PROF. WOLFFF

  ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「PROF. WOLFFF」。 71 年結成。82 年解散。唯一作は、熱情あふれるオルガン・ロック。

 Prof. Wolfff
 
Klaus Peter Schweitzer additional guitar, piano, lead vocals
Romi Schickle organ
Mondo Zech bass, vocals
Michael Sametinger drums, percussions
Fritz Herrmann guitar, vocals, harmonica

  72 年発表のアルバム「Prof. Wolfff」。 内容は、火傷しそうに熱くヘヴィでエモーショナルなオルガン・ロック。 ギターとオルガンがもつれるハードな展開に哀愁のオルガン・ソロが盛り込まれた濃厚な作風である。 サウンドは、生々しく重くクラシカル、そしてほんのりサイケデリック。 古びたエンジンが全力回転するようなオルガンの音色に思い切り耽溺すべし。 キャッチーな歌メロやリズミカルなノリを自在に使いこなすことから考えて結構なベテラン、出自はビート・グループではないだろうか。 アコースティック・ギター伴奏やハーモニーなどにフォーク・ソング的な面も見せる。 鍵盤奏者はオルガンの他にエレクトリック・ピアノやピアノも操り、「瞬間 VANILLA FUDGE」や「ここだけ THE NICE」な場面が散りばめられる。 オルガンはソロはもちろん魅力的だが、ギターの丁々発止のコンビネーションがなかなかいい。 おかげで音的に単調にならない。 そして古めかしい音にもかかわらず曲展開にかなり面白みがある。 PROCOL HARUMCRESSIDASTILL LIFE といった英国本流のオルガン・ロックの音の肌合いと 70 年代前半の熱く混沌とした空気を愛するものには絶対に抗えない魅力がある。 ぎとぎとと濃い目で荒削りな音ではあるが、ヘヴィなのにポップという魔法は確かに効いている。 手数のわりにはどっしりとしたドラミングもこういう音にはぴったりだ。 プロデュースは、ヨナス・ポルスト(IHRE KINDER のマネージャー)。 ヴォーカルはドイツ語。

  「Hetzjagd」(9:59)RARE BIRD の「Sympathy」に似た泣きのバラード。 イントロからじっくりクラシカルなオルガンを聴かせ、モノラル風のヴォーカル・パートを経た後に、奔放なインストゥルメンタルへと発展する野心作である。 前半では、哀愁漂うオルガンが、終盤へ向けて熱く煮えたぎり、ギターと激しく呼び合う。 そして、熱いクライマックスを過ぎた後の虚脱したオルガンの響きが絶品。 リズムも重過ぎず古めかし過ぎず、丁度いい。 傑作でしょう。

  「Hans Im Glück」(7:46)ブリティッシュ・ロック直系のブルージーでハードなバラード。 じっくり歌いこむバラード調のメイン・パートが、リズム・テンポの変化とともにブギー調の勢いのいい演奏になる。 ピアノ、ヘヴィなオルガン、ギターがそれぞれにイイ主張をする。 クラシカルなアンサンブルを基調に目まぐるしい変化を繰り広げて突き進む。 中盤のジャズ・ビートにのったスピーディなオルガン・ソロでは DEEP PURPLE も現れる。 ギターはシンプルなプレイが主だがヴィブラートを効かせたフレージングがなかなかカッコいい。 テンポの変化がドラマを生む。

  「Mißverständnis」(4:05) アコースティック・ギターのリズミカルなストロークとやっつけ風の荒っぽいコーラスを軸に展開する英国風フォーク・ロック。 ビート・グループのようなハーモニーに対し、ドコドコいうビートは奇妙にラテン、キューバン調である。 リンゴ・スターの「I wanna be your lover, Babe I wanna be your man」から THE WAILERSCRESSIDA までさまざまな連想をかきたてて止まない。 台所で足踏みしているようなパーカッションが面白い。 中盤は、一転ゆったりした 8 分の 6 拍子へと変化して、悠然たるオルガンが迸るジャジーな演奏になる。 この転身がすごい。 アコースティック・ギターのソロもフィーチュアされる。 佳作。

  「Das Zimmer」(4:52) アコースティック・ギターのアルペジオ、フルート、ピアノが美しいフォーク・ソング。 メイン・ヴォーカルはヘタウマ風なのだが、ハイトーンのハーモニーが意外に美しい。 ハモンド・オルガンのへヴィなオブリガートもいい感じだ。 中間部はグルーヴィな調子に変化し、スライド・ギターも現れてソウル調に。 世を拗ねたようなビートポップ調のマイナーなコーラスを経て、ハイトーン・ハーモニーのサビが復活。 アルペジオ、フルートに導かれて穏やかなフォーク・ソングへと回帰する。 英国のプログレッシヴ・フォークと同じく雰囲気の振れ幅の大きさで幻想味を生む作品だ。

  「Weh'Uns」(9:48) 真っ直ぐに雄々しい堂々たるハードロック。 冒頭からシャフル・ビートで重々しく突っ走る。 60 年代サイケデリック・エラの名残らしき粘っこさもたっぷり。 オルガンはバッキング主体であり主役はギターのようだ。 決してテクニカルではないながらも味はある。 クラシカルなハードロックなので、どうしても DEEP PURPLE が連想される。(というか、後半はマンマなフレーズのパッチワーク) ユーモラスなエピローグは、どことなく PINK FLOYD っぽい。 ハードなサウンドと武骨でユルめのヴォーカル・ハーモニーの対比、アシッドな毒気とまろやかさの奇妙な不均衡が魅力、つまり本作品の作風を代表する楽曲である。

  「Hetzjagd」(3:17)ラジオ・エディット。
  
(001673-2 / SB 045)


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