アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「TEN JINN」。 91 年結成。作品は四枚。最新作は 2017 年発表の「Sisyphus」。 イアン・アンダーソン風の演劇調節回しとひねりのある演奏が得意。
John Paul Strauss | vocals, keyboards, piano |
Mark Wickliffe | drums, percussion, backing vocals, keyboards, guitar, bass |
Matt Overholser | bass, stick |
Bob Niemeyer | keyboards, backing vocals |
Michael Matier | electric & acoustic & MIDI guitar |
guest: | |
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Stan Whitaker | guitars |
Kenneth Francis | guitars, backing vocals |
99 年発表の第二作「As On A Darking Plain」。
内容は、個性的な歌い込み方ヴォーカリストを軸とするメロディアスでモダンな英国風シンフォニック・ロック。
演劇調の表情とこねくり回すような節回しを駆使する美声ヴォーカリストは、ずばりイアン・アンダーソン・フォロワー。
いろいろと激似である。
ただし、切々と訴えかける調子にはピーター・ハミルを越えてデヴィッド・ボウイを思わせる中性的なところも現れる。
ヴォードヴィル/俗謡調ももちろんあり、そもそもクラシカルで無窮動、変化に富む演奏全体が JETHRO TULL 的である。
演奏に現代風のデジタルでへヴィな音はなく、70 年代のテイストをそのまま持ち込んだライトで小気味のいいパフォーマンスに時々モダンポップやニューウェーヴ風のスパイスを仕込む作風である。
くるくると回るつむじ風のように変転するアンサンブルでドラマを描いてゆくスタイルはまさに王道プログレ流だ。
印象的なメロディ、テーマを巡って、多彩なキーボード・サウンド(チェンバロやピアノが効いている)と細かく刻んでメリハリをつけるドラミング、オーソドックスでメロディアスなギターらが、一人で突出することなくチームで場面をしっかりと作っている。
激しくたたみかけては反応よく切り返し、静々と音が退いたところに、テーマがよみがえるとかなりの感動がある。
特にアン・ライスの吸血鬼小説をモチーフにしたらしき一曲目のタイトル大作は、大仰でクラシカルなアレンジをつぎ込んだ力作であり、歌詞に横溢する怪奇趣味もあいまって、プログレ王道の個性的な世界を作り上げている。
ヴォーカルの渾身のパフォーマンスと抜群の運動性で二転三転し続ける器楽(それでもフレーズは親しみやすく暖かみがある!)による劇的な展開に釘付けになる。
7 曲目の巨大なインストでクライマックスを迎え、最終曲では切れのいいハードな変拍子チューンで落とし前を付けている。
この音楽的な展開で自然にドラマをイメージさせる作風は RUSH に近いような気がする。
また、ヴォーカル表現に凝っているようで、ゴスペル風だったりオペラ風だったりさまざまなスタイルを放り込んでくる。
プロデュースは、シュトラウスとウィクリフとケネス・フランシス。
HAPPY THE MAN のスタンリー・ウィテカーがゲスト参加。
「As On A Darking Plain」
「The Dance Of Les Innocents」(5:40)
「Darkling Plain」(7:19)
「Byzantine Fire」(5:07)
「Theater Of The Vampires」(1:32)
「Those Who Must Be Kept」(4:45)
「Beautiful Marquise」(5:28)
「The Legacy Of Magnus」(5:28)
「Run Away」(5:35)
「Lost In The Money」(5:55)
「Blind Authority」(3:51)コンパクトなロックにも多彩な面を持たせている。
「Rock」(5:56)英国ロックのテイストをよく消化している。
「I Can't See」(5:03)
「Tomorrow」(6:19)
「Lay Down Beside Me (In The Rain) 」(5:03)
(IOMACD 2004)
John Paul Strauss | vocals, keyboards |
Bob Niemeyer | keyboards |
Mark Wickliffe | drums, bass |
Mike Matier | guitars |
Rick LeClair | guitars |
Ken Skoglund | guitars, 12 string |
Stefan Kramer | bass |
Ronnie Lundqvist | drums |
Pävi Jansson | backing vocals |
2003 年発表の第三作「Alone」。
内容は、ギターを中心にアメリカン・ロックらしいアーシーな開放感を加味したネオ・プログレッシヴ・ロック。
メロディアスにして小気味よくエッジもあり、オルタナティヴ・ロックというよりは素直にハードロックといった方が通りがよさそうだ。
ネオ・プログレの基本スキルである変拍子の処理もさすがにこなれていて、何にせよ好作品である。
MARILLION と同じくプログレを取り込んだ英国流ギター・ロックであり、ポスト・ロック的なテイストも交えるなどコンテンポラリーなセンスもある。
リード・ヴォーカリストは、御大イアン・アンダーソンのみならずデヴィッド・ボウイもカヴァーできそうな芸達者ぶりを示す。
何にせよ、このヴォーカリストの豊かな声量と存在感ある歌唱がパフォーマンスの核であることは疑いない。
この歌唱を軸として、ギターがしなやかに饒舌に主張してハモンド・オルガンが吼え、弾力あるリズム・セクションがグラインドする演奏のスタイルは、あたかも、オーソドックスな 70 年代風ロックから 80 年代以降のアリーナ・ロックにまでまたがるエッセンスを抽出したもののようだ。
とはいえ HR/HM 的な「体育会系の過剰技巧」はほとんどなく(LA メタルっぽいところはあるが)、むしろ英国ロックのキッチュさに通じるシンプルなロック・ビートのニューウェーヴ調がある。
ギタリストやドラマーが我慢してギアを落としているような気もするが、技巧よりはメロディやハーモニーによるドラマを聴かせようとするスタンスは悪くない。
いわゆるプログレらしさはあえて抑えてストレートな表現に向かっているのは、個性を際立たせるという点で正しいと思う。
そして、それと同時に、個性的なヴォーカリストを擁するだけのポップなアメリカン・ロックに収まらないように、独特のコブシとシンセサイザーやストリングス・アレンジ、アコースティック・ギターのプレイなどでうまく色付けする、その匙加減も巧みである。
プロデュースは、シュトラウスとウィクリフとケネス・フランシス。安定感あるアメリカン・シンフォニック・ロックの佳作。
最終曲は JETHRO TULL へのオマージュか?
「Who You Are」(5:42)
「Alone」(5:00)
「Never Ending」(5:17)
「Felis Feminalis」(4:21)
「Goodbye My Love」(4:22)
「Legend Of Green」(3:14)
「How It Goes」(5:57)
「Too Late Now」(4:53)
「I'll Be There」(4:23)
「Something Going Wrong」(4:00)
「What Are You Gonna Do」(4:04)
「Killing Me Slowly」(4:05)
「In The End」(6:00)
(SRR 009)