オーストラリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「RAINBOW THEATRE」。 メルボルン出身。作品は二枚。初期にはソロ作で名高い元 MEN AT WORK のグレッグ・シュネドンも参加。2006 年第一作「The Armada」が CD 化。
Julian Browning | vocals, mellotron |
Ferg McKinnon | bass |
Graham Carter | drums, tympani, gong |
Matthew Cozens | piano, organ |
Steve Nash | sax, clarinet, flute |
Frank Graham | trumpet, cornet, french horn |
Don Santin | trombone |
Keith Hoban | lead vocals, tenor |
mixed chorus |
75 年発表のアルバム「The Armada」。
内容は、テノールを主役に、クラシカルな吹奏楽バンドをフィーチュアしたシンフォニック・ロック。
混声合唱も加わった教会音楽風の重厚荘厳な音楽とダイナミックなロック・バンドのいいバランスでの合体作である。
金管楽器特有の勇壮で華々しい表現やピアノと男声による厳かな表現など、いちいちオーセンティックな風格を漂わせている。
ギターやオルガン、リズム・セクションなどロック・バンドの音もがっちり入っていて、クラシック特有のダイナミックではあるがレガートでなだらかな表現に、忙しないスピード感と緊張感をもたらしている。
小気味のいいエレクトリック・ベースやオルガン系のキーボードのプレイやダイナミックに打ち鳴らされるスネア・ロールは、プログレ・ファンには鳥肌ものである。
そして、管楽器セクション、特にサックスは当然ながらジャズ的なプレイもはさんでくる。
妙に明朗でユーモアも漂う主題などフランク・ザッパのビッグ・バンド作品との干渉もあるに違いない。
そのズルッと広く、折衷的な音楽カバレッジがまさに「プログレらしさ」である。
イメージは、「弦楽のないオーケストラ」であり、今のバンドなら同様に金管を取り込んだ AFTER CRYING が最も近い。
その弦楽不在を補って余りあるメロトロンは要所できっちり役目を果たしている、というよりそのタイミングのよさに思わず息を呑む。
特に、二つ目の大曲冒頭の PINK FLOYD ばりの重厚な演奏がみごと。
このタイトル組曲では、重厚にしてロマンティックなクラシカル・タッチを基調にしつつも、イタリアン・ロック風の性急さや乱調美も鮮やかに披露しており、ロックなスリルは満点だ。
リード・ヴォーカリストは、オペラ調のテナー・ヴォイスにピーター・ハミルのようなナルシズムが見え隠れするおもしろい存在だ。
KING CRIMSON の「Islands」や「Starless」、EL&P の「Abaddon's Bolero」、PINK FLOYD の「Sysyphus」が好きならお薦め。
アルゼンチンの BUBU の陽性版ともいえそうだ。
クラシカル・シンフォニック・ロックの逸品。
ヴォーカルは英語。
作曲、プロデュースはギタリストのジュリアン・ブラウニング。
「The Darkness Motive」(13:37)劇的すぎる傑作。
「Flourish」(1:29)
「Overture」(2:51)
「First Theme」(6:25)
「Second Theme」(2:52)
「Song (Guerdon . . .)」(1:35)
「Petworth House」(5:51)ソプラノ、混声合唱も参加。
「Song (Shall . . .) 」(1:35)
「The Armada」(15:03)冒頭のメロトロン・ストリングスにやられる。その破格にイタリアン・ロック的興奮あり。
「Scene At Sea」(2:21)
「ominion」(2:20)
「Centuries Deep」(1:32)
「Bolero」(5:24)「Starless」と同じ光明が差す。
「Last Picture」(2:30)
以下、ボーナス・トラック。ギタリスト、ジュリアン・ブラウニングによる 1996 年の管弦楽作品。演奏はメルボルン・グラマー・シンフォニック・オーケストラ。この「いつまでも終わらない感じ」はマーラーでしょうか。
「Icarus(From Symphony No 8)」(11:20)
「Icarus And Daedalus」
「Ascension」
「Labyrinth Gothica」
「Icarian Sea」
(CLOJ 778 / AVSCD019)
Julian Browning | guitarst, keyboards | Ferg McKinnon | bass |
Graham Carter | drums | Keith Hoban | vocals, organ |
Frank Graham | trumpet, flugel horn | Martin West | sax, clarinet |
Ian Relf | trombone | Tricia Shevenan | flute |
Chris Stock | oboe | Karin McGeche | violin |
Stephen Daunt | violin | Nya Murray | violin |
Rowan Thomas | viola | Sara Glenie | cello |
76 年発表の第二作「Fantasy Of Horses」。
内容は、管楽器セクションを大々的にフィーチュアしたシンフォニック・ブラス・ロック。
金管のみならず、フルートやクラリネット、オーボエも多用した、なかなかけたたましい音である。
ただし、弦楽セクションやコラール風のヴォーカル・パートなど、クラシックの素養はかなりの水準である。
そして、要所で高鳴るメロトロン・ストリングス、ギターの存在をかき消すほどに高音で目立ちまくるベース、音数の多いドラムスなど、プログレ常套句はしっかりとおさえられている。
叙情的な場面においては、映画音楽風の正統的なアレンジを用いて、ソロ楽器が主題を朗々と歌い上げている。
こういったトランペットやピアノの使い方が、堂に入ってるのは、おそらく、選任の作曲家/アレンジャーを擁しているからだろう。
どちらかといえば、せわしなく敏捷に動き回る演奏である。
A 面では、ジャズやクラシックをごった煮にしてたたみかけてゆく分、いわゆるプログレらしさは強いが、後半へゆくに従い、バンドといっていいのか、吹奏楽オーケストラというべきなのか、だんだん分からなくなってくる。
良くも悪くも、いわゆる「クラシックとロックの融合」というイメージそのものの音楽だ。
B 面は、プロコフィエフやグリーグといった、小学生の音楽鑑賞総まくりのような大作。
イメージとして近いのは ESPERANTO。
ESPERANTO が、思い切り管楽器を使って、マカロニ・ウエスタンやハリウッド映画のサントラをやっている感じです。
もしくは AFTER CRYING の祖先。
「Rebecca」(3:00)哀愁のメロトロン・ストリングスとジャジーな管楽器、ギターを同時にフィーチュアした、スリリングなプログレらしい小品。
「Dancer」(11:24)音量と雰囲気の変化が極端な 5 部から成る大作。
賛美歌風の歌パートとバンド演奏が、すさまじいまでの対比を際立たせる。管楽器とギターとの遠慮なしのバトルが聴きもの。
「Captain For The City Night Life」(4:18)
どことなくムソルグスキーな快速チューン。
リズムを強調しており、中盤ではカール・パーマーばりのドラム・ソロをフィーチュア。
「Fantasy Of Horses」(16:30)オーケストラルな叙情大作。
(CDOJ783 / AVSCD011)