ALEPH

  オーストラリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「ALEPH」。 74 年結成。78 年解散。 作品は 77 年の一枚のみ。 ヴォーカル、ピアノが際立つポップス調シンフォニック・ロック。

 Surface Tension
 
David Highet bass
David Froggatt guitar, vocals
Mary Jane Carpenter keyboards, vocals
Joe Walmsley vocals
Mary Hansen keyboards, synthesizer
Ron Carpenter percussion

  77 年発表のアルバム「Surface Tension」。 内容は、技巧的な演奏とメロディアスなテーマが一体となったポップなシンフォニック・ロック。 全体にせわしなく鋭角的なイメージの演奏ながらも、存在感あるハイトーン・ヴォーカルの歌い込みとそれを彩るツイン・キーボードがメロディアスな展開を作り上げて、アクセスしやすい音にしている。 なにせ、冒頭から「究極」YES を思わせる自信たっぷりのアカペラなのだ。 ただし、本家 YES と比べると歌メロはぐっとポップでキャッチー。 R&B 系を含めて普通のロックンロールを歌っても違和感はまったくない。(誰かさんのように何を歌っても賛美歌っぽくなるということはない、ということだ) したがって、緊張感のあるアンサンブルとこのヴォーカルの対比が強いと楽曲がよりプログレっぽくなる。 曲調はスタカートを効かせたリズミカルなものが主である。 このリズミカルでツンツンと尖ったイメージは、ドラムスのプレイに独特の忙しなさがあること、そして細めでクランチなサウンドによる饒舌なギター・プレイのせいだ。 また、ツイン・キーボードは、ピアノ担当とオルガン&シンセサイザー担当という分担のようだ。 メロトロンかシンセサイザーかはっきりしないが、ストリングス系の音もたっぷり使われている。 そして、落ちついた雰囲気は、主としてピアノが持ち込んでいる。 もっともプレイ自体は、バッキングでも目立ってしまうトニー・バンクス・タイプであり、アンサンブルの輪郭をはっきりと切り取ってゆくのがうまい。 この作品を色づけているのは、間違いなくこのピアノの存在である。 しかし、そのピアノも、ひとたびテンションが上がれば、アクセントを強めた忙しなくも技巧的なプレイでたたみかけて、プログレらしさを演出する。
   派手なオルガン、テクニカルなギター、ピアノ、ドラムスによる鋭角的で立体的なアンサンブルとロマンティックに歌い込むヴォーカルとのアンマッチの妙は、まさに往年の YES と共通している。 全体の雰囲気は、70 年代前半の YES がポップスをやってしまった感じ(ただしコーラスなし)、もしくは初期の STYXSUPERTRAMP あたりだろうか。 この音の手触りは、プログレが様式化する前の 70 年代初期英国の音を引きずったまま、70 年代中後半のアメリカナイズされたポップ・フィーリングに身を寄せたことによるのだろう。
  基本的には、YES 調のアレンジを効かせたインスト・パートが特徴的なポップ・プログレ。 3 曲目は忙しくもポップな名曲。 既存の CD は海賊盤。 プロデュースはロン・カーペンター。

  「Banshee」(5:35)ロマンティックなメロディアス・ロック。 一歩間違えると様式的 HR/HM になるところを、ギターが主張しすぎず、ピアノ、メロトロンで包み込んでこの口当たりになった。 TAI PHONG あたりに通じる作風。

  「Man Who Fell」(5:45)同時代のポップなロックに目を向けたロックンロール。演奏はピアノがリード。 イコライザを効かせたヴォーカル、シンセサイザーのオブリガートがいかにも 70 年代中盤風である。 演奏力があるので、こういう作品もソツなく仕上がる。

  「Morning」(4:16)WISHBONE ASH にありそうな英雄物語風のクラシカル・ロック作品。 英国ロックっぽいです。テクニカルなギターが走るシーンなのに、バッキングのピアノのコード・ストロークがうるさいくらい大きい。

  「(You Never Were A)Dreamer」(4:20)トーン調節したオルガンとピアノが支える切々たるバラード。 もちろんセカンドコーラスあたりでメロトロンが湧き上がる。産業ロックの片鱗を見る。

  「Mountaineer」(14:38)ピアノとシンセサイザーのツイン・キーボードをフィーチュアした躍動感あるプログレッシヴ・ロック。 ピアノは FESTA MOBILE ばりの腕力を発揮する。 歌メロが意外にいい。 この一曲で歴史に残る。一気呵成。

  「Heaven's Archaepelago」(6:34)ピアノをフィーチュアしたスペーシーなバラード。

(600029)


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