カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRUE MYTH」。 79 年結成。作品は二枚。キーボードをフィーチュアした「デジタル」プログレ。
Tony Cook | acoustic & electric guitar | |
Tom Treumuth | electric piano, piano, synthesizer, Clavinet, Mellotron | |
Steve McKenna | bass, slide guitar | |
Brian Bolliger | drums | |
Bruce Cumming | vocals | |
guest: | ||
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Ian Thomas | backing vocals | |
Marek Norman | backing vocals | |
Eric Cadesky | percussion | |
Matt Mckenna | 2nd guitar | |
The Armin Electric String Quartet |
79 年発表の第一作「True Myth」。
内容は、キーボード、特にアコースティック・ピアノを大きくフィーチュアしたきらびやかなテクニカル・ロック。
70 年代終盤らしく、ニューウェーヴ風のスタイリッシュで乾いたポップ・タッチが顕著だが、突出するほどにパワフルなアコースティック・ピアノがリードするタイトなアンサンブルのおかげで、技巧偏重気味のプログレらしさがにじみ出ている。
鋭く刻まれるリズムの上でエレクトリック・キーボードによるキレのいいバッキングとレガートなギター・プレイのコントラストを際立たせつつも全体の勢いでもっていく演奏である。
そして、一つの曲の中でテンポやリズム・パターンが急旋回するように切り換わる。
したがって、全体がキリキリ舞いをするように攻撃的な調子になっている。
エレクトリック・キーボードとギターの丁々発止のバトルもそれに拍車をかける。
しかし、そこにアコースティック・ピアノのクラシカルなオブリガートや重量感あふれるコード・ストロークが加わって、また、テンポを落としてゆったりとギターが歌うシーンを交えると、一気にパフォーマンスに深みがついてくる。
甘めのハイトーン(と唐突なお芝居調)が特徴のヴォーカル・パートではニューウェーヴっぽさも現れることがあるが、弾み車のように勢いよく回る演奏が、この作品をプログレとニューウェーヴの間の独特のポジションにおいていると思う。(中期 GENESIS も同様である)
ピアノが突出せずアコースティック・ギターのコード・ストロークがおだやかに波打つ牧歌調が主となる作品では、ヴォーカリストがジョン・アンダーソンに思えてきて、そうなると演奏も YES っぽいような気がしてくる。
特に B 面にその傾向が顕著だ。
また、弦楽セクションをピアノと絡ませてクラシカルな情趣を演出するところは、古来変わらぬプログレ王道のアプローチとして採用されている。
そして、電子弦楽隊を使うことでさらにサウンドにゆがみが生まれて、まさにプログレッシヴな効果を生んでいる。
キーボードは多彩なサウンドで管弦や打楽器、バグパイプまでもシミュレートし、その独特の人工的な味わいでエキセントリックなイメージを象徴している。
サウンドこそコンテンポラリーだが、そのエキセントリックな尖り具合も含めて、70 年代初頭のブリティッシュ・ロックの香りを漂わせる佳作だと思う。
ヴォーカルは英語。
プロデュースはグループとギャリー・ファーニス。
世界で二番目のデジタル・レコーディング作品だそうです。
LP のインサートが昔のプリンターの連続用紙になっている。
「Reach For The Heavens」(6:06)暴力的というべきピアノのプレイが起爆剤となるハイテンションの演奏。
「Light Years Before」(6:05)ピアノのパワフルなストロークとギターによる連続急旋回テクニカル・チューン。
意外なほどジャジーなタッチがある。
クラヴィネットやパーカッションによる派手なリズム・アレンジも特徴的。テンポやリズムがめまぐるしく変化する。終盤はアグレッシヴ過ぎるソロ・バトル。
「It's Got To Be」(3:13)英国ロックの伝統を感じさせる佳品。70 年代初頭の作風をアレンジで現代風にした感じ。FRUUPP かな。
「Time And Time Again」(4:45)透明感とエキセントリシティの組み合わせは意識的に YES のアコースティック路線を狙っているような、やっぱり好作品。エレクトリック・ギターやキーボードもそれ風。
「Space Promenade」(4:28)ピアノとストリングス(電子弦楽器のようだ)によるインストゥルメンタル。クラシカルで典雅だが、ストリングスのサウンドのせいかサイケデリックな趣も。ニューエイジ色は意外なほどない。
「In The Mist」(4:56)どこか古めかしい英国流ポップ・タッチとテクニカルなピアノ、ベース・ラインらのミスマッチ。GENESIS か ?やっぱり FRUUPP だ。傑作。
「Song Of The World」(4:21)GENESIS 風のねじれたバラードに YES のような無理やり器楽を突っ込んだ作品。バッキングの奇妙な響きは電子弦楽?
(TMD 2020)