ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「ASA DE LUZ」。87 年結成。作品は二枚。
Mauro Machado | lead vocals | Raphael Veronese | keyboards |
Salvador Neto | keyboards | Ivan Correa | bass |
Lincoln Cheib | drums | Kao M. Rosa | guitars |
guest: | |||
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Neném | drums on 8 | Augusto Rennó | guitars on 8 |
Daniel Cheese | guitars on 7 | Marcus Viana | violin on 8 |
Carla Villar | vocals on 8 |
96 年発表の第一作「Asa De Luz」。
内容は、クラシカルかつフォーキーな歌ものシンフォニック・ロック。
ミドルテンポのまったり落ちついた、メロディアスな作風である。
エレクトリック・キーボードによるオーケストラ風のサウンドをバックグランドに、ギターが丹念にフレーズを紡いで歌い上げ、アコースティック・ピアノが瑞々しさを演出する。
たおやかな多声のヴォーカル表現とジャジーに振れても安定感抜群なところは MPB の血、いかにもブラジル音楽らしい。
楽曲はコンパクトだがドラマはきっちりと盛り込まれている。
全体にスタイルを決めかねてヴォーカル主導のソフトなポップスとメロディアスなロックの間で揺れているように思える。
1 曲目とよく似た 8 曲目ではSAGRADO のマーカス・ヴィアナが客演、眼の醒めるエレクトリック・ヴァイオリンを奏でている。
チェロやフルートの音も聴こえるが演奏者のクレジットがない。
プロデュースはベーシストのイヴァン・コリア。
「O Barco」(3:13)完成されたブラジリアン・ポップス。
「Brincar De Sel Feliz」(5:00)一転してメロディアスなロックに寄り、起伏ある展開を盛り込んだ作品。ギターが前に出ている。
「Florir」(4:26)アダルトな歌ものとしていい出来だがギターが入るとロックぽさが強くなって、やや子供向けになる。終盤に現れるパッヘルベルのカノンの変奏が美しい。
「Sonho De Criança」(3:25)クラシカルなインストゥルメンタル。
「Reviver」(4:30)メロディアスなアリーナロック風のバラード。やはり歌がイイ。
「Dual」(4:22)完成されたブラジリアン・ポップス #2。やはりギターはない方が音楽に気品が出る。
「Sonata」(4:14)ギターとヴォーカルのやり取りが雰囲気を壊さずにうまくできている佳作。ソロは要らないかもしれない。
サビのコーラスが独特。
「The Distance」(3:38)1 曲目の変奏のような美麗な作品。
(ADL001)
Mauro Machado | lead vocals |
Salvador Neto | keyboards |
Ivan Correa | bass |
Guilherme Fontao | acoustic & electric violin |
Caue Robo | guitars |
Marcelo Braune | drums |
98 年発表の第二作「The Link」。
内容は、ヴァイオリンをフィーチュアしたメロディアスなネオ・プログレッシヴ・ロック。
溌剌として清涼感とオプティミズムあふれるトーンが全体を貫いている。
デビュー作よりもプログレッシヴ・ロック然としたスタイリッシュなパフォーマンスである。
演奏は、フュージョンの透明感を加味しつつも、奇数拍子のリフレイン、やたらと泣きそぼるギター、クリアーなアコースティック・ピアノなど典型的なポンプ・ロックのスタイルが採用されている。
特筆すべきはキメのメロディのセンスがかなりいいこと。(これは一作目で実証済である)
タイトル曲や 5 曲目のサビのように、聴き終わった後で口ずさめるテーマが確実にある。
インストゥルメンタル・パートにおいても、アンサンブルの軸となるのは人懐こさと暖かみを込めたフレーズである。
そして、メロディをゆったりと歌うだけではなく、決めどころでは超絶的な速弾きやたたみかけるようなプレイでテンションを上げてくる。
ギターやシンセサイザーとヴァイオリンが刺激しあって感極まり切なく狂おしく歌い上げるさまは、プログレ慣れして多少ひねた耳にも感動的に聴こえるはずだ。
また、バラードにも清々しく品があり、べとつかないところがいい。
オーガニックで陽性のファンタジーという点では、英国ポンプの鬼才 SOLSTICE を思い浮かべるのも正解だろう。
全体に、巧みなアレンジによる雰囲気作りもうまい。
情熱的でロマンティックなムードや胸のすくように雄大なスケール感や重厚厳粛な雰囲気など、清潔感と純朴さを基本にした演出は的確だ。
エレクトリック・キーボードによるサウンド・スケープの作り方のうまさの寄与は大きいだろう。
6 曲目では、アコースティック・ピアノの爪弾きとオペラばりの混声合唱で、クラシカルにしてエレガンスの極みのような表現を見せている。
ただのネオ・プログレ・グループに、この表現力の幅、多彩さはあり得ない。
8 曲目では、曲名もともかく、SAGRADO そのもののような演奏を繰り広げる。
違いは少し主張がうるさいギターくらいだろう。
リード・ヴォーカリストの英語の訛りやいきみ返るハードロック寄りの歌唱スタイルは、メキシコの CAST に近いイメージである。
クラシック+ネオプログレという観点でも共通性がありそうだ。
たおやかなバラードでは、ヴァイオリンが追いかけて、SAGRADO そのもののような、気高くも爽快でヒューマンな高まりが生まれる。
ただし、ヴォーカルは英語よりも原語で歌う方がいい。
最終二曲の表現がしっかりして聴こえるのも、原語で歌っているためだろう。
一部で参加のオペラ風の女性ヴォーカルは、SAGRADO からのサポートらしい。
SAGRADO からニューエイジ風味を減らして、ネオ・プログレ寄りにしたような佳作。
プロデュースはベーシストのイヴァン・コリア。
「Deep」(5:06)
「The Link」(6:17)
「Child Dream」(3:23)
「The Distance」(3:35)
「All For One」(4:00)
「Memories Of A Great Love」(6:22)
「Tales Of Tomorrow」(4:30)
「Todo Sagrado」(6:51)
「Canção Perdida」(6:09)
「Dual」(5:13)
「The Link (short version)」(2:37)
(PRW 046)