オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「TAURUS」。 78 年結成。85 年解散。作品はアーカイヴやライヴを含めて四枚。
Martin Scheffer | vocals, guitars |
Rob Spierenburg | keyboards, background vocals on 10 |
Rex Stulp | drums, percussion |
Jos Schild | bass, moog taurus |
80 年発表のアルバム「Illusions Of A Night」。
内容は、ややポップス寄りの甘めでジェントルなシンフォニック・ロック。
硬めのスネア・ドラム、ハケット直系のレガートに歌うギター(アコースティック・ギターの腕前もかなりのもの)、ハイトーンで品のあるヴォーカル、多彩なキーボード(オルガン、メロトロン、ARP シンセサイザー、CP80 など)など各パーツは、YES、GENESIS(「ブロードウェイ」、「静寂」そのもののような演奏もある)、KAYAK らの影響下にある。
製作サイドとの折り合いのためか、ハードポップ風の作品も交えているが、そういう作品でも(というか、そういう曲ではことさらに)演奏面では上述のパーツが組み合わさっている。
基本的な作風はメロディアスなシンフォニック・ロックといっていいだろう。
時代的に STEP AHEAD 辺りとも共通する音である。
シンプルな演奏であり製作もさほど凝ってはいないにもかかわらず意外なほどに聴けるのは、鋭角的なリズム・セクションとメロディアスなヴォーカル、ギター、キーボードの音の対比、緩急硬軟のこまやかな変化と起伏、記名性の高い実績ある表現の適切な応用など、さまざまな工夫のおかげだろう。
ノリのいい作品でも、GENESIS ファンをニヤつかせるプレイが満載で、何気なく変拍子だったりする。
また、曲のアレンジについては、ベタなバラードかと思わせて一転アップテンポでポジティヴに迫ったり、クラシカルなブリッジをさりげなく散りばめたり、フォロワーに留まらないセンスを見せている。
全体に溌剌とした爽やかさがあり、メロディアスでも過剰にべたつくことがないのは、ヴォーカルの声に象徴されるこの「爽やかさ」によるのだろう。
プロデュースは、バス・ムール。
(MTI 89001)