イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「PETE BROWN & PIBLOKTO」。 THE BATTERED ORNAMENTS をクリス・スペディングに譲ったボヘミアン詩人ピート・ブラウンが結成したグループ。 作品は編集盤を含め三枚。 R&B、ブルーズ・ロック、ハードロックからサイケデリック・ロック、ジャズロックまで、幅広い音楽性を詩人のセンスで束ねた 70 年代初頭らしい英国ロック。
Pete Brown | vocals, talking drums |
Dave Thompson | organ, piano, soprano sax, Mellotron, harmonium, bass pedal |
Jim Mullen | electric & acoustic guitars, double bass |
Roger Bunn | bass, tambourine, acoustic guitar, double bass |
Rob Tait | drums, percussion |
guest: | |
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Paul Seeley | banjo |
John Mumford | trombone |
Ray Crane | trumpet |
70 年発表の第一作「Things May Come And Things May Go, But The Art School Dance Goes On Forever」。
内容は、パワフルかつスピード感ある英国ジャズロック、ただし R&B とフォーク色強し。
ブラウンのヴォーカルに象徴されるブルージーかつフォーキーな泥臭さを前面に出して、むさ苦しくもハイテンションでパンチの効いた演奏で迫っている。
特徴は、チャルメラ風のソプラノ・サックスをフィーチュアするところ、そして逞しいリズム感だろう。
格別跳ねるでも全力疾走するでもないが、アンサンブル全体を背負ってうねうねと前進する弾力あるパワーがすごい。
一体感のある演奏であり、楽曲ごとにサウンドに細かく工夫も凝らされていて、表情は多彩である(ブラウンの悪声ヴォイスにかき消され気味ではあるが)。
さりげないオルガンやメロトロン、達者なギター・プレイ、ファズやダブルベースを使うベースなど全員がしっかりと色を出している。
アコースティックなナンバーでのメランコリックな表情など、英国ロックらしさがたっぷりつまった作品だ。
B 面 3 曲目「Golden Country Kingdom」は PROCOL HARUM 的な雰囲気がいい名曲。
ハーモニウムが高鳴る B 面 4 曲目「Firesong」は STRAWBS のようにトラッド、教会音楽といった要素が自然に組み合わさったプログレッシヴな佳曲。ダブル・ベースのボウイングもおもしろい。エンディングのサックスがさりげなくストラヴィンスキーを奏でている。
REPERTOIRE からの再発 CD には、フィル・リアンやジョン・ウェザーズを含む新生 PIBLOKTO によるシングル第三弾も収録。
(Harvest SHVL 768 / REP4407-WY)
Pete Brown | vocals, talking drums, conga |
Jim Mullen | guitars, bass on 2, percussion |
Dave Thompson | keyboards, soprano sax, Mellotron on 2, percussion |
Steve Glover | bass, percussion |
Rob Tait | drums, percussion |
70 年発表の第二作「Thousands On A Raft」。
第一作から半年後に発表された。
ベーシストは、ソロを目指したロジャー・バンからスティーヴ・グローヴァーに交代。キレのあるファズ・ベースが演奏をがっちりと支えている。
内容は、ブルーズ・ロックを軸にしたジャズ、R&B テイストある演奏に、弾き語りを強引にシャウトにしたようなブラウンのヴォーカルを乗っけたもの。
つまり、70 年代初頭らしい英国ロックである。
ハードロックといってしまってもいいサウンドだが、シンプルなノリやスピード感で勝負というタイプではなく、音をかっちりと積め込んだ緻密なアンサンブルと細かなリズム割り、機敏なムードの切り換え、技巧的なアドリヴを駆使するスタイルであり、特にアドリヴのニュアンスは CREAM と同じ意味でジャズに近いといっていいだろう。
演奏面では、ギター、オルガン、ピアノのキレのよさ、そして音使いに見せるさりげない粋さが印象的だ。
ブルージーなワウ・ギターのアドリヴとファンタジックなアルペジオが同居し、オルガンがシンフォニックに高鳴ると思えば、エレクトリック・ピアノがジャジーなアドリヴで迫る。
リズム・セクションも、ヘヴィなビートを堅実かつ「軽やか」に決めている。
ピート・ブラウンのアングラなイメージほどには演奏は地味ではなく、猥雑で脂ぎっていながらも華がある。
なんというか、一体となったバンドとしてのグルーヴが一流なのだ。
歌詞を味わえない(もっとも、曲名だけでもその奇矯なセンスは想像できると思うが)非英語圏のリスナーにはヴォーカルの魅力が半減するのもしかたないが、武骨な悪声と器用といっていいほど冴えたバンド演奏のマッチの妙は、みごとの一言である。
ブラウンの戦略は、バンドの卓越した演奏力を彼自身のフォーキーなセンスによる歌もので枠にはめ、その反動を生かしてインストゥルメンタルでは一気に解き放つということだったに違いない。
超名盤の放つバロックな魅力こそないが、統一感ある完成された作風であり、英国ロックの多彩な魅力を満載した佳作といえる。
3 曲目の長大なインストゥルメンタルでは、CREAM をやや洗練したような、COLOSSEUM を細身にしたような、シャープな演奏が繰り広げられる。
6 曲目タイトル作は、PINK FLOYD ばりの幻想性を誇示する名作。
ボーナス・トラックの第二弾シングルでは、さらにジャジーに迫っており、クロスオーヴァー的なニュアンスさえ現れる。
ベイクド・ビーンズが薄焼きトーストに乗って墜落したコンコルドや難破したタイタニックから避難しているというシュールなジャケットも秀逸。
プロデュースはグループ。
「Aeroplane Head Woman」(6:42)「飛行機頭の女」ジャジーな和声展開とオルガンが特徴的なハードロック。ギター・ソロのキレ、ジャジーなオルガンもよし。
「Station Song Platform Two」(3:41)「二番線の歌」ヴィンテージ品の輝きのあるピアノ弾き語りバラード。さりげなく対位するメロトロン・ストリングス。歌うようなオルガン、ゆるめのドラムスがいい感じだ。
「Highland Song」(17:03)「高地の歌」高揚感にはち切れそうな、疾走するロック・ジャム・インストゥルメンタル。
ジャズ畑のジム・ミューレンが果敢に挑むロックなギター・ソロがカッコいい。
オルガン・アドリヴは雄々しくもスペイシーでグルーヴィ。
凶暴なるファズ・ベース、多彩なドラミングにも注目。
「If They Could Only See Me Now - Parts One And Two」(12:06)「分かり合えれば」
GENTLE GIANT によく似た、音の密度の高いヘヴィ・チューン。
ジャジーななめらかさとハードロックのざらつきが一つになっている。
パーカッションも最高。
エンディングでは、ジャジーなヴォーカルにへなへなしたソプラノ・サックスが付き従う。
「Got A Letter From Computer」(5:49)「コンピュータからの手紙」
エレクトリック・ピアノの軽妙なオブリガートが特徴的なソウル・ロック。
オーヴァーダブされた二つのギターの遁走風の奇妙な絡み。
リズムのセンスが非常に現代的。
「Thousands On A Raft」(7:10)「救命ボートの幾千人」
以下、ボーナス・トラック。
「Can't Get Off The Planet」(6:02)「途中下車不能の惑星」シングル第二弾、A 面。
COLOSSEUM ばりに R&B テイストがたっぷりのヘヴィ・チューン。
オルガンもカッコいいです。
「Broken Magic」(6:57)「効かない魔法」シングル第二弾、B 面。
日曜日の朝のようにデリケートな表情を見せるジャジーな作品。
ギターが魅力。
こちらも名曲。
(Harvest SHVL 782 / REP4408-WY)