フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEBELNEST」。 作品は三枚。2006 年、新作「ZePTO」発表。ストリート系 KING CRIMSON。
Michael Anselmi | drums, percussion |
Gregory Tejedor | bass |
Olivier Tejedor | keyboards, devices, ocarina, violin |
guest: | |
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Sebastian Carmona | guitar on 1,3,6 |
Cyril Malderez | guitar on 2,4,5,7 |
Vincent Boukepa | clarinet |
2006 年発表のアルバム「ZePTO」。
パンキッシュでアグレッシヴでエレクトロニックで、おまけにジャズっぽさもある佳作。
ギタリストはメンバーから外れたのだろうか、ゲスト扱いであり、演奏も半分ほどにとどまる。
このギタリストの入った作品は即興的であり、苛烈にして叙情味ある表現が、やはり後期 CRIMSON を強く意識させる内容になっている。
特に、後半の即興らしき大作「Do What Thou Wilt」では、「暗黒の世界」あたりの本家に迫る濃密にして荒涼たるイメージの演奏を見せている。
歪み切ったベース、荒々しくも神経質なドラムス、かすれた喉から迸る絶唱のようなメロトロン、管絃楽器など、役割りは完璧である。
一方、もう一人のゲスト・ギタリストは、アヴァンギャルドというよりは「新保守派」的なオーソドックスなプレイを見せるため、最近のヘヴィロック・バンド的なイメージが出ている。
爆発力という点では、旧ギタリストの入った作品が上回るようだ。
アルバム全体にも過渡的な印象が確かにある。
他にも、キーボードの充実が著しく、サイケデリックな音響処理が独特である。
ただし、CRIMSON でジョン・ウェットンが担ったメロディ・センスはない。
あればヴォーカルが入るだろうし、スタイルこそ影響は受けているが、そもそも目指すものが違うのだろう。
CRIMSON への到達の仕方も、たとえば、ANEKDOTEN などとは明らかに異なるようだ。
アグレッシヴな音のせいでパンキッシュなイメージが前面に出るが、じつは、ジャジーなニュアンスも難なく決めるテクニシャン集団である。
(Cuneiform Rune 234)
Michael Anselmi | drums |
Cyril Malderez | guitar |
Gregory Tejedor | bass |
Olivier Tejedor | synth, devices |
99 年発表のアルバム「NeBeLNeST」。
内容は、ノイジーなメロトロン、ストリングス・シンセサイザー、ハムバッカーらしいロングトーンを多用するギター、ワイルドなリズム・セクションによるヘヴィ・ロック。
ドライな音質によるサイケデリックかつ呪術的な演奏である。
インダストリアル調のメロトロン・ロックといういい方もできるだろう。
緊張感あふれる即興から、一気に凶暴で重く攻撃的な全体演奏へと収束する様子は、ANEKDOTEN や SOMNAMBULIST と同じく KING-Red-CRIMSON 直系のものである。
キーボードによるスペイシーな演奏を、ストリート風のヤクザなドラムスとひずんだベースによる脈動するようなリズムが支え、反復の果てに一度狂乱すれば、その中心にはギターが君臨する。
はっきりと即興と銘打った作品を配しているところがその演奏力を物語る。
音には湿度や光沢がなく、カラカラに乾いたイメージが強い。
それでも、スペイシーな音の存在が特徴的であり、後期 KING CRIMSON をやや薄味にして空間的なサウンドを加味したような作風といってもいいだろう。
ヘヴィ・メタリックな荒々しさよりも、サイケデリックで粘りつくようなタッチが強い。
ここでいうサイケデリックとは、ANEKDOTEN の三作目くらいのニュアンスである。
そして、PULSAR と同じく暗黒ヘヴィ・ロックにもかかわらず切ない叙情味がある。
ギターの表現にはフリップ氏よりも遥かにナイーヴな面もあり、ポスト・ロック風味からヴィニ・ライリーまで入っている。
個人的には、タメのないブルフォードのような幹竹割り風の垂直な切れ味をもつドラムスが気に入っている。
ベースはあくまで低音強調型。
このリズム・セクションおよびメロトロンの存在が大きい。
後半の作品では特に KING CRIMSON 的なサウンド、展開が強調されてゆく。
全曲インストゥルメンタル。
全体に音に奥行きがない(ガレージ風といってもいい)のは製作上の問題なのだろうか。
これでダイナミクスや立体感がはっきりと出たら、神秘的な演出とあいまってかなりカッコいいと思うのですが。
「improv: pooks part 1」
「psykial trysm: shafoo」
「psykial trysm: najha」
「etude de shimshot」
「improv: uncertain journey」サックス風の音も用いた即興。
「slilock」
「absinthe」終盤、エキサイティングな展開から厳格なピアノ・ソロへの流れがすばらしい。傑作。
「crab nebule」
「improv: pooks part 2」
(LE 1032)
Michael Anselmi | drums, percussion |
Cyril Malderez | guitar |
Gregory Tejedor | bass |
Olivier Tejedor | keyboards, devices, percussion |
2002 年発表のアルバム「NoVa eXPReSS」。
内容は、「Red」CRIMSON 直系ながらも、パンキッシュで性急なビートが特徴的な凶暴ヘヴィ・ロック。
前作の呪術的なイメージからややシフトし、邪悪というよりは凶悪であり、耽美な感じも叙情性もない。
これはウェットなところが全くないからである。
深く沈みこむこともないままに、感情の表層を削り取りながら、苛々と止むことなく走り続けるのである。
その遺伝子は、スタイリッシュな HR/HM のものではなく、パンク、サイケなど危険極まるストリート/ガレージ系のものである。
前傾するあまり額が地面をこすっているような速射砲ドラム・ビートとともに、ギターとディストーション・ベースが牙を剥き唸りを上げ、カラカラに乾ききったメロトロン・クワイアがかぶさる。
もっとも、ギターとキーボードは、イコライザで加工されたノイジーなサウンドを多用はするものの、意外なほど古典的なヘヴィ・シンフォニック・ロックの音になっている。
メロトロンの存在感は、前作を越えて圧倒的。
音を跳ね散らかすピアノもいい。
3 曲目は、「Shining」ですかね。
絶叫以外は、すべてインストゥルメンタル。
ポスト・自傷系パンク出身にして、ポリリズムや変拍子に手を染め、後期 KING CRIMSON に迫るヘヴィ・メタリック・ロックを極めた逸品。
KING CRIMSON を目指して正しくロックとしてカッコいいという点で、ANEKDOTEN といい勝負です。
ただし、ズシっとした重さではなく、やけっぱちになったチンピラのような危うさを感じます。やぶににらみでよだれをたらしながらナイフを振りまわしているような感じです。
(Cuneiform Rune 154)