アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「U TOTEM」。 5UU'S と MOTER TOTEMIST GUILD の合体プロジェクト。シリアス、チンドン、現代音楽まで多彩な芸風。
Emily Hay | voice, flute, piccolo |
Sanjay Kumar | piano, electric keyboards, sitar |
Eric Johnson | bassoon, contrabassoon, soprano sax |
James Grigsby | bass, guitar, vibraphone, tapes |
David Kerman | drums, percussion, tapes |
90 年発表のアルバム「U Totem」。
内容は、管楽器をフィーチュアした重厚華麗なチェンバー・ロック。
無調性、変則ポリリズム、効果音といった音現代音楽的な語法で、雄弁かつ緻密に語る力作である。
おおざっぱにいえば、UNIVERS ZERO に 5UU'S のパワーを注ぎ込み、SLAPP HAPPY なリリシズムでまとめた作風であり、ロック云々というよりは、実験的なクラシックというべきだろう。
とにかく、モダンな音楽としてのヴァーサタイルなカッコよさは並みではない。
アンサンブルは、アコースティック・ピアノ、フルート、バスーン、パーカッションらで構成されるアコースティックなものが基本である。
デリケートかつ大胆な演奏が、めくるめく幻想美を生むかと思えば、怒りを写し取ったように険しく凶暴な表情を見せ、そうかと思えば、奇妙な反復がコミカルなイメージを強めることもある。
ギクシャクとしたいかにもレコメンな演奏が、いつしか厳格かつ整然とした演奏へと昇華し、シンフォニックに高まることもある。
混声ハーモニーも交えて、オペラティックなパフォーマンスを追い求めているところすらある。
緊張感あふれるアンサンブルにふと浮かび上がるシタールや、フルートの寂しげな響きもいい。
もちろん、扇動するようなビートとともにアグレッシヴに突き進むロックらしいカッコよさもある。
そういうところでの音の集中度合いは、KING CRIMSON も真っ青のレベルである。
1 曲目は、驚異的なチェンバー・ロック大作。美しくドラマがある。
2 曲目は、カーマンの壮絶なドラミングと管楽器ががっぷり組んで轟々と突き進むヘヴィ・チューン。ダグマー・クラウゼ然としたヴォイスが華やかに彩る。
最終曲の大作は、ここでは異色かもしれないが、カンタベリー/ジャズロック風味のある「メロディアス」な傑作。
シリアスなチェンバー風味をうっすら漂わせつつも、ポップでエレガントな演奏である。
全体にきわめてクラシカルであり、女性的もしくはデリケートというべき審美感が支配的です。
メロトロンもあり。
(CUNEIFORM RUNE 24)
Emily Hay | flute, piccolo, singing |
Sanjay Kumar | piano, electric keyboards, speaking |
Eric Johnson | bassoon |
James Grigsby | bass, guitar, computer, tapes, speaking |
David Kerman | drums, percussion |
Steve Cade | guitar |
94 年発表のアルバム「Strange Attractors」。
HENRY COW 直系レコメン、チンドン、現代音楽、SLAPP HAPPY まで多彩な芸風を、整然とまとめ上げた佳作。
押しの強さを前作よりもやや抑えて、さまざまな表現を自由に操っている。
変わらないのは、アヴァンギャルドな展開のうちに見せるクラシカルで高尚な趣である。
デイヴ・カーマンのドラミングは、ここでも強烈である。
音楽トータルとしては 5UU'S ほど硬質で凶暴ではなく、どちらかといえば、幻想的でしなやかな表現が主だと思う。
サンジェイ・クマールの金属的なキーボードが渦を巻いてアコースティック・ピアノが火を噴き、激辛の打撃技が連続するところも多いが、それはあくまで一側面である。
それだけではない。
むしろ、このハードなコンビネーションに管楽器によるフリー/脱力/UNIVERS ZERO 系の音が混ざるところや、きわめてクラシカルなアンサンブルに発展するところが新鮮だ。
(やはり、バスーンの存在感は独特である)
そして、9 曲目のような民族音楽やジャズ風にこなれた演奏もあり、STORMY SIX のような瞬間もある。
エミリー・ヘイ嬢の声質、歌唱、ともにダグマー・クラウゼに瓜二つ。
5、11 曲目では、再び日本人女性をゲスト・ヴォーカルに迎えて日本語の歌が入る。
典型的な「夢見る夢子ちゃん」系なのだが、外人にはおもしろいのだろう。(ジャケットの目を閉じた女性もこの方では)
全曲、作詞作曲は MTG のジェームズ・グリズビー。
最終曲は集大成のような力作。ここのギターはスティーヴ・ケイドという新メンバーによるのだろう。
全体に比較的聴きやすい作品だと思います。
(CUNEIFORM RUNE 66)