イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「LA SECONDA GENESI」。71 年結成。74 年解散。作品は一枚。 PICCI レーベル。
Alberto Rocchetti | keyboards, vocals |
Paride De Carli | guitar |
Nazzareno Spaccia | bass |
Giambattista Bonavera | sax, flute |
Pier Carlo Leoni | drums |
72 年発表のアルバム「Tutto Deve Finire」。
内容は、サックスなどの管楽器をフィーチュアしたジャジーかつクラシカルなロック。
さまざまな音楽性を一つの物語にまとめつつも、その束ねる手つきは荒っぽく挑戦的で、やや酩酊気味で、フリー・ジャズの薫陶を受けたらしきアヴァンギャルドな感覚の赴くままである。
フルートのクレジットを見ただけで JETHRO TULL ばりのトーキング・フルートであろうと予想がつき、まさにその通りだった。
ただし、リード・ヴォーカルの自信あふれる歌唱に象徴されるように、その姿勢はあくまで雄々しく、気高く、色気がある。
詰め込みすぎたアイデアが破裂寸前になっても一瞬の旋回で持ち直すスリルもまた一種の薬味に感じられる。
まさに若さの勝利である。
最大の特徴は、管楽器に加えて酸味のあるワウ・ギターやハモンド・オルガンが唸りを上げるサイケデリック・テイストにあふれるが、野蛮で奔放な演奏にもかかわらず、楽曲にまとまりがあるところだろう。
無茶を重ねるドグサレ系の演奏のわりに、ジャズの素養のせいだと思うが、まとまりやバランスがいい。
これは、演奏面では音数のわりに安定したリズム・セクションのおかげであり、楽曲面ではキーボード・プレイヤーが音楽的な睨みを効かせてアレンジに腕を振るっているからだろう。
さらりとクラシカルな小編を入れる辺りにそういうことを感じる。
「まとまらないことを潔しとする」というイタリアン・ロックのスタンスを体現する手法として、楽曲の脈絡を完全にぶっ飛ばすという荒業は多く見られるが、この作品のように、野蛮さ、荒っぽさを強調しつつも整合感のあるイメージを描くというある種矛盾した手法を採用するのは珍しいと思う。
冒頭の音では、最終曲を思い浮かべられないと思う。
プログレとしてほぼ 100 点の内容だ。
個人的には抑えの効いたハモンド・オルガンの音が好み。
B 面 1 曲目「Dimmi Padre」はアレンジの綱渡りがみごとななかなかの聴きもの。
また、最終曲は、アコースティック・ギターによるバッハの平均律第一番の前奏曲風のアルペジオを軸にシンフォニックな広がりを見せる好作品。
アルバムのジャケットは一枚一枚手書きで異なるデザインになっていたという。
売れるはずのないことを運命付けられていたかのようなエピソードである。アルバム・タイトルは「すべては必ず終焉を迎える」という意味らしい。
「Ascoltarsi Nascere」(5:35)KING CRIMSON と同じ、というかフリージャズ系の即興から、タイトなアンサンブルへの収束。
GNIDROLOG にも近いイメージだ。ギターは下手かもしれないが、全体には統一感がある。 インストゥルメンタル。
「L'Urlo」(4:41)乱調の果ての SOFT MACHINE 的カタルシス。
イラつく反復の展開がまたもや GNIDROLOG を思わせる。サックスをフィーチュア。インストゥルメンタル。
「Se Ne Va Con Noi」(2:36)儀式。ヴォーカルあり。オルガンとトーン・ジェネレータの電子音が迸り、シンバルが打ち鳴らされる。
「Vedo Un Altro Mondo」(3:38)ジャジーで小粋なハードロック変奏曲。フルート登場。オルガンのアドリヴも爆発。ドラムスも派手。
「Dimmi Padre」(8:02)ハードボイルドなタッチにクラシカルなアレンジを交えたバラード。モリコーネのマカロニ・ウエスタンか木枯らし門次郎のイメージ。傑作。
「Breve Dialogo」(1:14)ガット・ギターとハモンド・オルガンのエチュード風のデュオ。
「Giovane Uomo」(1:54)ピアノ、ギターのカッティングで迫るグラマラスなブギー。カッコいいです。
「Un'Infanzia Mai Vissuta」(3:25)バロック音楽調のギターのアルペジオに支えられてギターとオルガンの旋律がりゅうりゅうと歌う。次第に交響曲的な広がりを見せる。インストゥルメンタル。
(MELLOW MMP 188 / PICCI GLA 2002)