ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「NEKTAR」。70 年結成。英国人のグループだが BELLAPHON レーベルと契約し、ドイツで活動。2002 年再結成、新作発表。 ギター中心のサイケデリックかつライトなエンタテイメント性に富む作風は、70 年代ロックにおいて際立つ個性を放つ。
Allan Freeman | keyboard, vocals |
Roye Albrighton | guitars, vocals |
Derek Moore | bass, vocals |
Ron Howden | drums, percussion |
72 年発表の第二作「A Tab In The Ocean」。
内容は、荘厳なるシンフォニック調を大いに取り入れたハードロック。
高揚感のあるサウンドとギター中心の丁寧で小気味のいい演奏が特徴である。
華やかでポジティヴに突き抜ける曲展開は、YES 的といえるだろう。
もっとも、ギターやオルガンの音の出自は、ブルーズ・ロックをベースにしたハードロックやモダン・ジャズである。
この「古さ」加減がキラキラしたファンタジー・テイストとあいまって、えもいわれぬ味わいになっている。
ギターは、格別すごいソロを披露することはない(4 曲目の終盤で鮮やかなペンタトニックのソロを決めているが)が、きっちりとテーマを歌い、おだやかなアルペジオを奏で、力強いコードのバッキングをしている。
キーボード的な使い方であり、アンサンブルに徹した演奏スタイルといえるだろう。
フェイザーやワウなど位相系エフェクトのハマり方も完璧である。
歌は、ハーモニーを多用して広がりやスケール感を演出している。
派手さは東欧の OMEGA とも通じるが、英国人のグループだけあって、気を抜いてイージーなロックンロールに流れるようなことはなく、コンセプトを背負って、ぶれずに堂々と歩んでいる。
だからといって堅苦しいわけでもなく、ゆったりと染み入る歌もあれば、ノリノリで楽しめるような親しみやすさもある。
ドラミングもワザ、力ともにさりげなくも一級品であり、全編のメリハリとオーケストラのティンパニのような勇ましさは、このドラムスのプレイに負うている。
要は、優れたエンタテインメントなのだ。
シンプルな演奏を巧みに積み重ね、グループが一体となってシンフォニックな厚みのある幻想ドラマを構成する、これはバンドマンなら誰もが実現したいと願うことである。
「A Tab In The Ocean」(16:40)めくるめくファンタジー・ワールド。
「Desolation Valley」(7:16)ジャジーな味わいを盛り込んだ作品。
「Waves」(0:57)
「Crying In The Dark」(6:28)
「King Of Twilight」(4:16)
(BLPS 19118 / 289-09-002)
Allan Freeman | keyboard, vocals |
Roye Albrighton | guitars, vocals |
Derek Moore | bass, vocals |
Ron Howden | drums, percussion |
73 年発表の第四作「Remember The Future」。
内容は、位相系エフェクトを駆使したロック・ギター・プレイとハモンド・オルガンを中心にしたシンフォニックなハードロック。
YES がストレートなハードロック化したといってもいいし、DEEP PURPLE がメロディアスでファンタジックになったといってもいい。
要はプログレとハードロックの区分けを空しくする、魅力的なエンタテインメントとしてのポップでクランチなロックである。
いき過ぎない程度にファンキーなノリもある。(ギターのカッティングが EW&F のアル・マッケイを思わせるところも!)
ヴォーカルはやや暑苦しいが、アルペジオとパワーコードをエフェクトを含めて巧みに使い分けるギター・プレイとさりげなくも豊かな響きのハモンド・オルガンが、叙情的なドラマを織り成している。
そこには、ズッシリくる手応えと爽快さがともにある。
この二つの要素が共存する作品は珍しい。
基調、出自は泣きのブルーズ・ロックなのだと思うが、サウンドや構成面で工夫することで、科学/未来のイメージをかきたてる良質のジュブナイル SF のような面が現れている。
小難しいことをいわずに大音量でかけて楽しみたい音楽だ。
軽くて明るめの PINK FLOYD といってもいいかもしれない。
「Remember The Future Part 1」(16:40)
「Remember The Future Part 2」(18:58)
「Let It Grow」(3:50)ボーナス・トラック。
「Lonely Roads」(2:19)ボーナス・トラック
(BLPS 19164 / 9724426)
Roye Albrighton | guitars, lead vocals |
Mick Brockett | visual environment |
Allan "Taff" Freeman | keyboard, backing vocals |
Ron Howden | drums, percussion |
Derek Moore | bass, backing vocals |
guest: | |
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Larry Fast | orchestral Moog arrangements & playing |
The English Chorale |
75 年発表の第六作「Recycled」。
「環境問題」をモチーフとした二つのテーマによるトータル・アルバム。
シャフル・ビートで突き進む、エレクトリック・キーボードとギターを大きくフィーチュアしたきらびやかでキャッチーな(若干グラム風の)ハードロックという作風はそのままである。
親しみやすい「泣き」のメロディ・ラインと華やかなサウンドによるスピーディでにぎにぎしい演奏は、きらめく彗星の降り注ぐ中をスペースシップで高速クルージングを楽しむようであり、痛快そのもの。
叙景的でスピリチュアルなテイストや尖ったイメージのアンサンブルなど、本作も YES との共通点は多い。
堅実かつ軽快なビート感もそうだ。
サイケデリックなスペース・ロック調でいながらドラッグ漬けの不健康な感じがないのは、この独特の「爽やかさ」と「開放感」、そして音楽的な安定感のおかげだろう。
さらに、音楽的に興味深いのは、ラリー・ファーストによる重厚華麗にしてインダストリアルな硬質さを備えたエキセントリックなシンセサイザー・サウンドの導入である。
このシンセサイザーが大胆なサウンド/和声で切り込むと、メロディアスで脳天気な演奏に一気に立体感と厚みが増し、独特の風格とともにドラマがうまれる。
必然的に、シンフォニックなプログレ・テイストが強まることになった。
軽快できらびやかな基調が明快なだけに、合唱による厳かで神秘的な演出やジャジーなアドリヴ(B 面一曲目に注目)もうまく活きてくる。
普遍的なヴィジョンをキッチュなグルーヴで描いた類を見ない作品である。
ハンガリーの OMEGA の作風とも共通性があり、何にせよユーロロック的なテイストの作品である。
傑作。
プロデュースは、ペーター・ハウケとグループ。
「Recycle」(2:47)
「Cybernetic Consumption」(2:12)
「Recycle Countdown」(1:51)
「Automaton Horrorscope」(3:08)
「Recycling」(1:46)
「Flight To Reality」(1:18)
「Unendless Imagination?」(4:36)
「São Paulo Sunrise」(3:05)
「Costa Del Sol」(4:04)
「Marvellous Moses」(6:37)
「It's All Over」(5:21)
(BLPS 19219 / 28909003)