MOGUL THRASH

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「MOGUL THRASH」。 COLOSSEUM を離脱したジェイムス・リーサーランドが結成したグループ。作品は一枚。 解散後、マルコム・ダンカンとロジャー・ボールは AVERAGE WHITE BAND 結成に向かう。

 Mogul Thrash
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James Litherland guitars, vocals
John Wetton bass, vocals
Bill Harrisson drums
Malcolm Duncan tenor sax
Michael Rosen trumpet, Mellophone, guitar
Roger Ball alto & baritone & soprano saxes
guest;
Brian Auger piano on 7

  70 年発表のアルバム「Mogul Thrash」。 内容は、管楽器、特にサックスをフィーチュアしたへヴィなジャズロック。 オルガンのない、やや細身の COLOSSEUM 、またはよりハードロックっぽい IF といった感じである。 CHICAGOB.S.T のようなブラス・ロック特有の華やかなテーマやオブリガートもあるが、これらのグループと若干印象が異なるのは、ヴォーカルとギターによるサウンドがブルージーなヘヴィさをもつこと、そしてサックスのソロがフィーチュアされるところである。 したがって、どちらかといえば、華やぎや派手さよりもブルージーな苦味や渋みが勝る。 本作品の妙味は、ディストーションで歪んだギターがドライヴするハードロックにリード楽器が泥臭くモダン・ジャズ調で応戦するところだと思う。 そして、その無骨で厳つい音を、この時代の英国ロックらしく、ソウルフルな熱さとしなやかさで包み込んで仕上げている。 60 年代っぽいサイケデリックなニヒリズムもヴォーカル表現の随所にある。 演奏面で特筆すべきは、リズム・セクションが重さと俊敏さを兼ね備えたプレイでリズム・キープを越えてギターやヴォーカルによく反応することである。
   リーサーランドは甘辛いヴォーカル(敬愛するゲアリー・ピックフォード・ホプキンズにも似ている!)とともにワウワウ・ギターの奔放なプレイでも活躍する。 そして、堅実なドラムスとともにボトムを支え、ギターと対等に絡むのが、ジョン・ウェットンの俊敏な、いささか目立ちすぎではと思わせるベースである。 ウェットンはサイド・ヴォーカル、コーラスでも貢献している。 全体に、演奏力とともにメロディ・ラインに英国ロックらしいセンチメントがあり、そこに管楽器が連なったときにストーリーを強く感じさせるところも大きな魅力だ。
  DISCONFORME からの再発 CD は、曲順が LP とは異なる。また、1 曲のボーナス・トラック「Sleeping In The Kitchen」と 4 曲のアルバム収録曲のエディット・バージョンが付く。前者はデビュー・シングル、後者はどういう位置づけなのかは特に記載がない。 さらに、この再発 CD では、クレジットによれば、オリジナル LP のトラックとは別トラックが使われている可能性がある。 CD 裏面の注意書に「LP 製作時には容量の制限から時間の短いテイクを採用したが、本再発 CD ではテープを再確認して最も優れたトラックを選択した」とあるからだ。 オリジナル LP をお持ちの方はご教授ください。真実は如何。 プロデュースはブライアン・オーガー。エンジニアにはエディ・オーフォードの名前が。

  DISCONFORME CD クレジット
  「Sleeping In The Kitchen」(2:49)シングル A 面。ボーナス・トラック。
  「Dreams Of Glass And Sand」(5:04)DONOVAN 風の歌唱とソロ・トランペットが印象的な、パワフルな演奏にもかかわらずどこかダウナーな、サイケデリック・チューン。個人的には好み。
  「Going North, Going West」(11:54)シンフォニックなブラス・ロック・スタイルとパンチの効いたジャズロック・スタイルのハイブリッド。管楽器のソロを大きくフィーチュアし、ドラマティックな堂々たる展開を見せる。ワウ・ギターとベースのバトルもカッコいい。ちょっと長いケド。
  「Something Sad」(7:28)AFFINITY にも迫る哀愁のブリティッシュ・ロックの名品である。
  「Elegy」(9:28)リーサーランドの爆発的なギター・ソロのスペースがあるが、じつはそのバックでウェットンがソロ並みの凄まじいベース・プレイを続ける。クールなヴォーカルもいい。
  「What's This I Hear」(7:08)汗臭く粘っこいヘヴィ・ロックとシンフォニックでスペイシーな管楽器ソロを連結したプログレッシヴ・チューン。
  「St. Peter」(3:34)IF のようにキャッチーで憂いもある英国ジャズロックの佳品。若きウェットンがリード・ヴォーカルを取る。ピアノはブライアン・オーガー。
  「Dreams Of Glass And Sand」(4:36)エディット・ヴァージョン。
  「Going North, Going West」(9:21)エディット・ヴァージョン。
  「Something Sad」(8:03)エディット・ヴァージョン。
  「What's This I Hear」(7:57)エディット・ヴァージョン。

  オリジナル LP クレジット
  「Something Sad
  「Elegy
  「Dreams Of Glass And Sand
  「Going North, Going West
  「St. Peter
  「What's This I Hear
  
(RCA SF8156 / DISC 1929 CD)


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