アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「SLEEPYTIME GORILLA MUSEUM」。 西海岸オークランドにて IDIOT FLESH と CHARMING HOSTESS を母体に結成。 作品は、2007 年現在四枚。お化粧パフォーマンス・アヴァンギャルド。2011 年活動停止。
Carla Kihlstedt | violin, percussion guitar, autoharp, pump organ, voice |
Nils Frykdahl | guitars, Tibetian bells, autoharp, voice |
Moe! Staiano | percussion, metal, pressure-cap marimba, spring, spring-nail guitar, popping turtle, food continer, tympani |
Dan Rathbun | bass, slide piano log, pedal action wiggler, thing, autoharp, voice |
Frank Grau | drums on 7 |
David Shamrock | drums, piano |
2001 年発表のアルバム「Grand Opening And Closing」。
内容は、HR/HM & ハードコア・パンク系アメリカン・レコメン。
デンジャラスでメタリックなサウンド、金属的なオルガン、コケットにしてイタコな女性と男性の混声、徹底的にこんがらがったアンサンブルなど、作風は元祖 ART BEARS から 同国のデイヴ・カーマン、ボブ・ドレイク (THINKING PLAGUE や 5UUS) といった秀逸なる継承者の世界に近接する。
アグレッシヴで暴虐的、破壊的な演奏とともに、クラシカルといっていいほど丹念なアンサンブルもある。
特徴的なのは、血を吐くようなシャウトやヘヴィなギター・リフによって、一気にデス/ゴシックなメタルっぽさが高まること。
特に、ギタリストの作品にその傾向が強い。
ギターはいわゆる HM 的な轟音ノイズを放つが、そのギターに輪をかけて、エレクトリック・ヴァイオリンが凶暴なプレイで容赦なく引きずりまわすような演奏を繰り広げる。
ひずみきったベースの存在感もかなりのものだ。
全体に、轟音とともに疾走する迫力、モーメンタムは相当なものであり、たとえ静かな場面でも、何もかもがガラガラと崩れてゆく寸前のような緊迫感がある。
この張り詰めた緊張が、HR/HM 的なお約束による安心感やストレス解消的なカタルシスを吹き飛ばしており、ねじくれたリズムと轟音とともに、奈落へ吸い込まれるのではという恐怖感を煽り立てている。
そして、この恐怖感と表裏一体を成すのが、官能的というべきか耽美というべきか、一種異様な艶かしさである。
また、オリジナル楽器の追求も行っているらしく、実際に一部の使用楽器はメンバーの手作りによるようだ。
静謐な最終曲などは、その楽器によるものではないだろうか。
楽曲ごとに雰囲気がかなり異なるため、統一感はないが、エネルギッシュなプレイは満載である。
スリーヴによればジョン・ケインというフーチャリストに影響されたということだが、解説を読んでも、何をどう影響されたのかはよく分からない。
もっともアーティストらしい先鋭性、とんがった感性はしっかりと音に息づいているので、その辺の事情は後回しでもいいだろう。
ステージ写真は完全に変態。
「Sleep Is Wrong」(6:35)
「Ambugaton」(5:38)
「Ablutions」(6:05)ART BEARS 直系のコワい歌。
「1997」(4:48)ハイテンションな暴虐メタルチューン。
「The Miniature」(0:59)
「Powerless」(9:30)HM 超屈折レコメンの力作。
「The Strain」(6:46)
「Sleepytime(Spirit Is A Bone)」(10:16)前半はレコメン子守唄。中盤からミニマルな助走を経て、スリリングなアンサンブルへと変転する。KING「Red」CRIMSON 的な緊張感あり。
プログレ度合い強し。
「Sunflower」(7:52)瞑想的なインスト。
(Seeland 532)
2003 年発表のアルバム「Live」。
ストリングス系の音響が特徴的な、邪悪なホラー映画感覚あふれるデスメタル・レコメン。
5UU'S、THINKING PLAGUE といった北米レコメンの、逸脱調ながらも険しく狷介な作風を基本に、エクストリームな HR/HM やエキゾチズムといったファクターも取り入れたなかなか「危ない」パフォーマンスである。
轟雑音ベースや無数の銅鑼のようなドラミングといった金属的なサウンドが特徴だ。
フランク・ザッパばりのエキセントリックな MC もおもしろい。
(SRR014)
Carla Kihlstedt | violin, percussion guitar, autoharp, organ, voice |
Nils Frykdahl | guitars, flutes, voice |
Moe! Staiano | metal, wood bowed guitar, glockenspiel, spring, paper |
Dan Rathbun | bass, log, roach, tambourine, lute, voice |
Frank Grau | drums, melodica |
Matthias Bossi on 3,5,6 | drums, glockenspiel, xylophone, voice |
2004 年発表のアルバム「Of Natural History」。
内容は、決然としたヴォーカルと衝撃的な器楽が特徴的な狂騒的 HR/HM 系アヴァンギャルド・ロック。
THINKING PLAGUE を HM 化したような演奏であり、最もハードロック的だった頃の 5UU'S を若干細身に絞ったような感じの演奏である。
「気持ち悪い」アヴァンギャルドではなく「過激で危ない」アヴァンギャルドだが、演奏そのものはきわめてタイトで俊敏、卓越した体力知力を活かして水際立ったアンサンブルで突っ走っている。
振り回すような急加速/急停止が激しいが、ギターによる典型的な HM スタイルはやや引っ込んでいる。
グジャグジャな騒音の塊のような演奏にもかかわらず、小気味のいいモーメンタムがあり、また、器楽パートの「ライン」が複雑にこんがらがるというよりは、すべての奏者が自分のフレーズを抱えて全力で走り続けるイメージの演奏である。
なにせ全員が全力なので、畢竟轟音化かつ騒音化するのだ。
エレキギターやキーボードなどは混じりあって分厚いストリングス系のうねりと化し、さまざまな打撃音が小刻みに重なりあって怪奇な民族音楽ビートを成す。
この直線性というか明快性が、あくまで現代音楽ではなくロックであることを主張していると思う。
また、演奏の中心にいるのは、バラード調の朗唱からデス声による絶唱まで、轟音ノイズの槍衾のような器楽に守り立てられたヴォーカル/ハーモニーである。
全力疾走を抑えた場面では SE も投入してシリアスなヴォーカル・パフォーマンスを繰り広げてドラマを作るが、それをまた KING CRIMSON ばりのバーバリックで容赦のない斬撃がずたずたに引き裂いてゆく。
そして、これだけ過激で攻撃的な演奏が続くにもかかわらず、クラシカルでエモーショナルな瞬間も何度も訪れる。
きわめて個性的な作品といえるだろう。
アルバム終盤では、不気味な静けさが訪れる。
「Museum」らしく非常に凝ったジャケットだが、爆弾魔ユナ・ボマーの写真を見ただけで徹底した悪趣味やグロテスクな諧謔にあふれているような気がして、正直読む気がしない。
僕だって仕事で疲れているのだ。
11 曲目の後に隠しトラックあり。
「A Hymn To The Morning Star」(5:40)懐古調ながらも不気味すぎる歌もの。
「The Donkey-Headed Adversary Of Humanity Opens The Discussion」(6:01)快速チンドン・デスメタル。
「Phthisis」(3:45)比較的短いが圧迫感に息苦しくなる作品。
「Bring Back The Apocalypse」(4:10)賛美歌ブレイクビーツ。
「FC: The Freedom Club」(9:39)暴虐メタル ART BEARS にシンフォニックな・タッチを加味した傑作。ドラムスとヴォーカルは完全にデス/スラッシュ系。
「Gunday's Child」(6:23)
「The 17-Year Cicada」(3:42)
「The Creature」(5:16)CRIMSON 風のリリシズムとへヴィネス。
「What Shall We Do Without Us ?」(1:55)
「Babydoctor」(12:05)
「Cockroach」(2:12)
(Mimicty)