フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「WEIDORJE」。
76 年、MAGMA を脱退したベルナルド・パガノッティとパトリック・ゴーシェを中心に結成。
78 年唯一のアルバム発表。
79 年解散。
パガノッティ、ゴーシェ、ジャン・フィリペ・グードら主要メンバーはソロ活動へと散る。
MAGMA サウンドの独自発展を目指したグループ。
ベースをフィーチュアした魔術的反復が特徴のジャズロック。
Bernard Paganotti | bass, vocals | Patrick Gauthier | keyboards |
Michel Ettori | guitar | Kirt Rust | drums |
Alain Guillard | sax | Yvon Guillard | trumpet, vocals |
Jean-Philippe Goude | keyboards |
78 年発表の作品「Weidorje」。
内容は、MAGMA のヘヴィなサウンドを基本にややメインストリームの音も盛り込んだジャズロック。
特異なひずみ方を見せ、バスーンなどの管楽器のようなニュアンスをもつベースと、サックスやキーボードの執拗な反復がエネルギーをため込んでゆく、重量感あふれる演奏である。
キーボードのプレイには、当時流行のエレクトリック・ジャズを感じさせるところもある。
MAGMA との違いは、ドラムスがリズム・キープの役割を忠実に果たしていることと、ヴォーカル/コーラスが本家のような舞い上がるような高揚感よりも重苦しさと神秘性を強調していること。
MAGMA と同様に重さのわりに音の厚みはさほどではないのだが、音群は巧みに編みこまれ、すさまじい圧迫感をもっている。
ベースとギター、ドラムスによるハードな核に、キーボードや管楽器が不定形の変化をつけており、そのため、アンサンブルにはうねりのたくりながら迫ってくるようなイメージがある。
ただし、オペラ風の部分やエキセントリックなメロディ・ラインは本家ほどではない。
よりストレートでパワフルなジャズロックといえるだろう。
また、作曲者によっても曲調は異なり、パガノッティの作品ではベースが前面に出るが、ゴーシェ、グードの作品ではキーボードがフィーチュアされる。
ちなみに、MAGMA のアルバム「Udu Wudu」に収録された「Weidorje」なる作品は、パガノッティが本グループ用に用意したものだそうだ。
MAGMA の傍系という点にこだわる必要のない、個性的なジャズロックの傑作。
もちろん「Kohntark」のファンへは無条件でお薦め。
「Elohims Voyage」(16:28)ベースが唸りをあげる MAGMA 風の強迫的作品。
キーボードは星の瞬きのようにスペイシーであり、ヴォーカル/コーラスはどこまでもミステリアス。
反復とユニゾンの圧力で進み、朗唱風のスキャットと管楽器で退く、を繰り返しつつ、結局は重戦車のように進み続ける。
中盤 9 分あたりの怪しくエネルギッシュな演奏がすばらしい。まさに変拍子ファンクである。
終盤、反復するテーマにブラスとヴォーカルがこだましあい、神々しい響きを生む。
パガノッティの作品。
「Vilna」(12:19)
ツイン・エレピの幻惑的かつ重層化する反復と管楽器によるシャープなテーマがぶつかり合い、沸き立つようにうごめく傑作。
変拍子パターンの反復が多重化し、曼荼羅をイメージさせるポリリズミックな展開を見せる。
エレピ系のキーボードとサックスが活躍する分、音色は、MAGMA よりも SOFT MACHINE やアメリカの音に近い。
テーマとなる旋律も、いわゆるフュージョン調である。
しかし、自信にあふれる反復が到達する後半の激走は、やはり MAGMA 直系のものである。
凶暴な演奏の上空を管楽器が美しく羽ばたく。
ゴーシェの作品。
傑作。
「Booldemug」(7:02)冒頭からベース、キーボード、管楽器が一気にハイ・テンションへと登りつめ、そのまま突っ走る痛快な作品。
変拍子をこねくりつつひた走るリズム・セクションの上で、ブラスが華々しく破裂し、ミシェル・エトリのギターが爆発する。
陽性の MAGMA か、躁状態の頂点にあるブラス・アンサンブルか。
スピード感がいい。
ゴーシェの作品。
「Rondeau」(8:49)反復による躍動感を基調にしながらも、ファンタジックな味わいを加えた佳作。
古典的なダンス・ミュージックの変化形ととらえることもできる。
ボーナス・トラック。
グード作曲。
「Kolinda」(12:28)ボーナス・トラック。
エトリ作曲。
(FGBG 4058.AR)