MADE IN SWEDEN

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「MADE IN SWEDEN」。 68 年結成。 70 年解散。 75 年再結成。 作品は五枚。ギタリストのワデニウスは後に渡米して BS&T に参加。

 Snakes In A Hole
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Georg Wadenius guitar, piano, vocals
Bo Häggström bass
Tommy Borgudd drums
guest:
Svend Asmussen violin on 1,2

  69 年発表の第二作「Snakes In A Hole」。 内容は、本格的なジャズにも傾倒するブルージーなサイケデリック・ロック。 トリオを意識させない安定した逞しい演奏力と音響センスがある。 ジャジーなギターを中心としたインストゥルメンタル・パートにはガレージものとは一線画したキレと上質のグルーヴがあるし、ラウンジ・ミュージックとして十分機能する作品もある。 多彩なアレンジに、さらに虚脱したように茫漠たるヴォーカルが加わることで、ジャケットのイメージ通りの妖しい魅力が生れている。 演奏が巧みなだけに無秩序な混沌へと落ち込むような演出も効果がはっきりとする。 しかしながら、そのウェス・モンゴメリ風のオクターヴ奏法からジャズ出身らしきギタリストのプレイが、たとえワウをかけたアドリヴでも心底ジミヘン風にはならず、どこかカラッとした陽気さをもち続けている。 そこが北欧ロックらしい。 そして、ヴォーカルがけだるく迫る作品でも引きずるような「うねり」よりも「キレ」があるところが、ジャズ・プロパーらしさだろう。 ゲストのヴァイオリン奏者による弦楽の音も曲の雰囲気をいい感じで高めている。(1 曲目のアシッドな味わい、2 曲目の甘酸っぱさなど) 北欧特有の素朴なユーモアと「たそがれ」感もうまく盛り込まれている。 また、R&B 的な「黒っぽさ」へのこだわりは英国に匹敵、下手をすれば凌駕している。
   プロデュースはグループ。ヴォーカルは英語。 ボーナス・トラックは、ジャズとブルーズ。

  「Snakes In A Hole」()
  「Lay Lady Lay」()ディランのカヴァー。
  「Discotheque People」()
  
  「Give Me Whisky」()
  「Kristallen Den Grymma」()
  「Little Cloud」()
  「Big Cloud」()
  
  以下 CD ボーナス・トラック。70年 2 月ゴールデン・サークルでのライヴ音源。
  「Roundabout」()
  「Ramses The 3rd」()
  「The Worlds Of Mushroom Gardens」()
  
(SLP-2504 / Universal 038153-2)

 Live! At The "Golden Circle"
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Georg Wadenius guitar, piano, vocals
Bo Häggström bass
Tommy Borgudd drums

  70 年発表の第三作「Live! At The "Golden Circle"」。 三日間のギグの録音からコンパイルされたライヴ盤。 CD 版は曲数を 5 曲から10 曲に大きく増やしている。 曲目は大胆にアレンジされ、即興を交えたカヴァー曲のみ。 演奏はジャズの素養を端々に見せつつもへヴィに歪んだ音で奔放かつルーズに迫っている。 (たとえば、THE BEATLES のカヴァーも、序盤はウェス・モンゴメリー調だが、奇妙なアドリヴからはかなり無理やりなサイケデリック調になってゆく) トリオ編成の音数をカヴァーするために基本的に音量はデカ目であり、ベースもファズをかけて積極的にリフや特殊奏法で前に出てくる。 この延々続く感じは、CREAM のアドリヴ大会がよりモダン・ジャズ寄りになったといえばいいかもしれない。 スタジオ盤では演奏の「達者さ」からまとまりのよさが目立つが、ライヴの荒々しさが加わったせいでタガがはずれてちょうどよく「ロック」できているような気がする。
  「スーパーハコバン」なんていうと怒られそうですが、全体としてはまさにそういう感じ。 古臭いものが今の感覚だと新しい、となる古臭さよりもさらに少し古いため微妙な感じになってしまう、そんな音です。 もちろん、ここに古臭さを感じない世代の人にはど真ん中のストライクです。 最初の MC でエレクトリック・ヴァイオリンを弾くメンバーを紹介しているが、出てこない?

  「Introduction By Roger Wallis」(0:49)MC。
  「Get Out Of My Life Woman」(5:36)アラン・トゥーサン作。
  「Kristallen Den Grymma」(6:54)インストゥルメンタル。トラッドのアレンジ。
  「Saucery」(7:14)インストゥルメンタル。チャールズ・ロイド作。
  「Mercy, Mercy」(7:24)ザヴィヌル作。
  「A Day In The Life」(10:10)レノン/マッカートニー作。
  「Thoughts And Comments By Jojje」(0:56)MC。
  「Three Blind Mice (Sombrero Sam)」(13:02)チャールズ・ロイド作。
  「Jive Samba」(8:44)ナット・アダレイ作。
  「Peter Gunn」(5:52)ヘンリー・マンシーニ作。
  
(SLP-2506 / Universal 016424-2)

 Made In England
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Georg Wadenius guitar, organ, piano, vocals
Bo Häggström bass, mellotron, piano
Tommy Borgudd drums, percussion

  70 年発表の第四作「Made In England」。 ジャケット写真は 2001 年リリースの再発 CD のもの。(LP ジャケットはスリーヴ裏側にあり) タイトル通り、渡英して録音された作品である。 音楽も、ギターのスタイルに顕著なように、ジャズ/ブルーズのアドリヴ志向からテクニカルなアートロックへと変化し、オリジナル曲のみで録音された充実の傑作となった。 口当たりのいいメロディ・ラインとくすみのあるヴォーカル・ハーモニーを安定感あるタイトな演奏が支える堂々たる英国調ロックである。 そして、キーボード、弦楽奏の使用による音の広がりが従来からの独特の哀感をもふくらませ、えもいわれぬ味わいにしている。 英国調の湿り気あるリリシズムと北欧のひんやりしたペーソスの絶妙の均衡だ。
   1 曲目は、粘っこくも緻密な演奏と冷ややかな幻想性が入り交じる佳曲。COLOSSEUM を細身にした感じ。 ジャジーなギターとハイズマンばりの打撃を見せるドラムスに注目。 2 曲目は、さりげない変拍子によるブリティッシュ・ロック。 前曲とともにリズム・セクションのキレがいい。 3 曲目は、格調ある弦楽奏をフィーチュアしたフォーキーな作品。 ここまで、ごく個人的にはニコラス・グリーンウッドのソロ作品にイメージが近い。 4 曲目は、AOR の直前にまで洗練されたジャズロック。ミュート・ギターとシンバルによる中華風のイントロが面白い。 5 曲目は、ほんとうに英国フォークの王道的なセンチメンタリズムが現れたアコースティック・チューン。管楽器が美しい。 6 曲目は、これまでの路線のような「器楽演奏中心」の作風ではあるが表現法が異なり、より融通無碍でサイケデリック・ロック的である。 7 曲目のみ、得意のウェス・モンゴメリー風ギターが復活する。ジャジーな 4 ビートとブラスがかぶさる重い 8 ビートの中間くらいのリズムがおもしろい。 8 曲目は、クールでセンチな大傑作。COLOSSEUMMOGUL THRASH を思い出してよし。 全体として、あまやかで叙情的な英国風ロックの逸品だと思う。
  プロデュースは COLOSSEUM のトニー・リーヴス。 ストリングス・アレンジはニール・アードレイ。 繰り返しになるが、タイトル通り、英国ロックそのもの、またはその高度な解釈に因する作品であり、英国ロックのファンにはお薦め。 本作品でグループは解散、ギタリストは渡米し、BLOOD SWEAT & TEARS に加入する。(ジャズ嗜好のロック・ギタリストとしては最良の進路だったのだろうか)

  
(SLP-2512 / Universal 014048-2)

 Where Do We Begin
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Georg Wadenius guitar, percussion, background vocals
Pekka Pohjola bass, grand piano
Vesa Aaltonen drums, percussion
Wlodek Gulgowski keyboards, clarinet
Tommy Körberg vocals, percussion

  76 年発表の第五作「Where Do We Begin」。 再結成時の作品らしい。オリジナル・メンバーはギタリストのみ。 内容は、ハービー・ハンコック風のフュージョン、ジャズロック。 ビョンビョンのエレクトリック・キーボードが大活躍し、暑苦しいヴォーカルもフィーチュアされた R&B 色濃い作風である。 ただし、ファンキーだがこなれすぎず、いい意味での生硬さ、本場ものからのズレ、が若々しさを強調している。 そこが魅力。 6 曲目のインストゥルメンタルでのジャジーでサイケな表現に北欧ロックらしさがにじみ出ている。 逆に 7 曲目のフォーク風の作品は、いい感じではあるが、アメリカンなスタイルのコピー感が強い。 最終曲は 10 分を越えるプログレッシヴな大作。 ベーシストはフィンランドの名手、ペッカ・ポーヨラ。 ドラマーは TASAVALLAN PRESIDENTTI のヴェサ・アールトネン。

  
(LRLP 207 / LRCD-207)


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