか。 過剰な電気処理はあるものの、王道バロック音楽である原典にオーセンティックなスペイン風の哀愁をつき混ぜているので、格調、いや乱調美のグレードという点では、OSANNA 辺りよりは遥かに上である。 特に強調すべきは、重厚な混声合唱とシャーマニックなオペラ歌唱の圧倒的な存在感、アナログ・シンセサイザーを駆使したキテレツかつスリリングなプレイ、それを支える多様なパーカッション・プレイなどだろう。 クラシックの作家と腕利きのミュージシャンの手による、意図したのか不可避的にこうなったのか分からないが、超バロックな構築物であり、時代の仇花として燦然と輝く作品だと思う。
   LP 二枚メいっぱいのヴォリューム感含め、名作といっていいでしょう。 擦れたリスナーになる前、はるか昔の青春時代 EL&P を初めて聴いてぶっ飛んだときの気持ちを思い出すには格好の作品です。 第一楽章は、有名な「春」の主題をブンチャカブンチャカ楽しげにすっ飛ばす。 個人的には、グレゴリオ聖歌風の男声合唱からけたたましいエレクトリック・ピアノ、ファズ・ギターによるサイケなテーマ演奏へと突っ込む第三楽章後半がかなり気に入っている。 第四楽章の最後、大団円は、現代音楽志向の実験的な展開で大爆発します。 ソロ作品が有名なアレンジャーのアルフレッド・カリオンが参加。 タイトルが「Cycles」となっている外国盤もあり。また、日本盤 LP はジャケ違い。

  「Primer Acto : Paraiso Remoto」(16:50)
  「Segundo Acto : Abismo Proximo」(16:45)
  「Tercer Acto : Ciudad Futura」(17:47)
  「Cuarto Acto : Eleslabon Recobrado」(21:53)
  
(Ariola 74321 17814 2 / SRMC 1003 / BMG 74321178142)


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