カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「NIGHTWINDS」。75 年結成。77 年解散。 アルバムを録音するも、91 年の発掘まで未発表。
Sandy Singers | lead vocals, acoustic 12 strings |
Mike Gingrich | bass, bass pedals, acoustic 12 strings, recorder, vocals |
Gerald O'Brien | Mellotron, Prophet V, ARP Pro solist, Hammond T-100, Clavinet, celeste, CS-80, Roland string ensemble, Maxikorg |
Terry O'Brien | guitars |
Mike Phelan | drums, percussion |
91 年発表のアルバム「Nightwinds」。
79 年に録音されるも未発表にとどまり、91 年にアメリカのインディ・レーベルから CD として発表された。
内容は、キーボード中心の YES、GENESIS 系の込み入ったアンサンブルとアメプロハード寄りのハイトーン・ヴォイス(STYX や RUSH、SUPERTRAMP という話もある)をフィーチュアした、テクニカルかつ開放感あるシンフォニック・ロック。
いわゆる自主製作モノと比べると内容は格段にプロフェッショナルであり、大手から出てもほとんど違和感のない高度な音である。
演奏は、きらびやかなキーボードを軸とした鋭角的かつリズミカルで小気味のいいものであり、意識過剰に折れ曲がることなく、適度にメロディアスであり清潔感と透明感がある。
リズム・セクション(特にドラムス)は弾けるように明快で小気味よく、下支えだけではなく、多彩な打撃技で前面に出て演奏をリードすることもある。
このドラムスのプレイが、演奏に独特のキリキリ舞するような華美なタッチを入れ込んでいると思う。
また、華やかながらも厚ぽったいキーボード・サウンドと 12 弦アコースティック・ギターの粒だったアルペジオのコントラストもいい。
ヴォーカルは、ロジャー・ホジソン、ディヴィッド・サーカンプ、ゲディ・リー系のキンキンした個性的な声質であり、ピーター・ガブリエルのような演劇調もこなしつつ、BAD FINGER を思わせる甘ったるさもある。
クリアーなハーモニーも合わせると、YES 四割、中期 GENESIS 六割のイメージだろうか。
ただし、「似ているプレイ」の応酬というレベルには到底とどまっておらず、さまざまな工夫が凝らされている。
叙情的な演奏が GENESIS そのものな部品で組み立てられているため本家の味わいを越え切れないもどかしさがあるのに比べて、アップテンポの演奏では、ややルーニーではちきれそうな勢いが個性として光っている。
ETHOS や STAR CASTLE といったアメリカン・プログレ王道に迫る勢いがあり、SUPERTRAMP を思わせる演奏もある。
全体に 70 年代後半らしい自然なポップ・テイストもあり、FLAME DREAM ら「中期 GENESIS フォロワーややポップ寄り」路線の中でも、プログレにして聴きやすいという稀な位置を占めるだろう。
ちなみに、バッキングでのメロトロンと ROLAND のストリングス・アンサンブルの比重が、後者の方がやや高い。
音の感触に 70 年代終盤らしさがあるのは、こういうところに起因しているのだろう。
ヴォーカルは英語。
発掘されて良かったと思える作品の一つです。
「We Were The Young」(4:33)
「Crude Export」(3:24)
「Ivy」(4:13)
「The Pitrates Of Rebecca's Choice」(7:06)
「Out 'n' About」(5:44)SUPERTRAMP を思わせる傑作。クラシックからの引用がある。レガートなギターが活躍する。ポップな味付けは最高。
「Sad But True」(4:28)こういうねじれた作品をしっかりと聴かせてしまうところが、ベタベタのシンフォニック・プログレとは一線画すセンスのよさであり、こういう面でも GENESIS と遜色ないものを持っている。
「As The Crow Flies」(11:04)アコースティック 12 弦をフィーチュア。重厚なオープニングをを経て、中盤はまさしく GENESIS 風のリリカルな名品。
さざめくアコースティック・ギターと旋律を縫うように動く丹念なオルガン、そして切なく歌うギターは直伝である。
確かに GENESIS と共通する素材、似た表現が多いが、それらを組み上げた作品全体から醸し出される幻想性は本家を超えている気もする。
傑作といっていいでしょう。
「The Curious Case Of Benjamin Button」(5:08)勢いのいいシャフル・ビートで突き進むオモチャの兵隊の行進のようなユニークな曲。
シンセサイザーがバグパイプを思わせる音を立てている。ブラピの映画で有名になりましたが、元々はフィッツジェラルドの奇妙な短編小説。
(LE1007)